「自動車ショー歌」解釈講座
先日の読売新聞の「編集手帳」欄で小林旭の歌う「自動車ショー歌」にちょっとばかりでは
ありますが触れてあったので、改めてその歌詞を調べてみました。
1番は口遊むことができます(覚えています)が、2番以降は聞き流していたから、うろ覚え
でした。
で、以下に4番までの歌詞を記してみます。
1.あの娘をペットに したくって
ニッサンするのは パッカード
骨のずいまで シボレーで
あとでひじてつ クラウンさ
ジャガジャガのむのも フォドフォドに
ここらで止めても いいコロナ
2.ビュックりするほど タウナスで
おまけに心臓が デボネアで
おやマアキュリーな 人だこと
てなてなおだてに すぐルノー
オペルオペルは もうお止し
あんまりコルトじゃ 身がもたぬ
3.あなたは私の ブルーバード
ミンクス買うよの 約束を
キャロルと忘れて ダットサン
こんど逢ったら コンテッサ
とっちめちゃおうと マツダけど
逢えばやっぱり オースチン
4.ベンツにグロリア ねころんで
ベレットするなよ ヒルマンから
それでは試験に クライスラー
鐘がなるなる リンカーンと
ワーゲンうちだよ 色恋を
忘れて勉強 セドリック
1、3、4番の歌詞の意味するところはおおよそ分かりますが、2番は結構難解。
で、僕なりの解釈をとりあえず2番を除いて以下に記しますね。
1.あの娘を自分の好い人にしたいからって、日参するのはバカだよな。
骨のずいまで搾られて、あとで肘鉄くらうのにさ。
(気を引くために通い詰めて)ジャンジャン飲むのもほどほどにして、
ここらで(入れ揚げるのを)止めてもいいころだ。
3.「あなたは、私の青い鳥だ。ミンク(のコート)買ってあげるからね」
との約束をケロリと忘れて脱兎のごとく(忽然として)姿を消したわね。
こんど逢ったら今度こそ、とっちめてやろうと待っていたけど、逢えば
やっぱり応じちゃう。
註)「オースチン」は、どう解釈すればよいか、悩みどころ。基本的に
社名や車名の音をその状態などに充てていることから、「オウス」
を「応ずる」(受け入れる)と捉えました。
大学生の小遣いでミンクのコートを貢ぐことができるのか怪しいの
でマフラーとかショールかも知れませんが、全体から臭ってくるの
は、田中邦衛演じる青大将のような金持ちのドラ息子。だからミン
クのコートで良いように思います。
「ダットサン」も「脱兎」を充てて上記のようにしました。
追記)3番は、女性側の思いなので、言葉遣いをちょっと変えました。
4.ベンチにゴロリと寝転んで、(彼女を思って)デレッとするなよ昼間から。
そんなことだと試験に落第さ。(ほら授業が始まる)鐘がキンコンカンと
なっている。まだ若いのだから、色恋を忘れて勉強せにゃ。
歌詞(昭和39年)は、星野哲郎(昭和39年は、コロムビアからクラウンに小林旭ともども移籍
した年)の手になるものですから、そこには一貫したストーリーが存在する筈。
ということを前提にすると、大学生とバーかキャバレーのホステスとの恋の駆け引きが見えて
きます。
さらに、小林旭は歌うときに身振り手振りを交えて歌詞の意味するところを表現することが多い
ので、星野哲郎から聞き知っているであろうこの難解な箇所をどう表現しているか、それを切り
取ったのが上に挙げた画像ですが、これも手掛かりになります。
「オペルオペルは もうお止し」では、煙草を吸うときのように人差し指と中指の2本を動か
すのですが、口から何かを二度出すようにも見えます。
「あんまりコルトじゃ 身がもたぬ」では、小指を立てるのです。小指が彼女を表わすのは常
識。
これらを参考にして、2番の歌詞を次のように解釈しました。
2.「びっくりするほどタフネスで、おまけに心がでっかくて、おやまぁ
キュートなひとだこと」、てなてなおだてにすぐ乗っちまう。
おだてるおべっかは、もうお止しよ。
(お前が)あんまり凝る(熱中する、惚れる)と(こっちの)身が持た
ねえや。
この歌、放送禁止となったことがあるのです。
なぜなら、1番の歌詞の最後のところが「ここらで一発シトロエン」としてあったからです。
1959年(昭和34年)に日本民間放送連盟により定められた要注意歌謡曲指定制度基準に抵触
したため。歌詞の流れから「一発云々」が引っ掛かったのでしょうね。
それで「ここらで止めてもいいコロナ」に直したのですが、最初のがOKであったなら読売新聞
で採り上げられることは無かった(そこでは現在のコロナ禍に結びつけてこの箇所を引用してい
るからです)。そして僕がこんな解釈を開陳することも無かった。(^^ゞ
(30日、一部手直ししました。)m(__)m
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