「いかかですか…、よくお似合いですわ。」
ユジンは鏡の中の自分の姿をみつめた。
〈お義母様、気に入ってくださるかしら…〉
「お気をつけて。」
ユジンは店員に見送られて美容室を出た。
と、その時携帯が鳴る。
「ごめん、遅くなって。今美容室を出たところよ。
もう少しでそっちへ着くわ。」
携帯を握ったまま走り出そうとしたユジンの頬に冷たいものが触れた。
白いものが落ちてきていた。
初雪だ。
思わず歩を止めて空を見上げる。
〈いいことがあるのかしら。祝福の初雪?〉
明るい気持ちで、ユジンは婚約式の会場へと急いだ。
「サンヒョク!お待たせ。」
「ユジン、間に合ってよかったよ。」
式場には、サンヒョクの両親、ユジンの母とヒジンの他司会を頼んであるヨングクやジンスクもすでに到着していた。
「お義父様、お義母様、遅くなって申し訳ありません。」
「挨拶は後でいいわ。
もうそろそろお客様がおいでになるから、早く着替えておいでなさい。」
「はい、では失礼いたします。」
ユジンが控え室へと行くのを見送りながらチヨンがサンヒョクにつぶやいた。
「ユジンは今日も仕事だったの?婚約式なのに。」
「今大きな仕事を控えて忙しいんだよ。
僕と違って独立して仲間と事務所を構えているから、そうそう抜けるわけにはいかないんだ。」
「それじゃ、結婚したからといって家事に専念できそうにないわねぇ。あなたはそれでいいの?」
「急に仕事を辞めるのは無理だろうけれど、ちゃんと後任者を探して徐々に仕事を任せていけばいいさ。
それは二人でこれから相談してきちんとするから、母さんは心配しないで。」
「おぉ、ユジン。綺麗だね。」
ユジンの美しいチマ・チョゴリ姿にジヌは目をしばたいた。
「ヒョンスに見せたかったですね、お義母さん。
今までのご苦労が報われましたね。」
「本当に、何もかもサンヒョクやお義父様お義母様のお陰でございます。ありがとうございます。」ギョンヒはジヌに深々と頭を下げた。
親戚のほとんどいないチョン家はギョンヒとヒジンだけであったが、キム家は親戚をはじめジヌの仕事関係の大学教授やサンヒョクの職場の上司などそうそうたる招待客が訪れた。
その中で臆することなく、サンヒョクと共に堂々と立ち居振舞うユジンを見て、チヨンは満足そうに頷いていた。
式はヨングクの司会進行で滞りなく終わった。
「サンヒョク、ユジン、お疲れ様。
ユジン、これで今日からあなたはキム家の嫁です。
サンヒョクに恥をかかせぬよう、キム家に傷を付けぬよう、しっかり頼みますよ。
今は仕事が忙しいようだけれど、少し落ち着いたら花嫁修行をしてもらわなくてはね。
家のしきたりやお付き合いなどいろいろ覚えなければいけないことがあるわ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「まあ、まあ、母さん。今ようやく婚約式が終わったばかりだ。
あわてる事はない。だんだんに覚えていけばいいじゃないか。」
「もちろんですわ。一度に覚えられることではありませんもの。
でも、ユジンなら大丈夫ですわ。今日も立派でしたもの。
正直、見直しました。
高校生のころのあなたはちょっとお転婆で心配でしたけれど、独立して仕事を始めたせいか、ずいぶんしっかりしたわね、ユジン。」
チヨンがいつにも増して機嫌が良いことに、ギョンヒはほっとした。
「そうでしょうか。親としてはいつまでも心配なばかりで。
どうぞよろしくお願いいたします。」
“高校生のころは…”
その言葉に、にこやかに会話する親達の間で、ユジンは一人青ざめる思いがした。
〈私が、ジュンサンを好きなの…〉
ふいに、あのときの自分の言葉が頭をよぎった。
〈なぜ今、ジュンサンのことなど…
私はサンヒョクの妻になるのよ…
私の決心は間違っていたの…?
初雪は私達への祝福ではなかったの…?
初雪…
昼間見かけた、あの人…
ジュンサンに似ていた…?〉
頭から血の気が引いていった。
ユジンはその場に倒れた。
「気がついた?気分はどう?大丈夫?
ついさっきサンヒョクは帰ったわ。
仕事のしすぎじゃないかって、心配していたわよ。」
「ごめんなさい、母さん。心配かけて。
もう大丈夫よ。
緊張して少し疲れただけよ。たいしたことはないわ。」
「顔色がまだ悪いわよ。
何か気になることがあるの?仕事?
