北京五輪まで後100日を切った。代表に選ばれたアスリートたちにとっては、これからの3カ月でどこまで調子を上げられるかがポイントになる。
日本がメダルを狙える数少ない競技である競泳で、おかしな動きが始まっている。世界記録を連発しているスピード社製水着着用問題である。
日本選手が着用する水着は、以前はミズノ、アシックス、デサントが順番に指名されていたが、数大会前から3社製ならどこを選んでもいい方式に変わった。
アイテムのプール制自体を問題視する論議もある。ただ、オフィシャルサプライヤー契約は競技団体の貴重な収入源であり、各国とも自国のメーカーを優先する図式に変わりはない。
スピード社は近年までミズノと提携関係にあり、日本代表も五輪で着ることができた。この提携が解消されたことが騒動の発端である。「スピードを着ないと勝てない」。選手に疑心暗鬼が広がっている。NTCでの合宿でスピードの水着をテストしたところ、軒並み100㍍で0・7秒ほどタイムが伸びたという。
アスリートになればなるほど用具にはこだわる。自分の力を最も発揮できるアイテムを選ぶのは当然である。
かつて、カール・ルイスは「10秒間もてばいい。とにかく軽いスパイクを作ってくれ」とミズノに特注品を開発させた。強い選手がいい用具を使用する。不公平なようだが、選手の特権でもある。悔しかったら強くなれということだ。
水着やジャンプのスーツをスパイクと同列に扱うわけにはいかない。浮力や抵抗に大きな影響を与えるからだ。科学的なテストを行い、異様に記録が出やすい機能や構造だったら規制すべきだ。用具の進化を否定する気はないが、マンパワーの補助具であるべきだ。
日本選手にもスピード社製を認めるべきだとの声が高まっている。選手のメンタル面を考えれば、分からなくもない。一ついえることは、五輪は選手が主役だということだ。アイテムに焦点が当たるのでは選手がかわいそうだ。強い選手が勝つ五輪でありたい。
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