紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

★63 令和米騒動

2024-11-17 05:58:21 | 「と・ある日のこと」2024年度


「えっとね、半俵(玄米30kg)14000円になったのよ」 
 いつも購入している農家のT氏が、ちょっとすまなそうな顔で答えた。
「えっ? 五割増額ってことね?」
 予想はしていたが、令和6年の米の収穫少し前に起きた米騒動が、一気に昨年の五割増の値段となってしまった。

今年米の収穫目前にして、小売業者の店頭から米が消えてしまった。少し麦製品などで融通を聞かせていたなら、間もなく新米が並ぶはずだったのに。マスコミの報道は、消費者に危機感を与えるような報道だったような気がする。もう少し我慢していれば新米が並ぶのに。きっと、これ幸いとして米の値段が引き上げられると思っていたが、やはり。それにしても、米農家の米価格の安さが、米作りを止める農家を多くしている。主食の米位は、国内で賄える収穫量にするべき政策が必要だろうと思う。

 振り返ってみれば、半俵12000円という時代もあったし、昨年は、半俵8000円であった。それにしても、店頭で購入するよりは安価でT氏家の美味しい米を食べられるのだから、有難いというべきなのかもしれない。

 米騒動の話から、現在独り暮らしをしているT氏の、愚痴ともいえる悩み事を聞かされた。以前の作品にも書いたことだが、家屋敷と田畑の行く末の心配。自分亡き後、家を継ぐ者がいなければ、屋敷は草ぼうぼうとなり、田畑も芳原化してしまうだろうと、想像するだけで辛くなるようだ。

「息子さん2人が良いように解決してくれると思うわ。もし、誰も継ぐ人が居なければ、私が貰ってあげるから。安心して」と、私が言うと、T氏は「アハハハハァ~」と、笑ってズッコケてしまった。



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★62 油断禁物

2024-11-11 17:17:33 | 「と・ある日のこと」2024年度

 
強盗団に入られたニュースがあった。闇サイトと言われた事件で、どうして狙われる対象になったのか? 互いに知らない者同士の強盗団が手荒い侵入方法で入ってくる。最近では「闇サイト」ではなく、「ホワイト○○」とのバイトがあるとか。そのようなことに興味を持った人は、よくよく考えて、人生を踏み外さないようにしてほしい。

 友人が長年金利の安い銀行に定期を積んでいたそうな。台所のリホーム代金にするため解約したが、銀行の店長が出てきて、チラシを見せて、「オレオレ詐欺」の忠告をしてくれたそうだ。そして、「この地区も狙われているのですよ。現金でお持ち帰りですけど、十分気を付けてくださいね」と言ったそうだ。

 我が家の固定電話にも、最近、「緊急ヘリ」の投資の誘いの電話があった。
「災害時や、病人とか乗せる緊急用のヘリがありますよね。災害時には、間に合わないほど要請があるそうです。そこで、民間の緊急ヘリの会社をつくるのですが、投資しませんか」と、言う。電話に出た私の一番の苦手なお金の話。使うのは大好きだが、貯めるのは苦手。そのような私が出た電話口のやり取りは、纏まらないのは当たり前の結果である。

 化粧品とか家屋のリホームとか、屋根の張替えや外壁の塗装とか、リサイクル品買い取りとか、様々な電話が来る。決まって金の絡まる話である。

それに私の場合、私の著書の名前を使って、新聞に公告を出さないかとの電話があったこともある。どこで私の本を知ったのか不明だが、心地よい言葉と、数人が入れ替わっての誘いであった。自分は大丈夫と思っていたのに、とても危うい話であった。

怖い話の渦巻いている世の中、自分をも含め、どなたも被害に遭いませんように。



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★61 人工股関節

2024-11-11 17:17:19 | 「と・ある日のこと」2024年度



 更衣室に常連客のTさんが入ってきた。もうレッスンが終わったみたいだ。少し赤らんだ顔を崩しながら、「あなた、どこも痛いところないのでしょ?」と、私に聞いてから、「わたしはね、左の股関節の手術をしたばかりなの。して良かったわ、痛みは全くなくて、動きも変わりはないし。でもね、今度は右が痛いのよ。また人工股関節に取り換えようと思って。二週間の入院は必要なんだけどね」と、続けた。Tさんは、様々な種目のダンスに挑戦している熱心な人だ。

人工股関節の手術をした知人は意外と多い。一人は、あるサークルの友。股関節そのものの病気で、両股関節の手術をしたと言っていた。歩く時の違和感は、そういえば、少し違うかもしれない。と、思う程度だった。もう一人は、やはりダンスを踊る背が高く競技を続けていたという女性。人工股関節に変えても、傍から見ただけでは違和感がないようだが、バックステップの時、以前より滑らかに踏み出せないと言っていた。それでも、頻度は落ちたが、踊りたいので時々ホールに遊びに来ていると言っていた。

