180318 なりすましの有害性と対応 <なりすまし全削除命令>を読んで
今日も森友・加計に前川氏問題が取りざたされていましたが、巨大な権力基盤ができそれが長く続くと、古代から問題が起こっていますが、今回も似たような印象を持つのは飛躍がありましょうか。
巨大な権力をもつと次第に謙抑的な姿勢が弱まり、まわりはその意図をおもんばかる傾向がでてくるように思うのです。プーチン大統領や習主席のように強力な監視体制が批判的な勢力を排除するわけですし、トランプ大統領のように個人の力で自分の意思に沿わないものを排除するのも一つの表れでしょうか(ま、彼は長期政権ではないですが、世界最大の権力者ですから)。それにしても国会を騙し、国民を欺したのは、佐川氏の答弁と財務省職員でしょうけど、その原因である不当・違法というべき契約を長期的にやってきたのは財務省・国交省ですから、それをやりおおせるには、人事的な組織構造からすると、内閣官房が関係しないとはいえないように思うのですが、丁寧に文書を読み込んでいって、担当者に聞き取っていけば、鮮明になるように思うのは甘いでしょうか。
佐川氏一人を問題にするのは、よくいうトカゲの尻尾切りかもしれませんが、本日のテーマと無理に関連づけると、佐川氏という、ある種のなりすましアカウントを使って、虚偽答弁や改ざんだけに集中して、嘘の埋設廃棄物を加工したりして、違法というべき契約により国有財産を貸付・売却処理したことこそ、問われるべきではないかと思っています。
ま、本日の話題に戻った方がいいですね。なりすましアカウントを使えば、自分と違う人間像が勝手に作り出され、ネット上で拡散して、時には非難の対象となったりするようなニュースを目にすることがあります。その方は大変な事態に追い込まれるわけですが、たいていの方は被害の経験がないので、実感がわきにくいかもしれません。
でもその危険はとても拡大しているように思えます。
さてニュース記事に移りましょう。
<ツイッター上で何者かに「なりすましアカウント」を作成された埼玉県内の女性が、ツイッター社(本社・米国)を相手にアカウントの削除を求める仮処分をさいたま地裁(小林久起裁判長)に申請し、認められていたことが関係者への取材で明らかになった。個々の投稿の削除が認められたケースは少なくないが、アカウント自体の削除を命じる司法判断は極めて異例。>
事件は、その女性について元AV女性であるという虚偽情報が勝手に作られ、本人であるかのような情報が流布され、その女性は当然、深刻な精神的苦痛を受けたのです。
<女性は飲食店経営などを手掛けている。・・・女性のなりすましアカウントが作成されたのは昨年6月。プロフィル画面に女性の実名と住所、ネット上などで見つけたとみられる本人の顔写真が掲載され、実在する元AV女優と同一人物だとする虚偽の情報が併記された。また、タイムラインには、この女優の出演作の画像が11回にわたって貼り付けられた。>
女性の代理人田中一哉弁護士は、その記事だけでなくアカウントの削除を求めて<同9月、人格権侵害に当たるとして同地裁に仮処分を申請。>これに対し、<ツイッター社は「(アカウント自体の)全削除をすれば、将来の表現行為まで不可能になる」と反論した。>
記事だけか、アカウントそのものの削除かが問題になったようで、<地裁は同10月、削除を命じる決定で「アカウント全体が不法行為を目的とすることが明白で、重大な権利侵害をしている場合は全削除を命じられる」との基準を示し、女性のケースもなりすまし自体が人格権の侵害に当たると認めた。>
事件は思わぬ形で決着がつきました。<ツイッター社は異議を申し立て、同地裁の別の裁判長による異議審が進められた。しかし、異議審中にアカウントが消えたため、同12月に同社が異議を取り下げ、審理は終結した。>結局、仮処分決定が残ったわけです。
なりすましアカウント作成者は、問題が大きくなって、自分が特定されるおそれを感じたのでしょうか、こういう匿名というか名前をかたって、他人の人格攻撃をするような人はたいてい、自分が表沙汰になることをとても怖がっているのでしょう。なぜ自分がやられることが嫌なことを、他人にするのでしょうか。これは聞いても答えはなかなか出てきそうもないかもしれません。
