
<日々余話>
国一つたたきつぶして寒のなゐ
昨日の毎日新聞朝刊「今朝のうた」欄の冒頭に、
この句が掲載されていた。
安東次男の一句。氏が阪神淡路大震災に際し詠んだ句という。
「なゐ」とは古語で地震のことだという。
古来「な」は地を「ゐ」場所を表し、地震が起こることを「なゐふる」と云ったらしい。
「なゐふる-大地震える-地震」
途方もない大きな災禍、地震の凄まじさを、見事に詠み込んだ一句に、数次反芻する。
暮れのスマトラ沖大地震や10月の中越地震の被災を想う。
そういえば昨夜も、新潟では震度4の余震があったという。
復興もままならぬばかりか、なお間断となく襲う余震に不安と恐怖に苛まれる日々が続く。
今年は、阪神淡路大震災から10年、
終戦-近頃は敗戦とは云わないらしい-戦後60年の節目の年。
加えて、ヴェトナム戦争終結から30年、と云われている。
戦後60年と阪神大震災10年に併せて、ヴェトナム戦争終結30年が併称されるのは、
現在のイラク戦争に対する批判と平和を希求する心が、そうさせるのだろう。
「今朝のうた」欄によれば、この安東次男の句は、
阪神淡路の大震災後まもなく、専門歌人や俳人・詩人たちが、
悲しみを共に生きるという共生の立場で作品を集めた一冊のアンソロジー
「悲傷と鎮魂-阪神大震災を詠む」(朝日出版社)に所収されている、という。
この一句のほか、
白梅や天没地没虚空没 永田耕衣
寒暁や神の一撃もて明くる 和田悟朗
地震(なゐ)の夜の林檎ニッポンは滅びますか 奥坂まや
なども挙げられ紹介されている。
追記ながら、この「なゐ」をネット検索してみたら、
流石と云うべきか、日本地震学会広報誌「なゐふる」という頁があった