たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

北極圏の魅力と闘い <グレートレース「大氷原に立ち向かえ・・」>を見て

2017-05-07 | 自然生態系との関わり方

170507 北極圏の魅力と闘い <グレートレース「大氷原に立ち向かえ・・」>を見て

 

今朝も体が重い感じで目覚ました。どうやら作業疲れとは違うようです。とりあえず血圧を測ると上が140を超えています。以前、具合が悪いとき測ったときもしばらく140越が続き、循環器系の専門医師などに診ていただいたことがありますが、いろいろ検査しても異常がみつからず、しばらく安静にしていたら次第に回復したことがあります。

 

人の体は分からないものですね。最高血圧も一つの兆候とはいえ、家康ではないですが、自分で養生することがやはり肝要でしょうか。

 

最近はあまり書籍をいただく機会がありませんが、今年は2冊頂きました。折角ブログを書いているので、我流の書評というより、紹介的な文を書こうと思いつつ、なかなか筆がすすみません。ともかく一冊だけ紹介しておきます。私も一応関係している、地盤工学会の関東支部地盤リスクと法・訴訟等の社会システムに関する事例研究委員会編で「法律家・消費者のための住宅地盤Q&A」という本です。59日発行ですので、今日段階ではまだ書店にないかもしれません。

 

執筆者は地盤工学や地質のプロが中心になっていますので、少し技術的な解説書といった色合いがありますが、専門家向けではなく、戸建て住宅を購入する消費者、そして法的処理に対応すべく法律家に、基本的な情報を提供する内容です。私自身、分譲地の地滑りやマンション建設に伴う崖地の危険性など多様な地盤リスクの問題を取り扱ってきましたが、こういう基礎的情報を取り扱った書籍があまりなかったので苦労しました。

 

多くの戸建て住宅の購入者は、建築物自体の安全性には注意を払いますが、その地盤の安全性についてはさほど重点を置かないように思います。販売業者側としては、分譲地の過去の地形的変遷や災害歴、あるいは土砂災害警戒区域等マップなどは最低限抑えておくべき情報でしょう。それでも個別の土地一つ一つは特性がありますし、とりわけ初期の分譲開発で残された法地などの開発ではより注意が必要です。

 

いろいろ書きましたが、本書は、戸建て住宅の地盤調査で基本的なスウェーデン式サウンディングについて詳細に解説しており、その意義・限界などを理解するにはよいかと思います。また、地盤評価で常に話題になるN値の意味などもわかりやすく解説されています。建築物については81年の新耐震基準で対応できるとされていましたが、95年の兵庫県南部地震では液状化が多く発生して対応できなかったことを踏まえ、01年改定の建築基礎構造設計指針についてもしっかり言及されています。

 

地盤リスクの問題は、非常に専門的で、最終的には専門家の調査・解析を求めるとしても、素人も一定の理解力を持っておいた方がいいと思います。そういった場合の基礎的情報を提供してくれる書籍だと思いますので、参考になるかと思います。

 

さてぼやっとした頭の中で、書いていますが、昨夜、55日放送を録画していたNHKグレートレース「大氷原に立ち向かえ~カナダ北極圏567km~」を見ました。そのときもピンぼけ頭でしたが、見ているうちに極寒の極限状態で闘う姿勢に感動して、レースの選手たちの心情が魂を揺さぶるほどになりました。

 

このグレートシリーズは割合好きで、よく見ていますが、とくに北極圏は私自身も思い入れがあったので、どんな場所でレースするのか気になっていました。すると、出発点のホワイトホース、最後の難関、マッケンジー川、そして終点のトゥクトヤクトゥク(Tuktoyaktuk

は、いずれも私が訪ねたことがある場所でした。最後まで見て分かったのですが、それまでの彼らの自らとの、また、厳しい自然との、それぞれの死闘は圧巻でした。

 

その中で、3人がとくに心を揺さぶらされてしまいました。一人は終始トップを走ったルーマニア人。彼は断トツでトップを走り続けながら、足が凍傷寸前になっていました。げ平均マイナス38度、おそらくマッケンジー川の凍結した氷上ではマイナス50度近かったかもしれません。ゲーム主催者側の医師は、彼の足を見て、これ以上進むと手で這っていかないといけない、と言って棄権を勧告しました。しかし、彼は悩む様子もなく、その凍傷寸前の足を見ながらも、断固前に進むことを温和にそして平然と言うのです。アイスマンと評されるだけ、なんともすごい、そして柔らかな表情をもって人と接する、強靱な精神の人だと感じました。

 

次は2位になったたしかイギリス人だったと思いますが、一型糖尿病の疾病をもつ人で、障害や病気をもっていても、やり遂げる意思を貫けば、どんな厳しい試練でも達成できることを証明したいと、多くの障害者などのためにとの意思、そしてその彼を支えてくれる家族のために、走り続けていました。途中でインスリンの欠乏状態を測定する器械が故障した際も、危険をかえりみず手袋を脱ぎ、注射して血液検査をするなど、その熱い思いに感動するばかりでした。

 

