季節もついに折り返しに入って、山肌が色づき始めた。雨風の吹く中、いつもの散歩コースを時速4キロ程度で歩く。暖パンの上に、薄い雨がっぱズボンと黄色の交通安全協会からの借り物の、大きすぎる冬用ジャンバー。完全武装の上に、黄色い傘を差している。
時折、強い風が吹く、雨風になるが、全く問題ない。ふっとニュース映像で、強い雨風に対して、傘の柄を両手で握り締めて耐えようとして、風に煽られてひっくり返されて、傘が壊される都会のリーマン風男女の映像を見ることがあるけれど、「アホにつける薬はない」と感じることを思い出す。
強い風に対して、両手で傘を持てるのなら、すぐに傘を体と頭に近づけ、片手で柄を持ち、もう一方の片手は傘の内側の骨の集まった場所にやって、支えたり、いつでも傘を折り畳める用意をしながら、持ち歩く。風が強くなったら、半分窄めた状態で、頭と上半身を傘に包むようにして、歩く。そうすれば、当然、傘も壊されないし、突然のつよい雨風を避けることができる。物理学を知らなくても、人から教えられなくても、小さい頃に本能のように身につけておく対応だろう。
などと余計なことを考えてしまう。いや、いいのだ。傘を壊せば、傘が売れる。知恵の足りない高校生が捨てた壊れたコンビニ傘が都会のあちこちの隅に放置されて、ゴミとなる。そんな社会に育ってこれからの人生を生きるのは、自分たちだから、それで何も問題はない。私はたまに拾ってゴミステーションに持っていくだけ。
何たって、ついに求めていた桜の真っ赤に色づいた葉を見つけ、そして黄色と、その中間の色が入り混じった「グラデーション」という言葉を思い出すのに、100歩も歩かなきゃいけないほど、思い出せなかった、ボケ老人だ。くそ!