「アタシ、はっちゅうはちにもなったのに、じっとしていられないのよ。でね、昨日はこの階の自転車置き場をキレイにして、娘の所へ行く階段も掃除したのよ。高帚があれば都合がいいと思ってね、作ることにしたの。売っている高帚は、アタシの背丈より高くて使いにくいからね、思いついて竹箒を作ったのよ」と、八十八歳になる花ちゃんが電話の向こうで笑った。
「東京の世田谷で竹箒作る材料があるの?」と聞く、
「公団の奥の方まで行くと、木やあれこれ茂っている所にあるのよ」
「竹って言っても何竹なの?」
「真竹よ。実家の屋敷にもある真竹。背の低い竹を芯にして、あとは、笹の部分を使って作ったのよ」
なぁるほど。
花ちゃんの話を聞くと、私の御祖父さんも竹箒やら、座敷帚を作っていたことを思い出した。随分と昔のことだが、たまに故郷の暮らし方を思い出すことがある。
花ちゃんは、従妹でも元気な方で、日本舞踊やらカラオケやらを楽しんでいるらしい。ここ何年も顔を見ていないが、月一程度電話しあっている。花ちゃんは未だに故郷の訛りが出る。同郷ということもあって通じるのだが、「はっちゅうはち」とは、八十八のこと。暫く顔を見ていないが、娘さんと同じ都営団地で独り住まいだ。
「朝は、娘から電話がくるのよ。これから勤めに出ます。って。夜寝る段になってから、私の方から娘に、布団に入りました、寝ます。と、毎日電話連絡をしているのよ」と言う。
近くに居ても、老いてからの見守りは有難いだろう。まだ、自由気ままに過ごしている私でも、隣室に夫が居ても、二階に息子親子が居ても、どうなるかわからないのが現実。
花ちゃんの長寿を祈る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「と・ある日のこと」をお送りします。
日々の暮らしの中から、ちょっと心に引っかかった事を綴っています。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俳句・めいちゃところ
https://haikumodoki.livedoor.blog/
写真と俳句のブログです。
こちらもよろしくです。