さなえのうた

歌いながらあちこちに出没します♪

Nr.1の小道具~misura~

2020-09-27 | オペラ研究
さて。

フィガロの1番2重唱の小道具を考えるのに、
ペータース版のト書きを参考にしました。
このト書きはドイツ語です。
Georg Schünemann ゲオルク・シューネマンという人が、
翻訳したものです。




~ドイツ語への翻訳~

ウィキペディアによれば、
シューネマンは、1884年にベルリンで生まれました。
ベルリン音楽大学で教授や学長を務めた人物で、
1945年、第二次世界大戦でドイツが敗戦をした年に、
ベルリンで亡くなりました。60歳でした。

1933年、ヒトラーが首相となった年に、
ナチスのcivil servants' association 公務員同盟(※さなえ訳)のメンバーとなり、
1940年にフィガロのde-jewied 反ユダヤ版(※さなえ訳)翻訳を発表しています。

さらに、ウィキペディアによれば、
ペータースは、1939年にナチスによって会社を没収されています。

1939年と言えば、ナチス・ドイツがポーランドに侵攻した年です。
第二次世界大戦の始まりです。

翻訳発表は、開戦の翌年…。

…そんな、背景を考えると、
ドイツ・ファーストを掲げるベルリン人のシューネマンなら、
イタリア語の misura を Zollstock と訳しそうな気がします。


フィガロのドイツ語翻訳については、
ベーレンライター版の前書きにも言及があります。




~ misura ~

ベーレンライター版およびリコルディ版では、
イタリア語でト書きに『フィガロは misura を手に』と書いてあります。

では、この misura をどう訳しましょう。

計器、はかり、物差し、巻き尺、メーター、メジャー…。
いろいろな訳が考えられます。

長さや大きさなどを測る・量る・計るための道具。
…要するに、↑ これです。

『フィガロは長さを測るための道具を手に』が
一番適切な訳でしょう。
…要するに、物差しでも巻き尺でもツォルシュトックでも、
ただの棒っきれでも良いということになります。




~ツォルシュトック~

misura を ツォルシュトック と訳したのは誤訳でしょうか。

ツォルシュトックがいつ頃できたのか、わかりませんが、
モーツァルトやボーマルシェの時代になかったとは言い切れないと思います。

舞台はスペイン。アルマヴィーヴァ伯爵邸です。
ヨーロッパ各国との交流はあったので、
ツォルシュトックがスペインにあってもおかしくありません。

よって、misuraをツォルシュトックとするのは、
間違いだとは言えないと思います。

それを使ってもよいはずだと考えます。

ですが、Zollstock には
『Zollという長さを測る棒』の意味があります。
Stock シュトックはスキーの杖であるストックと同じもの。
棒です。

misura をツォルシュトックと限定するのは間違いでしょう。
棒である必要もありません。


…音楽的には、とってもピッタリだと感じるのですが。



~物差し、巻き尺…~

ベーレンライター版には、イタリア語のト書きの他に
ドイツ語のト書きがあります。

misura をZollstock ではなく Maßstab と訳しています。
『長さを測るための棒』の意味です。
尺度、基準などの他、物差しとも訳されます。

ドイツ語だと、素材を限定しちゃうんでしょうかねぇ。

misura には棒の意味は含まれません。

リボンタイプの巻き尺でも良いってことでしょうねぇ。
コメント
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