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クリエイト速読スクールブログ
なおしのお薦め本(11)池上彰の情報力
NHK週間こどもニュースを担当していた著者。
生放送の前に、「日々、ニュースを見聞きし、人から話を聞き、専門書を探して読み、自分が理解する。その上で、自分が理解したことを視聴者にもわかってもらえるためにはどんな工夫をすればいいのか、自分なりに咀嚼してみる。その結果を文章にし、ビジュアル化する。さらに、子どもの素朴な質問に即座に対処できるように、自分の頭の中で『想定問答』を繰り返しておく」ということをしていたそうです。
わかりやすくて助かるなあ、などと気楽に見ていたのですが、氷山のほんの一角しか見ていなかったようです。著者は「こんな悪戦苦闘の日々の中から、自分なりの情報収集術を編み出してきました。」とのこと。それを「大胆にも読者のあなたにご紹介してしまおう」というのですから、期待が高まります。
著者が常に心がけていることとはなにか、まえがきにこうあります。
「『要するに、どういうことか』と常に自分に問いかけをしていると、漠然とわかった気になっていたニュースについて、自分がいかに知らないか、あるいは、実に浅い理解しかしていなかったことがわかってきます」
「自分はどれだけものを知らないか。それに気づくことで、物事に対して謙虚な気持ちが生まれ、理解するための意欲も生まれます。情報収集に対する情熱は、ここから生まれてくるのだと思います」
番組でもわかりやすく説明していた著者は、本を書く時もサービス精神を発揮しています。小見出しを読んだだけで中身がわかる、というのも配慮のひとつではないでしょうか。
たとえば、第一章・私の情報収集術では「新聞だって間違えることはある。だからこそ読み比べが大切」「問題意識を持っていると、情報は向こうから飛び込んでくる」「ニュースを短く書き直す訓練が役に立つ」など。
第二章・私の取材・インタビュー術では「人から話を聞き出すときは、『仮説』をぶつけてみる」「『聞きたい』気持ちを態度で示す。視線の高さを同じにしよう」「『うなずく』ことで相手の話を引き出す」「話し上手は、相手がうなずきやすいようにしゃべる」「あなたは『教えを請う』のだ」「何を聞きたいのか、まず自分に質問しよう」など。
第三章・私の情報整理術では「新聞記事のスクラップで、自分探しをしよう」「スクラップという『アナログ』が大切だ」など。
第四章・私の読書術では「書店で『時代』を感じ取ろう」「私の結論は、書店で『迷ったら買う』」「本は『奴隷』と『お姫様』に分ける」「本を読む時間は自ら『生み出す』もの」など。
第五章・私の情報解釈術では「それは単なる『情報』か、確認がとれたものか」「『健全な懐疑心』でニュースを見よう」「事実なのか解釈なのか。ビジネスでも『確認』が必要」など。
第六章・私の情報発信術では「良い文章か悪い文章か。音読すればすぐにわかる」「書いた文章を〝ひとり突っ込み〟すると考えがまとまる」「勇気を出して、途中経過の文章を他人にさらけ出してしまおう」「原稿はワインのように、書いたら寝かせておこう」「意識的に接続詞のない文章を書くことで、論理力を鍛える」「日ごろの観察力が表現力を鍛える」「図解してから原稿を書いてみよう」「誰に伝えようとしているのかを明確にする」などです。
ここだけはどうしても読んでいただきたい、という箇所をふたつ引用します。まずは、第四章・私の読書術からです。
「日ごろから良い文章に接していれば、自分が文章を書くとき、思わぬ力を与えてくれます。
言うまでもなく、相手に何かを伝えようとするとき、相手には、それについてのイメージを持ってもらわなければなりません。しかし、人間それぞれ感覚が違うように、同じイメージを共有するのはむずかしいものです。
それが伝わるような書き方はどうあるべきなのか、これはビジネス書やノウハウ書を読んでいては身につきません。ミステリーでもファンタジーでもいい、とにかくフィクションを読むことです。