 すごいなぁ、思うばかりだ。医学は何処まで進歩するのだろう? 一昔前には、歩くことが出来なくなる症状だっただろうに。

 Tさんは、着ている赤いラテンドレスの裾を翻してホールへ戻った。

 私は、お陰様で筋肉痛は時々あるが、数日で治る。仕事していた現役時代は腰痛に悩まされていたが。毎日が休日となった現在は、今のところ痛いところは、歯の治療と循環器科への定期通院をする程度。本当の健康体とは言い難いが、踊るには困らないでいる。

 ずいぶんと自分に甘くなった今、もう、無理の利かない年齢とも言える。細く長く、痛みのない毎日を重ねたいものだ。


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★60 楽しんだモノ勝ち

2024-10-27 06:11:10 | 「と・ある日のこと」2024年度


「北欧に行ってきたの」と、電話の向こうでNさんが言う。「もうね、行きたい所ややりたいことは、やることにしているの。いつ何時、また出来なくなるかもしれないもの」
大病と戦って治癒したNさん。いろいろな感情を押し殺したまま、全力で病と闘った数年。その間の焦りや苦しみは、まぁまぁの健康体で暮らせていた私には計り知れない。

 北欧の四か国を八泊で回ったそうだ。それに、少し前には、クルーズ船で、日本一周の旅を八日間でしたそうだ。
飛行機も船も苦手な私。絶対行かれない。地面に足が着いていないと安心できない。せいぜい、ダンスホールで踊るか、緑の中を散歩するか、車移動の旅行位が性に合っている。
「楽しんだモノ勝ちよ」と、Nさん。
「楽しんだモノ勝ち」・・・なるほどと思う。けれど、世の中には、手の届く楽しみさえ出来ないで苦しんでいる人もいる。

北欧四か国旅行は、有名なお城や博物館などを回ったらしい。一時体力が落ちていたNさんだったが、同行の皆さんに遅れることもなく行動できたそうだ。ヨーロッパは以前行ったことがあるので、北欧にしたそうだが、海外旅行は一度も行ったことのない私には、想像外の行動力だと感心する。

 日本一周のクルーズ船は、ダンス旅行で行く知り合いもいるが、外国籍の船で、ダンスが目的ではなかったそうだ。各地の港から上陸して、観光地を巡り、美味しいものを頂く。八日間の船旅は飽きなかったそうだ。
 Nさんの話を聞きながらわが身を振り返る。地上でしか生きられないような我が身。
「楽しんだモノ勝ち」という言葉と、人それぞれの楽しみ方の違いが面白い。さて、私は何をして楽しもうか?




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★59 カッコイイひと

2024-10-20 07:18:24 | 「と・ある日のこと」2024年度

 
と、ある土曜日。今日は1レッスンとダンスタイム2時間の楽しみの日。

車内は混んでいた。50分ほど立ったままの移動。乗換駅に着くと、いつもの乗換え電車の車内も混んでいる。カートを引いて、スカイツリーの見える窓側の中ほどのつり革に掴まって立っていた。車内アナウンスが、乗換駅構内での人身事故の影響で、車内が混んでいると、言った。いつもと違う年代層と混み具合が、連休前のレジャーなどのせいだろうとも思う。

 目前の座席の若い男性が、小声で「どうぞ」と、席を譲るというゼスチャアをした。「大丈夫です」と、私も小声。立ち上がるのを止めた男性は、二駅ほど過ぎた時立ち上がり、出入り口の方に移動した。私の目の前の席が空いた。もう降りるのだろうと思い、腰を下ろした私。ところが、男性は、席を立つことで、私に席を譲るつもりだったらしい。私は、会釈して感謝を表した。そして、そっと、その男性を観察する目になってしまった。

 年齢は二十代前半かしら? 身長は173cm位。緑色のTシャツにグレーのジィーンズの半パン、キャメル色の斜め掛けの大きめのバッグ。帽子はベージュの野球帽。黒のブーツの紐は茶色だった。ちょっと色白な顎に髭が薄っすらと。

 私の眼は傍から見たなら、どんな眼だったのだろう。きっと、あの男性は私の無神経な視線を感じていたかもしれない。ちょっとばかり恥ずかしくなった。

 レッスンは、スローホックストロット。一回踊ってから、ヒールターンの練習。動作は単純ではあるが、重心の載せ方や方向など、丁寧に教わる。基礎の出来ていない私だから、少しずつ直してもらうつもりでいる。



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