180310 再エネ・ドイツの本気度(2) <激変する電力ビジネス 再生可能エネルギーへシフト>と<日弁連意見書等>もきちんと取りあげて
昨日は時間がなく、何日か前にぼんやり見た番組をうろ覚えの状態で、書こうとしたので、中身の中心が大きくずれてしまいました。
この番組<シリーズ“脱炭素革命”2▽激変する電力ビジネス 再生可能エネルギーへシフト>は録画していましたので、今朝しっかり見直して、メモもとって、いい内容ですので、少し紹介したいと思います。
ところで、日弁連は、長くエネルギー問題を環境問題の重要な要素として取りあげてきました。久しぶりにホームページを開いたら、かなり体裁が変わっていて、意見書などをすぐに見つけることができず、また整理した形で保存されているわけでないので、適当なキーワードで検索できたものをいくつか取りあげておきます。
一番古いもので、昭和58年のものがヒットしました。私の記憶ではもっと古いのがあったと思うのですが、見つかりませんでした。
<831029 エネルギーの選択と環境保全に関する決議>です。これは原発の選択の是非についての最初の方の問題提起だったと思います。
その後も90年代にはアースサミットに向けて、あるいはその後の対応策としていくつか意見があったと思うのですが、今回はさがしていません。
大きな問題提起となったのが平成12年であったかと思います。
<001006 エネルギー政策の転換を求める決議>は原発以外のエネルギーとして、再生可能エネルギーの選択を明確に訴えた初期のものの一つだったように思います。
その後は<061122 地球温暖化防止対策の強化に向けて>より明確な方針がでてきたように思います。とりわけ平成21年の和歌山で開催された人権擁護大会で発表された<091105 ストップ地球温暖化=HOTな心でCOOLな選択を~報告書(290p)>は民主党政権時代ということもあり、世界の潮流の影響もあり、再生可能エネルギーの具体的な推進策や発送電分離を含めた諸施策を従前以上に深めているものです。
それ以降も毎年のように意見書等を発表してきていますが、訴求力に乏しいのか、あるいは電力業界や産業界への説得力が足りないのか、ほとんど話題になっていないかのように思えるのは残念です。
とりあえずその一部を適当にピックアップします。
<110506 エネルギー政策の根本的な転換に向けた意見書>
<120719 「エネルギー・環境会議」が策定すべきエネルギー 政策に関する意見書>
<160405 「地球温暖化対策計画(案)」に対する意見書>
日弁連では、担当委員がドイツをはじめ西欧各地の先端事例について、どこかの議員さんのように公費を使って職員に報告書を書かすような恥ずかしいことは論外として、自費で参加し、自ら調査先の選択を事前に検討し、質問事項を送り、適切な専門家から現地でヒアリングを受けて、担当者が分担して報告書を書き上げ、それを前提に意見書を作成する方式を通常とっています。国内の関係機関・企業・自治体などに対する調査も同じです。
さてNHKの報道番組は、さすがに費用をかけ映像も見事で、取材力もさすがというものですが、日弁連調査が費用と時間が限られているので限界があるものの、基本的な方向性は大きな違いはないように思えます。とはいえ、やはり映像や電力会社や大企業トップの話はインパクトが強く、「脱炭素革命」というキーワードも俄然説得性が高いですね。
ではその概要を私のメモで書いてみようかと思います。
ドイツが中心になってEU政策を指導してきた中、大量移民受入問題などから、EU内で移民排斥を基軸に自国ファースト的な動きが広がり、ドイツ自体も盤石であったかようなメルケル政権も脆弱な政権運営となっています。それがこれまで地球温暖化対策のリーディングランナー的な巨大大国の行方にも影響が出てくるかもしれないと思いつつ、再エネシフトが新たにビジネスチャンスになりつつあるという、姿はとても興味深いものでした。
とりわけ脱炭素革命に舵を切ったという金融・ビジネスは、エネルギー事業の本体である電力業界にも大きな地響きを立てて変動を呼び起こしている姿は、この番組に登場する業界関係者の発言からひしひしと伝わってきます。
