小説家、精神科医、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、精神科医、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

孤独な女(小説)(上)

2017-06-29 19:22:24 | 小説
孤独な女

都内のマクドナルドである。
弓道部の友達の、順子と、悦子と、一緒に京子は、話していた。
京子は、東大の文科の学生だった。
「京子。有難う。経済学の授業のノート、とってくれて」
順子がアイスティーを啜りながら言った。
「いや。経済学だけじゃないわ。ほとんど、全ての科目は、京子の、ノートのおかげ、だもの。きれいな字で、読みやすくて。おかげで、授業に出なくても、アルバイトに専念できるわ。大学を卒業できるのは、京子の、おかげだわ。本当に有難う」
悦子が言った。
チキンマックナゲットのバーベキュー味を食べながら。
「でも、わるいわ。京子にだけ、お世話になっちゃって。私達、何も、京子に、お礼をしてあげられなくて」
順子が、アイスティーを啜りながら言った。
「そうね。世の中は、give & take なのに、私達は、京子に、take ばかりして、何も、give していなんだものね。申し訳ないわ」
と、悦子が、マックフライポテトを、口に入れながら、言った。
「い、いえ。いいんです。私。講義、聞くの好きですから」
と、京子が、小声で言った。
「京子は勉強熱心ね」
と、順子が言った。
「ところで話は変わるけど・・・」
と言って、順子は、悦子の、マックフライポテトを、一本、とって、食べた。
「ねえ。私。彼氏に、フェラチオしちゃった」
順子が悦子に言った。
「どんな気分だった?」
悦子が聞いた。
「とても、気持ちが良かったわ。精液も飲んだわ。フェラチオは、女にとって、正常な願望だわ。女は、男の精液を、受け入れることが、生殖行為でしょう。それが、口になった、だけだわ」
順子が言った。
「SMとかは、するの?」
悦子が聞いた。
「しないわ。SMって、わからないの。だって、縛って、放置するだけでしょ。男と女は、合体するのが、自然じゃない?それに、股縄なんて、女の股間を縛ったりするけれど、あれは、私には、さっぱり、わからないわ。股間を縄で縛っちゃったりしたら、性交が出来なくなっちゃうじゃない。ねえ、そう思わない。京子?」
順子は、京子に視線を向けて聞いた。
「え、ええ。そうね」
京子は、二人の話に合わせるように、無難なことを言った。
しかし、京子は、心の中で、二人とは、正反対のことを感じていた。
実は、京子は、まだ、処女だった。
彼氏も、まだいない。
しかし、順子も、悦子も、二人とも、とっくに、ロストバージンで、順子も悦子も、京子が、いくら純粋だからといって、ロストバージンしている、と、見なしているようだった。
また、そのように、京子も装っていた。
人間は、自分の感覚を、「人間一般の基準」、として、他人を見るものである。
しかし、京子の性欲は、普通とは違っていた。
普通、中学生の3年くらいから、高校生になるにつれて、女は、セックス、という行為に目覚めていく。
女の性欲は、男のように、能動的ではなく、受動的であり、そして、男のように、いつも、発情しているわけではない。
なので、女は、いつも、男のように、セックスのことばかり、考えているわけではない。
しかし、いったん、好きな相手に、身を任せて、男の愛撫を受けているうちに、性欲に火がつくと、女の性欲は、男とは、比べものにならないほど激しい。
なにせ、女は、全身が、性感帯であるからだ。
しかし、京子は、セックスという行為を知識としても、知っても、それに、全く関心を持てなかった。
京子は、子供の頃、物心ついた時から、マゾだったのである。
これは、子供の時の、何かの、経験からではなく、先天的な、性倒錯であった。
子供の頃、テレビドラマで、女が、悪人に、つかまえられて、縛られて、拷問されたり、さびしそうにしているシーンを見ると、京子は、言い知れぬ官能を覚えた。
(ああ。自分も、ああなってみたい)と。
小学校低学年の時、「解剖ごっこ」、というのが、流行った。
それは、エッチな、悪戯好きな男の子達が、一人の、女の子を、わっと、取り囲んで、服を全部、脱がせてしまうという悪戯である。
脱がされた女の子は、もちろん、「やめてー」、と、抵抗した。
女子生徒たちは、皆、自分が、標的にされないか、と、おそれた。
しかし、そんな、悪戯が、成立したのは、男子生徒たちも、女子生徒の中で、元気で明るい、子を、標的に選んでいたからである。
彼らは、そんなことをされたら、本当に、泣きだしてしまうような、気の弱い、女の子は、狙わなかった。
男は、脱がされた仕返しに、今度は、逆に男達を、叩こうと、追っかけるような気性の強い、女の子を狙っていたのである。
だから、こんな、悪戯も、可能だったのである。
しかし、その悪戯は、もちろん、先生に知られて、イタズラした男子生徒達は、「もう二度としないように」、と、こっぴどく先生に叱られた。
それで、その度の過ぎた悪戯は、行われなくなった。
女子生徒たちは、ほっとした。
しかし、京子は、違った。
京子は、狙われなかった。
京子は、友達は、数人、仲のいい友達は、いたが、口数も少なく、真面目で、おとなしかったので、男子生徒達も、こういう女の子は、狙えなかったのである。
しかし、京子は、家に帰って、「解剖ごっこ」を、思い出すたびに、何ともいえない、興奮を感じるのだった。
(ああ。私も、男の子達に、寄ってたかって、服を脱がさて、裸にされたら、どんなに気持ちいいだろう)
(私も餌食になりたい)
と、思っていたのである。
そして、夢想で、男の子たちに、「解剖ごっこ」、の、標的にされて、着ている物を全部、脱がされて、裸にされて、男の子達に、裸を見られることを、想像して、心地よさに浸っていたのである。
京子は、勉強熱心だったので、成績も良く、中学は、東大合格者を多く輩出している進学校に入学した。
京子は、特に、打ち込むものがなかった。
なので、勉強に打ち込んだ。
なので、成績は、クラスでも、上位だった。
読書は好きで、よく本を読んだ。
特に、谷崎潤一郎を知った時は、ショックだった。
谷崎潤一郎の、小説のエロチックさに、京子は、魅せられた。
それと、団鬼六の、SM小説にも、魅せられた。
ヤクザに捕まって、裸にされ、縛られ、晒し者にされる、悲劇のヒロインに、自分もなれたら、どんなに素敵だろう、と、京子は、思った。
読書の楽しみを知って、京子は、どんどん、夢想の世界に入っていった。
将来、何になるのか、自分は何のために生きているのだろうか、という、根本的な、疑問が、心の中にはあったが。
そうして、京子は、無事、付属の、高校に進学した。
高校生になると、みな、お洒落をするようになった。
クラスでは、男子生徒と女子生徒が、つき合うようになった。
誰と誰が、セックスした、などという、噂も聞くようになった。
京子は、高校生になっても、数人の、気の合う友達は、出来たが、相変わらず、無口で、おとなしい、目立たない、生徒だった。
やることがないので、やはり、高校でも、楽しみは、読書くらいだった。
勉強の他に打ち込むことが、ないので、勉強は熱心にやった。
そして、東大文科一類に合格した。
部活は、一応、弓道部に所属した。
