説き語り「源氏物語」 村山 リウ その12 講談社文庫 1986年(昭和61年)
紫の上―――生涯をかけた愛の果てに
源氏に最も信頼された完璧な妻。絶対的愛をかちえたと信じても、いわば内縁関係。女三の宮の降嫁を機に不信と絶望を募らせてゆく。
愛して愛し抜いていく強さと、ふとしたことでくずおれてしまう弱さと、どちらも人の愛であるゆえに表裏一体となってついてまわるものなのでしょうか。
源氏の君が生涯にわたって愛したただ一人の女性。紫の上は、愛されながら持ち前の聡明さで自己形成に精進した女性です。源氏への愛のために、また自分自身のために、紫の上はだれよりもすばらしい。だれにも後ろ指をさされない女性になろうとしました。
けれども、そうした精進のすきをつくかのように襲う愛の裏切りと、自分の力ではどうにもならない世の中のならい。幸せなはずの愛は悲しみに色どられていきます。
紫の上―――生涯をかけた愛の果てに
源氏に最も信頼された完璧な妻。絶対的愛をかちえたと信じても、いわば内縁関係。女三の宮の降嫁を機に不信と絶望を募らせてゆく。
愛して愛し抜いていく強さと、ふとしたことでくずおれてしまう弱さと、どちらも人の愛であるゆえに表裏一体となってついてまわるものなのでしょうか。
源氏の君が生涯にわたって愛したただ一人の女性。紫の上は、愛されながら持ち前の聡明さで自己形成に精進した女性です。源氏への愛のために、また自分自身のために、紫の上はだれよりもすばらしい。だれにも後ろ指をさされない女性になろうとしました。
けれども、そうした精進のすきをつくかのように襲う愛の裏切りと、自分の力ではどうにもならない世の中のならい。幸せなはずの愛は悲しみに色どられていきます。