170514 Aestheticとエステ <エステ 大手が傘下医院で高額施術・・>を読んで
今朝も暗闇の中でぼんやりとして意識が目覚めました。こういうときの勝手な妄想はいろんな状況を描き出すので、真剣に考えると杞憂のいい例になりますね。今朝はガンが分かったというものでした。さてどうするか、いろいろ考えて今後の方策をあれこれと描いてみました。私自身はもう30年以上前から死への対応というのを考えてきたので、(実際そのときほんとはどうだか分かりませんが)さほどそれが脅威ということでなく、ま、なにができるかを考えるのですが、たいした構想は生まれません。やはり現実に直面しないと無理かもしれません。
日曜日ということで毎日朝刊をゆっくりと読み終わったのですが、どうも今日のブログのテーマとして取り上げようという気持ちを起こさせるものがありません。とはいえ、興味を引く記事は結構ありました。たとえば<ストーリー「イクメン」の言葉なくしたい(その1) 日本の父親像変える><「イクメン」の言葉なくしたい(その2止) イクメンは当然だ>は、「イクメン」という言葉自体、私の年代だとどうも縁遠く感じるのですが、記事の内容は訴えるものがありました。だいたいわが国で夫と妻で子育ての分担が異なるといった文化的基礎・背景があったのでしょうかね。維新政府によって虚構に作られ、戦後も架空の夫婦像・家庭像が描かれてしまったのではないかと私自身には思いがあります。夫婦の仕事の価値を判断するのはそれぞれの家庭の問題ですし、親と子の触れあい、接し方はそれぞれの親が真剣に考えてやることであって、十人十色ではないでしょうか。たしかに「イクメン」なんて言葉が生まれること自体、奇妙ですし、死語になるものでしょうね。
また、<ともに・認知症国際会議in京都認知症の人、自ら行動 当事者同士で相談/政策を提言>もかなりの分量をさいて取り上げていて、あまり焦点が当たらなかった若年性認知症の問題に光りを当てたり、認知症を障がいの一つとしてとらえて、その人ができることに、あるいは出来るかもしれないことに着目するといった、当事者からの声を丁寧にひろっていて、いい内容でした。ただ、これらは別の機会に気分がのったときに取り上げたいと思います。
では気分が乗らない状態で取り上げるのは、<エステ大手が傘下医院で高額施術 解約応じず 国調査へ>という記事です。だいたいエステという言葉はマスコミなど街の中にもいつの間にか氾濫していますが、私自身はまったく関心をもてなかったのです。その関心がもてない私がこれを取り上げるのは、ある事件でエステをやっている人が登場したので、おおよそはその内容を理解していますが、さてどんなことをしているのか、なにが問題になっているのかを改めて確認するために、あえて取り上げようと思ったのです(国民生活センター 相談事例と解決結果 美容・衛生)。
だいたいエステを利用する人の中に、やせたいという目的が結構あるようですが、その感覚が分からないのです。たしかに小錦ぐらい太ってしまうと、これは大変でしょうから、なんらかの対応を考えるのは分かるのですが、日本人女性の場合、太っているとかの基準がどこにあるんでしょうかね。私がカナダ滞在から帰国したとき、日本人の女性を見て、なんて小さくて、すぐに折れてしまいそうな体をしているんだろうと、カナダ人女性との体格の違いを感じました。彼らは大柄でどっしりしている人が多いですが、まったく気にしていません。それが当たり前になれば、むろん男性もそんなことを気にすることもありません。いや、外観をあまり気にしないようにも思えるのです。それでいて堂々としていますし、たとえば法曹でいえば、ロースクールの学生の半分くらいは女性だった記憶です。むろん裁判官や弁護士のトップや法学部長などに、女性が大勢進出しています。共働きが普通という感じもしました。
そんな私の狭い了見だけで物事をみてはいけませんので、とりあえずエステとはなんぞやとウィキペディアの定義を当たってみると、
<エステティック(仏: Esthétique)とは、痩身や脱毛、美白を始めとした、全身の美容術を言う。リラクゼーションを兼ねていることも多い。
英語では、Aesthetic(エスセティック、アメリカ英語: Esthetic とも)。西洋では美学や美意識を意味する言葉である。略語のエスシート(aesthete 、 esthete)は(しばしば嘲り的に)耽美主義者、唯美主義者 (aestheticist、estheticist) を意味する。
日本ではエステと略し、este 、esthe、esute などと書くこともあるが、英語・フランス語等ではこうした略し方はほとんど行われていない。>
エステは造語なんですね。英語ではAestheticが本来のようで、実際、業界では「一般社団法人日本エステティック業協会」と呼称しているのですね。
Aestheticは歴史のある深い意味がありますが、私にとっても長年にわたって担当した景観訴訟の景観こそ、その一つの意義として使われています。アメリカの多くの裁判例でも、まちづくりの景観をめぐって開発業者と行政が争ってきましたが、まさにAestheticがキーワードというか、メルクマールでした。
それを人の外観美を対象としてその形成なり改善を行う施術あるいは医療的措置について、この用語を使うのはどうかと思いますが、ま、それは言葉の多義性、柔軟性、時代順応性なりで、大目に見てよいかと思うのです。