大学も、入ってしまうと、皆、アルバイトや、合コンなどの遊び、に、熱心で、授業に出る学生は少なかった。
しかし、京子は、他にやることが、ないので、2、3人くらいしか、出ない講義も聞いた。
というより、全ての講義に出た。
講義を聞くことで、何か、自分が何のために生きているのか、知る手掛かりに、なりはしないか、と思ったからである。
大学生になっても、京子の性欲は、マゾのままだった。
京子は、ネットで、エッチな動画も見た。
全部、SMもの、である。
京子は、SM動画で、裸にされて、陶酔している、ヒロインに、感情移入して、興奮した。
自分も、男達に取り囲まれて、裸にされて、みじめになりたいと思った。
しかし、SM動画、には、当たり、と、はずれ、があった。
最近の、SMビデオは、やたら、暴力的で、ムチで打ったり、蝋燭を垂らしたり、と、汚かった。
そして、男達も裸になり、女にフェラチオさせ、ペッティングし、そして、挿入して終わるのが、ほとんど、だった。
そういうのは、京子は、嫌いだった。
セックスと、SMを、ごちゃまぜにしている、のは、嫌いだった。
京子の、好きなタイプの動画は。
女だけ、裸にされて、様々な、みじめな格好に縛られて、男達は、服を着ていて、女を、辱めの極致に、おとしめて、笑っている動画に、京子は、興奮した。
見られているだけでいいのである。
ソフトとか、ハードとかの、違いとも、ちょっと違う。
あえて言えば、ソフトの方だが、女を裸にして、縛って、くすぐっている、だけ、では、興奮できなかった。
それは、男と女の、和解した性交であって、京子にとって、和解は、SMとは成り得ず、徹底的に、羞恥のどん底に落とされている、のが、好きで、それが、SMだと思っていた。
なので、京子は、SMは、動画より、写真の方が好きだった。
昭和50年代から、平成の初期の頃、の、SM写真は、京子の、好みに一致した。
その頃は、団鬼六が、SM小説を、たくさん書いていて、また、杉浦則夫という写真家が、ドぎづいSM写真を撮っていた。
杉浦則夫は、団鬼六と親しい写真家で、ドきついSM写真集を撮っていた。
女を、いきなり、裸にした写真ではなく、一人の女が、8枚くらいの、写真が撮られていて、初めは、ちゃんと、服を着ていて、軽く、後ろ手に縛られた、姿の写真があり、だんだん裸にされていく写真だった。
上着や、ブラジャーは、着けたまま、縛られていたり、パンティーが、中途半端に脱がしかけになっているままで、縛られていたり、と、ことさら、女を辱めようとしている写真だった。また、女に、ことさら、多少の自由を与えて、女に、恥ずかしい所を隠させる余地を与え、女の羞恥を煽っていた。
それは、極めてエロティックだった。
写真の中で、女たちは、本当にマゾの快感に陶酔していた。
静止した写真の中で、女達の、顔は、被虐の恍惚に酔っていた。
京子は、長い時間、写真の女達を見ながら、自分も、こんなふうに、されたい、という、妄想にふけった。
「放置プレイ」、とは、現在は、女を縛って、ほったらかしにしている、男の側の、サド行為という意味合いに、使われているが、「放置プレイ」、とは、本来は、縛られて、自由が利かず、いつ、縄を解いてもらえるか、わからない恐怖におびえているマゾの女の方にあるのだと、京子は、思っていた。
大学の友達が、SMクラブで、アルバイトして、「結構、儲かって、楽だった」、と、笑いながら言うのを聞いても、京子は、SMクラブで、アルバイトをする気には、なれなかった。
京子にサドの性格は無く、男を、ムチで、叩いたりして、いじめたい、とは、全く思わなかったし、見知らぬ男に、縛られたり、叩かれたり、したいとも思わなかった。
しかも、相手の男は、どんな男か、わからない。
無神経な、醜く腹の出た、中年男を、京子は、嫌っていた。
しかし、京子の、被虐願望は、どんどん、つのっていった。
京子は、自分で股縄をしてみた。
ベルトのように、腰に、縄を巻き、その縄尻を、股間に食い込ませた。
「ああっ」
尻の割れ目に、縄が食い込む、感触に京子は、喘いだ。
それが、どう見えるのか、見てみたくて、京子は、カガミで、股縄をされた、自分の姿を見た。とても、いやらしかった。
京子は、興奮してきて、自撮り、で、自分の、緊縛姿を、ネットのSM画像投稿掲示板に、投稿した。
顔が、ばれないように、顔は写さなかったり、豆絞りの猿轡をしたりした。
京子の、投稿した自撮り、の、写真は、何人もの好事家の、好評のコメントを受けた。
そのコメントを、見ることによって、京子の興奮は、ますます、強まっていった。
京子は、ハイレグの競泳用水着を着て、市民プールに行って、平泳ぎで、ゆっくり泳いだ。
わざと、一方通行に、区切られたコースを。
平泳ぎで泳ぐと、後ろから見ると、股が大きく開いて見える。
一方通行に、区切られたコースを泳ぐ人は、クロールで、速く泳ぐ人が多い。
エロ目的で、市民プールに来る人は少ない。
健康目的で来る人がほとんどである。
そういう人が、自分に、劣情を感じるか、どうかは、京子にとって、どうでもよかった。
ただ、それによって、自分の体を露出して、人に見られたい、という一方的な自己満足は多少、得られた。
それに、エロ目的の人はいないので、下手にナンパなどされないのが、安心だった。
京子の、被虐願望は、どんどん、つのっていった。
京子は、恥毛を剃って、パイパンになり、ノーパンで、短いスカートを履いて、電車に乗ったりした。
前に、小学生くらいの男の子、が、いると、そっと足を開いたりした。
男の子の視線が、はっきりと、集まるのを、京子は、感じとって、興奮した。
京子の、被虐心は、どんどん、エスカレートしていった。
京子は、少し離れた所に電車で行って、雑木林の中で、裸になった。
自然の中で、裸になる、という、アブノーマルな行為自体、京子の、官能を刺激したが、誰か来るかもしれない、という、怖さも、刺激的だった。
京子は、ノーパンで、股縄をして、エロ本や、エロビデオを売っている店に、入ったりした。
そこは、性欲に飢えた男達が来る場所なので、彼らの、視線は、まざまざと、京子に注がれた。それが京子を興奮させた。
しかし、男達は、痴漢は出来ないので、安全でもあった。
そんなことで、京子の、被虐心は、どんどん、エスカレートしていった。
しかし。
「京子の、被虐心は、どんどん、エスカレートしていった」、といっても、京子は、大学の勉強は、おろそかにしなかった。
京子の、悪戯は、月に、2回か、3回、程度であり、それは、友達が、彼氏とのセックスで、性欲を満たしているのに、対する、嫉妬から、自分も、性欲を、友達同様、満たしたい、という劣等感からであった。
京子にとっては、自分が、本当に何になりたいのか、という、哲学的な実存の問題こそが、一番、大切な関心事であり、性欲は、生物である限り、誰にでも起こる本能であり、京子の悪戯は、その本能の発散、処理に過ぎなかった。
そこらへんは、京子は、何事にも、きっちりと、けじめ、は、つける真面目な性格だからである。
京子は、ネットの、SM写真を見ているうちに、昔の、昭和50年代から、平成の初めの頃の、SM写真集が欲しくなった。
それで、ネットで検索してみると、神保町の、「田村書店」という古本屋が、昔のSM写真集だけを、専門に売っているのを、知った。
それで、京子は、その店に行った。
