青空に白い月

ゆったりゆるりと生きましょ~よ

薬屋の後悔

2009-07-06 18:19:02 | オリジナルのお話

一人の薬屋の主が、今静かに店の看板をおろそうとしていた。

そこに一人の男が歩いてきて声をかける。

「やー、薬屋のじーさん。なにをしてるんだい?」

薬屋は答える

「わしももう年じゃ、もう店は閉める事にしたよ」

男は明るく言った

「なら俺にやらせてくれよ、薬なんか山から草を採ってきて混ぜるだけだろ、誰にでもできるじゃないか。仕入れもいらないしぼろ儲けだろ」

薬屋は男に聞いた

「おまえさんは病気になったことがあるのかい?」

男は答えた

「いいや、ないね。あんなもの弱いやつがなるもんさ。」

薬屋は呆れてしまった

「でもいきなり薬屋にはなれんよ、少しは勉強せねばな」

男は諦めなかった

「じゃ、三日後に万能薬でも作ってもってくるから、そしたらこの店を俺にくれよ」

そういい残して男は去った

 

 

それから三日後、男は死んだ

  

 

薬屋は、男は自分で採ってきた毒草を飲んで死んだという噂を後から聞いた。

 

しばらくしてから薬屋は男の墓に言った。

そして墓の前で話し始めた。

「わしは50年間薬屋一筋でやってきたが、おまえさんのおかげで一つだけ心残りが出来た」

薬屋はしばらく黙って墓を見下ろして、最後に口を開いた。

「どうして馬鹿に効く薬を発明しなかったんだろうか」

そういい残すと、薬屋は去って行った。

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サンタの話のエピソード

2007-12-01 21:43:28 | オリジナルのお話

サンタの話の挿絵を遊工房さんのご好意から提供していただきありがとうございました。

ご自分でアニメーションにして作品を公開していて、とてもやさしい配色の絵を書かれる方です。

私にとっては、アニメーションどころかストーリーの組み立て自体がとても大変な作業でして、なかなか思うようにはいきません。

何か物語を作るとき、最初に考えるのは概略(道筋)であり、サンタさんのお話に関しては、思い付きから概略が頭の中で出来上がるまで、10分程度でした。

そして忘れないうちにそれをレポート用紙に簡単に、こうしてこうなる的に書きます。

今回は思い付きから概略までが全部お風呂の中だったから、風呂上がりにメモして、後は次の日から書き始め、その次の日に大体終了という感じです。

でもね、概略って言うのはあくまでもストーリーの予定なので、書いているうちに別の思い付きがあれば私は変更しちゃいます。これが話が長ければ長いほどに大変な作業です。

サンタの話では、病気だったお父さんが元気になりますが、私が概略を書いた段階ではお父さんは残念ですがお亡くなりになっていたり、途中変更されて今度は事業に失敗して借金を背負ったまま行方不明になったり、サンタに関しても最初は不思議な力があるとかいう設定は全くなくて、助けられない心の葛藤がメインのような、そんな感じで本来大人向けのサンタの話になる予定でしたが、あれよあれよという間に私の思いつきで登場人物が死んだり生き返ったりしまして、結果的にアダルトメルヘンっぽくなり、子供にはちょっと難しく、大人にはちょっと子供っぽいという、微妙な年齢層をターゲットにしたお話になってしまったわけです。

でも話し自体が短かったから適当でなんとかなりますが、長いと変更箇所によってはその前後までが大幅に変更を余儀なくされることもあるから大変です。

どうしてそんなこと言うのかっていうと、前にも何度か書いたことがあるからです。

その話は別の場所で一応公開はしてましたが、ほとんど人の目に触れることはありませんでした。

それに長いとは言っても400字詰め原稿用紙だと60~80枚程度なので、物語としてはかなり短いですが、それでもど素人には大変で、書いているうちに

「あれっ?これだとつじつまが合わなくない?」

っていう部分が出てきて、そこで合わない部分を変更すると今度は別の部分がおかしい。という具合に、連鎖的に話がグチャグチャになり、最後にはまるでパズルのようになり、それで途中で書くのをやめた話も実際ありました。

それに私なんかは思い付きを途中でどんどん投入していくから、最期に見たときに、これは詰め込みすぎたなっていうことが多いです。

ただ構想を文章に書き出すとはいっても、やっぱり難しいもんですね(*_*;