ドイツの電力会社は4社が大きいようで、再エネに熱心だったのは当初は、4番目のRWEと5番目のGWEだったようです。トップ2社は抵抗勢力として?あまり前向きではなかったと思われます。
そのRWEがとった戦略がすごいです。2社に分割して、6万人いた社員のうち、送電部門を担当する会社に4万人、発電部門の会社に2万人に割り振り、送電事業を中心に事業展開を進めているのです。投資家が先を読み、分社化を進めたというのです。再エネは、とくに太陽光発電や風力発電の場合気象に大きく影響を受け、均質電力あるいは電力の安定化が過大ですが、それをIT技術やなどイノベーションによる改善可能性が高い、利益を生み出すというのです。そこで送電事業に注力するのです。むろん日弁連意見書等で指摘しているドイツが採用した発電事業を有利に扱ったりしない、あるいは再エネ事業者の接続を制限させないとか、新たな送電施設の費用負担をもとめないとか、送電システムが公平に扱われている制度があることも大きいでしょう。
次に第5位につけているGWEはより積極的に再エネ事業中心策を採用しています。発電は火力発電所一基のみで、すべて再エネ発電です。しかも発電より送電に事業シフトするのです。発電はあま利益がえられない。送電によって多くの利益が生まれるというのです。それこそ発想の転換です。
原発、化石燃料による発電のいずれよりもコストが低いのが再エネです。それは再エネ技術の革新が急速に進化してコストが激減しているというのです。他方で、旧来の発電コストは高止まりして、低減しないのです。そして再エネ発電は小規模分散化するので、送電による接続を効果的・機能的に行えば、大きな利益が生まれるというのです。しかも再エネは送電事業に接続する必要があり、その接続利用料を受け取れ、その接続方法で需要供給のバランスを制御することで、多大な利益を獲得できるというのです。
電力の需要・供給の制御において、気象条件に影響される太陽光発電や風力発電では、気象予測が極めて重大なことはわかりやすいですね。それも気象予測そのものは他の機関に任せて、そのデジタルデータをビッグデータを扱える大型PCを使って分析し、PCだけを見て気象予測を行うのですね。こういった点はわが国でも相当導入されているのではないかと思います。
とはいえ、昨年の北九州豪雨をはじめ、実際の異常現象はまだまだ容易ではないのでしょうけど、改善あるいはイノベーションは急速に進んでいるようですので、期待したいですね。
他方で、需要の把握・制御については、消費者(家庭・工場)のデジタルデータ化で、需要予測を正確かつ迅速に行うシステムが稼働している、あるいは日々進展しているようです。
たとえば、家庭の洗濯機などの家電の電力消費量を把握するデジタルデータ化はどんどん進展しているようです。水道使用量などは、デジタルデータ化してITで中央制御部門に双方向で伝達することができるようになっていて、その秒単位での使用量の推移で、どんな電化製品が使われているか、あるいは使用量によって、機械の故障を発見したりできるなど、新たなビジネスチャンスにもなるというのです。
こういった分野は、スマホのアプリみたいなソフトが活躍できる、一人のアイデアで機能的な改善なり新たな価値創出になるわけですから、いわゆるスタートアップ事業が若者の間で増えているようです。ベルリンのビルの一画で、20代、30代の若者がどんどん新たな発送電に関わるシステムを発案して、それが企業を超えて国レベルでの契約まで行うようになっているというのですから、すごいですね。
再び発電予測に戻りますと、その正確性は、2日前だと誤差が3%前後、15分前(一挙に飛ぶ?)だと1%でしたか。このようなデータ解析がより進めば、新たな発電施設は必要ないとも言われています!そうなるといいのですが。
EUでは先般の日食の時、大停電が発生するのではないか、送電網に多大な負荷がかかって停止してしまうのではないかといった不安が渦巻いたそうですが、杞憂に終わったとのこと。
