札幌・北海道のレトロ建物大好きおぢさん日記

札幌(北海道)のレトロでモダンな建物を見たり撮影するのを趣味としています。

札幌景観資産の建築探訪 第4号「旧小熊邸」、第19号「札幌聖ミカエル教会」、第29号「岩佐ビル」、第30号「旧沼田家倉庫」

2021-06-16 17:50:47 | 札幌景観資産・景観重要建造物

札幌景観資産とは

「景観形成上価値があると認められる建築物等、樹木、その他のもので、意匠、様式(樹木にあっては樹容)等が良好な景観を特徴付けているものや、将来のまちづくりに生かされる可能性のあるものなどについては、所有者の同意を得たうえで、「札幌景観資産」として指定し、地域の良好な景観の形成を推進しています。」 札幌市HPより

 

現在は第30号まで指定されていました。

第1号「日本食品製造合資会社旧工場」
第2号「北星学園創立百周年記念館」
(旧北星女学校宣教師館)
第3号「三谷牧場牛舎・サイロ」平成30年解体
第4号「旧小熊邸」
第5号「旧石山郵便局」
第6号「杉野目邸」
第7号「日本基督教団札幌教会礼拝堂」
第8号「八紘学園栗林記念館」
(旧吉田善太郎別邸)
第9号「八紘学園資料館」
(旧吉田牧場畜舎・サイロ)
第10号「旧石切山駅」
第11号「旧中井家リンゴ倉庫」
第13号「めばえ幼稚園」平成21年景観重要建造物への指定変更
第14号「日本福音ルーテル札幌教会」平成21年景観重要建造物への指定変更
第15号「沼田家住宅旧りんご倉庫」平成26年解体
第16号「旧沼田家りんご倉庫」
第17号「札幌市資料館」令和2年重要文化財指定への指定変更
(旧札幌控訴院)
第18号「北海湯」
第19号「札幌聖ミカエル教会」
第20号「エドウィン・ダン記念館」
(旧真駒内種畜場事務所)
第21号「城下医院」
第22号「カトリック北一条教会聖堂」
第23号「カトリック北一条教会司祭館カテドラルホール」
第24号「旧藪商事会社ビル」
第25号「髙城(たかぎ)商店」
第26号「札幌市水道記念館」
(旧藻岩第一浄水場)
第27号「旧市民会館前のハルニレ」
第28号「永井邸」
第29号「岩佐ビル」
第30号「旧沼田家倉庫」

 

このうち「白文字」はすでに紹介しています。

第3号、15号は解体のため指定解除
第13,14,17号は他の指定に登録されたため解除されています

また第12号は個人住宅で指定後に解除を希望されたものと思われます。

 

ご覧の通り札幌市が指定したもので、重要なのは「所有者の同意を得たうえで」ですね
このブログでは北海道新聞社発行の「札幌の建築探訪」より紹介して行きましたが、札幌景観資産に指定されているものが多いです。

ここでは「札幌の建築探訪」には記載されていない「札幌景観資産」を紹介していきます。(第27号は建物ではないため除外します)

 

 

第4号「旧小熊邸」 現ドリーバーデン

所在地:札幌市中央区伏見5丁目3-1
建設年:昭和2(1927)年
指定年月日:平成17(2005)年3月3日






北海道帝国大学(現在の北海道大学)の小熊捍(まもる)教授の自邸として、建築家田上義也の設計により建設されました。

小熊教授は友人の教授が建てたアトリエを気に入り、設計者である田上義也を紹介してもらい自宅の設計を依頼したとのこと
昭和2年といえば田上義也28歳のころです。


当初は南1条西20~21丁目にあったらしく、やがて隣にも田上義也設計の住宅が建設された。

 

東京帝国ホテルの建設で師事したアメリカ人の建築家フランク・ロイド・ライトの影響を受け、大きく張り出した軒、窓の形や水平性を強調したデザインなどにロイドの影響を感じられる。

 

現在はフィッシングショップの「ドリーバーデン」が1階と2階を使用しカフェを営業している。

内部を見るには釣りの商品かカフェを利用することだ。

 

 

正面に飾られているのは小熊教授です。
建築中に教授連を連れて見学に行ったら思ってもいないような作り方をしているので怒り「こんな家に金は払わない」と帰ってしまった。

その後に田上に謝罪し和解をしたエピソードがある
田上義也も若く自信もあり譲らなかったのでしょう。

 

ここは2階で階段の部屋側にまで窓があるのは珍しいのでは?

