＜前節からの変更＞
ヴェルディ＝センターバックの平を新人・谷口へと代える。また得点源の小池がベンチスタートで、代わりに右ウイングに入ったのは新井。控えにはバスケス・バイロンがJ初のベンチ入り。
栃木＝左ウイングバックの福森がベンチからも外れ、スタメンに入ったのは森。その他は不動。控えでは、GKを藤田から新人・青島へと入れ替え。
言わずと知れた（？）、前年まで「ストーミング」スタイルを貫いてきた栃木。
今季は新たに就任した時崎悠監督の下で、プレッシングをさらに進化させたサッカーを目指しているとの事です。
放送席でも語られていた、「ハイブリッド・栃木」というスローガンらしきワード。（なお、栃木はクラブスローガンを掲げないスタイル）
前年はJ3の福島の指揮を執った時崎氏。
その成績を評価され、折りしも田坂和昭氏が退任した栃木の招聘を受け。
しかしこれで福島に続き、田坂氏が監督を務めた後のチームの指揮を執る事となったのは運命的なものを感じます。（ちなみに福島では、間に松田岳夫氏を挟む）
自身と共に助っ人トカチも移籍を果たすなど、そのスタイルを早急にチームに落とし込まんとする努力が垣間見えます。
3－4－2－1のフォーメーションながら、しっかりと守備ブロックを構築するのでは無く、1トップ2シャドーの果敢なプレスから始められるディフェンス。
その成果は、ポゼッションに長けたヴェルディ相手に存分に発揮されたものの、それが表れる前に冷水をぶっ掛けられる事に。
ファーストシュートこそ、前半2分に敵陣で森のカットから生んだ栃木。
トカチが左サイドから細かなカットインでエリア内左を突き、切り返しからシュート。（ブロック）
これは幸先良いと思われた、直後の3分でした。
CBの馬場が一気に裏へロングパスを送ったヴェルディ、これをクリアに入った栃木・黒﨑はGKへのバックパスを選択。
しかし黒﨑のヘッドは中途半端な距離でエリア内へと落ち、走り込むのを止めなかった杉本の右足により、GK川田が抑える前に押し込まれてしまい。
いきなりといえる失点で、窮地に立たされる事となりました。
先制したヴェルディは、抜擢された新人・谷口のプレーが光り。
CBというポジションは経験が不可欠であり、さらにパートナーも若い馬場とあり、素人目には最終ラインでの苦戦が予想される布陣。
しかし立ち上がりから的確なカバーで栃木の攻撃を切る、ビルドアップで巧みな縦パスを入れてプレスをかわす等、新人とは思えない落ち着き払ったプレーを魅せていきました。（一応前年に特別指定で在籍）
それでも10分頃から、ヴェルディは満足にボールを繋げない状況に陥り、栃木が好機を量産していく体勢に。
先制された事で、一層プレッシングにギアが入ったようでありました。
前節（1－0）こそ特異なスタイルである秋田が相手という事もあり、持ち味を発揮する場面は目立たなかった栃木。
しかしこの日は文字通り、果敢にヴェルディのボール保持を破壊しにかかっていきました。
15分にはヴェルディエリア内で、GK高木和からトカチがボールを奪ったものの、巧く収まらずにシュートは撃てず。
17分にはパスが審判に当たった事によるドロップボールから好機を作り、右サイドでのパス交換から西谷がダイレクトで裏へとミドルパス、これを走り込んで受けた瀬沼。
一旦クロスを入れ、ブロックされたボールを拾った瀬沼、そのままカットインでエリア内右からシュートするも枠を捉えられず。
押され気味となったヴェルディ、一旦はロングボール主体でのビルドアップを余儀なくされたものの、迎えた25分。
GK高木和からショートパスを繋ぎ、谷口の縦パスを佐藤凌我がフリックしてプレスを掻い潜ると、石浦が右ハーフレーンをドリブルで前進。
そしてエリア内へラストパスを送り、カットに入られたものの、こぼれ球に走り込んだ梶川がシュート。
ゴール右へと突き刺さり、劣勢の中で大きな追加点を挙げたヴェルディ。
それでも栃木のハイプレスは止む事無く、反撃の1点を狙いにいきます。
28分にはエリア手前で再びトカチがボールを奪い、エリア内右へと切り込んでシュートを放つも枠を捉えられず。
31分には中盤で小堀がパスカットし、拾ったトカチがドリブルでエリア内を突いたものの、奪われて撃てず。
惜しい局面は作るも、後一歩でゴールを奪えません。
定型（2CB＋アンカー）ではボールを運べないと判断したヴェルディは、以降右サイドバックの山越が中央へ絞り、3人の最終ラインによるビルドアップの体勢を取り始め。
これでマイボールの時間を確保すると、既に2点リードという優位性が光ります。
それでも38分には馬場がバックパスをミスし、直接コーナーを与えてしまうなど栃木の脅威は消えていない風でしたが。
43分、栃木のフリーキックの流れから、ウイングが入れ替わった（新井が左に回り杉本が右へ）状態のヴェルディ。
敵陣で新井がボールカットしてのショートカウンターで、佐藤凌とのスイッチで前進した新井、中央へのラストパスに石浦が合わせシュート。
GK川田にセーブされるも右サイドで杉本が拾うと、中央→左へとパスを繋いで再度新井に渡り、カットインの姿勢からシュート。
