増える都会のネズミ、まるで人間の影
驚異的な繁殖力や生存能力など人間との共通点も多いが
ネズミは、人間の影のような存在だ。人間は都会の地上で暮らし、ネズミはたいてい地下にいる。
世界の都市で、ネズミが増え続けている。過去10年間で15〜20%も増えたという推計もある。人間のすぐそばで暮らす生き物のなかでも、ネズミは最も嫌われていると言っていいだろう。不潔でずる賢く、荒廃した都会の象徴であり、病原体の運び屋というイメージもつきまとう。
ロングアイランドで育ったボビー・コリガンは、都会のネズミに詳しい専門家だ。1981年から研究を続け、世界各地の都市や企業から相談を受けている。シアトルではネズミが便器から姿を現す頻度が急増していると教えてくれたのも彼だ。
ニューヨークで最も数が多いのはドブネズミ(Rattus norvegicus)。ドブネズミは穴にすむ動物で、体のなかでは頭骨が最も大きいため、それより幅の広い場所ならどこにでも入り込める。先日、ニューヨーク市長のビル・デブラシオが、公営住宅のネズミを徹底的に駆除する新計画を発表した。同市は3200万ドル(約35億円)を投じ、ネズミが最も多い地区で最大7割を駆除する予定だ。
「ネズミは人間そのものです」
だが、ネズミを根絶するのは不可能に近い。一部の地区で殺鼠剤を使って駆除しても、生き残ったネズミがまたすぐ繁殖し、夜な夜な市内のごみをあさっていると、コリガンは話す。各都市がごみの処理方法を抜本的に改めない限り、「この闘いはネズミが勝ち続けます」
嫌われ者のネズミだが、本当にそれほど悪い生き物だろうか。私たちが嫌うネズミの特徴――汚さや驚異的な繁殖力、そして不屈の生存能力は、人間との共通点でもある。実際、ネズミは人間の出すごみや食べ残しをあさって生きているのだから、そもそも人間こそが汚いと言えるのではないだろうか。
コリガンは言う。「ネズミは人間そのものです。人間は自分たちのすみかを清潔に保っていないじゃないですか」