アカウント自体の削除命令について、<インターネット関連訴訟に詳しい神田知宏弁護士は「個々の投稿を削除する司法判断がなされても、同じアカウントで再び違法な投稿が行われる可能性がある。アカウント自体の削除命令によって将来の投稿まで差し止める判断といえ、被害救済の面で画期的だ」と話す。【近松仁太郎】>
たしかに仮処分決定で、削除命令が出れば、この事件でも9月申請で、10月決定ですから、極めて効果的ですね。今後はツイッター社も、これまでの対応を是正する必要があると思われます。だいたい匿名でいろいろ発言することや表現することはそれ自体、幅広く認められてもいいですが、それが繰り返しなりすましなど、虚偽情報で人格攻撃するような内容であれば、それはアカウントとして利用資格を将来にわたって合法的に保持できないと考えるべきではないでしょうか。
今回は、なりすましアカウント作成者が自ら削除したわけですが、そうでない場合、そのようなアカウントを利用させておく合理的理由をツイッター社が持ち合わせているとは思えません。
今後は、削除だけでなく、ツイッター社に対する損害賠償請求の訴えも視野にはいってくるのではと思います。
毎日社会面の<後絶たず 盗撮画像を添付/別人のわいせつ写真掲載 恐怖・不安、被害者「法整備を」>記事では、リアルにその問題状況を提示しています。
<ツイッターやフェイスブック(FB)などソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上のアカウントやページに「別の自分」が突然現れ、本人にとって不名誉な情報を発信する「なりすまし被害」。>
FBやSNSは本人確認が割合しっかりしているというのですが、やはり別人によるなりすましはあるのですね。ま、私はFBはこのブログを始めたこともあって、長い間遠ざかっていますが・・・
なりすまし被害の一例は次の通りです。
<神奈川県の50代の男性会社員は昨年2月、FBに自分のなりすましページが作成されていることに気づいた。氏名と勤務先を組み合わせたアカウント名で、自分の住所や出身地、職歴も掲載されていた。同5月には自身の勤務先の写真が投稿され、知っている人が閲覧すれば男性本人のアカウントだと誤解することが予想された。
また、男性が頻繁に利用していると見せかける意図なのか、風俗店の写真が複数回投稿された。電車内で女性の胸元を上からのぞき込むような画像も掲載された。男性は身近にアカウントの作成者がいるのではないかと疑心暗鬼になり、勤務先で部下に注意することにも不安を覚えるようになったという。>
このケースでは、男性は<接続通信会社を相手取ってアカウント開設者の情報開示を求め、東京地裁に提訴・・・審理中になりすましページは消えた。>わけですが、<地裁は今月14日、請求通り開示を命じた。>ということで、開設者に直接、動機を問いただすということのようですが、当然、損害賠償請求も検討しているのでしょうね。
その意味で、現在の裁判例の動向が割合、望ましい方向にありますから、今後なりすましでいたずらなり、人格攻撃なりしていると、開設者を特定され、今度はその責任を追及されることを覚悟してもらいたいと思うのです。
ただ、このような裁判による削除とか、開設者情報の開示とかは、被害者にとって大変な労力・負担でしょうから、よりスマートな解決のあり方が問われるべきでしょう。
<悪質な情報発信などに削除要請を行う一般社団法人「セーファーインターネット協会」(東京)の吉川徳明・違法有害情報対策部長は「SNS事業者には、悪意ある『なりすましアカウント』の速やかな削除などを進める責任がある」と指摘。その上で「加害者を特定しやすくするよう発信者情報の開示基準を緩める法整備も考えられるが、政治家や企業の不正を告発しようとする善意の発信者まで容易に特定される恐れもある。情報開示と表現の自由とのバランスが重要だ」と話す。>
情報開示基準を明確にすること、とりわけなりすましアカウントのような場合は、パロディとしても容易に許容されると考えるのはどうかと思いますので、個人的には原則禁止にすべきではないかと思うのです。早期に立法的解決なり、自主規制のガイドラインなりを検討して制度化してもらいたいものです。
今日はこれにておしまい。また明日。