中村明日美子「ダブルミンツ」
この話しになんてコメントしていいのか……考えています。
とりあえず、BL界の懐の広さに感謝。
これほどマイナーで暗くて重いお話を
商業誌に載せちゃうことができるBLを取り巻く世界に限りなく愛を感じます。
エロというよりグロかったです。
面白いか面白くないかという以前に
微妙に受け入れられなかったっていうのが本音です。
つまり趣味趣向、もしくはエログロへのキャパシティーの大きさの問題だと思っております。
けっしてつまらないお話ではありません。
そこらへんの「エッチして終わり」だけのBL漫画と一緒にしてほしくない作品です。
お話は同姓同名の「みつお」と「ミツオ」の愛憎物語、
というと単純ですが、もっと複雑で深いです。
”飼い主と犬”または”SとM”という表面的な関係を隠れ蓑に、
この2人はもっと深いところで繋がれているのだと思います。
理屈ではないお互いの必要性を本能で求め溺れているのだと。
ふたりの男が人生を踏み外し堕ちていくお話です。
だから当然暗い。
最後なんてお船に乗って海外逃亡ですからね。
大陸目指すって君たちは「李歐」か!?←わかる人にはわかる(高村薫著「李歐」です)
とりあえずたどり着いた大陸でふたり仲良く暮らしているようで、
これはハッピーエンドということなのでしょうか。
相変わらず中村さんの美しい描線にため息が出ます。
ひとコマひとコマが完成されたイラストのように美しい!
独特の線が織りなすモノクロームの世界なのです。
その美しい絵でグロを描かれるとどうなるかというと、
相乗効果でよりおそろしくグロい現象になるわけでして……。
「同級生」のさわやかさしか知らないわたしには、ちょっとショックでした。
どっちがホントの「中村明日美子」なんだって。
そこで「曲がり角のボクら」を買ってみたのですが、
ますますわからなくなるはめに。
だって「曲がり角」は普通に(いや、あまり普通じゃないけど)少女漫画だったんだもん。
やはり代表作ともいえるらしい「Jの総て」を読んでみるべきなのでしょうか?
マリリンモンローになりたかったJ少年の話し……。
もうそれだけで普通じゃないって。
ぜったい加虐シーンでてきそうだわぁ~。
そうそう、中村さんの絵は制服を着た少年がよく似合う、とあらためて認識。
あれです、あれです、「トーマの心臓」とか「風と木の詩」とかの世界。←古っ!
寄宿舎もの描かせたらぜったい似合うと思います!
そういう意味では「Jの総て」は寄宿舎舞台ですし、はやり読むしかないかな~。
最後に同時収録の「温室の果実」はよかったです!
暖かいお話です。
救われました。ほっ。
いい加減そんなに気になっているのなら自分で買いなさいよと思うのですが、なんだか苦手な予感がプンプンするのですよ(だからって人を頼るな!)。店で「鶏肉俱楽部」を手に取っては戻すを繰り返しています。
「ダブルミンツ」のように、好きではないのに心に残るお話というのはありますよね。中村先生の絵柄は「怖い」と感じる時もあるのですが、だからこそ明るい話の純粋さが際立つようにも思いました。
今ちょうど萩尾望都の「訪問者」を読んでいます。「トーマ」の脇役オスカーの話。すごく良いですね。彼の天性の明るさや強さが眩しいです。もっと早い時期に読めば良かった。「トーマ」もこれから読み直してみたいと思います!
期待してたんだけど……。
でも、3巻で3000円って引きますよね~。
オークションでもあまり安くなっていないし。
お盆もなしで仕事したご褒美に買っちゃおう!
「訪問者」今初めて読むんですか?
あれは傑作ですよ~~!
もう涙が出ましたよ。
本当の父親じゃないとうすうす知りながら、それでも寄り添うオスカー少年に100ポチくらい連打したいです。
「トーマ」を描いた時にはこの話しできていたのかな~。
まあ”こういう背景を背負った少年”くらいには考えていらっしゃったんでしょうけど、萩尾センセーのすごさを認識させるられる作品です。
「トーマ」関係のお宝(?)もあるのでアップしますね。