ODORAMOX!

BABA庵から  釣り糸なんぞが ごちゃごちゃ こんがらかった状態を ここでは「オドラモクス」と言う。

小説で知った歴史

2010-03-10 15:27:22 | 引用
 島の天気はめまぐるしい。晴れ渡っていても一時間もしないうちに雨が降りだしたり、風がやんだり吹いたり、このところは、めまぐるしくはないものの一定して雨が続くなか、図書館で本を物色する日が続いた。有名な著作でも読んでいない小説がたくさんある。
なんでこの小説があるのかな、と思うと、なかにちょこっとこの島が登場したりしている。
 武田泰淳の『ひかりごけ』も初めて(!)読んだ。
 そんななかで、『蝦夷地別件』船戸与一著 文庫本(上中下)を、読み切れるかなと迷いながら借り出した。
 いつかベストセラーを旅行に携えていって、ひどいめにあったことがある。旅先の天気が悪く、宿にとじこめられての読書だったが、評判の本なのに、あまりにもおもしろくなかったから。それでも読みだしたら読み切らないと気が済まないたちで、苦痛に耐えて読み終えた経験がある。そんな心配をしながら読み始めた『蝦夷地別件』だったが、夢中になって、このブログに記すまでに到っている。
 
 船戸与一という作家も初めてだったので、読み終えてから、史実にもとづいた小説なのか調べて、幕末における蝦夷の抵抗と虐殺事件を知った。
 「クナシリ・メナシの戦い」 でWikipediaにある。
 高橋克彦が描いた東北蝦夷の歴史小説で、アテルイを知り、現在の差別は千数百年前の異民族捕虜から始まっていると考えるようになった。
 そして浅田次郎の新撰組を描いた小説やこの『蝦夷地別件』で、日本の近代国家のつくられ方を気づかせられた。「創氏改名」や「慰安婦」などは、江戸末期、近代日本黎明期からの和人の<伝統>であったことも。

 Wikipediaでは、この事件を知る書籍としては、この本と松浦藩史料という学術文献だけしか載っていない。索莫としたきもちになる。

 *この島に流されてきた重要な登場人物の僧侶にあてた手紙から物語が始まっているけれど、それが史実かどうかはまだ確かめていない。