「The name is Bond, James Bond」
初代ジェームス・ボンドを演じたショーン・コネリーが亡くなりました(10月31日歿、享年90)。
その初代007が、自己紹介するときに使ったのが表題の言葉です。ご存じジェームス・ボンド
だよ、てな表現ですから、旗本退屈男のように尊大な見得を切る自己紹介をしたわけです。
この一言で007の性格付けができたように思います。上に挙げた写真のように、歴代の007を
演じた役者は6名います(写真上段左から順に、初代ショーン・コネリー、二代目ジョージ・
レーゼンビー、三代目ロジャー・ムーア、下段左から四代目ティモシー・ダルトン、五代目
ピアース・ブロスナン、六代目ダニエル・クレイグ)。
この6名の中で硬軟バランスよく織り交ぜて演じたのが初代。ですから、カチコチの二代目、
柔らかすぎる三代目、四角四面の四代目、クール過ぎる五代目、身長が190cm近い先代に比べ
て170㎝台からかアクション過多の六代目。それら面々がどこか物足りなく感じてしまうのは
僕だけの話ではないようで、やはりジェームス・ボンドと云えば、差し詰め「The name is
Sean,Sean Connery」となる。
写真の左右に貼り付けたポスターは、左が日本の1966年度劇場興行収入(外国映画部門)で断
トツの1位となった『サンダーボール作戦』(1965年製作、4作目)のもの。僕も長蛇の列が
出来ていた日比谷映画館で観ました。
右側のポスターは、その2年後に製作された『007は二度死ぬ』(5作目)のもの。舞台が日本で
すから、馴染みのある街並や建造物、景色などに加えて、相撲、忍者、湯女など日本文化も取り
混ぜてあって、中でも当時大森海岸にあった料亭「澤田家 福久良」が最初の方で使われている
(トヨタ2000GTで若林映子と訪れる)のが嬉し楽しでしたね。
だってね、当時僕は通学で大森駅までバスを利用していたので、多分高校2年のときだったと思
うのですが、9月13日らしいのですが、夕間暮れの帰途で「福久良」の前に沢山の車が止めてあ
ったのを目にしているのですから。
日本に上陸して最初に訪れる館のシーンが最後の撮影(夜間撮影)となって、主力は19日の
チャーター便で帰国したとのこと。
007と云えばボンドガールが無くてならないもの。浜美枝と若林映子がそれに当たるのですが、
そのキャスティングの経緯が面白い。
東宝の『キングコング対ゴジラ』(1962年)に出演していた二人を見て、製作者サイドが指名
したとのことですが、面白いのは、やはり二人が出演したスパイアクション邦画『国際秘密警察
火薬の樽』と『国際秘密警察 鍵の鍵』とをウディ・アレンが再編集して、『What's Up、Tiger
Lily』を作った。そこでは浜美枝の役名は「テリ・ヤキ」、若林映子は「スキ・ヤキ」にされた。
そこで、浜美枝がスキという役名(公安トップ役の丹波哲郎の部下という役どころ)でキャステ
ィングされたのです。なぜ若林ではなくスキになったのか不明ですが、結局は英会話が全くダメ
だったので、若林と役どころを交代させられ、若林が「スキ」になるのですが、日本人に馴染の
無い名前と分かって、役名もスキでなく、映子(アキコ)から「アキ」をとってそれに変えられ
た。
それなら、浜が演じた海女の名前「キッシー鈴木」というのも、いくら原作通りだとしても変!
浜美枝は他の役者に変えられそうになったようですが、結局はセリフを大幅に少なくされた上に、
一作目の『ドクター・ノオ』(当時は『007は殺しの番号』)以来毎回ボンドガールの吹き替えを
してきたニッキ・ヴァン・デア・ジルの声に変えられた。
丹波の発音にも難があったらしく、英国の俳優ロバート・リーティーが吹き替えた。
おまけに海女の役なのに潜水ができない。そこでショーン・コネリーに同伴していた妻のダイアン・
シレントが浜の潜るシーンを全て代わって撮影した。
で、若林映子はノープロブレムかというと…。彼女、自動車の運転ができなかった!
だから2000GTの運転シーンは、停車している車をスクリーンプロセス撮影で撮ったり、遠景のとき
には日本人の男性ドライバーにかつらとスカーフを被せて運転させたそうな。
何はともあれ、沢山の作品で胸をワクワク・ドキドキさせてくれたショーン・コネリー、有難う。合掌。
彼の007主演作品。
『ドクター・ノオ』(1962年)※『007は殺しの番号』
『ロシアより愛をこめて』(1963年)※『007危機一髪』
『ゴールドフィンガー』(1964年)
『サンダーボール作戦』(1965年)
『007は二度死ぬ』(1967年)
『ダイヤモンドは永遠に』(1971年)
番外編として『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』(1983年)。サンダーボール作戦のリメイクとして
別会社が製作。身体の切れ悪い太っちょのジェームス・ボンドが活躍?
25本ほどある007作品にあって、海外の批評サイトによるベスト3は、
1位:『ゴールドフィンガー』
2位:『ロシアより愛をこめて』
3位:『ドクター・ノオ』
とショーン・コネリー主演のものばかり。
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