
セッションで出会わさせていただく方々は、真面目で努力家で人生を一生懸命生きてこられた方が多いです。
ある40代後半の女性Aさんは、既婚で娘さんが1人おられ、夫婦で自営されておられました。
幼い時から、両親の働く姿を見てきた彼女は、口うるさく支配的な父親と、それに耐えるお母さんの間で、子供でありながら、親に甘えたりわがままを言ったりしないまま、成長しました。
学生時代にも散々、自分勝手な友人に振り回されてしんどい思いをしても、愚痴ひとつ言わずに、友人のわがままを出来る限り聞いてあげるような優しい性格でした。
やがて、結婚して早々に娘さんが生まれ、家業と育児で忙しくなっても、淡々と日々をこなしていました。彼女の夫は、そんな彼女に頼りきりで、あまり役に立たず、それでも彼女は、夫のことも息子のように世話をしていました。周りから見ても絵に描いたような良妻賢母です。
彼女にとって、周りの人の顔色を見て、ご機嫌をそこねないように関わるのは慣れっこになっていましたし、それが当たり前だと思っていたのです。
しかし、この世界の仕組みと言うのはある意味、法則として厳しいものがあり、彼女が、自立に傾けば傾くほど、目の前の世界には、自分の事しか考えない依存的な人が1人去ってもまた次々と現れてきました。
彼女がセッションに来てくださったのは、彼女の娘さんが、体調を崩してしばらく学校に行けなくなった時でした。
子供は親の無意識、傾きを見せてくれます。
娘さんは、もともと性格的に喜怒哀楽がはっきりしたタイプでした。
嫌なことは我慢せずに、ぶつけてくる、嬉しい時は心から喜ぶようなそんな素直な性格でした。
実はこの娘さんの表している性格そのものが、Aさんの本質のエネルギーだったのです。Aさんにはその遥か昔の自分の事は記憶にはほどんどありませんでした。
環境的に喜怒哀楽を素直に出せないまま、しっかりしないといけないと「偽りの自立」をしてきたAさんからすると、娘さんが体調不良を理由に学校にいけなくなった現実をどうしても受け止めることが最初はできませんでした。自分ならどんなに体調不良でも、我慢して登校してきたからです。いくら娘を説得しても全く効果はありませんでした。
Aさんにとって、娘さんの今の状態を毎日側で見て、これまでは自分1人で乗り越えてこれたけれども、耐え切れないぐらいの毎日になってしまっていました。
しかしこの出来事は、Aさんが、「本質の喜怒哀楽がはっきりした自分」と、別人格の頑張ってきた、「精神的に幼い時から自立してきた自分」と、内なる対極の自分のエネルギーに気づき、和解する最大のチャンスでした。
彼女が別人格さんにこれまで守られて、どんな苦難も耐えてこれた事に、心から感謝し、自らの中にも、娘さんのような喜怒哀楽のはっきりした自分が眠っていた事に、娘さんの姿を通して気づく事ができていきました。
「偽りの自立人格」を別人格として持っている人は、「大丈夫」という言葉をよく使います。
本当は全然大丈夫ではないのに。
周りからのサポートも別人格は拒否していくので、それが、限界に来た時に、ほとんどの場合、自分が心身を病むか、身近な大切な人がそうなっていくかのどちらかになります。
スピリチュアルな学びをしている人が、気をつけないといけないのは、その「偽りの自立人格」が、学びの途上で極端なポジティブシンキングにハマっていく事です。
そうなると、余計に傾きが大きくなり、目の前にはバランスとして、依存的だったり、ティカーと呼ばれる搾取的な人達に取り囲まれてしまうことになり、それを何とか変えようとするループを繰り返す人生になりがちです。
自分の内にある、弱さやわがままなところや、依存性や、そういった自分にはないと勘違いしていたエネルギーも、自分の切り離してきていた自分の身内として、大切に認め愛してあげる事ができれば、外側の世界に現れる事は少なくなります。
Aさんとはいろいろな対話をしていく中で、内なる対立を終わらせる事ができ、それに伴い、娘さんの体調も、少しずつ回復に向かっているようでした。
このケースでは、まさに娘さんが、お母さんを助けたことになりますね。Aさんも最初は困らされると感じていた娘さんに心から感謝できるようになった事は本当に良かったと思います。