フィレンツェのドゥオーモの北側側面、
クーポラの入り口として使われている扉は
La Porta della Mandorla
(アーモンドの扉)と呼ばれています。
1391から1423年にかけて
数多くの彫刻家たちの手によって製作され
Donatello(ドナテッロ)などもかかわっていますが、
その大部分はNanni di Banco
(ナンニ・ディ・バンコ)が手がけています。
2002年から2年の予定で開始された修復は、
なんと結局10年も続き
6月5日にようやく幕がはずされ、
修復により蘇った全貌が明らかにされました。
「聖母被昇天」をテーマにしたティンパノ部分は
ナンニ・ディ・バンコが手がけ、
天使が支えるアーモンド形の光輪の中に
聖母が座しています。
この光輪の形からアーモンドの扉と呼ばれています。
この扉はドゥオーモの両側面にある4つの扉の中でも
最も遅い時代に作られたもので
最も美しい扉と評価されています。
扉のすぐ上に
半月形のモザイクによる「受胎告知」がありますが、
もともとはGiovanni d'Ambrogio
(ジョヴァンニ・ダンブロージョ)作といわれる
受胎告知の彫刻群がおかれていました。
現在見ることのできるモザイクは
1490年のDavid Ghirlandaio
(ダヴィデ・ギルランダイオ)によるもの。
おそらく兄弟のDomenico(ドメニコ・ギルランダイオ)も
手を入れているだろうといわれています。
この扉の一連のテーマは
聖母マリアと彼女が負った人類救済使命。
ティンパノ部分は天に召されていく際に
聖母が自分の腰紐を
聖トンマーゾに渡していくシーンを描いています。
聖母の左下に跪き、
手を差し伸べる聖トンマーゾの姿が確認できます。
その天に昇る聖母を4人の天使が支え、
その上で3人の奏楽天使が
トランペットやバグパイプ風の楽器を奏でています。
ルネッタのモザイクが受胎告知なのは
聖母が大天使ガブリエレから
神の子を身ごもったと告げられたとき、
人類救済の使命も受け入れたとされているからです。
外枠の小尖塔には
旧約聖書の預言者たちの像が置かれ
聖母の使命と運命を予言する形になっています。
この2体はそれぞれ
ドナテッロとナンニ・ディ・バンコの手によるものといわれ、
現在おかれているのは複製、
オリジナルはドゥオーモ付属美術館収蔵。
ルネッサンス様式が主流のフィレンツェでは
珍しいゴシック様式で、
ゴシックからルネッサンスへの移行期の
最終段階といわれる貴重な作品群です。
ちなみに昇天聖母の右下、
聖トンマーゾと対称を成す形で
木に登るクマが彫られています。
未だに謎といわれているこのアレゴリー、
みるたびに気になります。