つーわけで、女子ゴルフ、
<SANKYOレディースオープン>
赤城CC(6479ヤード、パー72)
賞金総額7770万円(優勝1398万6000円)に、行ってまいりました。
僕の役割は「ケイ・○ラントさんかよ!」ってな声で
最終5組のティーショットで、BGMに乗せて選手の紹介をし、
ティーオフのきっかけを作ることと、
最終日に行われる表彰式のMCでした。
朝、東京駅のホームで新幹線を待ちながら
仕事の電話をかけていると、
異常にでかいカバンを持った女性が視線のはじに。
可愛らしい人だが、こっちをガン見しているので
「さらわれる!(カバンに詰め込まれる!)」とびびったのですが、
「石森さんですね?」
・・・今回の演出等を担当する
「BTC」(渋谷)という会社の石丸さんでした。
新幹線に乗車すると指定席なのに僕は窓際でひとつ席をあけて
通路をはさんで石丸さん。石丸さんの向こうには年配の夫婦。
変な並びかただな・・・
ほかのスタッフ数人も,この車両に乗るはずなのに。
ただし、たまーにお互い気を使わないように
出演者だけ少し離して座らせるケースもあるので
それかな?と思っていたのでした。
石丸さんは(初対面の)夫婦におせんべをもらって食べている。
僕と石丸さんの間にはモッズスタイルの
スリムなめがねをかけた男性が座ろうとしたのですが挙動不審。
きょろきょろして、いったりきたり・・・
やがて座るも、妙な空気が。
新幹線が大宮に着くと
石丸さんのほうが騒がしくなってきました。
背の高い2枚目の若者に夫婦が頭を下げている・・・
石丸さんも立ち上がってうろうろ。
「?」と思っていると
石丸さんが若者を僕に紹介し
「あ、スタッフの斉藤さんです」
どうやら夫婦は
自由席のチケットを買っていたのに
堂々と斉藤さんの指定席に
勝手に座っていたのでした。
ちょっと気の毒だけどな・・・と
夫婦を見送ったとき、
その瞬間、不審なモッズ青年が立ち上がり
「あ、スタッフのアベです」
・・・・あんたもかい!
石丸さんもアベさんと初対面でした。
石丸さんはアベさんを不審者だと感じ
僕を守るために席を替わってもらおうかとまで
考えたらしいです。
かくしてこの4人のチン道中が始まったのでした。
新幹線を高崎で降りて、
両毛線に乗り換えて伊勢崎へ向かうことに。
石丸さんが両毛線への乗り換えかたがわからないらしく
以前もきたことがあるというアベさんに
「乗り方覚えてます?」と聞くもアベさんも自信なさそう。
そんな不安げな中、
僕が先頭になってスタスタ歩いていると
石丸さんが
「ちょっと。
ちょっとちょっと。(注:タッチ語録から引用?)
石森さん、そんな早く歩いて!
乗り換え口わかるんですかっ?」
「あー、僕、FMぐんまの局アナでしたから」
「早く言ってよっ!」
「両毛線、短っ!ホームあまりすぎっ!」
と言いながら乗り込み、窓の外を見ていると
ちょっと旅行気分。
(BGM:世界の車窓から)
「や、どこみても山、山が迫力」
「雲が絵みたい、すごいなあ」
「あのお客さんのクレープ食べたい」(石丸さん)
・・・関係ないだろ。
「伊勢崎着いたーっ!」
(たまのランニングの人風)
えーここからタクシーです。
何分?え?40分!
ぎゅうぎゅうづめで桐生市町にあるゴルフ場へ。
その途中の会話。
「見たことないコンビニがたくさんあるー」
「セーブ○ンだってえ」
「あ、僕局アナ時代スポンサーになっていただいて
公開放送の生コマーシャルで
一押しの中華まんを
一緒に出ていたスターダストレビューの根本要さんに
食べてもらったら、生放送なのにマズイっていわれました」
「・・・ど、どんな商品?」
「ぷりんまん」
・・・・一同爆笑。
石丸さんが
「あー同じ苗字のお墓がいっぱーい」と得意そう。
「ん?」
「みーんな斉藤家のお墓だって」
「ふーん・・・え、縁起いいね」(斉藤さん)
「・・・あ」
ゴルフ場につくと
ものすごい風と
田舎の香水(ふれぐらんす)に
傷心の斉藤さんがクラっときてしゃがみこむ。
そこに今回、われらがボス、
片山さんが登場するのでした。
(BGM:ダースベーダーのテーマ)
まもなく50だという片山さんは
BTCの社長で背が高く
ひげを生やしたダンディなかた。たくさんの経験を積み、
仕事には厳しく、でも心優しい尊敬できる人でした。
またプリングルスの箱の絵みたいな監督の天野さんも
プロ中のプロで、てきぱきと指示。
プレハブの本部に行って打ち合わせをしたあと
(その間、石丸さんは弁当を2人前食って、
ポテロングをあけていた)早速リハへ。
演出がすごい。
ティーグラウンドの周りにはかっちょいいスタンドが組まれ、
放送席の上にも座席。
フェアウェイが目の前に広がり、
そこで選手がダイナミックなティーショット。
まさに、爽快!大迫力!