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サンタのプレゼント vol最終話

2007-11-29 18:54:35 | オリジナルのお話

母親の周りにはたくさんの人が集まった。頭からはたくさんの血が出ている。
女の子はその場で動けなくなり、ショックで大きく震えていた。

プリンは女の子の傍にいたが、女の子以外は誰もその姿は見えていない。

”助けなきゃ”

でもそこで、ゼリーの言葉が頭を過ぎる。

”力を使えるのは一年に一回だけ、それに同じサンタが同じ相手に対して二度と力は使えない”

ここでこの子のお母さんを助けてしまうとこの子のお父さんは・・・
でももう迷っている時間もなさそうだ。
女の子の手をギュッと握るとプリンは心から願った

”この子のお母さんが助かりますように”

「ゴホッ」

一度咳き込んだかと思うと母は息を吹き返し、傷も見る見るうちに消え、何事も無かったようにその場に立ち上がった。
そこにいた人は誰もが驚いた様子で呆然としている。
プリン自身も少し信じられない気持ちでいた。

”本当だった、不思議な力の話は本当だった”

母は子供の元へ駆け寄ると、自分のことより子供が無事でよかったと言ってそっと抱きしめた。
それからすぐに救急車が来て母はいろいろ話を聞かれているようだった。

女の子は懇願の表情でプリンの顔を見上げる。
「お父さんも助けてくれる?」
「うん、絶対助けてみせるさ」
ついそう答えてしまった。そうとしか言えなかった。

”そうだ、時間が無い”

女の子から病院と父親の名前を聞き、すぐにソリに乗ると、女の子に手を振り空に舞い上がった。
去り際、「必ず助ける」と言いかけたが、でもそれは言えないことだった。

”どうしたらいいんだ、僕は”

病院は女の子の家のすぐ傍だった。

父親の姿を見た瞬間、もう一年どころか一ヶ月持つかどうかも分からない状態であることはプリンの目にも明らかで、腕には何本ものチューブがつながっていて、口には酸素マスク、それに顔は黄色く変色している。

でも、もうどうにも出来ないことはプリンが一番よく分かっていた。小さい頃読んだサンタのヒーローが主人公の絵本の中だと、こんな時は奇跡が起きてきっと使えない筈の不思議な力がもう一度使えたりすることがある。

”ここで諦めて帰ることは出来ない”

プリンは駄目なことを承知で一心に願った。

”病気が治ってあの女の子が笑顔でいられますように”

しかし何度も何度もどんなに願ってもその願いが叶うことはなかった。
刻々と日の出の時間は近づいているし、それにもうサンタの国へ帰らなければいけない時間はとうに過ぎていた。

”結局僕はあの女の子に何もプレゼントしてあげられなかった”

それを考えるともう帰る気力も失せて、すっかり弱気になっていた。
途方にくれて空を見上げると空の上にたくさんの流れ星が見え、
「よし、もう一度やってみよう」
そう一人で気合をかけると、また一心に願った。
数分が経っただろうか、気が付くと目の前に人が立っていて、すがすがしい顔で空を見上げている。その顔は今までそこに苦しそうにして眠っていた人の表情ではない。

”願いが叶った”

プリンがそう思った時、上の方から聞き覚えのある声が聞こえた。

「おいプリン、俺からお前へのプレゼントだ」

そこには笑顔のゼリーと、空を埋め尽くすほどのサンタのソリが空を滑っていた
父親の病気が治ったのはゼリーの力だった。
「ありがとうゼリー」
プリンがそう言う前にゼリーが叫んだ
「もう時間が無い、すぐにソリに乗れ、みんなで帰るぞ」
プリンは急いでソリに乗り、空高く一気に舞い上がった。
だが時間がかかり過ぎていた。時既に遅く、もう既に空は白み太陽がいつ顔を出してもおかしくはない。
”遅かった。僕のせいでみんなまで巻き添えに・・・
そう思った時、誰かが大声で叫ぶ声が聞こえた。