昔の旧き良き時代に思いを馳せているうちに、ネットの画像ではなく、写真集の実物を買いたいと思ったからである。
地下鉄・神保町と、水道橋の、間は、ズラリと古書店が、並んでいる。
その中で、田村書店、という、昭和のSM写真集だけを、あつかっている店があった。
京子は、その古書店に入った。
小さな店だったが、昔のSM写真集が、ギッシリと並んでいた。
女一人で入るのは、恥ずかしかったが、店の中に、客は誰もいなかったので助かった。
こんな、書店には、男しか、来ないのに、若い、きれいな、女が、来ているのに、店の親父は、疑問をもって、京子を見た。
京子は、しばし、いくつもの写真集を、パラパラッ、と、めくってから、気に入った写真集を、二冊、親父の前に差し出した。
おつりが要らないよう、本の代金ちょうどを親父に渡した。
ちょうど、その時、である。
一人の男が入ってきた。
「あっ」
と、京子は、声を上げた。
何と、男は、同じ大学の、同学年で、6人のグループで、ゼミも一緒にやったことのある、哲也だったからである。
京子は、買ったSM写真集をあわてて、カバンの中に入れた。
「や、やあ」
哲也は、あわてて、挨拶した。
「こ、こんにちは」
京子も、気まずそうに挨拶した。
このまま、別れてしまったのでは、二人とも、余計、気まずくなってしまう。
特に、京子の方が。
男が、エロ本屋に、入るのは、ごく普通のことだが、女が、エロ本屋に入る、というは、まず無いことだからである。
それを察して。
「ねえ。京子さん。ちょっと、喫茶店にでも、入らない?」
と、哲也が、気をきかせて言った。
「え、ええ」
京子は、顔を赤くしながら言った。
二人は、近くの、喫茶店に入った。
哲也も京子も、アイスティーを注文した。
「ははは。まずい出会いだったね。僕も、あの店で、SM写真集を、買うつもりだったんだ」
哲也が、笑いながら言った。
「単刀直入に聞くけれど。君が、SM写真集を、買う、ということは、君もSMに興味があるんだね」
哲也が言った。
「え、ええ。私。実は、マゾなんです」
京子は、顔を紅潮させて言った。
京子は、誤魔化しようが、ないことを知っていた。
ので、ことさら、最初から、結論を言った。
SM写真集は、女が、裸にされて、縛られた写真が、99%、であるからだ。
マゾの男が、女王様に、いじめられて、いる写真も、全く無いわけではないが、それは、例外で、写真の1%くらいしか、ない。
SM写真集は、スケベな男が、買う、ものである。
「哲也さんは、サドなんですか?」
京子が聞いた。
「そうだねえ。サドでも、あるけど、マゾでもあるんだ。これを、アルゴラグニーAlgolagnieと言うんだ」
「どうして、サドとマゾを、両方、持てるんですか?」
「マゾの女の人が、SM写真集を買うのは、わかりやすいよ。君は、裸にされて、縛られている、女の人の写真に、感情移入しているんだろう」
「え、ええ」
「じゃあ、僕のSM観を言おうか。聞きたいかい?」
「え、ええ」
京子が言った。
哲也は、話し始めた。
「もちろん、僕は、男だから、女を、いじめたい、と思うよ。空想の中で、だけだけどね。しかし、それだけじゃないんだ。僕は、いじめられている、女にも、なりたい、と思うんだ。SMは、なんと言っても、女が、主役さ。責め手の、男なんて、いなくても、女が、裸で縛られていれば、そこには、見えざる、女を縛った、男の存在がある。女が、自分を縛ることは、出来ないからね。女を縛る男は、観客で、縛られている女が、ヒロインさ。SM写真集の1枚の写真は、それ自体、一瞬の、劇さ。劇において、見ているだけの、観客の興奮と、観客に見られている、ヒロインの興奮と、どっちが、激しいと思う。どっちも、激しいだろうね。単純な、サドの男だったら、自分を観客の立場に置くことが出来るんだ。しかし僕は、欲張りだから、観客にも、なりたいけれど、主役にも、なりたいんだ。人間は、肉体は、男でも、精神だけは、女になることが、出来るんだ。それで、観客になったかと、思うと、その次の瞬間には、主役になったりと、自分を、固定した、視点に置くことが、出来ないんだ。それは、すごく、もどかしい。しかし、その、もどかしさ、に、いっそう興奮させられるんだ。君は、女だから、責められる、ヒロインの女に、自分の視点を固定して置いているんだろう」
「え、ええ」
京子は、顔を赤くして言った。
「哲也さんは、いつから、SMに目覚めたんですか?」
「生まれた時からさ。SMっていうのは、先天的な感性だからね」
「そういう君は、いつから、マゾに目覚めたんだい?」
哲也が、逆に聞き返した。
「私も、物心ついた時から、マゾでした。小学校で、女の子が、男子生徒に、エッチなことされているのを、見ると、私も、されたいな、と、思っていました」
「SMと、セックスは、似ているようで、全然、別のものさ。現代では、みんなが、自分は、ドSとか、ドMとか、平気で言うようになったけれど、本当の、SMは、もっと、人間性と関係のある、根の深いものさ」
「どういうことなんでしょうか?」
「今では、SMは、セックスの興奮を高めるための、ペッティング行為になっているんだ。だから、男女が、SMプレイをしたあと、必ず、本番行為をするだろう。SMビデオを、見ても、SMプレイをした後、本番行為をするだろう」
「ええ」
「SMと、セックスとは、本当は、関係ないものなんだ。人間の本性は、非常に、残虐なものがある。人間は、他人を徹底的に、おとしめたい、という、残虐な欲求があるんだ。それは、世界の歴史を見たって、わかるだろう。フランス革命の、マリーアントワネットの処刑だってそうだろう。マリーアントワネットは、ギロチンで処刑される前に、美しい髪を、バッサリ斬り落とされた。そして、昔は、すべて、死刑は、公開で、多くの人の晒し者にされた。人間は、人間を、徹底的に、おとしめたいんだ。それは、人間の本性さ。しかし、現代では、そういうことは、人権という点から、禁止されている。しかし、人間には、人間を徹底的に、おとしめたい、という、残虐な本性があるんだ。だから、現代では、その本能を、SMプレイという形で、その欲求をはらしているのさ。特に、日本人は、恥をかく、というのが、屈辱なんだ。西洋の、SMは、支配される、ことが、一番の、屈辱なんだ。西洋では、国と国との、戦争の歴史だろう。しかし、日本は、国内では、内戦は無数に、あったけれど、外国に支配される、という経験は、していない。しかし、日本人は、生き恥をかいて、生きることが、一番の屈辱なんだ。武士道の切腹でも、第二次世界大戦でも、日本人は、(生きて恥をかくよりは、死んだ方がマシ)、という感性をもっているんだ。これは、日本人特有の感性だね。男のサドは、女を徹底的に、辱めることに、快感を感じるし、また、女は、恥をかくことを、もっとも、おそれている。生き恥をかいて、生きるよりは、死んだ方がマシだと、思っている。日本の女はシャイだからね。しかし、その、最も、屈辱的な、ことをされてみたい、とも、本心では、思っているんだ。人間は、もっとも、タブーとされる、ことを、したがっているんだ。タブーというのは、逆説的なものなんだ。人間が、最もしたいけれども、人道上、してはならない、ことを、タブーとして、社会的に、閉じ込めているんだ。しかし、現実には、それは、出来ないから、女は、SMプレイという、遊びの中で、徹底的に、みじめ、に、なることに、快感を求めているんだ」