最後はなんと日本人です。これまで2度挑戦して、凍傷にあい、完走できなかった悔しさと、ゲーム中に見たオーロラの素晴らしい空を見て、初めて授かった長男の名前を空にしたこと、その息子のためにも、一旦決意したら必ずやり遂げることを親として示したいという、なんとも素晴らしい精神で、今回再びチャレンジしたのです。彼も凍傷の危機にさらされていました。これまでの経験を踏まえてクッションのいい靴など装備をしっかりしていたのですが、その靴も厳しい寒さで、氷の板をはいている状態で歩く感覚になっていたというのです。それでも彼は、息子、家族のために、また自分自身のため、最後まで走り続け、完走を成し遂げたのです。

 

いずれも北極園の痺れる、凍てつく強風、下は永久凍土か氷上、それ以外に隠れたり、逃れたりできない、ただ見渡す限り真の自然の厳しさの中、それぞれの思いを達成するため、8日間567km、漆黒の暗闇を、突風で何も見えない中を走り続け、やり抜いたのですから、あっぱれというしかないですね。

 

さて、最後に私の経験を少し述べておきます。私がホワイトホースを訪ねたのは、たしか夏だったと思います。カヤックでユーコン川を少し下ったことを覚えています。私が訪ねた目的はそこにあるユーコン準州の政府で、当時、世界的に環境法ないし環境アセスメント法の立法化が進みつつあった90年代において、91年におそらく最も進んで環境権規定を整備した環境法を制定したので、どのような運用をされているのかヒアリングのため出かけていったのです。わが国ではカナダではオンタリオ州の環境法に規定された環境権が著名ですが、ユーコン準州はいまでもそれほど知られていないのではないかと思っています。

 

わが国の環境基本法も、環境権規定をおくかどうかですったもんだして、抽象的な意味合いの規定にとどまっています。アメリカは80年代に先進的な環境権規定を整備しましたが、各法律や州法で定めていて、その権利の内容、手続き保障なども相当異なります。

 

これに対し、ユーコン準州の環境法は総合的で具体的で、実効性を保障するものとなっています。ホームページでは2002年以降現在の改訂版しかありませんが、私は91年版を入手し、どこか資料の中に埋もれていると思います。環境権規定は、6条から37条まで定めていますので、その一部、それも見出しだけ引用します。これだけ見ても何が何だか分からないと思いますが、環境権についての思い入れを感じさせるもので、オンタリオ州を含めカナダの国・州の環境法の中でも、最も詳細に規定しているのではないかと、今でも思っています。最近、こういった法制度はあまりはやらないのも一つかもしれません。仏作って魂入れずという話もありますが、ユーコン準州の場合もそういう印象をヒアリングで受けました。

 

Environmental right 6

Declaration 7

Right of action 8

Defences 9

Common law rules 10

Impairment caused by contaminant 11

Remedies 12

Minister’s involvement 13

Request for investigation 14

Acknowledgement of application 15

Reports by the Minister 16

Time for investigation 17

Penalty for false statements 18

Private prosecution 19

Protection of employees 20

Complaints 21

Duties of the Minister 22

Yukon Council on the Economy and the Environment to review complaints 23

Report of the Council 24

Minister’s reports 25

Confidentiality 26

Regulations 27

Rule making 28

Public review 29

Public hearings 30

Ministers Report 31

 

マッケンジー川ですが、これはカナダで著名なトーマス・バーガーによる「マッケンジー渓谷パイプライン計画審査レポート」の舞台です。北極海沿岸の油田地帯からマッケンジー渓谷を通って南部カナダまでパイプラインを引くという、70年代の先住民を無視した石油資源開発に対して、元最高裁判事だったバーガー氏がその計画のアセスメントを行い、そのレポート出版したところ、大流行したものです。彼は、こういった計画では一度も行われたことがない、先住民の声を各地で聞き取り(パブリックヒアリング)、自然生態系の調査を行い、当該計画がもつ文化的、経済的、社会的影響、それに先住民の権利への影響を見事に取り上げたのです。その結果、この計画はなくなり、その後先住民の権利は現在に到るまで裁判等で次第に確立していくようになったと思います。

 

マッケンジー川や渓谷は空から見下ろすと、とてもすばらしい景観です。私自身はイエローナイフから河口付近の都市・イヌビクまで、空から眺めました。その後、油田開発計画のあったトゥクトヤクトゥク(Tuktoyaktuk)を訪れたのです。そこはまさに北極海に突き出した岬の端にある小さな町で、おそらく70年代油田開発計画で、ゴールドラッシュのような勢いで調査業者などが押し寄せたのだと思います。

 

私が訪れたときは、打ち捨てられた鉄の塊のようなものが散在しているものの、わずかの先住民が暮らす集落でした。その一人がガイドをしてくれ、狩猟に代わり、氷上に穴を開けて漁網で魚を捕る作業を見せてもらったり、10m近い深い穴の底に、永久凍土の穴蔵があり、そこに収穫した魚を保存しているのを見せてもらったり、現在の先住民、イヌイットの暮らしの一端を見せてもらいました。

 

昔狩猟した北極熊の燻製を自宅の壁に飾っていて、私と一緒に写真を撮ってもらいましたが、現在ではシロクマの狩猟は禁止されていて(一部では許容されているようです)、昔の銃による狩猟生活を懐かしがっていました。

 

とこういった話しも思い出すといつまでも続くのでこの辺でおしまいとします。

 

ぼやっとした頭も少しましになってきました。北極は私自身、いろいろと影響を受けたので、これからもなにか情報と出会うたびに書いてみたいと思います。