「すみれ、どこへ行くのよ」
ポピー公園に向かって十字路を曲がった所で、後ろから久美の大きな声がした。振り返ると千秋と珠恵も一緒にこちらを見ている。すみれは、三人を無視して足を速めた。
「何か良いことでもあるの?」
と、千秋の声が追いかけてきた。
「あるわけないじゃん」
と、珠恵が叫んで三人が笑った。
すみれは駆けだした。と、同時に三人も追いかけ出す。靴音が乱れて迫ってくる。懸命に走った。暫く走って振り向くと三人との距離がさっきより離れていた。これなら追いつかれないですむと思ったが、ポピー公園に行っていることを知られないためには、行くのを止めにするしかない。千代と会えなくなるが、はっきりとした約束をしていたわけでもないから、今日は我慢しようと思った。
路地に走り込んで、また道をジグザグに方向を変えた。三人の靴音が途絶えた。すみれは一呼吸を入れて走ることを止めた。
前方のTの路を千代が横切るのが見えた。ポピー公園に向かっているのだろう。声を掛けようとした時、あの三人の声が左の方から聞こえてきた。
すみれは電柱の陰に身を隠した。
「どこへ行ったのかしら、最近すみれ、明るい顔をしているよね。なんか良いことでもあるのかしら」
「うん。そうだよね。私たちのことを無視しているよ、余裕って感じ」
「なんか、秘密があるのよ、きっと」
三人は話しながら千代に近づき、千代を避けるように追い越していった。
千代がシルバーカーを止めて立ち止まった。すみれは、三人が遠退くのを待った。
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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が始まります。
作者自身の体験が入り混じっています。
悲しかったり、寂しかったり苦しかったり、そのどれもが貴重なものだったと思える今日この頃。
人生って素晴らしいものですねぇ。
楽しんでお読みいただけると嬉しいです。
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