と、哲也は、アイスティーを啜って言った。
「哲也さんの、SM写真集に対する、複雑な感情は、わかりました。感覚としてまでは、本当には、わかりませんが。では、女は、縛られている女に感情移入するだけの、単純な、感覚だと思っているんでしょうか?」
「女は、性が、縛られている、女と同じだ。だから、同性だから、女は、圧倒的に、マゾの女に感情移入しやすいね。特に、君みたいな、美しい容貌ならね。女は、ナルシストだからね。でも、女でも、鑑賞者(サド)と、主役(マゾ)、の、どちらにも、自分を固定できない、場合だってあるさ」
「それは、どういう場合ですか?」
「たとえば、レズSMといって、女が、女を、いじめている、写真だって、あるだろう。あの場合、女は、いじめる女に、感情移入して、サドになることが出来る。女が男をいじめている写真やビデオもあるけれど、女は、それを見ても、興奮できない。男は、女のように美しくないからね。男は、ヒロインとは、成りえないんだ。でも、まあ、非常に、可愛い男なら、いじめたい、と思うことが、起こる場合もあるかもしれない。しかし、そういう男や写真は、ほとんどない。SM写真集の、ほとんどは、女が、縛られている、写真がほとんどだ。しかし、女は、女を、いじめたいと、思っている、男の精神にも、興奮しているのだから、責め手である、男の、精神を、感じとって、自分の中にとりこむ、ことも、しているよ。写真や、劇は人間の、精神の、関係性で、なりたっているからね。だから、責め手と、責められる女の両方が、なくては、この関係性は、生まれない。だから、君も、いじめられている、女を、いじめたい、と、思うこともあるはずだ。それは、縛られている女によりけり、だ。女は、弱そうな女を、サディスティックな、思いで、見ることもあるだろう」
「え、ええ。でも、そんなことは、ほとんど無いです」
「それは、君が、あまりにも、内気で、気が小さ過ぎるからさ。そもそも、君は、レズSMの、写真を見ても、いじめたいとは思わず、いじめられている、女の方に、なりたい、と思うだろう。君は、主役の方になりたい、と思う気持ちの方が、圧倒的に強いのさ」
「え、ええ」
「小難しいことを、言ったけど。サドとマゾは、もっと、簡単にも言える。人間は、美しい者を、いじめたい、困らせたい、という、悪徳的な本能がある。それが、サディズムさ。そして、人間は、いじめられて、困って、泣いて助けを求めている、美しい女を、見たい、という意地悪な本能がある。そして、その女を何とか、助けてやりたい、と、思う。かわいそうだ、と思う。それは、人間の、良い本能だ。しかし、いざ、その困っている美しい人が助かってしまうと、ああ、よかった、とだけは、思えないんだ。美しい女が、困っている、という状態、を、見ることに、気持ちいい刺激を受けるんだ。その気持ちいい刺激を、味わいたい、という、のが、サディズムさ。芥川龍之介、が、(鼻)という小説の中で、書いている。『人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる』と。」
「じゃあ、マゾヒズムは?」
「困っている、美しい人は、悲劇のヒロインさ。マゾヒストは、美しい人が、いじめられて、困っている、という状態、を、見て、自分自身が、その、悲劇のヒロインになりたい、と、思っているのさ。つまり、マゾヒストは、ナルシストなんだ。ボードレールの言葉を、借りて言えば、マゾヒストは、(死刑囚にして死刑執行人)、なんだ」
哲也は、アイスティーを啜って、話を続けた。
「それと、もう一つ。たとえば、学校や、会社で、気の小さい、女の子を、気の強い女が、いじめる、ことって、あるだろう」
「え、ええ」
「君は、小さい頃、学校でいじめられた、ことは、あるかい?」
「あ、ありません。でも・・・」
「でも、何だい?」
「小学校の時、解剖ごっこ、というが、流行ったことがありました。それは、エッチな、悪戯好きな男の子達が、一人の、女の子を、わっと、取り囲んで、服を全部、脱がせてしまう、というものでした。私も、その餌食に、なって、男の子達に、よってたかって、服を脱がされたら、どんなに気持ちいいだろう、と思っていました。でも、私は、ネクラでしたから、元気のいい男の子たちが、こわくもあったんです。いつか、いじめられるんじゃないかと。怖さと、被虐願望と、両方があって、それに、興奮と恐怖の両方を感じていました」
「だろうね。SMには、色々な要素があってね。いじめられる恐怖におびえていると、その観念が、どんどん、強くなって、発狂してしまいそうに、なってしまうんだ。観念の恐怖心は、いついつまでも、続くし、どんどん、大きくなっていく。だから、現実に、いじめられることによって、観念の恐怖から、逃れたいと思うようになる。現実に、いじめられることによって、観念の恐怖は、壊れてなくなる。だから、いじめられる、ことに、安心感を、得られるんだ」
「そ、その通りです。なにか、哲也さんの、話を聞いていると、今まで、自分は、どうして、マゾなのか、という、わからなかった疑問が、解決したような気がします」
京子もアイスティーを啜った。
「ところで。哲也さんは、SMフレンド、とかは、いるんですか?」
京子は、話題を変えた。
「いないね。SMクラブに行ったことは、数回、あるけれど、相手を、喜ばそうという、気持ちの方が、強くてね。マゾの女は、ナルシストだから、こっちが、相手を喜ばすために、奉仕している、みたいで、SM劇の、観客にもなれないし、ヒロインにも、なれない、から、所詮は、SMプレイには、ならず、興奮することが出来ないんだ」
そう言って、哲也は、アイティーを啜った。
「ところで、君は、SMフレンド、とかは、いるの?」
同じ質問を哲也は聞いた。
「いません。サドの男の人って、乱暴そうで、完全に、身を任せることが、怖いんです。相手に、不愉快なことを、されると、それが、後々、嫌なトラウマになってしまいそうで、怖いんです」
「そうだろうと思ったよ。でなけりゃ、女がSM写真集を、買う理由がないからね」
「哲也さんも、現実のSMプレイでは、満足できないから、SM写真集を、買うんですね?」
「ああ。そうさ」
そう言って、哲也は、紅茶を啜った。
「あ、あの。哲也さん・・・」
京子は、顔を赤くして小声で言った。
「何?」
「哲也さんの、SM観を、聞いていて、何だか、哲也さん、になら、完全に身を任せられるような気がしてきました」
「ふふふ。僕も、君を、縛ってみたくなっていたんだ」
「じゃあ、私を、縛って下さいますか?」
「ああ。僕も、君とSMプレイをしてみたいよ」
「じゃあ、お願いします」
「僕の方こそ」
「私の、家、近いんです。来てもらえますか?」
「ああ。じゃあ、行くよ」
こうして、二人は、電車に乗って、京子のアパートに行った。
水道橋から、総武線に乗り、東中野で降りた。
東中野駅から徒歩で15分くらいの所が、京子のアパートだった。
「京子さん。じゃあ、始めようか?」
「はい」
「あ、あの。哲也さん。よろしくお願い致します」
と、京子は、両手をついて恭しく言った。
初めてなので、緊張しているのだろう。
「ははは。そう、固くならなくてもいいよ。と、言っても無理だろうけどね。というより、固くなった方がいいのかな。本当のSMプレイって、何をされるか、わからない恐怖心だからね」
「こ、こわいわ」
