酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

問題は量刑より有罪無罪の評決だ

2008-04-15 05:24:11 | Weblog
 来年5月21日から裁判員制度が始まる。実際に裁判員が加わった公判は7月ごろから始まりそうだという。

 先だっての最高裁の世論調査をみても、一年後の実施は無理だ。裁判員として呼び出されることについて、ほとんどの人が「仕方がないから参加する」と答えている。これで十分な審理が担保できるのだろうか。

 また、多くの人が「人を裁く資格があるか」と自問している。こうした真摯な声に司法はきちんと答えなくてはいけない。さるお方も「罪なき者、まず石を擲て」とおっしゃっているではないか。

 それなのに、裁判所のやっていることはどうだろう。14日、東京地裁は、五つのグループに同じ事件の判決を出させ、量刑がどう違うかを比較する模擬裁判を行った。量刑にどの程度の差が生じるか検証する初の試みだという(毎日新聞)。

 以下同紙
   被告人質問や証人尋問などは共通の法廷で行われ、
   検察側は懲役6年を求刑。弁護側は起訴事実を認
   め、夫の日常的な家庭内暴力(DV)などを挙げ
   て情状酌量を求めた。この後、5グループは別々
   の会議室で約3時間、量刑を評議した。

   各グループは裁判官3人と裁判員役6人で構成。
   20~70代の会社員、自営業、主婦らが裁判
   員役を務めた。評議では、過去の類似事件の量
   刑データを一覧にした裁判所作成の資料を参考
   にしながら、議論を進めた。その結果、4グル
   ープが懲役3年、執行猶予5年(うち一つが保
   護観察付き)、残る1グループが懲役2年6月
   の実刑だった。

   評議に参加した登石郁朗裁判長は「もっとばら
   ばらになると思ったが意外」、
   角田正紀裁判長は「突き詰めた議論をすると、
   ある程度、結論が集約されるのでは」と話した。
   裁判員役の会社員は「(人を裁くのは)かなり
   不安でした。もっと大きな事件だと(判断に)
   二の足を踏むかもしれない」と感想を語った。

 確かに量刑も裁判の重要な要素だ。だが、最初に評決を行うのは有罪か無罪かについてである。被告が罪を認めている案件は、比較的短時間で済むかもしれない。

 問題は否認事件である。行為に違法性があっても可罰性を巡って争いになるケースも多い。物的証拠がなく状況証拠を積み重ねたケースはどうか。裁判員の心証形成に検察官、弁護人の「演技」はどう影響するか。

 これらの前提がクリアされて有罪、無罪が決まる。まず、ここをきっちり検証すべきだ。

 この日の模擬裁判について某裁判官がテレビで「大体このへんって相場もありますから」みたいなコメントをしていた。裁判官の「常識」に基づく相場が問題だというので裁判員制度が始まるのではなかったか。裁判員制度に切り替わっても、「合議は職業裁判官がリードするので間違いない」、では何のために新制度になるのか分からない。
コメント
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