左ひざを痛め、立てなくなっても…長瀬智也が“最後のドラマ”『俺の家の話』に懸けた情熱
「国の宝にはなれなかったけど、家の宝にはなれたな。お前は観山家の人間家宝だよ」 そんな西田敏行演じる観山寿三郎のセリフに涙した視聴者も多かったのでは?
TOKIOの長瀬智也が主演を務めた『俺の家の話』(TBS系)が最終回を迎えた。衝撃のどんでん返しと伏線回収の連続は、ファンたちの度肝を抜いたことだろう。
本作は長瀬と脚本家の宮藤官九郎が11年ぶりにタッグを組み、「能楽の人間国宝」の家族が織りなすドラマを描いた作品だ。 「長瀬演じるピークを過ぎたプロレスラー・観山寿一が、西田演じる能楽の人間国宝である父の介護のために現役を引退し、名家の長男として介護問題や遺産相続バトルに巻き込まれていく様子を描く異色のホームドラマです」(TBS関係者) それと同時に、今作は長瀬が俳優として表舞台で演じる最後の作品でもある。
本物のレスラーのアドバイスを受け、自ら演じたプロレスシーン
3月いっぱいでジャニーズ事務所を退所し、裏方に回ることを発表している長瀬にとってまさに集大成ともいえる作品だった。それだけに作品にかける本人の意気込みも半端ではなかった。制作会社関係者が言う。 「作中で長瀬さんは覆面レスラーとしてプロレスに復帰するのですが、プロレスのシーンでは作品の監修も務めた勝村周一朗さんなど本物のレスラーが常にそばにいて、指示やアドバイスをして目を光らせていました。1月にプロレスシーンを撮影した時には、長瀬さんが冗談っぽく『マスクしているなら俺じゃなくてもよくない?』と言って笑っていましたが、それは逆に自分の中では『俺が全部やる』という決意の表れなのかなと思いました。『俺じゃなくてもいい』が、笑える冗談で通じるってことですから――」 そして、そんな本人の固い意思が見えたエピソードがあったという。
ケガをした長瀬は「大したことないよ」という素振りで…
「2月20日に八王子のさんたま道場のロケ地で撮影をした際に、長瀬さんが左ひざを痛めてしまったんです。ヒロイン役の戸田恵梨香さんへのプロポーズシーンの撮影中で、試合中に相手めがけて飛ぶ技の着地をするときに、捻ったのか打ち所が悪かったのか…」(同前) その日は17時半頃から21時頃までが八王子での撮影で、ケガが起きたのはそのうちの後半だったそうだ。 「一瞬、長瀬さんの動きが止まって、演出のスタッフが『あれ? もしかしてなんか(ケガを)やっちゃった?』みたいなことを言っていました。長瀬さんは『いや、大丈夫です!』みたいに答えて、その場はいったん終わった。特に何かザワついたり、スタッフが慌てるということは無くて、次のカットの撮影に進みました。その時点では、ケガをしているとは思っていなかったんですけど…」(同前) しばらくして、普段は長瀬の衣装を担当しているスタッフが本人の左ひざあたりをアイシングしはじめたという。 「そのときに初めて『ケガしたのかな?』ということに気がつきました。長瀬さん自身は『そんなに大したことないよ』みたいな素振りをしていましたけど、アイシングは受けていましたし、どこか痛めたというのはわかりました。最初のうちはリングに直接座ってアイシングを受けていましたけど、そこから立ち上がる動作が少し痛むようで、リングの上に待機用の椅子が用意されて座っていましたね。それまでの撮影では長瀬さんは本番に入る前は立って待機していたんですが、その後は椅子に座っての待機に変わりました」
痛みに耐え、1カ月後も足を引きずっていた長瀬
ちなみにドラマの中では長瀬演じるプロレスラーの観山寿一が右足のアキレス腱を断裂して車椅子に乗るシーンもあったが、それはもともと台本にあった話で、今回のケガとは関係ないという。痛めている足も逆足だそうだ。 そしてこれ以降、長瀬は演技をしているときこそ気丈に振舞っていたが、カットがかかると足の痛みからか辛そうな表情を見せていたとのこと。 「ケガは決して軽いものではなかったようで、2月20日の撮影から約1か月後の3月16日の撮影でもまだ足を引きずっていました。長瀬さんは痛みに耐えながら最後まで撮影をやりぬいたんだと思います」
最後まで見せた自身で演じ続けることへのこだわり
実は作中で長瀬とタッグを組んだ後輩・プリティ原を演じた井之脇海はプロレスシーンでは代役を使っていたという。激しいアクションも多い本作だけに、そういった代役を使う手段ももちろん考えられたはず。それでも長瀬は自身で最後まで演じ続けることに強いこだわりを見せていた。 「自分でも最後の作品ということで思い入れがあったのか、今まで以上に作品にこだわっていた気がします。セリフのテンションひとつとっても自分なりの意味があるみたいで『ここはこうしたいんです!』という案をどんどん演出の人に投げていて、それを受けてスタッフもその場で決めていく感じでした。役作りのために3か月足らずで10kg以上の増量もして、最初から最後まで長瀬さんの“覚悟”が感じられる撮影だったと思います」(前出・TBS関係者)
3月31日、長瀬智也はジャニーズ事務所を退所する
長瀬の撮影中でのケガについてTBSに確認すると「撮影中に左膝を痛めたのは事実です。その後の撮影は、ご本人と相談しながら無理のない範囲で行いました」との答えだった。 長瀬ほどの人気俳優の引退作品にもかかわらず、『俺の家の話』ではその情報を全く前面に押し出していない。「長瀬、最後の主演ドラマ!」と煽れば、間違いなく視聴率は上がったはずだ。にもかかわらずそれもやらなかったところに、長瀬のプライドを感じずにはいられなかった。 ジャニーズにおいては稀有な存在である「男が惚れる男」だった長瀬。今後の彼はどんな道を歩んでいくのだろうか?