石森則和のSEA SIDE RADIO

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夜明けの女神

2006-12-19 | Weblog
浜松で育った少年時代、
若者向けの深夜放送の第1部を聴いていても
午後3時からの第2部は始まらず
「ドライバー向けの番組」が放送された。

これは地方局ならではのことで
午前3時で、ネットするキー局が切り替わったのだ。
・・・しかし、僕はがっかりしなかった。

僕は浜松(当時は浜松ではなかったが)の生まれだが
両親はともに前橋の出身で
盆と正月には両親の実家へ「帰省」した。
僕は何日も前からドキドキしながらその日を待っていた。

当時、浜松→前橋間はおよそ8時間。
まして帰省ラッシュの時期は今以上に混んでいた。
そのためいつも早朝に出発する。
早朝といっても午前3時とかそーゆー世界である。
子供のぼくにとっては「ありえない」時間だ。

車の開発者だった父は車を大切にしており
ピカピカに磨き上げられた白いクーペは
姿勢を低くした獰猛な獣の姿のよう。
ヘッドライトが灯る瞬間は
その瞼を開いたかのようだった。

輪郭も朧に浮かび上がる海沿いの国道。
朝霧を蹴立てて東名高速道路の料金所を通過すると
夜空へむけ、離陸するタイミングを
はかっているかのようだった。

夜のハイウェイは
巨大なトレーラーが隊列をなし、
小さな僕はサイドウィンドに顔をつけ
そのコクピットの姿にに畏怖の念を感じた。

だから。
夜のハイウエェイは
少し成長した僕にとっても特別だった。

午前3時過ぎ、六畳間のラジオから流れる
交通情報やドライバーからのメッセージは
机に座っているはずの僕を
遥かなドライブインに連れ出した。

吹雪や嵐の中もものともせず、
遠く遠くをめざすトラックドライバーは逞しく思え、
彼らを慈しむように励ますDJの女性はどこまでも優しく、
「戦士」と「女神」のように思えた。

そして全国のドライバーに語りかける女神は
もしかしたら本当に天国にいるんじゃないか?と
思えた。

そして今。

臨時ニュースなどで
そうした番組に出させていただくことがある。

天国は意外に小さく(笑)
プロフェッショナルな男性スタッフがたった2人で
うっとりするほど鮮やかに仕事をしていたりする。

・・・あの頃の僕と同じ様な少年も
聴いていたりするのだろうか?


なら、君にだけは教えてあげよう。





安心しろ、






女神はいたぜ。

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