18番ホールで行われた表彰式も,
非毛氈のヴィクトリーロードを優勝者が進むと
CO2(スモークね)が道の両側から吹き出し、
表彰の瞬間には池から4~5メートルの炎が吹き上がり、
轟音とともに花火がどーん!と打ち上げられる。
K-1さながらの演出だけど、これが屋外、
グリーン横だってんだから凄い。
ついついリングアナみたいになるのを
指摘されつつ、暗くなるまで練習。
リハを終え、桐生駅の前のホテルに向かったのでした。
荷物置いたらメシにしようよ、と片山さん。
部屋で資料を整理して
再びロビーに集まると
前日から泊まっていた片山さんはこういうのです。
「ゆうべも行ったんだけど
女の子が凄い水着で運んでくる寿司屋が
すぐそこにあるんだ」
「まじ?こんなさびしい駅前で?」
半分冗談だと思ってついていくと
数分あるくと・・・そこにあったのは!
「美喜仁(びきに)寿司」嘘おおおおっ!?
・・・別に普通のすし屋さんでした。
(なんでこんな名前なの?)
僕はお酒は飲めますが
しゃべりの前日には
声がかわらないように飲まないことにしています。
でも、この夜は、お互いの素顔を知るためにも
結束のためにも飲むことにしました。
飲んでよかった。
・・・・これが楽しい楽しい。
アベさんは関西弁、石丸さんは三重弁まるだしで
初対面なのにドツキ夫婦漫才が始まるし
先輩たちからは爆笑の経験談が聞けるし・・・
なにより一体感をもったのでした。
さて、翌日は6時15分チェックアウト。
女子プロゴルフの試合ってのは初めて参加させていたんだけど
意外とみんな華奢なのな。(一部を除く・・・)
でも打つ瞬間、
体が、手足が、ぐーんとしなやかに伸びるかんじがするんです。
プレー前に服部道子さんが
「しぶい声ですね。いつもそうなんですか?」と
誉めてくださったので
服部さんの前でだけ
「低い声~」でしゃべらなくてはいけなくなりました。
最終日。諸見里しのぶ(20=キヤノン)は-7で独走状態。
このままなら悲願の初優勝。
この時点の2位は大山志保で
こちらが勝てば賞金女王なのですが・・・
なんと風は20メート以上。
コースでは倒木まで発生!
どんどんスコアは落ち、
後半は4ボギー、1ダブルボギーと大崩れ。
風だけでなく、巨大なプレッシャーが彼女を苦しめます。
18番ホールにあるVIP席でモニターを見ながら
準備をしていると
オーナー、スポンサー幹部、
ゲストの志村けんさんも「あいーん・・・」とくぎ付け。
志村さんのタバコの灰は長く伸びたまま。
「もうがまんできない!」と
VIP席から飛び出して、直に見に行くVIPも。
諸見里選手は後に
「心拍数が上がっていたし、普通の状態ではなかった。
本当に苦しかった」と打ち明けます。
・・・でも彼女は勝ったんです。自分自身に。
なんと最後は2位の全美貞(23=韓国)とはわずか1打差。
20歳84日での初優勝は宮里藍(21)らに次ぐ
5番目の若さでの優勝。
大山志保(29)は2打差の3位。
プロ13戦目での初優勝は日本人選手では3番目の速さですが
報道陣に
「ここまで育ててくれた両親、
コーチらいろんな人たちに勝てなくて申し訳なかったし、
自分自身が歯がゆかった」と話しました。
彼女はこれまで予選落ちしてもあきらめず
涙しながら、なんどもなんども日が暮れても練習してきたのです。
あー、
あなたのおかげでゴルフが好きになったぞ。
(自分はやんないけどな)
ってゆーか、彼女らのファンになった。
ただ最後に「諸見里しのぶーっ」て呼ぶ肝心なときに
「もろみじゃ・・・あぐあぐ」って
噛んじゃったけどな。
(風よ吹き消してくれ)
ごめんね。
でも、とてもとても
よい経験でした。
帰路、
スタッフは予定より早く高崎駅につきました。
みんな僕よりも遅い便のチケットだったんだけど
乗車変更したら僕より早くなっちゃった。
僕はどうしようかと思ったんだけど
せっかくだから指定券どおりの
みんなより20分ほど遅い列車に
乗ることにしました。
みんなを見送ったあと
好きな音楽も持ってきたし
雑誌もあるから気楽に帰るかあ、と思ったら
なんだか急にさびしくなってきました。
息苦しいほどに。
「なんだこの気持ち?」と思って振り返り
はっとしました。
そこには、いろんな人の思惑や事情があって
なかなか夢が動き出さず、
唇をかみ締め、
いつかここから旅立つんだと思っていたあの頃の自分が、
たったひとりでオーディションなどに向かうため
何度もくぐった改札口が見えました。
うわっ!と追い立てられるような気持ちで
ホームに上がり、新幹線に乗り込みました。
あの頃、
僕は遠くに届きたかったのか?
遠くに離れたかったのか?
DJとしての僕を育ててくれた町。
みんな元気でいますか?
みんな知らないけど、
久しぶりにここでマイクの前に立ちました。
僕は、こうして今、日々すばらしい人たちにかこまれて
チャレンジできる場を与えてもらっています。
それは、あの日々があったからとわかっているし
感謝もしています。
でも、もっともっと
もっともっと。
ふと、諸見里選手の姿が心によみがえり
あんな華奢な女の子が
自分に勝ったんだ、
ぐずぐずしてないで
僕も強くならなけりゃ、と
思ったのでした。