小説を読んでいて、頭の中に絵が浮かんできたという経験は誰にもあるはずです。優れた小説は、よけいな説明をせず、かといって大事なポイントはきちんと押さえていて、読者がそれぞれのイメージを喚起する仕掛けがほどこされています。はっきりとした絵が浮かぶような文章が良い小説の条件なのです。
この手法を研究すれば、仕事で報告書を提出する場合など、的確に表現する際にとても役に立ちます。相手にイメージを喚起させる表現とはどのようなものか、知らず知らずに身につくからです。小説を読んではらはらドキドキしながら、いつの間にか、表現力を磨くことができるのですから、こんなにいいことはありません。
作家や名エッセイストと呼ばれる人たちは、子供のころに数多く本を読んでいるので、たくさん蓄積をしています。文章を書く際に、頭の引き出しにしまっておいた『蓄積』を取り出しているのです。
『そうか、自分の文章表現力が弱いのは、子どものころに読書が苦手だったからか』と思った、あなた。ちっとも遅いことはありませんよ。いまからでも少しずつ、いろんなジャンルの本を楽しみながら読み始めれば、いつしか自分でも気づかないうちに、文章表現力がついているはずです。私が保証します」
そこまで言われると、それじゃあ一丁やってみますかという気分にもなります。
最後に、第五章から「こどもニュース」での一コマを紹介します。
「原子力発電所の格納容器にヒビが入っていることに検査で気づきながら、それを関係者が隠していたという事件がありました。この事件を私が『こどもニュース』で説明したら、出演者の子どもが、『なんでバレちゃったの?』と問いかけるではありませんか。まるで『バレないようにすればいいのに』といった口調です。大人たちが『バレなきゃいい』という態度を常日ごろからとっていると、子どもたちもそうなってしまうのではないか、と私は大変危機感を覚えたものです。そのとき私は、『検査に立ち会った人の中には、こういうことをこっそり隠しておいてはいけない、と考えた人もいて、その人が明らかにしたので問題がわかったんだよ』と説明しました」
著者は、企業の不祥事とお詫び会見について、熱く語っています。その終わりに、教育的な言葉が「ついでに」と出てくるのですが、これこそ著者が言いたいことではないかと思います。
「ついでに言えば、こういう事件が起きたとき、家庭では子どもたちに対して、このニュースを素材に、何がいけないことなのか、どうして問題になっているのかを、きちんと説明しておくといいでしょう。それが、親の子どもに対する『倫理観』『社会性』の教育だと思うのです」 なおし
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湧きました。
本を読む、文章を書く、といったことへの
取り組み方をこの本から学べそうな気がします。
『こどもニュース』の件、ハッとさせられました。
自分は親ではありませんが、それでも子供たちの
前で胸を張れるようでなければいけませんね。
たしか、土曜日早朝のラジオ番組の中で、
池上彰氏が時事ニュースを解説する1コーナーが
あると思います。難しいニュースをわかり易く
解説なさっていて、へぇ~、と感心することが
あります。そのあたりはさすがです。
記憶違いでしたらごめんなさい。
この本は、加筆・改題され、
いま文庫になっています。
『ニュースの読み方使い方』(新潮文庫) です。
難解な物言いをしていいのは、
口説き文句だけですな。
キミもアラフォーでまだ若いんだから、
シュアーなロジックと
デモーニッシュなことばを駆使し、
魅力的な女性がいたら口説かんとあかんよ
誠に感謝感激です。
まだそちら方面を諦めたわけではないですよ。
できることなら、ある日突然魅力的な女性を
伴って教室に参上して、松田さんやスタッフの
みなさま方のド肝を抜きたいと思っている
くらいですから。
大切さ、文章との接し方、相手との話し方等々、
参考になることがたくさん書かれてありました。
なるほどなぁ~、と思いながら読み進めました。
お酒に関して否定的なのが少し残念かと。
まぁ人それぞれですから何とも言えませんが。
全体を通しては、いろんな本を読もうとか、
またクリエイトでがんばろうとか、何かと前向きに
なれる本でした。
ありがとうございました。