「じゃあ、どんなふうに、縛ろうかな」
哲也は、京子が、買った、二冊の、SM写真集を、パラパラと、めくりながら言った。
「京子さんは、どんなふうに縛られたい?」
「・・・」
京子は、自分からは、言えず、顔を真っ赤にして、困っている。
「じゃあ、まず、服を全部、脱いで、丸裸になって。僕は、後ろを向いているから」
哲也が言った。
「はい」
京子は、素直に返事した。
哲也は、クルリと、体を反転させ、京子に背を向けた。
「じゃあ、服を全部、脱いで」
哲也が言った。
「はい」
背後から、京子の声が聞こえた。
パサリ、パサリ、と、服が床に落ちる音がした。
「あ、あの。哲也さん」
「何?」
「あ、あの。服を全部、脱ぎました」
京子が、背後から言った。
哲也は、クルリと、向きを変え、京子の方を見た。
京子は、一糸まとわぬ全裸で、正座していた。
右手で胸を、左手で、股間を、隠しながら。
「うわー。すごーい。京子さんの、裸、初めて見た」
哲也は、ことさら、驚いたように、言った。
「は、恥ずかしいです」
京子は、顔を赤らめて、言った。
「SMなんて、別に、縄を使って、縛る必要なんて、ないんだよ。女の人を、辱めるのがSMなんだから」
哲也が言った。
「今の気持ちは、どう?」
哲也が聞いた。
「恥ずかしいです。でも、なんだか、気持ちがいいです」
「そうだよね。僕は、服を着ているのに、君は、裸で、僕に、見られているんだからね」
裸の京子の、横には、脱いだ、服が、キチンと、畳まれて置いてあった。
「さすが、女の子は、礼儀正しいね」
そう言って、哲也は、畳まれた、京子のパンティーを、つまみあげ、パンティーのクロッチ部分に、鼻先を近づけた。
「あっ。哲也さん。お願いです。それだれはやめて下さい」
京子は、真っ赤になって言った。
「ふふふ。じゃあ、やめるよ」
そう言って、哲也は、パンティーを床の上に置いた。
「京子さんは、ナルシズムに浸っているんでしょう?私って、美しい女だって」
「は、はい。そうです」
京子は、顔を赤らめて、言った。
体を、見られるより、心を見られる方が、もっと、恥ずかしいものである。
「じゃあ、後ろ手に縛ろうか?」
「はい」
京子は、自分から、両手を、背中に回して、背中の真ん中で、手首を重ね合せた。
哲也は、京子の背後に移動して座った。
「ふふふ。細く、引き締まった、いい手首だね」
哲也は、そう言って、京子の重ね合わさった手首を、麻縄で縛った。
そして、また、京子の正面にもどって座った。
それまで、手で、覆っていた、乳房を、隠すことが出来なくなって、乳房が、顕わになった。
哲也は、京子の豊満な二つの乳房を、顔を近づけて、まじまじと見つめた。
「ふふふ。京子さん。大きな、乳房が、丸見えだよ。乳首もいい形だね」
哲也が悪戯っぽく言った。
「は、恥ずかしいわ」
哲也の言葉によって、京子の意識が、乳房や、乳首に行き、乳首が、少し、尖り出した。
「ふふふ。乳首が、尖り出したよ。でも、こうすると、もっと、尖るよ」
そう言って、哲也は、京子の乳首を、鉛筆の先で、つつき出した。
「ああー」
京子は、眉をしかめた。
京子の体は、もどかしそうに、揺れた。
しかし、両手を、後ろ手に縛られているため、どうすることも出来ない。
どんどん、京子の乳首が、尖り出した。
「ふふふ。京子さん。感じているんだね」
哲也は、意地悪っぽく言った。
「ふふふ。こうやって、女の体を、直接、手で触らないで、エンピツなんかの、道具で、間接的に、突く、ことによって、普通じゃない、悪戯っぽさ、背徳性、を、作るのが、SMなんだ」
哲也は、笑って、そう説明した。
「じゃあ、次は・・・」
そう言って、哲也は、京子の右足をつかんだ。
そして右足の足首を縄でカッチリと、縛った。
「ふふふ。別に、雁字搦めにしなくても、片方の足首を一ヵ所、縛るだけで、十分、女を、辱めることが、出来るんだよ」
哲也は、勝ち誇ったように言った。
「な、何をするの?」
京子は、何をされるのか、わからない、恐怖心で、おびえている。
「京子さん。床に横向きに寝て」
「は、はい」
哲也は、丸裸の京子の体を、抱きかかえて、倒し、床の上に、そっと、横向きに寝かせた。
京子の美しい黒髪が床に散らばった。
「きっと、恥ずかしさに、つらくなるだろうから、こうしてあげるよ」
そう言って、哲也は、京子の、股間に、パンティーを、乗せた。
女の恥部は、パンティーによって、かろうじて見えない。
哲也は、足首の縄の、縄尻をとって、椅子に乗って、天井の、梁に、ひっかけた。
そして、哲也は、縄尻を、グイグイ、引っ張っていった。
京子の、右足が、どんどん、縄に引っ張られて、天井めがけて高く上がっていった。
必然、京子の、股間も、広がっていった。
「ああー」
京子は、つらそうな声を出した。
「ふふふ。ややこしく縛らなくても、これだけで、十分、女の子を、辱めることが出来るのさ」
そう言って、哲也は、さらに縄尻を、グイグイ、引っ張っていった。
とうとう、京子の、右足が、ピンと、一直線になった。
哲也は、縄尻を、近くの、箪笥の取っ手に、結びつけた。
何も無ければ、恥ずかしい股間が丸見えになってしまうが、女の恥部は、股間の上に乗っているパンティーによって、かろうじて見えない。
「は、恥ずかしいわ」
京子は、顔を赤くして言った。
「京子さん。等身大の姿見のカガミを横に置いて、みじめな自分の体を見てみたい?」
哲也が聞いた。
「い、嫌っ。恥ずかしいわ」
京子が、顔を真っ赤にして言った。
「ふふふ。京子さん。親指を、残りの四本の指で、ギュッと握ってみな」
「ど、どうしてですか?」
「せめて、親指を隠している、ということが、丸裸にされても恥ずかしさに耐える、残された、唯一の方法だからさ」
哲也は、そう説明した。
京子は、親指を、ギュッと、残りの四指で握り締めた。
「ほ、本当だわ。恥ずかしさに耐えるのに、効果があるわ」
と、京子は、言った。
「ふふふ。昔の、SM写真集の、縛られている女をよく見てみな。みんな、親指を、他の四本の指で、隠すように、握っているから」
哲也が言った。
京子の股間の上には、パンティーが乗っている。
そのおかげで、秘部は、何とか、隠されている。
しかし、大きな尻と、尻の割れ目は、丸見えになっている。
恥毛は、きれいに剃ってある。
「京子さん。アソコの毛を、剃っているんだね。どうして?」
「そ、それは・・・」
と言って、京子は、言いためらった。
「それは、どうして?」
哲也は、問い詰めた。
「それは。一人で、股縄をしていたからです。股縄は、パイパンでするものですから」
京子は、顔を真っ赤にして言った。
「京子さん。パンティーをとってもいい?」
哲也が、聞いた。
「はい。哲也さんが、望むのなら、そうして下さい。私は哲也さんに、身を任せているんですもの。どんなに、つらくても、私は耐えます」
京子が言った。
「じゃあ・・・」
と言って、哲也は、股間の上に乗っているパンティーを、そっと、取り去った。
「ああー」
京子の恥部が丸見えになった。
「京子さん。どう?こういうふうに、丸裸を見られる気分は?」
「は、恥ずかしいです。死にたいほど」
「でも。僕は、楽しいよ。京子さんの、裸を見れるなんて」
「い、嫌っ。意地悪なこと、言わないで」
「京子さん。でも、やっぱり、アソコの割れ目を、見られるのは、恥ずかしいでしょう?」
「は、はい。恥ずかしいです」
