
と、ある日の朝6時前。私は、いつものように朝の庭を徘徊していた。自室からサンダルを履き、中庭をそぞろ行く。玄関前を横切り、門扉を勢いよく左手で引いた。門扉の前は通りに面して、花壇に囲まれた車一台分の駐車スペース。
一羽の中型の鳥が驚いたように、門扉近くの満天星躑躅の木の下辺りから出てきた。何故か、慌てる様子もなく、それでも危険を感じた風に、体を左右に揺らして移動する。
「えっ?」
よく見るとカルガモのようだ。カルガモは、通りの側溝から1mほど手間で立ち止まった。側溝のコンクリートの上に卵が一個転がっていた。二カ所に凹みが見える。転がった時についたのだろう。
私は、急いで自室へ戻りカメラを持ち出す。そして、刺激しないようにシャッターを押す。
カルガモは通りから門扉の近くまで戻って来た。うずくまった。私の気配に気づいているだろうに、飛び立つことはなく、じっと疲れを癒しているように見える。
「カルガモが居るよ。そっと見てごらん」
夫に声を掛ける。夫もそっと見に行く。
「あの卵、温めたら孵化するかな?」
「駄目よ。野鳥だから手助けはダメ。それに殻に傷ついていたし無理よ」
カルガモは小一時間近く居たようだ。風雨の昨夜から滞在していたのかもしれない。夫がまた見に行った時には、卵を置いて居なくなっていた。体力が復活したのだろう。飛び去って仲間の所へ戻ったに違いない。
「卵、どうする?」と夫。
「車に潰されたら可哀想だし、草叢にでも移動させたらいいかも」
夫は、傷ついたカルガモの卵を、我が屋敷の側の叢に置いた。真夏には、黄色のカンナが群咲く場所だ。
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「と・ある日のこと」をお送りします。
日々の暮らしの中から、ちょっと心に引っかかった事を綴っています。
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