「私、これが大好き!」と娘が声を弾ませて鍋の中の肉団子をつまんだ。その次につまんだのはウインナー。娘はお肉系が好きだ。
でも、鍋料理だと野菜や他の具材もたくさん食べてくれるので、栄養のバランスを考えて我が子の健康を気にかける妻にとっては理想の料理だ。
普段、仕事や友達関係で悩んでいても親には喋らずに一人で抱え込む娘。そして私は仕事人間で家庭では日常会話が少ない。
そんな私達でも鍋を囲むと「肉団子、おいしいね」「お父さんは牛肉が好きや」「春雨、もういけるで」「豆腐、火が通ってるかな」「次、何を入れる?」などの声も飛び交う。
家族で鍋を囲んで、「おいしい、おいしい」と言いながら食べると自然と心が打ちとけて、身体はポポカ、心もホカホカになり寒さもどこかに飛んでいき円満になる。
だから娘が社会人になって自立してからも、たまに我が家に帰って来た時、冬の寒い日には時どき定番の鍋を囲んで親子の絆を深めていた。
、
※慕嬢詩(ボジョウシ)=亡くした娘を慕う気持を綴った詩・文。私の創作語。