まさか、サンヒョクとうまくいっていないの?」
「そんなわけないでしょ。」
ユジンは無理に笑顔を作った。
〈そんなわけないわ…そんなわけ…
私はいったいどうしちゃったの…?〉
ユジンは、無性にポラリスが見たかった。
ユジンは鏡の中の自分の姿をみつめた。
〈お義母様、気に入ってくださるかしら…〉
「お気をつけて。」
ユジンは店員に見送られて美容室を出た。
と、その時携帯が鳴る。
「ごめん、遅くなって。今美容室を出たところよ。
もう少しでそっちへ着くわ。」
携帯を握ったまま走り出そうとしたユジンの頬に冷たいものが触れた。
白いものが落ちてきていた。
初雪だ。
思わず歩を止めて空を見上げる。
〈いいことがあるのかしら。祝福の初雪?〉
明るい気持ちで、ユジンは婚約式の会場へと急いだ。
「サンヒョク!お待たせ。」
「ユジン、間に合ってよかったよ。」
式場には、サンヒョクの両親、ユジンの母とヒジンの他司会を頼んであるヨングクやジンスクもすでに到着していた。
「お義父様、お義母様、遅くなって申し訳ありません。」
「挨拶は後でいいわ。
もうそろそろお客様がおいでになるから、早く着替えておいでなさい。」
「はい、では失礼いたします。」
ユジンが控え室へと行くのを見送りながらチヨンがサンヒョクにつぶやいた。
「ユジンは今日も仕事だったの?婚約式なのに。」
「今大きな仕事を控えて忙しいんだよ。
僕と違って独立して仲間と事務所を構えているから、そうそう抜けるわけにはいかないんだ。」
「それじゃ、結婚したからといって家事に専念できそうにないわねぇ。あなたはそれでいいの?」
「急に仕事を辞めるのは無理だろうけれど、ちゃんと後任者を探して徐々に仕事を任せていけばいいさ。
それは二人でこれから相談してきちんとするから、母さんは心配しないで。」
「おぉ、ユジン。綺麗だね。」
ユジンの美しいチマ・チョゴリ姿にジヌは目をしばたいた。
「ヒョンスに見せたかったですね、お義母さん。
今までのご苦労が報われましたね。」
「本当に、何もかもサンヒョクやお義父様お義母様のお陰でございます。ありがとうございます。」ギョンヒはジヌに深々と頭を下げた。
親戚のほとんどいないチョン家はギョンヒとヒジンだけであったが、キム家は親戚をはじめジヌの仕事関係の大学教授やサンヒョクの職場の上司などそうそうたる招待客が訪れた。
その中で臆することなく、サンヒョクと共に堂々と立ち居振舞うユジンを見て、チヨンは満足そうに頷いていた。
式はヨングクの司会進行で滞りなく終わった。
「サンヒョク、ユジン、お疲れ様。
ユジン、これで今日からあなたはキム家の嫁です。
サンヒョクに恥をかかせぬよう、キム家に傷を付けぬよう、しっかり頼みますよ。
今は仕事が忙しいようだけれど、少し落ち着いたら花嫁修行をしてもらわなくてはね。
家のしきたりやお付き合いなどいろいろ覚えなければいけないことがあるわ。」
「はい、よろしくお願いします。」
「まあ、まあ、母さん。今ようやく婚約式が終わったばかりだ。
あわてる事はない。だんだんに覚えていけばいいじゃないか。」
「もちろんですわ。一度に覚えられることではありませんもの。
でも、ユジンなら大丈夫ですわ。今日も立派でしたもの。
正直、見直しました。
高校生のころのあなたはちょっとお転婆で心配でしたけれど、独立して仕事を始めたせいか、ずいぶんしっかりしたわね、ユジン。」
チヨンがいつにも増して機嫌が良いことに、ギョンヒはほっとした。
「そうでしょうか。親としてはいつまでも心配なばかりで。
どうぞよろしくお願いいたします。」
“高校生のころは…”
その言葉に、にこやかに会話する親達の間で、ユジンは一人青ざめる思いがした。
〈私が、ジュンサンを好きなの…〉
ふいに、あのときの自分の言葉が頭をよぎった。
〈なぜ今、ジュンサンのことなど…
私はサンヒョクの妻になるのよ…
私の決心は間違っていたの…?
初雪は私達への祝福ではなかったの…?
初雪…
昼間見かけた、あの人…
ジュンサンに似ていた…?〉
頭から血の気が引いていった。
ユジンはその場に倒れた。
「気がついた?気分はどう?大丈夫?
ついさっきサンヒョクは帰ったわ。
仕事のしすぎじゃないかって、心配していたわよ。」
「ごめんなさい、母さん。心配かけて。
もう大丈夫よ。
緊張して少し疲れただけよ。たいしたことはないわ。」
「顔色がまだ悪いわよ。
何か気になることがあるの?仕事?
まさか、サンヒョクとうまくいっていないの?」
「そんなわけないでしょ。」
ユジンは無理に笑顔を作った。
〈そんなわけないわ…そんなわけ…
私はいったいどうしちゃったの…?〉
ユジンは、無性にポラリスが見たかった。