市川海老蔵も注目の地震雲 予兆としての信憑性に専門家は懐疑的
甚大な被害をもたらす自然災害の中で“予知”という言葉がよく使われるのが地震である。地震大国と呼ばれ、4つのプレート上に位置する日本には地震予知に関する多くの研究者や研究機関が存在しており、地震予知できる未来を目指し研究を続けている。
地震予知について研究する元東海大学特任准教授の織原義明さんはこう話す。
「いつ、どこで、どの程度の地震が発生するかを前もって的確に示すことは、現時点では科学的に不可能とされています。
しかし、地震に関係する確からしい“先行現象”が、これまでにいくつか見出されています」 日本人は昔から、動物の異常行動や井戸水の濁りなどを地震と関連付けて考え、「前触れ」「予兆」「虫の知らせ」などと言い表してきた。それらの“先行現象”にはどのような種類があり、どれほど信憑性があるのか、検証していこう。
2月13日深夜、福島県沖で震度6強の地震が発生し、多くの人が肝を冷やしたが、それを“予言”していたのが歌舞伎俳優の市川海老蔵(43才)である。
地震発生の9時間以上前に《なんとなくだけど、地震きて欲しくないなーとふと思う》とツイートしていたのである。 海老蔵は2019年12月に青森県で震度5弱の地震が発生したときも、同日朝に《なんとなく昨日から胸騒ぎしてるところにそれらしい雲、地震雲でなければ良いな》と投稿し、さらに2016年2月に神奈川県で震度4の地震が起きたときも、その2日前に《なんか今日雲が気になるのです。地震とかないといいな…》と自身のブログに予兆を綴っている。
過去5年間で3回も発生を“的中”させたことで、世間からは驚きの声が上がっている。
海老蔵が着目した「地震雲」とは、大地震の発生前に特殊な雲が現れることで、古くから世界各地で報告されている。 たとえば、2011年の東日本大震災のときも、発生6日前に神奈川県で、らせん状の白い雲に尻尾がついたような形の雲が観測されており、1995年の阪神・淡路大震災の8日前にも同様の雲が発見されている。
さらに、現れると最も短期間に地震が起こる可能性が高いとされているのが、細長い雲が2~3本きれいに並んだ「竜雲」、巨大な塊のような「熊のジョン」と呼ばれる雲である。
「雲というのは千差万別であらゆる形状や色があるため、その特徴によって科学的に地震を予測することはできないと思う」(武蔵野学院大学特任教授・島村英紀さん)というように、多くの専門家は雲と地震の関連性に懐疑的だ。
しかしその一方で、大地と空の密接な関係を示す研究もある。東日本大震災のときは3日前から宇宙と大気圏の境目にある電離層の電子密度が増していたことが証明されている。これは地震の前段階で地中の岩盤に力が加わることで、地表に出された放射性ガスなどが電離層に影響を与えたため、とみられている。地震発生前の大地の変動が、空中の雲の形状に変化を与えていることは充分考えられる。
空に関する予兆で言えば、「赤い月」が出るという説もあり、阪神・淡路大震災のときにも見られたという。
こちらの科学的な根拠は不明だが、地殻変動が影響している可能性も否定できない。