フィレンツェのドゥオーモ
(Cattedrale di Santa Maria del Fiore)の
正面ファサードの裏側、
正面大扉の上にフレスコ画の時計が残っています。
Paolo Uccello(パオロ・ウッチェッロ)による1443年の作品で
正方形の中に真円が描かれ、
四隅には福音書記者4名が描かれています。
通常福音書記者はシンボルとなる動物と一緒に描かれるのですが、
この時計の肖像画には
認識材料となるシンボルが描かれていません。
時計は教会式典運用のために作られたもので
主にミサの時間を確認するような目的で使われていたようです。
教会の聖務日課の終わりから2番目の祈りを基点として
一日を24のセクションに区切ってあり、
それぞれにローマ数字で数が打たれています。
つまり日暮れ時に行われる夕方のミサが始まりで
夕暮れから夕暮れまでの24時間を刻む独特の時計です。
古代から使われてきた日時計から
いわゆる機械仕掛けの時計への変遷を思わせるもので
基点は一番下、針はひとつ、そして逆回りになっています。
針が一本であること、下が基点になっていることなどは
日時計の名残を感じさせて非常に興味深いです。
イタリアでは18世紀までよく使われていた時計のタイプで
現存するものはあまり多くはないようですが、
そのうちのひとつがフィレンツェのドゥオーモに残っているのです。
丸天井の「最後の審判」や
きれいなモザイク・ペイブメントに視線がいきがちですが、
機会があれば逆廻り時計も是非じっくり観察してみてください。