評論家・元歴史学者
與那覇潤さん インタビュー抜粋
・ 「過剰可視化社会」の弊害とは
✨ 過剰可視化社会
とは「 これまで見えていなかったものまで
見えてしまう社会」
基本的にポジティブに捉えられてきたが、
見える化が進みすぎ
新しい問題や苦しむ人を生んでいる
✨ SNSのプロフィル欄に
自身のプライベートな要素を
載せる人が増えて久しい
私的な情報が可視化されすぎた状態に慣れた結果
見えすぎることに伴う副作用
「見えない」ものが持つ価値を
感じ取れなくなってはいないか
・ うつを経験して抱いた違和感
✨ 執筆の契機
「
ルッキズム」(外見至上主義)の広がり
2007年から地方の大学で教べんを (日本近現代史・歴史学者)
双極性障害に伴う重度のうつを体験。
休職を経て、17年には退職
3年ほど、
社会的な活動ができない時期が
✨ 症状が重い時は全く身動きがとれなかった
1年くらいたつと、“今、世の中はどうなってるのか”
ネットで調べられるように
✨ ダイバーシティ(多様性)を
掲げる流れが顕著に
病気や発達障がいのある人などを
応援するサイトが増えていた。
個人的には違和感が
サイトに出ている方々の多くが、
顔や実名を出し
満面の笑みで映っている
✨ 今、うつの体験をカミングアウト
文筆活動
病気が快方に向かい、
同じ境遇の人の中では恵まれた状態にいるからできる
✨ 病状が重い段階では、
公表し不特定多数の人に告げる
(可視化する)などできない
✨ 発達障がいなど、
マイノリティーの存在に光が当たることには、
大きな意義が
ただ、
ネットなどには映っていない
(見えない)人たちの存在にも想像を
「キラキラしたダイバーシティ」
ばかりが取り沙汰される
過剰可視化のマイナス面
・ “逆カミングアウト”のススメ
✨ カミングアウトする人が増えている
「私も同じです」と、つながりたいから
属性を隠さないと暮らせない社会はマズイ
進歩した面もある
対面での関係なら人間は本来つながれる
✨ デイケアに通っていた時、
他の患者さんに学歴や職業は一切伏せていた。
いわば“逆カミングアウト”
それでも、お互いをケアすることができた。
「歴史の研究者」
「大学教員」というタグを外しても、
自然に仲間としてコミュニケーションできる。
その体験は、とても新鮮
✨ ネットに可視化されている情報だけで、
相手の印象を埋め尽くしてしまうことは避けた方がいい。