四月 六日(木) 晴れ
明日にならないと確認申請許可が下りないので、杭打機械を見ながら昔の事件話を書こう。
そのⅠ―――
O現場では杭が打設中に折れた事があった。
ディーゼルハンマーでガッチンコ、ガチンコ、打っても打っても地上2mに
飛び出た所(6mは打ち込めて)から沈下して行かない。
直径 は600ミリ。ドラム缶と同じ太さだ。
支持層が上がっていたのだろうけれど、 お構いなしに打っている時に突然
杭 がボロボロと崩れた。
この時代はハンマーの衝撃力で直接打ち込むから、機械をフルに動かし、重い
おもりに変えて高い位置からガチンコ、ガチンコ打ち続けたものだ。
この一本の杭の為かなりの基礎補強をするハメになった。
そして、夕方の4時頃になるとワックスとモップを持って近所の駐車場(100m
以上は離れてた)にある乗用車に油が飛び散っているのを拭きとりに出向く。
最初からワックスが掛かっている車は簡単にクリーニング出来るが、洗車等を
した事もない様な車も含めて約50台、二週間もワックス掛けを行った事もある。
それに、「洗濯物に廃油が飛んで来た、壁が汚れた」と言われてはクリーニ
ング対策に出向く。
杭打工事のハンマーが上下する事に、汽車の蒸気の如くシュッパ、シュッパと
煙を吐く。
地上10m付近での発煙にともなって、廃油も混ざって飛んでいくものだ。
遠く離れてる民家の壁に白い紙を貼り付けて、一日でどの位飛んで来るのか調査
した事もあった。
そのⅡ―――
杭の先端は支持層だが杭の頭の部分はどこで出て来るかと言えば基礎、地中梁
を掘削して初めて現れて来る。
つまり、杭を打設した時は杭の頭は地面の中に埋 まっているのである。
既製の杭は構造上、中は空間だ。チクワの片方を尖らせたか、つぶしたかに過ぎ
ない様なものが、地中に埋まっている。
(削った鉛筆の芯を抜いたイメージで直径500ミリのコンクリートの杭)
当然、空間部分に泥も水も入るし土も入る。
新聞にたまに載る事件に、芯穴に幼児が落ち込んで中間で止まって杭を壊して
脱出・・・ なんて事も聞きます。
「この中へ石ころ一ケたりとも入れてはならん!」
てな事をおっしゃった監理監督官殿もいらっしゃいましたネ。
「無理ですよ、入れるつもりは無くても、石は入ってしまいます」
「それを防ぐ方法を考えるのが、アンタ達ゼネコンの仕事でしょ!」
(勝手な事ヌカスンじゃあないよ、全く……)と思いつつ、
「じゃあ何とか―――」と答えざるを得なかった。
(この顛末はいつか話に載せますからね)
そのⅢ―――
3000本以上も打たねばならない刑務所では、同一敷地内に杭打機が常時6台、
多い時は8台フル稼働(延べ4か月)したものだった。
この杭本数全てに打設前、打設中、打設後打ち込み長さの確認、地表へ出た場
合の切断撤去、溶接杭は溶接毎に二枚、最終沈下量測定等、一段階終了する毎に
一組の写真を提出する様に言い渡されてしまった。
つまり、一本の杭当たり6~8枚の写真が必要と言う事になった。
(隠れる所は全て写真に・・・)
という但し書きの一行を《何も考えず》タダ守る為にだった。
馬鹿な―――無駄なとも言えず、写真撮影カット数が杭だけで20,000の枚数を突
破してしまった。
実際竣工した時点で役所に提出したのは100枚にも満たなかった。
何の為の写真撮影だったのか今もって理解出来ない。
「何事も図面通りに、隠れる所は写真に・・・」
確かに設計図には記しては有るが、全ての杭に当てはまるのだろうか―――
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杭打工事の時や基礎工事の時は、設計事務所や監理者とのコミュニケーションが不足の為、
一見無駄な事に思える事でもついつい見逃してしまう場合が多い。
《しっかりした打ち合わせ会議を何度も行って、記録を残す習慣を身に付けよう》
これが私の杭打時(工事着手時)の教訓だ。
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