いやあ、凄いのを観せていただきました。
この当時はまだ武士道など確率されていませんから、武士たちはみな欲得づくでの行動なわけです。
自分たちの経済基盤である所領を安堵してもらいたい。平氏がそれをやってくれないなら、もう一方の武家の棟梁である源氏を神輿に担ごう。それで源頼朝(大泉洋)が選ばれた。
でもその頼朝がイマイチ信頼できない。ならば神輿を変えちまおう。それが今回の謀反なわけですね。
『仁義なき戦い』ですよ、松方弘樹のセリフ。「あんたぁワシらが担いどる神輿じゃないの。神輿が勝手に歩ける言うんなら歩いてみいや!おぉ!」
でも、ただの神輿では収まらなかったのが頼朝なわけです。そうしてそれが、上総介広常の「死」に繋がる。
ある程度歴史を知っている人なら、上総介が斬殺されるのは知ってるわけです。問題はどのようにして斬られるのか、
それが、ドラマとしての山場。
なるほど、こう来たか!
やられました!もう、お見事という他ないです。
上総介を演じた佐藤浩市さんの、あの「死に顔」ね。なんでオレが!?と、わけがわからないまま死んでいく切なさ。それをただ見つめるしかない北条義時(小栗旬)の苦しさ、辛さ。
頼朝だって本当は辛いんです。でも舐められたら終わり、すぐに足を掬われる。そんな苛烈な権力争いに勝ち残るために非情で残酷な決断を下していく。
上総介はそのためのサクリファイス。
恐ろしい。まさに「仁義なき戦い」。
善児(梶原善)、また出てきましたね。この男が出てくると必ず誰かが死ぬ。必殺仕事人というより、まるで死神だ。
なにか、色々な伏線が張られた回のような気もしますね。ただの神輿であることを拒んだ頼朝ですが、その頼朝も後々不審な死を遂げることになる。もはや神輿の用をなさなくなった頼朝を、北条氏が「捨てた」とも考えられ、その死にもやはり、
善児が関わるのだろうか?
また梶原景時(中村獅童)も頼朝の死後追放され、所領に戻る途上で死に至る。
ここにも善児が?
あるいはまた、義経(菅田将暉)の死にも?
ああ、なんてこった!
「死を捲く男」善児の登場に、注目。
一方、政子(小池栄子)が御家人たちに慕われていく様子が描かれ、後の「尼将軍」誕生の伏線となっていることも見どころだし、上総介の死と対になるようにして、義時に長男が生まれますね。後の北条泰時です。
北条泰時はかの「御成敗式目」を制定した人物。「御成敗式目」は武家による初の法令集。武家を統率するための法令を編纂できるほどの権力を、北条氏が持つことになる、その象徴的な人物が、上総介の死と対をなすようにして生まれるという。
北条氏の権力の源は、上総介の死にある。
いやあ、凄すぎる、見事すぎる展開でした。
まさに、「神回」。
この上総介の役を佐藤浩市氏に振った三谷幸喜氏の慧眼には敬服します。またこの難しい癖のある役を見事に演じきった佐藤浩市氏には、称賛以外言葉がありません。
歴代大河ドラマ史上、最高に悲惨な「死にざま」、最高に悲しい「死に顔」でした。あれは生涯忘れられません。
佐藤浩市さん、お疲れさまでした!
今後のドラマ展開のすべての大元が、この回に凝縮されている。とても重要な回でした。見ごたえ最高でした。
改めて思う。このドラマ
凄えわ。
ありがとうございました。