「日の出がきたぞ。駄目だ、もう間に合わない」

その声を聞いた次の瞬間、気が付くと今度は一斉に喜ぶサンタの歓声が聞こえた。
「やったぞ、俺達はやったんだ」

プリンはいつの間にかサンタの国に帰っていた。
いったい何が起こったのか良く分からない。確かに日の出がやってきて、誰かがもう駄目だって叫んで、でも気が付いたらここにいる。

プリンの横にサンタの長が厳しい顔で立っていた。
「プリン、君はとんでもないことを仕出かしてくれたな」
そう言うと今度は笑顔になった
「でも君にはいいクリスマスになったな」

歓声が落ち着いてからプリンはゼリーを探した。
ゼリーはついさっき涙を流したその場所に座っていた。

ゼリーの横にプリンも座った。
「おまえは俺に出来なかったことをやったな、大分危険だったけど」
そう言ってゼリーは笑った。
プリンにはどうしても聞きたいことがあった。
どうしてゼリーはあの女の子に会ってもいないのに、ゼリーの力であの子のお父さんの病気が治ったのか
ゼリーはゆっくり話し始めた。
「俺はお前が話した女の子のお父さんを助けたいって願ったんじゃない。プリンを助けてほしいって願ったんだ。だからお前が一番困っていることが解決できたわけさ、プレゼントもたまにはあげる方じゃなくて貰うのもいいもんだろ」
ゼリーがそう話すとプリンは改めてゼリーに御礼を言った。
それともう一つ聞きたかったこと、日が昇ってきてもう駄目だって思ったのに、どうして気が付いたらサンタの国へ帰っていたのか
ゼリーは言った
「俺が一人で助けに行くって言ったら、サンタの長に言われたんだ”君が一人で行くのはかまわん。でもいくら助けとはいえ今から出て行けば君もサンタの規則に違反することになる。それに君一人で助けられる事態でなければどうなる?君も消えて無くなってしまうぞ。例えその女の子にプレゼントを渡すことが出来ても、ここにいる全員がそれで納得するとは私は思わんがどうかな?”ってさ」
少し間を置いてからゼリーは話を続けた
「後は自然とそこにいた全員が一斉にソリに乗り始めてプリンのところに向かったんだ。もう時間に余裕がないってことも分かっていたから、日が昇る直前に全員で”ここにいるサンタをサンタの国に帰してくれ”ってそれぞれに願ってプレゼントを渡しあった。ってまぁそういうこと」

話の途中からもうプリンの涙は止まらなくなったいた。
二人は黙ってしばらくそこに座っていた。
「次は新しいソリでいいよ」
どの位そこに座っていただろう。突然プリンがそう言うとゼリーは聞いた
「何が?」
「来年の僕へのプレゼント」
そう言ったプリンにはまたいつもの笑顔が戻っていた。

・・・END

Sannta

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サンタのプレゼント vol4

2007-11-28 16:43:43 | オリジナルのお話

続々と帰ってくるサンタたちの群れを縫うようにソリを全速力で逆走させた。
女の子の家のそばまでやってくると空の上からその家を探し、真っ直ぐ女の子の家の前まで行き、玄関のまん前にソリを停め、急いで女の子の元へと駆け寄った。
しかし女の子の姿はそこにはなく、写真と手紙だけが枕元に残されていた。
プリンは慌てていた。タイムリミットはもうすぐだ。
”相手は小さな女の子、そう遠くへは行っていない筈だ”
そう思うと、すぐにソリに乗り空から女の子を捜すこと数分

「いた!」

小さな女の子が泣きながら一人歩いていると、目の前にトナカイに引かれたソリに乗ったサンタが現れた。
女の子はとても驚いた様子で大きなトナカイとソリを見つめている。。

それを見てプリンはもう一度ここに来て本当に良かったと思った。やっぱり女の子には自分の姿が見えていたのだから。

「サンタ・・・さん?」

女の子は小さな声でそう言い、プリンの方をじっと見ている。

「そうだよ」

優しくそう答えると、女の子は半泣き状態で言った。
「帰っちゃったのかと思ってた、去年も居なくなっちゃったから」
「僕を探していたのかい?」
そう聞くと女の子は小さく頷いた。