「じゃあ、これで、隠してあげるよ」
そう言って、哲也は、ガムテープを取り出した。
そして、ガムテープをハサミで、10cm×5cmくらいの長方形に切った。
そして、それを、京子に見せた。
「京子さん。これを貼ってあげるよ」
そう言って、哲也は、京子の丸見えの恥部の割れ目に、ガムテープを貼った。
それによって、京子の恥部の割れ目だけは、見えなくなった。
しかし、この姿は、もう、一糸まとわぬ丸裸同然だった。
「はい。京子さん。これで、恥ずかしい所は見えなくなったよ。ほら、見てごらん」
そう言って、哲也は、カガミを、京子の股間の前に、置いて、カガミを京子の顔の方に向けた。
京子は、カガミを見て、真っ赤になった。
恥ずかしいが、恥部に、ガムテープが貼られて、性器の割れ目は、隠されて見えない。
「あ、有難うございます。感謝します。哲也さま」
京子は、敬語で礼を言った。
「京子さん。スリーサイズは、いくつ?」
「86.5。61。86.5です」
「本当かな。いつ、計ったの?」
「一ヶ月前です」
「じゃあ、今、計ってみるよ」
そう言って、哲也は、京子の、胸、ウェスト、ヒップ、を、巻尺で、計った。
「本当だ。86.5。61。86.5だ。理想的な、スリーサイズだ」
「は、恥ずかしいわ」
「じゃあ、気持ちのいいこと、してあげるよ」
そう言って、哲也は、京子の、足の裏を、毛筆で、スッと、なぞった。
「ああー」
京子は、苦しげに眉を寄せて、声を出した。
「ふふふ。気持ちいいでしょ?」
哲也が聞いても、京子は、答えられない。
哲也は、京子の、太腿、足の付け根、尻、などを、毛筆で、スッと、なぞっていった。
「ああー」
京子は、声を出した。
京子は、なんとか必死で、尻の穴だけは、見られないようにと、尻の肉に、力を入れている。
そのため、尻の割れ目は、ピッチリ閉じ合わさっている。
哲也は、京子の、太腿、足の付け根、尻、などを、毛筆で、スッと、なぞっていった。
「京子さん。お尻の穴を見られるのが恥ずかしいんですね」
「は、はい。そうです」
京子は、正直に答えた。
しかし、必死に、力を入れていた、尻の肉の力が、だんだん緩んでいって、京子の、尻の割れ目、が、開き出した。
「ふふふ。京子さん。尻の割れ目が、パックリ開いて、かわいい、すぼまった、お尻の穴が丸見えだよ」
哲也は、京子の、羞恥を煽るために、ことさら、京子に、言い聞かせた。
すぐに京子の尻の割れ目が、キュッ、と閉じた。
「は、恥ずかしいわ」
京子は、顔を真っ赤にして言った。
哲也は、また、京子の、足の裏、太腿、太腿の付け根、尻、などを、毛筆で、スッスッと、なぞるのを続けた。
しかし、京子も、長い間、力を入れて、尻を閉め続けるのは、疲れてきたのだろう。
また尻の割れ目が開き出した。
哲也は、その機を逃さず、いきなり、スッと、京子の、尻の割れ目を、毛筆でなぞった。
「ひいー」
京子は、悲鳴を上げた。
瞬時に、尻の肉に、力が入っていて、尻の割れ目が、閉じ合わさった。
尻の割れ目、や、尻の穴、は、敏感で、ちょっとの刺激にも、反応する。
京子は、尻の穴、を、刺激されるのは、初めてなのだろう。
「ふふふ。じゃあ、気長にいくよ」
そう言って、哲也は、京子の、足の裏、や、太腿や、太腿の付け根、や、乳首、首筋など、京子の体のあらゆる部分を、毛筆で、なぞった。
「ああー」
京子は、悲鳴を上げた。
尻の割れ目、を閉じ合わすことに、疲れてきて、尻の力が、また緩んできたので、京子の、尻の割れ目、が、また開き出した。
哲也は、それを、のがさず、すぐに、尻の割れ目、を、スッと、毛筆でなぞった。
「ひいー」
京子は、悲鳴を上げると同時に、すぐに、尻の割れ目、を、キュッと、閉じ合せた。
哲也は、また、根気よく、京子の、足の裏、や、太腿や、太腿の付け根、などを、毛筆で、なぞった。
あせらず、楽しむように、十分、時間をかけて。
すると、また、だんだん京子の、尻の割れ目、が、開いてきた。
哲也は、それを見逃さず、また、すぐに、尻の割れ目、を、スッと、毛筆でなぞった。
ひいー、と京子の悲鳴。
その繰り返し、である。
ふと、京子の、アソコを見ると、トロリとした、白濁液が、ガムテープの貼ってある、京子の、アソコから、流れていた。
「ふふふ。京子さん。感じているんだね」
哲也は、京子の、羞恥を煽るために、ことさら、京子に、言い聞かせた。
4度目、に、哲也が、京子の、尻の割れ目、を、なぞった時である。
「ひいー」
と、京子は、叫んだ。
しかし京子は、もう尻の割れ目を、閉じようとしなかった。
ひいー、ひいー、と、叫びながら、京子は、激しく体を揺らしながら、顔を真っ赤にして、
「て、哲也さん。もっと、やって。もっと、やって」
と、叫んだ。
「ふふふ。とうとう、京子さん、も、マゾに目覚めたね」
そう言って、哲也は、京子の、開かれている、尻の割れ目を、すっと、なぞった。
ひいー、ひいー、と、京子は叫んだ。
京子は、全身、汗だくである。
「て、哲也さん」
「何?」
「お願い。ガムテープを、とって」
京子は、顔を真っ赤にして叫んだ。
「ふふふ。とうとう、京子さん、も、マゾの快感に屈したね」
そう言って、哲也は、京子の、秘部に貼ってあるガムテープを、取り去った。
割れ目が、もろに現れた。
これで、京子は、体の全てを、晒すことになってしまった。
閉じた、恥部の割れ目からは、白濁した愛液が、ドロドロ、溢れ出した。
「み、見て。私の、体を隅々まで、見て」
京子は、あられもないことを、叫んだ。
「ふふふ。とうとう、京子さん、も、ついに、マゾに目覚めたね。言われなくても、見ているよ。どう。恥ずかしい所を見られる気分は?」
哲也が聞いた。
「い、いいわ。気持ちいいわ。最高に」
「じゃあ、もっと、気持ちよくしてあげるよ」
そう言って、哲也は、京子の、マンコの穴に、指を入れた。
そこは、愛液で、ヌルヌル濡れていた。
「ああー」
京子が叫んだ。
哲也は、ゆっくりと、指を動かし出した。
「ああー」
京子が叫んだ。
「て、哲也さん」
京子は、弱々しい瞳を、哲也に向けた。
「何?」
「お尻の穴も責めて」
京子は、顔を真っ赤にして言った。
ふふふ、と、笑いながら、哲也は、左手を、京子の、尻の穴に、ピタリと当てがった。
「ああー」
京子が叫んだ。
二点責め、である。
「どう?。こうやって、丸裸にされて、縛られて、抵抗できずに、お尻の穴とマンコを、同時に、弄ばれる気分は?」
哲也が聞いた。
「い、いいわ。気持ちいいわ。もっと、うんと、いじめて」
京子が、叫んだ。
哲也は、指の、蠕動を速めていった。
「ああー。いくー」
そう、叫んで、京子は、全身をガクガクさせた。
京子は、エクスタシーに達した。
「ふふふ。とうとう、気をやったね」
哲也が言った。
京子は、全身の力が抜けたように、ガックリしている。
「気持ちよかった?」
哲也が聞いた。
「ええ。有難う。最高に気持ちよかったわ。いじめられるのって、こんなに、気持ちいいものなのね。生まれて、初めて経験したわ」
と、京子は、言った。
哲也は、ティッシュペーパーで、白濁した愛液で、ベチャベチャに濡れている、京子の、マンコをふいた。
「足が疲れたでしょ。足を降ろすよ。それとも、まだ、このままでいたい?」
哲也が、聞いた。
「降ろして下さい」
京子が言った。
「じゃあ、降ろすよ」
哲也は、箪笥の取っ手に留めてあった縄尻を解いた。
そして、ゆっくり、縄を降ろしていった。
