あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第九十六章

2022-06-06 05:52:35 | 随筆(小説)
空から巨大な燃える船が、ひとつの闇の入り江に着いて、其処から無数の白くちいさな光る蛇たちが生まれた。
ヱホバ神は、之を、良いと御覧になられた。



Aramaic Bible in Plain English Proverbs 22:3
A cunning man sees evil and is hidden, but fools have passed by it and have suffered loss.
アラム語聖書(平易訳 箴言22章3節
狡猾な人は悪を見て隠れるが、愚か者はそのそばを通り過ぎ、損失を被った。

悪賢く、抜け目のない男は危害を見て隠れましたが、分別[思慮]のない人,ばか者,まぬけ,足りないやつ,愚人 、また愚弄(ぐろう)される[もてあそばれる]人は通り過ぎて罰せられました。

此処に、ひとりの非常に狡猾な男がいた。
彼は、“ヤバいもの”に頗る敏感だった。
何が、どれほど、ヤバいのか。ということを直感的に感じ取ることができた。
例えば、人が向こうから歩いてくる。すごく普通に歩いてくる。
しかし彼は、その人がどれくらいのヤバさにあるか、約3メートル先くらいからもうわかった。
すると彼は、やはりそれを避けたいという気持ちに駆られて、避けるしかないのだった。
何故なら、それを避けなくては、何かヤバいものが感染する、伝染する、伝播する、暴露する可能性があると感じるからだった。
そのヤバい人は、彼(宿主)の組織に定着し,さらに増殖し,他の個体へと感染するヤバい病原体を持っているかのように、ヤバいオーラを発しているのだった。
それが、なんであるかは、男にもわからなかった。
とにかくあらゆる危険を察知する能力が他よりずば抜けているようだった。
だが男は、これに感謝するよりも、この危険予知能力に苦しんでいた。
何故なら、男は女を切実な欲求から欲しいと想って女に近づいてゆくのだが、いつでも恋する女から、得体の知れないヤバいものが発せられているからだった。
それはすべて、「まあ大丈夫やろう。」と想えるヤバさでは到底なく、拷問の苦痛が引っ切り無しに永遠につづいてゆく無間地獄に落ちると感じる感覚であり、それを感じながら、身も心も震えながら、勃起して女を抱くなんてことができるわけもなかったのである。
女はときに、男に向かって蛇のような冷たい目で言った。
「このふにゃちん野郎が。おまえのような愚か者はだれをも愛せないだろう。」
男はその度、女にアラム語聖書を見せ、こう言った。
「《狡猾な人は悪を見て隠れるが、愚か者はそのそばを通り過ぎ、損失を被った。》この狡猾な男とはまさしくわたしのことなのです。わたしは、わたしの全身で感じる悪(危害)を優れた能力によって感知し、それから隠れる必要があるのです。わたしは、それを避けて通らないとき、最早、わたしは堪えられないであろう。即ち、堪え切れず、死ぬだろう。わたしは、あなたを心から愛しています。だが、その途轍もないヤバさを発しているあなたを抱いたとき、わたしは死ぬだろうから、わたしが死んだら、どうだというのですか。わたしは死ぬべきだと仰るのですか。わたしは愛するあなたを抱いた瞬間に死ぬべき存在として、今生きていて、この地上に生まれてきたのですか。あなたはそう言いたいのですか。あなたこそ、わたしを愛しているなら、何故わたしのこのどうすることもできない悲しみと苦しみを理解しようとはしてくれないのですか。愛するあなたからそんなことを言われたわたしは一層のことあなたを今抱いて、拒まれても無理に犯して、それで死んでしまえる方が幸せなのかもしれませんが、しかし此処に於いて深刻にならねばならないのは、わたしは死ねるのかどうか、わからないということなのです。死ねるならば、まあ楽なのでしょうね。しかし、その行為は神に背いているのです。それは自殺行為に他なりません。わたしはただ、わたしの神に背きたくはないのです。わたしがわたしの神に背くことは、絶対にあってはならないのです。だいたい、あなたがあなたの神に背いていないならば、あなたは何故そんなヤバい何かを発しているのですか。」
すると女は、しくしくと泣き出して言った。
「おお、主よ。どうかわたしを御救い下さい。わたしは何故、じぶんが悪を発しているのかわからないのです。こないだ、病院で脳の検査をしたのです。すると無数の寄生虫がわたしの脳に寄生していることがわかりました。しかし、ただそれだけなのです。わたしのすべての行動、思考を、その寄生虫たちが操っているのだと考えられますが、たったそれだけなのです。わたしは何故、じぶんが悪を発さなければならないか、わたしは知らないのです。」
男は、すかさず低く威厳のある声で女に言った。
「去りなさい。悪霊よ。」
女は悲しみのあまり、沈黙し、静かで純真な眼差しを男に向けていた。
全力で、媚びを売る眼だった。
男は欲情した。女を哀れに想った。激しく勃起した男根を今すぐ女にしゃぶらせて女のあたたかい口の子宮へ射精したかった。
女は女特有の卑しさといやらしさで、それを感じ取って男の股間に右手を伸ばそうとした。
女の細く滑らかな指のあいだの、その四つの股が、じぶんの男根を懇願し、開いた。
その瞬間、男のその聳(そそ)り立つ肉の剣が四つに分かれ、女の四つの股に伸びて行って突き刺さった。
その剣は、すべて蛇状の頭が生えていたが、眼は退化しており、四つの膣のなかへ身をくねらせながら滑り込ませ、すべての蛇頭は奥まで突いて内側から女の乳房を求め始めた。
男は女の右の腕の付け根である胸鎖関節にじぶんの右手を当てて言った。
「最早、あなたの右腕は手遅れです。切断しなければならないだろう。」
だが女は男の四つの蛇に突かれて痙攣しながら白目を剥いて涎を垂れ流し、身を激しく反らせ、ゾンビのように恐ろしい声で呻き始めた。
男は、じぶんの内なる神に祈った。
「おお、神よ。なにが起きているのですか。わたしはどうすればこの女を助けることができるのですか。どうすれば女は根源的に救われるというのですか。何故、このようなことになるまで、人は気づかないのですか。何故、すべては蛇に支配されねばならないのですか。このちいさな寄生する蛇と、我々の淵源にどのような関りがあるのですか。何故、蛇はいつでも狡猾で思慮深く、利口であるのに比して、人間は何時の世もばかでまぬけで足りないやつで愚人で愚弄(ぐろう)される[もてあそばれる]阿呆(あほ)なのですか。何故、人類は此処まで簡単に単純に寄生される(操られる)のですか。」
男は、女を愛するが故、その腕を切断することを躊躇っていた。
すると、女の手の四つ又は、男の四つの剣で根元まで裂け、その五つに裂けた長い肉の腕が男の四つの剣に身をそれぞれ絡ませ、巻きついて五つの女の腕の蛇と四つの男の剣(根)の蛇は交尾をし始めた。
それは恰も、九つの蛇が、互いに喰い合い、支配し合おうとする姿に観えたが、そのとき、天から神の声が男に降りてきて、こう言った。

「あなたは又、yòu(陽)であるから、その女を尹(yǐn,陰,統治)しなさい。奴(ヌ,ぬ,奴隷)は再び、あなたのめ(女,奴,わたし)となり、又、あなたの右手(又)となり、最後にはム(眩暈)となるのです。」



















Leon Vynehall - Farewell! Magnus Gabbro

























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