しかしこれもGK川田に横っ飛びでセーブされ、3点目は奪えず。
この日は小池の代役という事で右WGでのスタメンでしたが、やはり左でのプレーが脅威になり得る新井。
結局2－0のまま前半を終え、ハーフタイムでの交代は無く迎えた後半。
相も変わらず敢行される栃木のハイプレス、いきなりの後半1分に2度、それぞれ西谷・鈴木が敵陣でボール奪取して好機を作ります。（いずれもシュートは撃てず）
それでもビハインド故、ボールを持たされる状況を作られる栃木。
流れの中からの好機では3分に中央CBのカルロス・グティエレスからの攻撃で、右→中央→左へと渡ったのちの大森の前進から、森が左からクロス。
クリアされたのち逆から黒﨑が再度クロス、ファーに流れた所を森が折り返し、クリアされたボールを拾った佐藤祥がミドルシュート。（枠外）
ショートカウンターと最終ラインからの組み立てを平行させ、ゴールを狙いにいきます。
再びの劣勢を迎えたヴェルディ、9分に先んじて選手交代。
杉本・佐藤凌→小池・河村へと2枚替え、新井が右WG→左WGへと回ります。
その後は持ち味のパスワークでボール保持、敵陣に持ち込んだのち最終ラインに戻して作り直し、というシーンを作り落ち着きを取り戻していき。
反撃ペースを保ちたい栃木も、14分に交代を敢行。
小堀・瀬沼→谷内田・宮崎へと2枚替え。
その後の16分、トカチがボール奪取からドリブルで切り込み、右へのパスを受けた谷内田が新井に反則を受け。
エリアからすぐ手前での直接FKを得、谷内田が直接シュートを狙ったものの、壁を直撃してゴールは奪えずに終わり。
19分には再度ドロップボールからの好機、右サイド奥から谷内田のクロスが上がると、トカチが強引に合わせヘディングシュートを放ちましたが枠外に。
プレッシング・ボール運び・フィニッシュに奮戦したトカチでしたが、これが最後の見せ場となり、22分に植田へと交代して退きます。
前線3人が交代選手（1トップに宮崎、シャドーに谷内田・植田）となり、フレッシュさを加えた栃木。
26分に植田が左サイド深めでボール奪取に成功しますが、すかさず上げたクロスはシュートに結び付かず。
すると直後の27分には逆にヴェルディの好機となり、右サイドでの攻めから河村がエリア内右へとスルーパスを送り、走り込んだ小池からクロス。
逆サイドへ流れるも、拾った新井がエリア内左奥へと切り込んで再度クロスが入り、ファーで収めた小池がシュートするもGK川田がセーブ。
続く28分にも深澤のシュートが栃木ゴールを脅かし（上へ外れる）たヴェルディ。
1点を目指すと共に、これ以上の失点は避けなければならない栃木。
29分には森が足を攣らせてしまうなど、ハイプレスの代償も姿を現し始めます。
どちらに針が振れるかが勝負の分かれ目でしたが、サッカーの神はヴェルディサイドに微笑みます。
左CKを得た31分、キッカー梶川がニアにクロスを上げると、山越が跳んだその奥で河村が合わせヘディングシュート。
トリックプレーのような形に栃木ディフェンスは成す術無く、ヴェルディの3点目を告げるゴールが齎されました。
失点直後に最後のカードを切った栃木。（森・佐藤祥→矢野・大島）
どうやらフォーメーションも弄り、4－4－2へとシフトしたようでありました。
２トップに矢野と宮崎、ボランチに西谷と植田、サイドハーフは右に大島・左に谷内田。
最終ラインは右から黒﨑・鈴木・グティエレス・大森となりましたが、その後再度アクシデントが。
37分に大森が足を攣らせてしまうと、そのまま担架でピッチ外に運ばれる事態となってしまい。
これで暫く10人での戦いを余儀なくされた栃木。
3分後のヴェルディのCKの場面で何とか復帰した大森でしたが、以降は足に負担のかかるSBを務められず、FWに回る事となり。
代わりの左SBには大島が回り、矢野が右SHに回るというスクランブル（といっても前年までに両名経験していますが）を強いられました。
一方、スコア的に余裕が生まれたヴェルディは37分に3枚替え。
石浦・梶川・谷口→バイロン・阿野・加藤へと交代します。
初のベンチ入りを果たしたバイロン、これがJリーグデビューとなりました。
アクシデントも絡みすっかり勢いを失った栃木、好機は作るものの、フィニッシュに辿り着く事は無く。
それを尻目に、ヴェルディは43分に遅延行為で深澤がイエローを貰う（反則後ボールを蹴った）ミソが付いたものの、終盤にあわや4点目かという展開に持ち込みます。
アディショナルタイム、投入されたバイロンの右コーナーでのキープも交えつつ、ボールを握って試合を進めるヴェルディ。
加藤のミドルパスを右サイドで受けた河村、先程のように小池を走らせるスルーパスをエリア内へ送り、シュートを放った小池。
しかしポストを直撃してしまいゴールならずと、前年トップスコアラーの小池の出だしは苦いものとなったようで。
結局3－0でヴェルディの勝利。
スコア的には完勝でしたが、栃木が好機をモノにしていれば……という、お互いの持ち味が光った好試合でありました。