京子の足が、だんだん、下がっていった。
そして、ついに、足が床に着いた。
哲也は、京子の足首の縄もはずした。
これで、京子は、丸裸で、背中の後ろ手の、手首の縛り、だけになった。
哲也は、横向きに寝ていた京子の体を、起こして、京子を正座させた。
「ふふふ。かわいいね。京子さんの胸のふくらみ」
哲也が、言った。
途端に、羞恥心が、襲ってきたのだろう。
「は、恥ずかしいわ」
京子は、正座して、太腿を、ピッチリ閉じ合せた。
足を吊られてしまうと、もう、どうしようもない、という、あきらめ、の気持ちが起って、開き直って、しまえるが、なまじ、中途半端に、自由だと、恥ずかしい所を隠す動作が出来るので、羞恥心が起こるものである。
哲也は、しばし、顔を赤らめて、足をピッチリ閉じ合せている、京子を眺めていた。
「て、哲也さん」
京子は、小声で言った。
「何?」
「手首の縄を解いて下さい。お願い」
京子は、顔を真っ赤にして言った。
「ふふふ。わかったよ」
そう言って、哲也は、京子の背後に回った。
そして、京子の後ろ手の、手首の縄を解いた。
これで、京子の、手足は、完全に、自由になった。
京子は、自由になった両手を、あわてて、胸に当てて、乳房を隠した。
「て、哲也さん。服を返して下さい」
丸裸の京子が言った。
「ああ。いいよ」
そう言って、哲也は、京子の、ブラジャーと、薄いブラウスだけを、京子に渡した。
「ありがとうございます」
京子は、急いで、ブラジャーを着けた。
そして、次に、ブラウスを着た。
しかし、下半身は、何も履いていない。
大きな尻が丸出しである。
「は、恥ずかしいわ。こんな格好。哲也さん。お願い。下着も返して」
京子は、両手で、股間を隠しながら、言った。
哲也は、ニヤニヤ笑いながら、
「わかったよ。下着も返してあげるよ」
と、言った。
「あ、有難う」
哲也は、床にあるパンティーを、手にとった。
「さあ。京子さん。パンティーを、履かせてあげるよ。だから立って」
哲也が言った。
「じ、自分で履きます」
京子は、首を振った。
「それじゃあ、下着は返さないよ」
哲也は、意地悪っぽく言った。
京子は、しばし、迷った様子だったが、
「わ、わかりました」
と言った。
下着を、人に履かせられるのは、恥ずかしいものである。
子供じゃあるまいし。
しかし、それは、一瞬であって、履いてしまえば、もう安全である。
そう思ったのだろう。
京子は、立ち上がった。
太腿をピッタリ、くっつけて。
哲也は、片足ずつ京子の足を上げて、パンティーを、くぐらせた。
そして、スルスルと、腰まで、パンティーを、引き上げた。
そして、パンティーの縁のゴムを離した。
ピチンと音がして、パンティーは、京子の腰に、ピタリと貼りついた。
「ああっ」
京子は、大きな声を出した。
無理もない。
哲也は、パンティーの前後を逆にして、京子に履かせたからだ。
「ふふふ。パンティーが、履けてよかったね」
哲也は、意地悪っぽく言った。
「て、哲也さんの意地悪」
京子は、しばし困惑していたが、サッと、急いで、パンティーを、脱いで、パンティーを、反転させ、正しい向きで、足にくぐらせて、再び、腰まで引き上げた。
哲也は、スカートを、京子の前に置いた。
京子は、急いで、スカートも、履いた。
もうこれで、京子は、安全である。
「ふふふ。京子さん、が、パンティーを脱ぐ姿、色っぽかったな」
SMプレイをしたことを、思い出させるために、哲也は、そんなことを言った。
「て、哲也さんの意地悪」
京子は、顔を赤らめて、言った。
「ふふふ。SMっていうのは、女の子を、困らせることさ。つらくても、嫌なだけじゃなかったんじゃない?」
「そ、そうね。哲也さんって、予想もしない、意地悪をするんですもの。ドキドキしちゃったわ」
「じゃあ、今日は、この位で、終わりにしよう」
「有難う。哲也さん。長年の夢が叶って、嬉しかったわ」
「でも、僕は、本当のサディストとは、成り得ないな。本当の、サディストたるには、観客として、だけの、精神の持ち主、でなければ、ダメなんだ。SM写真では、ヒロインの女と、観客の男が、別れているだろう。マゾヒストは、純粋な、観客を求めているんだ。僕は、君が、どうしたら、マゾの喜びを感じられるか、という、ことを、考えていた。つまりは、君に対する、サービスさ。僕は、君の、マゾヒズムを満足させる手助け、の役割しか、出来ないんだ。君も本当には、満足できなかっただろう」
「いいえ。そんなこと、ありません。サディズムしか、持ち合わせていない人は、マゾヒストの心を推測しようとは、しないのでしょう。それは、純粋なSMという行為にはならないのかもしれませんけど。マゾヒストが、望んでいない、嫌なことも、純粋な、サディストは、するでしょう。それを、されると、マゾヒストは、心が傷ついてしまいます。後味の悪いSMプレイになってしまいます。それくらいなら、サドと、マゾ、を、両方、あわせ持っている人の方が、多少、物足りなくても、安心です」
「じゃあ、今日は、そろそろ、帰るよ」
哲也が言った。
「あ、あの。哲也さん」
「何?」
「あ、あの。また、いじめてくれますか?」
「うん。いいよ」
「有難うございます」
「どんな責めをされたい?」
「哲也さんに、お任せします」
「わかったよ。うんと、屈辱的な目にあわせてあげるよ。そうだな。今度は、ハードに。君を裸にして、吊るして、君が、泣いて、許しを求めても、やめないよ。もしかすると、本当に君を殺してしまう、かも、しれないよ」
「こ、こわいわ。それを聞いただけで。でも、それを、想像しただけで、ワクワクするわ」
「でも、どんな責めにするかは、秘密にしておこう。どんな、責めにしたら、君が、つらいか、僕も考えておくよ」
哲也が、帰った後、京子は、哲也に見つからないように、棚の上に置いておいた、スマートフォンを手にとった。
そして、京子は、パジャマに着替えて、ベッドに、うつ伏せになった。
そして、スマートフォンの動画を再生させた。
京子は、自分の、恥ずかしい姿を見るために、スマートフォンを棚の上に置いて、動画で写していたのである。
哲也が、「姿見のカガミを置いて、君の、みじめな姿を見せてあげようか?」と、聞いた時、京子は、「やめて。恥ずかしいわ」、と言って断った。
京子も、本心では、そうされたかったのだが、それを言う勇気がなかったのだ。
京子は、隠し撮りした、スマートフォンを再生させた。
京子が、丸裸にされて、後ろ手に縛られて、片足を吊られている映像が映し出された。
京子の、きれいに剃った、恥部、が、無防備に、丸見えになっている。
その横には、哲也が、座って、京子を見ている。
(は、恥ずかしいわ)
京子は、丸出しになった、性器を、哲也に、しげしげと、眺められていた、のだと、思うと、激しく興奮した。
哲也のSMプレイは、マゾヒストである京子に対する、サービスだと言った。
だから、本当の、マゾヒズムの快感は、得られない、と言った。
しかし、京子は、必ずしも、そう思っていなかった。
マゾヒストの喜びは、相手に、すべてを委ねてしまう、快感なのだ。
京子は、哲也に、すべてを委ねることが出来た。し、それに、快感を感じていた。
京子は、かなりの時間、さっき、哲也にされた、SMプレイを、見て、興奮していた。
十分、見ると、京子は、動画を止めた。
(哲也さんは、今度は、どんなふうに、私を責めてくれるのだろう?)
