南アフリカ出身の義足のスプリンター、オスカー・ピストリウスさんの五輪出場問題がちょっとした論議になっている。国際陸連はカーボンファイバー製の義足は、反発力を高める「道具」にあたり、健常者のレースでは使用できないと認定した。
ピストリウスさんには気の毒な裁定になったが、結論は妥当だろう。とはいいつつ、義足で疾走する彼の映像を見ると、心が痛む。彼が五輪で健常者と一緒に走ることが、多くの身障者に勇気を与えることも間違いないだろう。
身障者が健常者と同じ土俵で戦いたいと願うのは当然だ。しかし、そこにはいくつかの問題もある。この点は後日機会があったら触れたい。
今日言いたいのは、スポーツの公平性である。ハンドボールアジア予選のえこひいきジャッジが大問題になっているように、公平性を欠いては競技が成り立たない。反面、競技スポーツは公平性の対極にあるともいえる。
トップアスリートは金銭的に優遇されるのはもちろん、用具も最先端の技術を駆使したものが提供される。発展途上国や一流以下の選手は、一世代前のアイテムで我慢しなければならない。戦う前から勝負は見えている。
ここで気をつけなければならないのは、シューズやウエアはどんなに工夫を凝らそうが、マイナスを減らす要因でしかないという点だ。スイミングウエア自体が推進力を増すことはあり得ない。ところが、ピストリウスさんのブレードは違う。反発係数が高く、速度が出やすい。これはやはり装具ではなく道具だ。
極論になるが、これが認められるとこの道具を使いたいがために脚を切断するアスリートが現れかねない。五輪の金メダルにはそれぐらいの魔力が潜んでいる。ドーピングの横行はその一例に過ぎない。「物理的ドーピング」を拒絶する意味でも、こうした道具は認めるべきではあるまい。
それにしても、と思う。東京五輪の陸上男子100メートルを10秒0で制したボブ・ヘイズのことだ。かれは20センチ近いピンの付いたスパイクで、焼成レンガ(アンツーカー)のレーンを削りながら走った。現代の高速トラックは、高反発でスパイクのピンはごく短い。これで記録を比較することは意味がない。
シンダー、アンツーカー、タータン、硬質ウレタン、走ったトラックの素材に応じた世界記録なり日本記録があっていいのではないか。
国際陸連は今回の提起を記録とアイテムの問題と捉え、むやみな高速化や演出過多を反省すべきだ。
ピストリウスさんには気の毒な裁定になったが、結論は妥当だろう。とはいいつつ、義足で疾走する彼の映像を見ると、心が痛む。彼が五輪で健常者と一緒に走ることが、多くの身障者に勇気を与えることも間違いないだろう。
身障者が健常者と同じ土俵で戦いたいと願うのは当然だ。しかし、そこにはいくつかの問題もある。この点は後日機会があったら触れたい。
今日言いたいのは、スポーツの公平性である。ハンドボールアジア予選のえこひいきジャッジが大問題になっているように、公平性を欠いては競技が成り立たない。反面、競技スポーツは公平性の対極にあるともいえる。
トップアスリートは金銭的に優遇されるのはもちろん、用具も最先端の技術を駆使したものが提供される。発展途上国や一流以下の選手は、一世代前のアイテムで我慢しなければならない。戦う前から勝負は見えている。
ここで気をつけなければならないのは、シューズやウエアはどんなに工夫を凝らそうが、マイナスを減らす要因でしかないという点だ。スイミングウエア自体が推進力を増すことはあり得ない。ところが、ピストリウスさんのブレードは違う。反発係数が高く、速度が出やすい。これはやはり装具ではなく道具だ。
極論になるが、これが認められるとこの道具を使いたいがために脚を切断するアスリートが現れかねない。五輪の金メダルにはそれぐらいの魔力が潜んでいる。ドーピングの横行はその一例に過ぎない。「物理的ドーピング」を拒絶する意味でも、こうした道具は認めるべきではあるまい。
それにしても、と思う。東京五輪の陸上男子100メートルを10秒0で制したボブ・ヘイズのことだ。かれは20センチ近いピンの付いたスパイクで、焼成レンガ(アンツーカー)のレーンを削りながら走った。現代の高速トラックは、高反発でスパイクのピンはごく短い。これで記録を比較することは意味がない。
シンダー、アンツーカー、タータン、硬質ウレタン、走ったトラックの素材に応じた世界記録なり日本記録があっていいのではないか。
国際陸連は今回の提起を記録とアイテムの問題と捉え、むやみな高速化や演出過多を反省すべきだ。