「顔は見れないのですか?」
「ご覧になりたいですか?」
「ええ、できたら・・・」
「個人的には、あまりお勧めできませんが・・・」
「状態がよくないと言うことですか?」
「ええ、私の臭いでお分かりになりませんか?」
「確かに・・・」
「ただ、私が責任を持てるものでもありませんので、ご家族で決めて下さい」
「どうしようかなぁ・・・」
すると、親戚らしき中年女性が口を挟んできた。
「最期のお別れなんだから、顔ぐらい見ておきなさいよ!私も一緒に見てあげるから!」
躊躇う娘を無視して、その中年女性は、私に柩の蓋を取るように指示してきた。
「本当に開けてよろしいんですね?」
と、私は念を押した。
「構いませんから、早く遺体を見せて下さいよ!」と、中年女性は不機嫌そうに返事。
「では、早速!」と、私は事務的にテープを剥がし一気に柩の蓋を取った。
すると、中に潜んでいた猛烈な悪臭が勢いよく溢れた。
遺族は驚嘆の声をあげながら、柩から離れていった。
私は、続けて納体袋のファスナーに手をかけて言った。
「これから、お顔をご覧いただきますので、どうぞお近くに」
しかし、誰も近くに寄って来なかった。
言い出しっぺの中年女性も、顔をひきつらせたまま近寄ってこない。
「あのぉ、お顔をご覧になりたいのでは?」
私は、中年女性に目を向けて、柩に近づくよう促した。
中年女性は、不満そうに近づいてきたので、私は納体袋のファスナーを少し開けた。
緑色の皮膚が少しだけ見えた。
ハンカチで鼻口をおさえながら中年女性は尋ねてきた。
「これは何です?」
「故人様の身体です」
「え?身体?」
「そうです、身体です」
「・・・身体のどこ?」
「おそらく、頭部のどこかのはずですが・・・全部開けてみますか?」
「・・・」
「全部開けてみますか!?」
「イ・イヤ、結構です!結構です!は・早く蓋を閉めて下さい!」
中年女性は、後退りしながら、「見ない方がいい!見ない方がいい!」と、遠巻きに眺めていた遺族に叫んだ。
その様子を離れて見ていた娘さんは泣き始めてしまった。
中年女性はハイテンションで興奮するし、娘さんは悲しそうに泣きだすし、私はトホホ気分になった。
私は、娘さんが持っていた故人愛用のタバコを柩に入れて、急いで蓋をした。
そして、再び厳重にテーピング。
人は、死んで腐ってしまえば、誰からも嫌悪される汚物になるだけか・・・毬藻人間は、人のはかなさを訴えかけていた。
更に、その処理を生業としている自分に疑問を持たずにはいられなかった。
私は悩んだ。
着ているスーツを捨てるべきかクリーニングに出すべきか。
また、いつまでもこんなことをやっていていいのだろうか・・・。
迷いの中、毬藻人間と別れたのであった。
悪臭をプンプンさせながら。
「ご覧になりたいですか?」
「ええ、できたら・・・」
「個人的には、あまりお勧めできませんが・・・」
「状態がよくないと言うことですか?」
「ええ、私の臭いでお分かりになりませんか?」
「確かに・・・」
「ただ、私が責任を持てるものでもありませんので、ご家族で決めて下さい」
「どうしようかなぁ・・・」
すると、親戚らしき中年女性が口を挟んできた。
「最期のお別れなんだから、顔ぐらい見ておきなさいよ!私も一緒に見てあげるから!」
躊躇う娘を無視して、その中年女性は、私に柩の蓋を取るように指示してきた。
「本当に開けてよろしいんですね?」
と、私は念を押した。
「構いませんから、早く遺体を見せて下さいよ!」と、中年女性は不機嫌そうに返事。
「では、早速!」と、私は事務的にテープを剥がし一気に柩の蓋を取った。
すると、中に潜んでいた猛烈な悪臭が勢いよく溢れた。
遺族は驚嘆の声をあげながら、柩から離れていった。
私は、続けて納体袋のファスナーに手をかけて言った。
「これから、お顔をご覧いただきますので、どうぞお近くに」
しかし、誰も近くに寄って来なかった。
言い出しっぺの中年女性も、顔をひきつらせたまま近寄ってこない。
「あのぉ、お顔をご覧になりたいのでは?」
私は、中年女性に目を向けて、柩に近づくよう促した。
中年女性は、不満そうに近づいてきたので、私は納体袋のファスナーを少し開けた。
緑色の皮膚が少しだけ見えた。
ハンカチで鼻口をおさえながら中年女性は尋ねてきた。
「これは何です?」
「故人様の身体です」
「え?身体?」
「そうです、身体です」
「・・・身体のどこ?」
「おそらく、頭部のどこかのはずですが・・・全部開けてみますか?」
「・・・」
「全部開けてみますか!?」
「イ・イヤ、結構です!結構です!は・早く蓋を閉めて下さい!」
中年女性は、後退りしながら、「見ない方がいい!見ない方がいい!」と、遠巻きに眺めていた遺族に叫んだ。
その様子を離れて見ていた娘さんは泣き始めてしまった。
中年女性はハイテンションで興奮するし、娘さんは悲しそうに泣きだすし、私はトホホ気分になった。
私は、娘さんが持っていた故人愛用のタバコを柩に入れて、急いで蓋をした。
そして、再び厳重にテーピング。
人は、死んで腐ってしまえば、誰からも嫌悪される汚物になるだけか・・・毬藻人間は、人のはかなさを訴えかけていた。
更に、その処理を生業としている自分に疑問を持たずにはいられなかった。
私は悩んだ。
着ているスーツを捨てるべきかクリーニングに出すべきか。
また、いつまでもこんなことをやっていていいのだろうか・・・。
迷いの中、毬藻人間と別れたのであった。
悪臭をプンプンさせながら。
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2006-10-09 17:14:24
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