土曜日午前11時前。
中央市場内にある小さな洋食屋
の前に私は立っていた。
この店は朝7時半から営業開始。
コロナ前までは夜9時まで
営業をしていたそうだ。
換気のドアの隙間からは
薄暗く人気は感じられない。
まぁ良いとドアを開けると同時に
手前に新聞を広げている男が一人
広げた新聞の下から上目遣いの
鋭い眼差しが私の視界に
ガチーンと差し込んできた。
ジョジョで不意打ちに登場してきた
スタンド使いの「ゴゴゴゴゴ」
という不気味な背後の効果音
が聴こえてきそうだ。
よく見ると店の主人である。
まるで何日も人と会っていない
ような表情で力無く
「いらっしゃいませー」と
今日初めて声を出したような
声量は更に沈滞ムードに輪を
かけた。
昭和の代名詞のような
ワンタンメンを食べ終えると
店主は気が早いのかレジ前で
待ち構えていた。
精算時に一言二言声をかけたが
彼はただ苦笑いを浮かべるばかり。
言葉にもならないとは
この事かもしれない。
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