アコギおやじのあこぎな日々

初老の域に達したアコギおやじ。
日々のアコースティックな雑観

佐藤さんの話

2010-09-28 | Weblog
 蜥蜴の尻尾きりにならなければいいのだが…。


 厚労省元局長の村木厚子さんが無罪となった割引郵便制度不正利用事件に絡んで、大坂地検特捜部の主任検事が証拠物の改竄(ざん)をした容疑で逮捕された。その報道に際しての、前福島県知事の佐藤栄佐久さんの“第一感”だ。


 さすが、の洞察力だ。


 佐藤さん自身、県発注のダム工事に絡んだ贈収賄事件で東京地検特捜部の取調べを受けた経験がある。


 今回の証拠物改竄事件では新聞に「まさか」「意外」という見出しが躍る。検察という正義の象徴・権威が「まさかインチキの証拠づくりとは」というのが論調だ。


 確かに、悪人に悪さをされるより、正義の味方に悪さをされるほうがはるかに怖い。



 が、佐藤さんは自身の経験に照らしてみれば、検察による証拠の改竄や捏造などは、意外でもなんでもないというのだ。


         ◇


 一昨日の日曜日(9月26日)、会津若松市で佐藤さんと「世界がもし百人の村だったら」の訳者として知られる文学者池田香代子さんとの対談があり、出掛けた。


 佐藤さんの事件をはじめから注目していたし、著書「知事抹殺」を読んでからは、ぜひ直接話を聴きたいと強く願っていた。


 佐藤さんは県知事や国会議員など多くの経験をもち、それに裏打ちされた洞察と判断がすごい、といつも尊敬していた。


 息子のピアノ発表会と、地区のお祭りはあった。が、どちらも諦めた。


 このところ、検察が絡んだニュースも多かったし、プルサーマルも始まった。佐藤さんの話を聴くことは、なによりも優先すべきことだと判断した。


        ◇


 講演会、開幕。


 証拠物改竄の検事に対して、まず、佐藤さんの痛烈な批判を予想していた。

 が、佐藤さんの考えは私の予想をはるかに超えるものだった。検察の組織体質を身をもって知っている。だから、主任検事個人の事件に仕立て上げようとしている、と第一感で映ったらしい。


 件の主任検事は佐藤さんの事件でも取調べを担当しているが、佐藤さんは彼を恨むどころか、スケープゴートにされていると思われる彼に同情的でさえあった。


 検察ばかりではないらしい。ほかの役人も同様で、まず「完成図」を描き、あとは、それに向かって進むだけ。例えそれが間違っていたとしても、後戻りできない“経路依存性”だという。


 プルサーマル計画をはじめとしたエネルギー政策も、とのこと。


 検察も怖いが、エネルギー政策も非常に怖い。




 「完成図」に向かって進むだけ。途中で間違っていることに気づいても、戻ろうとしない。捜査も、エネルギー政策も。ついでに、メディアも、である。


 さらに恐ろしいのは、この国では国策を進めるに当たってアメリカにお伺いを立てなくてはいけないということだ。


 一番の問題点は、自分の国の進む道を、自分たち国民が決められない、ということだ。


        【付記】

 かつて、ある再審事件を注目し続けた。その事件でも、不自然な「証拠」があった。


 会社事務所の宿直員が殺された強盗殺人事件。深夜に事務所を襲い、宿直員をロープで縛った上で、刃物で複数個所を刺して殺害、金品を奪ったというもの。


 原審で捜査側が示した現場写真には、被害者を縛ったとされたロープが写っていた。


 なのに、事件直後の同じ現場を写した写真には、実はそのロープが写っていなかったことが、再審で明らかになった。


 事件直後の現場保全は、事件捜査の基本中の基本だ。直後の写真に写っていなかったものが、なぜ後日写っているのか。


 そもそもそこに本当にあったのか?


 被害者の傷と、凶器とされる刃物との関係でも、原審の認定事実にいくつかの問題が浮かび上がった。


 再審を傍聴していた人の多くは、こう感じたはずだ。


 「同じ凶器で、同じ傷。なのに、どうして捜査側の鑑定と、弁護側の鑑定と、ここまで鑑定結果に食い違いが出てしまうのか?」


 答えは、簡単だ。「この凶器でこの傷ができる」「この凶器でこの傷はできない」。捜査側も弁護側も、まず「結果」を決めてから「鑑定」をしているからだ。


 公判における鑑定などは、はじめから客観的なものではない。しばしば荒唐無稽なものもあった。


 そして、荒唐無稽なものがまかり通ることも、しばしばあった。


       ◇


 同じく、再審事件。かつて「徳島ラジオ商殺し事件」という事件があった。捜査側に脅された証人のうその証言によって、ある女性が有罪となった。長年の服役ののち、証言がうそだったことが明らかになって、女性は無罪を勝ち取った。


 無罪の言い渡し。その女性は「それでも私は日本の裁判を信用しておりません」と裁判長に言ったという。
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