スーパームーン 注目されるようになった理由 きっかけは311
昨夜のスーパームーンをご覧になっただろうか?あいにく全国的に曇りや雨の天気となったので、月が雲の影に隠れて見られなかった人も多いだろう。しかし、月と地球の距離が近くなるというだけの現象なのに、どうして注目されるようになったのだろうか?
子供のころを振り返れば、スーパームーンが今ほど話題になることはなかったはずだ。月は地球のまわりを約27.3日の周期で公転していて、楕円形の軌道を回っていることから、地球から観測していると、遠ざかったり、近づいたりして、見かけの大きさが日々変化する。
月と地球の距離が最も短いときに、月と太陽と地球がちょうど一直線上に並んで、地球に近いところで満月を迎えると、スーパームーンになるわけだ。
「スーパームーン」は天文用語ではない
国立天文台によると、「スーパームーン」は天文学の正式な用語ではなく、定義もはっきりしていない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)で、月や惑星探査の情報発信を中心に広報活動を行っていた寺薗淳也さんの『夜ふかしするほど面白い「月の話」』(PHP文庫)によると、スーパームーンは、リチャード・ノル(Richard Nolle)という米国の占星術師が1979年に命名した言葉だ。
ノル氏は現在も活動中で、最新のブログを読むと「私がもともと提唱していたスーパームーンの定義をマスメディアが無視した!」とお怒りのごようすだが、いずれにしても40年前に生まれたこの言葉が、最近になって注目されるようになったのは理由がある。2011年3月、東日本大震災がきっかけだ。
2011年3月のスーパームーン
この年の3月19日(日本では20日)、月と地球の距離は約35万6577キロとなり、1992年以来、最大のスーパームーンになった。米航空宇宙局(NASA)はこのとき、スーパームーンに関する記事で「満月の大きさは、地球から最も遠いときに比べて14%ほど大きく、明るさは30%増しになる」と解説。さらに月の重力によって、潮の満ち引き(潮汐)が大きくなるが、海面上昇は数センチから10数センチ程度なので心配はないと述べた。
にもかかわらず、世間の人たちは、スーパームーンの8日前に日本の東北地方を襲った巨大地震と津波は、満月が引き起こしたと結びつけて考えがちだ。しかし実際には、1983年3月のときも、2008年12月のときも何も起こらなかったのだ。
2011年当時、日本ではスーパームーンどころではなかったので、それほど話題にならなかったが、2016年11月に69年ぶりのスーパームーンが訪れてから一躍注目されるようになった。2016年は毎月1回満月が見られる年で、10月から12月にかけて3回とも見かけの大きさ(視直径)が大きかったことから、天変地異を危惧する人たちの「スーパームーン症候群」に拍車がかかった。
最近では皆既月食と組み合わさった「スーパー・ブルーブラッド・ムーン(青い血の色の月)」とか、「スーパー・ブラッド・ウルフムーン(狼の血の月)」などと、怪奇じみた名前がつけられるようになったが、天文学者の間では、「一般市民の人たちが星空に関心を持つ良い機会だ」と歓迎する声もあるという。
ちなみに次にスーパームーンが見られるのは、2020年4月7日〜8日ごろだ。