その姿を見て本当に申し訳ないと思ったし、情けなさで泣きたい気持ちになったが、今はまず女の子の願いを聞く方が先だ。

プリンは女の子を落ち着かせようと、女の子の隣にしゃがみこみ涙を拭いてあげた。そして子供が一人で寝ていたことが気になって聞いた。
「お母さんは元気かい?」
「うん」
「お母さんはお家にいるの?」
「お母さんはお仕事」
女の子はプリンの問いにそう答えた。。
「こんなに夜遅くにお仕事?」
「うん、お父さんがずっと入院してるから」
プリンは一瞬ゼリーの寂しげな顔を思い出した。そして今自分がしなくてはいけないことがこれでわかった。
お父さんを元気にすればまた3人が笑顔になる。そうすればこの子の願いは叶うのだ。

”そうと分かればすぐに病院へ”

そう思ったとき、通りの向こうから誰かの声が聞こえた。
「みさきー、みさきー」
そう言って道路の向こう側から女の子に手を振っている。名前を呼んでいるところをみると、この子のお母さんで、仕事から帰り子供がいないことを心配して探していたのだろう。
もちろんプリンの姿は見えてはいない。
手を振り返す女の子を見つけ、ちょうどお母さんが通りを渡っている時だった。

バンッ

鈍い大きな音と共に母はそこに倒れた。車から慌てた様子で人が降りてきて駆け寄ると、大声で叫んだ
「誰か!急いで救急車を、息をしてない」

そのころサンタの国では、プリンを除いたサンタ全員がプレゼントを配り終えて帰ってきていた。
「もう帰ってきていない者はいないな」
サンタの長が他のサンタに聞いた。
「まだプリンが戻っていません」
誰かがそう言うと周囲はざわついた。
何かトラブルがあったのではと噂するサンタもいれば、さっき姿を見たというサンタもいる。
でも現にプリンのソリだけが所定の場所に戻っていない。
「俺が迎えに行きます」
誰かの声が聞こえた。声の主はゼリーだった。
ゼリーはサンタの長に全てを話し、自分に全ての責任があると打ち明けた。
するとサンタの長はゼリーに聞いた。
「ゼリー、君はどうしてサンタをやっている?」
質問の意味がよく分からないまま答えた
「子供たちにプレゼントをする為に」
「では君がプレゼントするのは子供たちだけなのか?」

・・・続く

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サンタのプレゼント vol3

2007-11-27 18:12:35 | オリジナルのお話

サンタの国に帰ると、既に多くのサンタがプレゼントを配り終え帰って来ていて、それぞれが自分たちの行った国の子供たちの様子を話し合っていた。

プリンはそんな先輩サンタの中にゼリーを見つけ、女の子のことを話して聞かせた。

「するとおまえはその女の子に何もプレゼントしなかったのか?」

話を聞いていたゼリーがそう言うと、プリンはそれにコクリと頷き、話しを続けた。
そして一通り女の子の様子を話し終えると、プリンはゼリーの反応を待った。
ゼリーは少し考え込んだようにして言葉を選びながら話し始めた。
「なあプリン、サンタにある不思議な力の話、知ってるか?」
「小さい頃読んでもらった絵本の中なら知ってるけど」
馬鹿にしたようにそう言ったプリンを見てゼリーは話を続ける
「絵本だけじゃないんだ、本当にサンタには不思議な力がある。それはサンタ自身がどうしてもプレゼントしたい相手にだけ使える力、まー魔法のようなもんだ」

プリンは身を乗り出してそれを聞いた。

「ただしその力を使うにはあと二つの条件がある。一つ目は力を使えるのは一年に一回だけ、それに同じサンタが同じ相手に対して二度と力が使えないこと」

プリンの方を見ると、もう既に不思議な力で頭がいっぱいのように感じた

「そして三つ目の条件は、願う相手にサンタの姿が見えること」

そう言った時、プリンの興奮が薄れていくのがわかった。
そしてプリンは強い口調で言った
「そんな力、無いのと一緒だ」
「どうしてそう思う?」
その問いにプリンは即答した
「だって見えないだろ、サンタは誰にも見えないだろ」

「・・・」

一瞬の沈黙の後、ゼリーは静かに話し始めた
「俺もずっと前は同じように思ってたんだ」
ゼリーはプリンの方を見る
「サンタの姿は普通は見えない。でも本当にサンタを信じて必要としている人にはサンタの姿が見えるもんなんだよ」

