180116 うんこ考 <NHKスペシャル「人体」 万病撃退!“腸”が免疫の鍵だった>などを見ながら
私の友人に「うんこ」を長年研究している変わり者がいます(といっちゃ失礼)。彼から電話があると、案の定、うんこの話しが続くのです。たしかにうんこは大事だが、その取り扱いの話しを長々としていると、親しい友人も少し煙たくなるかもしれないよと助言することもあるのですが、あまり気にしていません。天下国家にかかわることと思っているようです。そうかもしれませんが・・・
たしかに私の子どもの頃までは田んぼがあちこちにあり、肥だめも当然のようにありました。落ちないようにといった注意もされたように記憶が残っています。私は臭いが苦手なので、だいたい近づきません。
それにしても江戸時代には最も最盛期だったかもしれませんが、それ以前から糞尿を重要な肥料の一つとして、わが国の農業は循環構造で成り立っていたわけですね。農家にとっては貴重な肥料だったわけです。それは土の循環でもありますが、人間の体内循環の健全性を保持し、また都会や農村の土地利用循環も有害性を排除する方法で行われてきた、日本が誇るべきシステムだったと言えるのでしょう。
忘れてはならないのは、その循環に野菜や雑穀類が含まれ、体内循環の中で健康な腸内細菌を生み出していたのかもしれません。
それよりも何よりも、きれいも汚いもない、すべて同じという仏の教え、たとえば般若心経がこの生活スタイルを形成させ、維持させてきたのかもしれません。
でもそういった精神がいつのまにか忘れ去られ、うんこを取りあげること自体、嫌なことと思う私の意識は、たぶん多くの人にもあるのでしょう。そういうときは空海を思い浮かべるのですが、実際の生活の中ではなかなか大変です。
そういえば今朝の毎日記事の広告に、夢枕獏著『沙門空海唐の国で鬼と宴す』が映画化されたのが来月公開と大きく掲載されていました。空海について書かれた小説は結構読みましたが、この著作は他と比較にならないほど、異質です。比較する対象ではないですが、司馬遼太郎も小説化をあきらめ『空海の風景』と淡々として描写に終わっています。それを奇想天外な内容にしたて、唐の著名人物が百花繚乱のように現れて空海と交わるわけですから、一気に読んでしまうほど、空海の醍醐味を著しています。むろん史実はべつですが、面白さで言えばとびっきりです。
またまた前置きが脱線の連続となりました。
本題に移ります。<NHKスペシャル「人体」万病撃退!“腸”が免疫の鍵だった>は人体シリーズの一つで、録画していたのを昨夜見ました。画像が精密で美しく、腸を構成する腸内細菌と免疫細胞の活躍ぶりがリアルなミクロの画像と、CG画像とを巧みに組み合わせて、素人でもわかりやすくなっていて、改めて腸がもつ統合的な機能を感じてしまいました。
腸を維持する2つのエージェント、腸内細菌、免疫細胞、いわば助さん格さんが、健全な状態であれば、田中将大選手のように病気もしない強靱な体力の持ち主になれるのでしょう。
腸には多数の細菌など外敵が侵入してくるわけですが、それらから人体を防御するため免疫細胞が働くことで、健全な体を維持できるのですが、ときに免疫細胞が暴走するようです。その結果、外敵がいないにもかかわらず、免疫細胞が攻撃を加えるわけですから、体内秩序が乱れるわけですね。戦争状態でしょうか。
その結果、最近増大している<「アレルギー」や、免疫細胞が自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」と呼ばれる病気>が生まれているようです。
番組では<命に関わるほど重症のアレルギー>の患者と、<「多発性硬化症」の患者>が紹介されていました。その二人の便を調べると、複数の腸内細菌が異常に少ないことがわかってきました。
さらに問題の腸内細菌の特定に成功したのです。
<人間の腸内にいる腸内細菌はおよそ1000種類、100兆個以上とも言われています。その中で、今回取材した重症のアレルギーと、多発性硬化症、異なる2つの病気に共通して減少していた腸内細菌がありました。それが「クロストリジウム菌」という腸内細菌の仲間です。>
そして免疫細胞には攻撃機能のあるアクセル機能だけでなく、攻撃を抑制するブレーキ機能も兼ね備えていることが必要だということもわかってきたようです。
<仲間の免疫細胞の過剰な攻撃を抑える役割を持つことが突き止められました。その免疫細胞は、「Tレグ(制御性T細胞)」と名付けられています。免疫細胞の中には、「攻撃役」だけでなく、いわば「ブレーキ役」も存在していたのです。>
そして前記の2人の患者に共通して不足する腸内細菌が問題と言うことが明らかになったのです。
<クロストリジウム菌は、私たちの腸内の「食物繊維」をエサとして食べ、「酪酸」と呼ばれる物質を盛んに放出します。この物質、実は腸に集結する免疫細胞に「落ちついて!」というメッセージを伝える役割を担っています。クロストリジウム菌が出した酪酸が、腸の壁を通って、その内側にいる免疫細胞に受け取られると、Tレグへと変身するのです。>
つまりは<食物繊維が「免疫の暴走」を防ぐカギに!?>となりそうなのです。日本人は元々、食物繊維の多い食生活を縄文時代以来継続してきたわけですが、戦後、急激に欧米人のような食生活を取り入れ、食物繊維の少ない食習慣になってきました。昔に戻ればいいのでしょう。
実際、免疫細胞のTレグを増やす体質に改善したことが裏付けられています。アレルギー体質だった若者が僧侶の修行生活に入ったところ、その症状がなくなったり、減っていったというのです。皆さん、やはり精進料理がお薦めなのでしょう。
でもクロストリジウム菌が異常に減少して大きく体調を崩している人の場合、こういった食事療法だけでは容易に解決しないかもしれません。
それで以前録画していたのを思い出し見たのが<NHK 腸内フローラ解明!驚異の細菌パワー>
ここでは、まさにうんちを活用する療法が紹介されていました。<便微生物移植>です。
<クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)>に効果が確認されているようです。
上記NHK番組で、便、実はその中の細菌を抽出して、体内に移植するのを放映していました。たしかアメリカだったと思いますが、きれいな容貌の主婦、様子がおかしいのです。とても立っていられない状態です。診断の結果、便微生物移植法の実施を決断するのです。
他人の健康な便から抽出した細菌(あるいは微生物)を体内に入れるのですから、手術室(?)に入るとき、その女性はうかない様子でした。でも退室した直後かまもなくして、表情ががらっと変わるのです。人間変われるものですね。歩くのもやっとだったのが、堂々と歩き表情がとても明るく美しい表情になっているのです。
便はすごいパワーを持っているのですね。
長々と書いてきましたが、私の友人の研究、これとはまったく違いますが、その積年の執念みたいなものを見直す思いです。
なお、<【腸内フローラ】便微生物移植って何?>ではより詳細な情報提供サイトになっていて、参考になります。
今日はこれにておしまい。また明日。