続きでーす。
第7位
『山桜』2008年公開
監督:篠原哲雄
全編ほぼ静かな映画。登場人物たちがあまり喋らない。喋らないけど、でも、
なにを思っているのか、ちゃんと観客に伝わるような作りになっているところが、良いです。
主人公を演じる田中麗奈のあの「目」ね。あの目だけで思いを表現していく素晴らしさ。少年隊ヒガシ演じる手塚某への仄かな思い。でもその思いを口に出すことは決してない。
一方のヒガシは、ある行動を起こすことを決断するのですが、その決意を口に出すこともない。でも観客には、その決断に至る経緯がすべてわかる、理解できるように作られているんですね。
「以心伝心」日本の美学を映画というかたちで見事に表した傑作!最近の時代劇は「喋り過ぎ」な面があるように思います。ここで喋っちゃうかー、みたいな。あれってとても残念なんですよね。喋らせないまま行けよ!と思ってしまう。
まあ、私の個人的な趣味の感覚ですけどね。
そんな私の趣味に、見事に合致した作品でした。名作です。
第6位
『幕が上がる』2015年公開
監督:本広克行
女子高生が主人公の青春映画といえば、大概イケメン男子が出てきて恋愛沙汰がどうのこうのとなっていくのが定番なのでしょうね、よく知らんけど。
でもこの作品には、恋愛要素は皆無。ももクロ演じる高校演劇に打ち込む女子高生たちの青春を、恋愛要素全くなしに描き切った、ど真ん中の青春映画であり、アイドル映画に仕上がっています。お見事です。
恋愛なんかなくったって、女子高生の青春は描けるんですよ。演劇に賭ける青春、熱いです。とても美しいです。
映画全体としては、いわゆる「モノノフ」でなければわからないような内輪ネタがあったりして、モノノフ以外の観客にはわかりづらい部分もあったでしょう。でもももクロを単にアイドルではなく「役者」として使っているところに、私は大いなる好感を覚えました。
アイドルではないといいましたが、エンディング・タイトルではアイドルに戻って『走れ!』を歌い踊り、出演者たちもそれに合わせておどけて見せる。これは、あの大林宜彦監督、原田知世主演によるアイドル映画の金字塔『時をかける少女』へのオマージュなんです。それがわかっているのといないのとでは、感想が違ってくると思いますね。
結果として青春映画としてだけではなく、アイドル映画としても良く出来た映画だと思います。モノノフとしてだけではなく、一映画ファンとして、おススメです。
第5位
『たそがれ清兵衛』2002年公開
監督:山田洋次
なんかね、この映画を「サラリーマンの悲哀・悲劇」として捉えた方が多かったように聞いていますが、私はそれは違うと思う。
真田広之演じる主人公は、名もなく貧しいささやかな人生を生き切った。藩のため家族のため、愛する者のため戦って散った、立派な人。人生を全うしたという意味で、これはハッピー・エンドな映画なのですよ。
真田広之と田中泯との壮絶な殺陣シーンなど、見どころは色々ありますし、それもまた素晴らしい。でもそれとともに、世界の片隅で誰にもその名を知られることなく、自らの生を全うした一人の男のささやかな人生に、思いを寄せていただければ幸いですね。
どんなに目立たない人。知らない人でも、その人なりの物語がある。みんなそれぞれの人生を演じる
主人公です。
今回はここまで。