そう言ってうつむいたゼリーにプリンは聞いた
「ゼリーはサンタが見える子供に会ったことあるの?」
ゼリーは頷いて言った
「あるよ、たった一度だけ。」

プリンの目に再び希望の色が見え始める。
「俺がまだプリンのように、サンタになってまだ間もなかった頃、ある家にプレゼントを置きにいったんだよ、いつものようにな。そこにいたのは小さな男の子だった。それでその子の枕元にプレゼントを置こうとしたら突然起きて俺の方を見たんだ、そしてこう言った”サンタさんでしょ”」

ゼリーの顔は少し寂しそうだ

「いやー、流石に俺もそれには驚いてな、”俺が見えるのか?”って聞いたら”見える”って答えたもんだからその時はどうしていいか分からなかったな」
そういうとゼリーは少し笑顔を見せた。プリンは黙って聞いていた。
「そして次にその子の口から出てきた言葉は”こんなおもちゃいらない”ってその子そう言ったんだよ俺に、だからだったら何がほしいのかって聞いたんだ。そしたらその子に”お父さんを助けて欲しい”って言われて俺も困っちゃってよー」

ゼリーはそう言いながら頭をぽりぽりかいた

「その時は俺もただ子供におもちゃをあげることがサンタの役目だって思ってたもんだから、お父さんを助けてって言われてもな・・・その子のお父さん病気だったんだ・・・でもあまりにも必死になって頼むし、その時は俺も信じてはいなかったけど、一応サンタにある不思議な力の話を聞いたことはあったから、そんなに言うなら助けてやろうって気軽に引き受けてさ、そのままお父さんの入院する病院に行ったんだ」
「それで、どうだった?治ったんでしょ」

プリンがそう聞かれ、ゼリーは黙ってうつむき首を横に振った。
「どうして?だってその子にはゼリーの姿が見えたのにどうして!力の話が嘘だったの?」
「いや、不思議な力の話は本当さ」
「だったらどうして!」
ゼリーはプリンを静止するように一呼吸してまた話を続けた。
「俺には足りなかったんだ、その子にどうしてもプレゼントしたいって気持ちが」

ゼリーの目には少し涙が浮かんでいる

「でも俺はその子に治せなかったなんて言えなくて、それでその子の家には行かずに病院から真っ直ぐ帰ってきた。また来年のクリスマスには治してやろうって気持ちがあったんだろうな、そんな軽い気もちが、それで次の年のクリスマスにまたその子の家に言って枕元で声をかけた。”今度こそ治してやるぞ”ってな、でももう何の反応もなかったよ。」
ゼリーの目から涙が流れ落ちた。
「そして枕元に紙が置いてあって、

<もうサンタなんかしんじない、おまえのせいでおとうさんはしんだんだ、もうサンタになんかたのまない>

ってそう書いてあった。それはこの子にはもうサンタが必要じゃなくなったってことだったんだよ。」
少しの沈黙があった、プリンの口からはもう何も言葉が出てこなかった
「情けないだろ、その時初めて気が付いたんだ、サンタは子供たちに幸せをプレゼントしなきゃいけないんだってな」

ゼリーの話を聞いて、プリンはあの女の子の事が気にかかった。
もしも今ゼリーから聞いたようなことがあの女の子の身に起こっていたらどうだろう?もしもあの女の子が目を開けたのが偶然ではなく、自分の姿が見えていたら?あの女の子はサンタを本当に必要としていることになる。
”なんてことだ、僕は本当にサンタを必要としている子供に何一つプレゼントできなかったのかもしれない”
プリンはもう何も考えなかった。
帰る時刻に遅れると重い罪になることも、日の出まで戻れなければ消えていなくなってしまうことも・・・

ただあの女の子が気になっていた。
そして突然立ち上がるとゼリーに言った。
「もう一度あの子のところに行って来る」
「でもお前、もう時間が・・・それに来年でも・・・」
来年では遅いかもしれないということ、それはゼリーが一番わかっていることだった。
「よしわかったすぐ行って来い。その変わり女の子にプレゼントを渡したらすぐに帰って来るんだぞ。みんなには俺が適当に誤魔化しておくから。それから不思議な力を使う時はプリンが心からそれを願えばその子の願いはきっと叶う」

プリンは頷くとソリに飛び乗った。

・・・続く

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