 

この建物にはまだエピソードがある
小熊教授が使用した後に、創立したばかりの「北海道銀行」の所有になり
東京から来た初代頭取、島本 融氏が居住し大変に気に入った
設計者である田上義也を呼び歓談したとある。

島本氏はこの家の増築、東京の自宅、それに70を超える北海道銀行の支店や寮、保養所の建築を田上に依頼した。

また小熊教授邸を訪ねた客が住宅を気に入り田上に建築の依頼をした。

田上さんの人生において大きな意味があった建物ではないか

所有者が変わったりしながら、平成に入ると解体を危惧した市民の保存運動が起こり現在の地に平成10(1998)年に再現されました。

当時の建物の建材はほとんど使われていないようなので移築とはいいがたいようですね
ただ建物のモダンさは当然として田上義也にとって意義のある建物と理解され保存しようとした当時の市民関係者に敬服いたします。

 

2020年9月撮影

 

 

 

 

第19号「札幌聖ミカエル教会」

所在地:札幌市東区北19条東3丁目4-5
建設年:昭和35(1960)年
指定年月日:平成19(2007)年12月19日

この独特の外観を持つ教会は東区の住宅街にあります
南向きの一方通行路沿いにあるので、初めてそこを通りかかると必ずや目に留まるでしょう。

設計のアントニン・レーモンドはチェコ出身の建築家で
フランク・ロイド・ライトのもとで学び、帝国ホテル建設の際に来日。
その後日本に留まり、モダニズム建築の作品を多く残し日本人建築家に大きな影響を与えた。

前述の田上義也ともそれが縁で知り合い自宅を訪ねたりと交友もあったようだ。

 


デザイナーとしてアントニン・レーモンドの名前がある
日本では1921年から1973年までいくつもの作品を残しているが北海道で設計したものは
この聖ミカエル教会のみ しかも綺麗に管理され現存しているのが嬉しい。

 

「勾配が途中で変化する大屋根のシルエットや、室内に光を取り込むスリットが入ったれんが側壁の配置、幾何学模様のガラス窓が特徴です。内部ではトドマツの太い丸太組みや、木の素材を活かしたシンプルで控えめなデザインの家具が見られます。ガラス窓からやわらかな光があふれる夜の教会も見どころです。安定感ある優しさがにじみ出す、一目見ると忘れられない景色です。」 札幌市HPより

 

ガラスに貼っているのは和紙で、レーモンド夫人の演出です
夫人は後日、貼り換えが面倒ではないかと悔いている発言があったようだ
だが、そのおかげで柔らかな光と模様の演出がとても素晴らしいと思う。

外観を撮影していた時に、関係者の方がどうぞ中に入って撮ってくださいと言っていただいた。
ただ、許可は必要かと思います。

 

2020年9月撮影

 

 

 

 

第29号「岩佐ビル」

所在地:札幌市中央区北3条東5丁目5
建設年:昭和25(1950)年 西翼増築)昭和37(1962)年
指定年月日:平成22(2010)年3月30日

元々はラムネ工場として建設され、その後にテナントビルになった
「鉄筋コンクリート造の明快なデザインが特徴的です。増築を経て現在は、札幌には珍しい中庭を持つロの字型のビルになりました。廊下などの共用部にはレトロモダンなビルの雰囲気を今も残し、工場として建てられたため天井が高いのも特徴的です」 札幌市HPより



正面から見るとちょっと古めのオフィスビルに見えるが、中央から中に入ると今は珍しい中庭スペースがある
車は壁のない狭い車路を上り下りすることになり慣れてないと怖いかも
今ではもったいない使い方の中庭も工場として建てられたからでしょう。

テナントが口を揃えて称えるのは天井高が4メートルもあること
これも工場としてゆえだが働いている職員にすると開放感があっていいだろうな
道路の向かいは札幌ファクトリーでこの辺が昔は工場地帯だったのが伺える。

見学はテナントビルなので各階へ行くのは関係者以外はNGでしょう。

 

2020年9月撮影

 

 

 

 

第30号「旧沼田家倉庫」

所在地:札幌市東区東苗穂5条2丁目11-18
建設年:昭和37(1962)年
指定年月日:平成22(2010)年7月21日



東区はタマネギの産地であり、この倉庫もタマネギ用の倉庫であった。
特に大きさは近辺で最大であり現在も面している三角点通りではランドマークとなっています。

 

宮田屋は1989年札幌市清田で開業しました
札幌を中心に9店舗営業しているが、この東苗穂店だけではなく他にもレンガ倉庫の店舗もあったり
席間が広く空間スペースの個性を大事にする店舗作りをしています

レトロ建物ファンとしては飲食店での利用はとてもありがたい
このお店はまだ利用したことがないので行ってみたいと思います。

 

2020年9月撮影