ロードバイクのフレームがクロモリ(スチール)製のスタンダードケージから肉薄大径のアルミやカーボン製へと推移するのに伴い、ヘッドチューブ径も1インチのスレッド式からアヘッド式へ、さらにアヘッド式のインテグラルヘッドへと急速に推移して行くことになります。
今でこそ大径のインテグラルヘッドが当たり前になっていますが、ロードバイクの世界にアヘッド式のインテグラルヘッドが定着したのは2000年代に入ってからのことなのです。
1900年代の始めに近代的なロードバイクが誕生して以来100年近くもの間、ロードバイクのフレームがクロモリのスタンダードケイジが主流で、それに合わせヘッド部も1インチのスレッド式というのが当たり前だったのです。スレッド式ヘッドというのは、ヘッドチューブの外側に取り付けたステアリングコラムにステムを装着するためのネジ溝(thread)が切ってあったことに由来しています。
ところが、1990年代後半から始まったフレームの肉薄大径化に伴いヘッドチューブ径も太くすることが可能となり、オーバーサイズ1 1/8インチのヘッドチューブにベアリングカートリッジを内臓するインテグラルヘッドが主流となって行くのです。
インテグラルヘッドは剛性の向上や軽量化という面でスレッド式のノーマルヘッドをあっという間に飲み込んでしまいました。そればかりか、フレームのカーボン化に伴い高剛性化の為にヘッド径はMTB同様に1 1/4インチから1.5(1 1/2)インチへと大径化が進んでいるのが実情です。
ヘッドチューブ型の推移に大きな影響を与えたもうひとつの要因はハンドルステムの進化でした。スタンダードケイジのフレームに1インチのノーマルヘッドにスレッド式ステムというのがおよそ100年間にも及ぶロードバイクの基本でした。スレッド式ステムという呼称すらアヘッド式が登場するまではなかったということです。スレッド式ステムは今でも軽快車やシティバイクなどに使用されています。
対して、フォークコラムにネジを切らず、ヘッドチューブを通して上に出し、そこにクランプして固定するステムがアヘッド式と呼ばれているものです。今ではロードバイクはアヘッド式ステムが当たり前ですが、アヘッド式ステムが主流となったのは90年代の後半になってからのことなのです。
これは、それまでクロモリ製のフロントフォークが主流でしたが、90年代後半になってカーボン製のフロントフォークが多く使用されるようになったことが大きな要因なのです。スレッド式ではフロントチューブの上下にベアリングが挿入されたワン(カップ)にステムやフォークをネジ止めするのですが、流石にカーボンフォークにネジを切ることができず、ヘッドチューブを通しステムをクランプで固定するというアヘッド式を採用せざるを得なかったことが、アヘッド式が急激に普及した要因でしょう。
このアヘッド式もインテグラルヘッドも元々はMTBに取り入れられたものがロードでも使われるようになったという経緯があります。ヨーロッパではフレーム径が太くなることを嫌うメーカーが多かったのですが、ピナレロが1999年にアルミのメインフレームにカーボンバックとカーボンフォークを採用した名車プリンスが先駆となり、この時ピナレロが採用したのが「1 1/8インチコラムのインテグラルヘッド」だったのです。
プリンスの成功により、各メーカーも一斉に「1 1/8インチコラムのインテグラルヘッド」を採用し始め、2001年にはほとんどのメーカーが採用するに至るという経緯があったようです。