日食前は太陽光発電が7000メガワット(原発7基分)の発電だったのが、日食で0になり、日食が終わるとちょうど日中だったので、急激に14000メガワットの発電(原発15基分)と増大したというのですが、送電網はちゃんと対応したそうです。
それ以外に、送電に関してはどこにでもある南北問題がドイツにもあるようです。風力発電などは北海の洋上で大量に発電できますが、消費するのは南部の工場地帯ということで、北から南に大量の送電網が必要というネックがあるそうです。わが国でも北海道には再生エネルギーが大量に潜在的にあるのが、大量消費する関東圏までは離れすぎていますね。
結局、再エネについても地産地消であり、電力自立という大原則が最も有効なのでしょう。
そういったことに大企業が取り組みだしているということで、昨日いい加減な紹介をしたBMWがあげられています。ミュンヘンに本拠のあるBMWはたしか50年に再エネ100%達成、20年までに60%といった目標設定だったと思います。
その手段として、再エネを使用するようにシフトするだけでなく、自ら再エネ発電を行うことも始めているというのです。それがライプツィヒ工場で、風力発電機4機で工場の電力を100%とまかなっているというのです。
さらに工場内の機械を含め電力使用量を1分単位でデータ化して、消費の推移を予測、制御するエネルギーマネジメントを行っているのです。それにはEV車種2車について、生産ラインのなかに6000個のセンサーや機械自体にデータ化するような装置を設置して、集中管理しているのです。
これはまだ実験段階のようで、プレス機の電力使用量を把握するものですが、それでも意外な結果がでていました。大型の車両より、小型の車両の方が電力消費量が多かったのです。それでこんどは小型の車両の設計を変更して消費量を抑制するように改善したとのことでした。
これはある種のコスト削減策ですが、実のところはリコーの担当者が述べるように、新たなビジネスの創造であり、チャンスであり、そこに競争が生まれるところでしょう。
で、脱炭素革命は、むろん発送電に関わる企業だけの関心事にとどまるわけではないですね。とりわけ電力消費者の立場の家庭や企業も関係します。それおイニシアチブとして、RE100を打ち出して、世界各国から著名な大企業を含めどんどん参加しているようです。
再エネ100%を目刺し、その目的達成までの工程表を明らかにして、毎年その達成度を報告するという仕組みに参加すれば、RE100を標榜できるようです(ここは不確か)。
すでに先にあげたBMW、グーグル、アップルを含め膨大な数の大企業が世界各国から参加しています。わが国はというと、4社のみ。しかもリコー、アスクル、積水ハウスに大和ハウスです。悲しい現状ですね。むろん発送電分離など再エネ推進体制が整備されている国と単純に比較するのは日本企業にとっては気の毒かもしれません。いや、政府が悪いのだとか、電力会社が問題だとか、他への批判ではなく、世界の潮流に先んじるのであれば、むしろビジネスチャンスとして積極的に取り組んでもらいたいものです。
そういえばISO14000、14001なんかも、評判になると流行に遅れないように、次々と参加するのが日本企業の体質的なものかもしれません。このRE100はもっと条件が厳しいように思いますが、ここが正念場かもしれません。
リコーの例が取りあげられていましたが、ある工場で使われなくなった配管を活用して、その中に水を流し、その中にプロペラを回してマイクロ水力発電を実験的に行っていました。こういった配管は日本国内にも膨大な数、延長距離があり、商品化できるかもしれません。
自治体の活動も紹介されていて、福岡県みやま市では、太陽光発電をはじめて、電力の地産地消を標榜して人気を呼んでいるそうです。
まだまだRE100の目標は「遠い道」の観がありますが、夢のある目標で、期待したいと思います。
ただまとめたというより、メモを適当にとっただけのもので、整理したものではありませんが、私の備忘録になりそうです。
今日はこれでおしまい。また明日。