あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第五十九章

2020-08-13 03:04:12 | 随筆(小説)
青と赤の血が交る紫の血の海の上に立ち、人々に愛を説く神、エホバ。
薄暗いCylinderの長いエスカレーターを、わたしはいくつも昇る。
わたしは昇りながら幾度と身体がよろけて、倒れ落ちそうになるが最後のエスカレーターでは、わたしはバランスをつかんでよろけることはなく、踊るようにして、エスカレーターから降りて走って行き、祝福の言葉を叫んで皆のなかに降り立つ。
人々は喜んでわたしを迎え入れる。
もうすぐ劇が始まる。
覆面の者たちは座り、「血統の闇」という赤い表紙の本を読んでいる。
その周りで、ある民族たちは、儀式を始める。
激しく踊りながら、叫び、捕らえられた人たちを四つん這いにさせ、今から、神の食事が行われる。
これが、アイヌ民族のなかで行われていた、食人の儀式である。
彼女の母方の祖父は、青森出身であった。(親族の話では祖父はかなりの変わり者であった。)
”江戸時代の青森県は、北海道を除いて唯一、アイヌ民族が居住した地”である。
彼女は、この儀式を観ながら、自分の”血”を想いだす。
自分の先祖は、”食人種(人喰い人種)”であったことを。
この劇は最後に、食人の儀式を行っていた者たちが、”或る存在”に平伏しながら、こう誓うことで幕を閉じる。
「我々はもう二度と、”人”を殺して、”人”を食べません。ですから我々の血を、どうか絶たないでください。」

だがこの”血”は、絶たれるべきであり、いつかは絶たれる血として、存続して来た。
その為にも、”彼ら”の一人であるこの”男”を目覚めさせねばなるまい。
”彼”は目を覚まし、彼女を観た。
彼女はあどけない表情でまだ眠っている。
彼は、彼女の寝顔を見つめながら言った。
「מה שצריך לנתק הם אלה שהורגים ואוכלים עכשיו.」

彼女は最早、人を食べてはいない。
どの”肉”も、”人”であることを知った彼女は。





















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