たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

建築の耐震性 <日弁連シンポ「木造戸建住宅の耐震性は十分か?」・・>を読んで

2017-04-14 | リスクと対応の多様性

170414 建築の耐震性 <日弁連シンポ「木造戸建住宅の耐震性は十分か?」・・>を読んで

 

今朝は気分よく5時前に目覚めました。しばらくするといろんな野鳥のコーラスで賑わってきます。昨日も寝床の横に置いたまま寝入ってしまった『強欲の帝国 ウォール街に乗っ取られたアメリカ』を少し読みました。

 

わかりやすくリーマンショックの背景というか、アメリカ金融資本の実態を追求していて、たとえば企業の存続よりも、CEOをはじめ現場のトレーダーたちまで、個人としていかに多くの報酬をストックオプションや現金で獲得できるかに関心がいっていて、そのことにより多くの人が莫大な損害を受けても関知しない、まことに個人主義の徹底、個人的な「マネー追求主義」でしょうか、見事に表現されています。とても面白いのですが、なかなか読み切れないでいます。

 

6時になると庭の手入れやいろいろ作業があり、あっという間に出かける時間になります。そして今日は電気工事などの立会があり、自宅に立ち戻りました。さて出かけようと思ったら、思いがけない珍客です。野鳥の紳士、ツバメです。玄関ドアを開けっ放しにしていたためか、入ってきて出られないで家の中を飛び回っています。間近でツバメを見るのはあまり経験がないので、写真を撮ろうとするのですが、さすがツバメ返しの必殺技と名付けられるだけあり、素早い動きです。これまで部屋の中に、メジロ、セグロセキレイなどの経験があり、いずれも素早さでは負けていない印象です。

 

残念ながら、高所に立てこもり、うまく外に出すことが出来ず、とりあえずそのままにして仕事場にやってきました。これまで窓ガラスに当たって一旦気絶するというのは割合多く、大きいのではトビ、ヒヨドリなどがいましたが、いずれも残念ながら暖かく柔らかい体を掌に乗せてあげたものの息を吹き返すこともなく、土の中に埋めてやりました。中には暖かいタオルなどに包んで置いていると、目覚めて元気よく飛び回ることもあります。

 

さてこういった田舎生活の出来事は時折あり、意外と暇でもてあますということはないのです。

 

この話題はこれまでとして、今日の本題に入りたいと思います。たまたま日経アーキテクチャの今朝のメール便に見出しのテーマがあったのと、毎日記事でとくに興味を抱くものがなかったので、これを今日のテーマに取り上げることにしました。というか、シンポの司会者の吉岡氏、一度も会ったことがないのですが、地盤リスク工学会の研究会のメンバーで、積極的に活動しているようでして、現在は名前だけのメンバーになっている私としては、吉岡氏がどのようなシンポを開催しているのか興味を抱いたこともあります。

 

で、熊本地震については、先日、NHK番組について、住宅を支える・地盤リスクの問題としてこのブログでも取り上げましたが、日弁連シンポでは、建築リスクという住宅そのものの問題として議論しています。

 

熊本地震は、被災建築物の調査の結果、建築基準法の耐震基準の3段階に応じて、その有効性に明確な差が出ていることが判明しています。

 

日経ビルダー記事によると<日弁連消費者問題対策委員会土地・住宅部会委員の安田周平弁護士が弁護士会で入手した熊本地震の被害分析を報告。>

 

宮澤健二・工学院大学名誉教授が益城町内の被害集中地域で行った調査報告によると、以下の3期に分類しています。

815月までの旧耐震基準(第1期)

816月以降005月までを新耐震基準(第2期)

006月以降の新耐震基準(第3期)

 

安田氏の報告では、<“国交省は接合部不良が主たる原因としているが、それ以外にもたすき掛け筋かいやホールダウン金物の偏心配置などの不良施工がある”、さらに“このような被害は少なくとも審査・検査を省略する4号特例がなければ発生しなかったと言える”などの宮沢氏の指摘も紹介した。>と「このシンポのメインテーマ「4号特例」が問題の一因と結論づけ、その見直しを求める方向に議論を向けています。

 

これに対し、<国交省住宅局の石崎和志・建築指導課長は、「倒壊防止という意味で現行耐震規定の有効性を確認した」として、接合部の適切な設計・施工がなされるよう注意喚起することで足りるという姿勢を示した>と、安田氏による指摘に反論しています。

 

そして石崎氏によれば、

旧耐震(第1期)28.2%(214棟)、

新耐震(第2期)8.7%(76棟)、

32.2%(7棟)

<という倒壊率の調査結果を挙げ、「顕著な差があり、倒壊防止という意味で現行耐震規定の有効性を確認した」と述べ、「この差は新耐震の壁量は旧耐震の約1.4倍あるためと考えられる」と指摘した。 >ということで、新耐震基準、第2期、さらに第3期でより強化されているとの立場に立っています。建築行政の責任者としては当然でしょう。

 

 <また、「住宅性能表示の耐震等級3の住宅は新耐震基準の約1.5倍の壁量が確保されており、軽微・小破16棟で大部分が無被害であり、効果があることが当たり前の事実として確認された」とも述べた。