ではエステはどんなことを行うことか明確な線引きがあるのかについては、残念ながらよく分かりませんでした。前記ウィキペディアでは、<エステティック(仏: Esthétique)とは、痩身や脱毛、美白を始めとした、全身の美容術を言う。リラクゼーションを兼ねていることも多い。>と書かれている程度です。先の日本エステティック業協会でも、エステティック認証制度があるようですが、そのサービスの内容については書かれていません。
他方で、毎日記事だと<医師による美容医療は「コンプレックス商法」とも呼ばれ、医療機関による脱毛、脂肪吸引、しみ取り、二重まぶた手術、包茎手術などが該当する。健康保険が適用されない自由診療がほとんどで、高額になりやすい。>と美容医療が取り上げられています。私も四半世紀位前まではよく医療相談をしていて、この種の相談を受けた記憶がありますが、なかなかやっかいでした。
本来、医療行為とエステは明瞭に異なるはずですね。体への侵襲に当たる医業(医療行為)は医師法により免許を受けた医師でないとできませんね。ところがメガネやさんなどでも問題になりますが、業務提携という方式で脱法的になされる実態があるようです。
毎日記事はそれを取り上げています。<全国展開するエステサロン(本社・東京)が傘下の美容外科医院に顧客を回し、高額の契約を結ばせていることが分かった。医院はインフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)を無視し、クーリングオフにも応じていなかった。厚生労働省と消費者庁は、医療法や特定商取引法に抵触する可能性があるとみて、エステと美容医院の提携について実態調査に乗り出す方針を固めた。>
この具体的なやり方も取材しています。<この大手エステグループは痩身(そうしん)マッサージについて「各店先着50人限定で80%オフ」と広告を掲げ、顧客を勧誘。ほとんど割引がない別のコースで契約を締結し、コース終了前に「専門クリニックに移れば劇的にやせられる」と、提携先の美容医院で施術を続けるよう促していた。>勧誘方法自体に問題がありますし、美容医院側の受け入れも問題がありそうです。
次の記事を見ると、医院側の具体的な医療行為は見せかけ的なごく一部で、全体としてはエステサービスとして行われているようにも思えます。
<医院は全国各地のエリアごとに複数あり、このエステグループが運営に携わっている。1医院につき医師は院長1人のみ。エステ店から派遣されたスタッフが簡単な説明と契約をした後、エステと同じ施術を担当する。院長は脂肪燃焼をうたう点滴を打つだけだが、料金はエステの約10倍に上るシステムだった。関西地方の40代女性は昨年3~6月、エステと医院で契約を3回繰り返し、計約160万円を支払った。「やせる効果はほとんどなかった」と話す。>
ここで、エステスタッフがエステと同じ施術をするとは一体、どんなことをするのでしょう。それが医院内で行われていること自体問題になりそうです。医師は<脂肪燃焼をうたう点滴を打つ>ということですが、この施術自体、専門的な知見がないとかえって神経を痛めたりする危険があることは、<美容医療、エステで事故に遭わないために>という記事で、専門の美容外科医が指摘しています。ここの病院の院長や副院長にはいろいろ助言をいただいたことがありますが、鎌倉に限らず広範囲で人気がある思います。
また、医療行為である以上、基本的なインフォームドコンセントが医師によって適切になされていない疑いが強いですね。この点<エステの運営会社幹部は取材に「安価なエステは医院の看板として展開している。医師が関与する信頼感で、医院の施術料が割高でも利用者は納得しているのではないか」と話した。インフォームドコンセントがない理由については「専門知識の乏しい医院の負担を軽減するため、エステ店が代理で説明責任を果たしている。よくあることだ」と説明した。>ということですが、これは本末転倒ですね。
当然ながら、<厚労省は、医師によるインフォームドコンセントがない点について、医師の説明義務を定めた医療法に違反する疑いがあるとみる。>わけですから、徹底的な調査をして、事実が明らかであれば、摘発すべきでしょう。
また、エステサービスとしても、特商法の問題がありますね。日本エステティック業協会も特定商取引法のクリーニングオフ制度など内容を詳細に告知して、エステサロンに行く前に読むことを進めています。
毎日記事でも次のように指摘しています。<継続的にサービスを提供するエステは、特商法でクーリングオフや中途解約に応じる義務がある。医院での医療行為は対象外だが、エステでの施術と同様の内容が継続する場合について消費者庁幹部は「同一サービスによる脱法行為とみなされる可能性がある」と指摘する。この医院は契約書で「解約は認められていない」と記しており、解約逃れ行為と判断されれば特商法違反になる。>
こういった問題を受けて、美容医療を対象にするなど特商法の改正が検討されているようです。<施術を一定期間続けるエステは特定商取引法に基づいてクーリングオフや中途解約ができる。消費者庁は年内に政令を改正して美容医療も対象にする予定で、脱毛、痩身、美顔など具体的な対象を検討している。一方、美容医療は医療法で広告を厳しく規制されており、今国会でウェブ上の宣伝も規制対象に加えられる見通しだ。>
ただ、医療法の広告規制が厳しいとの判断については、どうかと思います。一応「医療広告ガイドライン」を見ましたが、これで適切な広告規制が図れるかというと疑問がありますが、いかがでしょう。
今日はこれでおしまいです。