 さらに、「新耐震は倒壊した83棟中77棟で状況を把握・分析したが、原因は地盤、隣接棟、蟻害、それと接合部不良でこれが最も多い。壁や金物の偏心は調査時には分からなかった」と述べ、「耐震基準をさらに強化するのではなく、既存ストックを含め、現行基準が求める耐震性の確保を目指す」として、現行の仕様規定や「4号特例」を見直す必要性があるという認識は示さなかった。>

 

基本的には現行耐震基準の有効性は相当程度証明されているといえるのではないかと思います。しかし、これに対して<日弁連消費者問題対策委員会土地・住宅部会幹事の神崎哲弁護士は、00年以降に建てられた木造住宅にも問題があったと反論した。>

 

神崎氏は、施工瑕疵に加えて設計瑕疵を指摘しています。前者の問題はどのような耐震基準を設けても施工監理が適切に行われていなければ起こりうるわけですので、後者の問題がここでは主要争点となります。神崎氏は自らの設計瑕疵をめぐる訴訟事例を3つ取り上げて指摘しています。

 

1つ目は、2階建てで設計者が途中で交替した案件(A)。引き継いだデザイナー系建築士が大幅な設計変更を行って柱・梁を撤去したことで種々の構造欠陥が発生し、争いになった。吹き抜けが建物のあちこちに設けられ、水平剛性を期待できないという。>

 

マンションのような共同住宅であれば、設計変更はもちろん構造計算のやり直しが求められるでしょうけど、戸建て住宅だと、そもそも構造計算が想定されていないので、このような設計変更も新耐震基準の厳格性を張り子の虎状態にしてしまう危険はあるでしょう。

 

これは設計する建築士にも問題があると同様に、施主においても安易に設計変更を求める姿勢、その場合の耐震性の確保をあまり考えていない、その分の費用増加を想定していないことにも問題の背景があるようにも思うのです。

 

2つ目は、建築士資格のないリフォーム業者が中古売買を仲介したうえロフトの増築まで行った案件(B)。1階・2階とも平面上の同じ位置で狭窄しているが、ゾーニングをせず、全体を一体として壁量を検討しており、大幅な偏心が疑われる。現在係争中だ。>

 

マンションなどの場合、偏心構造は当たり前?かもしれませんし、構造計算もそれに応じてしっかりやっているのが本来でしょう。ところがマンションでも、地盤の地質状態に応じた偏心基礎構造にできているかというと、実際に掘ってみて初めて分かる場合も少なくないんので、その後に構造計算のやり直しで変更確認をとることも少なくないのではと思うのです。

 

しかし、中古住宅での増改築の場合、当然、偏心状態になり得るのですが、その点を踏まえて構造計算をするといった建築士はあまりいないのかもしれません。信頼できる建築士であれば、当然のこととして、施主に費用負担をお願いして改めて構造計算するでしょう。しかし、4号特例があると、建築士としてもそこまで施主にお願いするのは躊躇するのが風つかもしれません。

 

3つ目は、建築士の提案で小屋裏物置を設置した2階建ての案件(C)。実質3階建てで下屋もあり、その天井高さが主屋の床とずれてスキップフロア状態になっている物件。水平剛性と壁量の不足などを現在争っている。>

 

最近は規制緩和で、木造3階建てが増えてきているように思います。しかも上記のような変形というか、多様な3階建が生まれているように思うのです。すると構造計算も複雑になるのではないかと思います。そのような設計におけるデザインの自由性はこれらからも拡大すると思うのですが、そのことにより耐震性が脆弱になるリスクも増大するように思うのです。それを従来の4号特例ですましておいてよいか、今後もより具体的な検討・議論を深めてもらいたいと思います。

 

神崎氏は以下の提言を行っていますが、これを議論の俎上に乗せるに当たっては、施工上の瑕疵との峻別、地盤リスクの問題との峻別は事例の中でわかりやすくしておく必要があると思います。

 

<(14号建築物にも建築基準法で構造計算を義務付ける。

24号建築物について構造計算以外の構造安全性確認方法(建築基準法2014号のイの仕様規定)を残すならば、壁量の見直しなど規定の水準を改正し、水平剛性の見直しなど規定の方式を改正し、さらに梁断面寸法、柱・壁直下率、狭窄部がある場合の平面分割検討など項目を追加することで充実化・厳密化を図り、構造計算をしてもNGが出ない水準に改める。

34号建築物について、建築確認手続きにおける構造審査の特例(4号特例)を撤廃する。合わせて4号建築物を設計・監理できる建築士を限定する方向へ建築士制度を改革する。>

 

なお、上記の議論とは関係ないですが、参考までに国交省の耐震対策についてURLを援用しておきます。

 

国交省 住宅・建築物の耐震化について

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html 

建築物の耐震改修の促進に関する法律等の改正概要(平成2511月施行)

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000054.html 

 

今日は割合、時間に余裕があったので、業務終了時間前にブログを書き終えました。ま、終わらせたという、いつもの調子ですが。