それを、思うと、京子は、激しく興奮した。
わからないことは、恐怖でもあり、興奮でもあった。
京子は、今日、書店で買った、SM写真集を、見た。
そこには、女が、裸にされて、様々な、奇態な格好に、縛られていた。
蟹縛り、胡坐縛り、狸縛り、海老縛り、吊るし縛り、机上縛り、椅子縛り、大股開き。責めも、棒つつき、蝋燭、剃毛、擽り、顔踏み、虫責め、錘吊るし、梯子責め・・・。
哲也が、帰った後、京子は、哲也が最初に言ったSM観は、ほとんど、忘れてしまっていた。
聞いていた時は、納得することも、多々、あったが、官能の興奮が、理性を、頭から、追い出してしまっていたのだ。
人間は、理屈による納得で、感情が、おさまる、ということはない。
どんなに、食欲の原理を書かれた本を、読んでも、腹が減っている時には、「食べたい」、という感情だけに、心が支配される。
どんなに、性欲の理屈を理解しても、それによって、性欲が、萎えるということはない。
その時、ピピピッ、と、京子の、スマートフォンが鳴った。
メールの受信音だった。
哲也からだった。
それには、こう書かれてあった。
「京子さん。すみませんが、京子さん、の友達に電話して、京子さんの、携帯の電話番号とメールアドレスを教えてもらいました。哲也」
京子は、嬉しかった。
京子は、むしろ、哲也との、交友をもっと、深めたくて、哲也の、携帯電話の、電話番号や、メールのアドレスを、知りたい、と思っていたのである。
しかし、それは、哲也と、SMプレイをする前には、言い出せなかった。
嫌な、プレイをされて、そのあと、しつこく、SMプレイを、したい、と、言ってくるのが、こわかったのである。
しかし、プレイの後では、違った。
哲也の、SMプレイは、京子にとって、とても、気持ちのいいものだった。
しかし、京子の方から、哲也に、携帯電話の、電話番号や、メールのアドレスを教えて欲しい、とは、言い出せなかった。
自分が、貪欲に、SMプレイを、したがっている淫乱な女と、哲也に思われたくなかったからである。
京子としては、哲也の方から、「携帯の、電話番号と、メールアドレスを教えてくれませか?」と、言って欲しかったのである。
しかし、哲也のメールアドレスを、知れて、京子は、嬉しかった。
「哲也さん。今日は、有難うございました。今度は、いつ、どんな、責めをされるかを、想像すると、ドキドキしています。京子」
と、書いて、返信メールを送った。
しかし、日が経っても、哲也からは、なかなか、メールが来なかった。
「京子さん。すみません。いろいろと、忙しくて」
と、しばらくしてから、メールが来た。
京子は、がっかりした。
そうこうしているうちに、夏休みになった。
哲也から、夏休みは、実家の、大阪で過ごす、という、メールが、京子に届いた。
京子は、せっかく、哲也と親しくなれたのを、キッカケに、哲也と、海水浴場に行きたい、と思っていた。
海水浴場は、女が、体を、男達に露出して、見せる所である。
京子は、前から、海水浴場で、彼氏と、手をつないで、浜辺を歩きたい、というのが、夢だった。
セクシーなビキニを着て。
京子には、そういうロマンチックな願望もあった。
しかし、一人では、行きにくかった。
京子は、今まで、高校でも、大学でも、真面目な学生を演じていた。
なので、もし、知り合いと、出会ってしまったら、ばつが悪い。
なので、京子は、江ノ島などの、人の多く来る所は、避けて、茨城県の、あまり知られていない海水浴場に、一人で行った。
割とセクシーなビキニを着て。
これが、哲也と一緒だったら、うんと、セクシーなビキニを着ることが、出来るのだ。
(ああ。哲也さんと、一緒だったら、どんなに素敵なことかしら)
そう思いながら、京子は、その日、海水浴場から、一人、さびしく、アパートに帰った。
女は、夏、解放的になる。
そもそも、女は、みな、彼氏がいる。
なので、女は、夏、楽しむことが、出来る。
しかし、京子は、彼氏を作ることが出来なかった。
無口で内気な、自分と相性があって、優しくて、つきあっていても、疲れない、そして、セックスしか要求してくるのではなく、京子の理想とする、SMプレイを、してくれる相手。
そういう、贅沢な条件が彼氏には、絶対、必要だった。
そういう、条件のあう、彼氏を見つけるのは、困難だった。
哲也という、それらの条件を、全て満たしている、男と出会えたことは、京子にとって、最高の喜びだった。
京子は、ゼミで、哲也と、一緒になった時、一目みて、哲也の雰囲気から、彼なら相性が合いそうで、つきあいたい、と、思った。
しかし京子の方から、「つきあって下さい」、と言うことは、出来なかった。
もし、断られたら、ショックだからである。
それに、哲也が、どういう男なのかも、わからない、ことが、わかった。
しかし、夏休みが、終わって、二学期になったら、また、哲也に会える、ので、それほど、落胆していたわけではない。
京子は、二学期が待ち遠しかった。
しかし。
毎年のことながら、夏は、京子の官能の炎を激しく燃え上がらせた。
ある晩、京子は、ネットで、エロ動画を見ていた。
見ているうちに、京子は、だんだん、興奮してきた。
夏休みで、哲也と会えない、ので、哲也に、SMプレイをしてもらえることが、出来なくなって、京子は、欲求が満たされず、だんだん、被虐の願望が高まってきた。
京子は、また、神保町の、SM専門の古本屋、「田村書店」、に行った。
恥毛を剃って、パイパンにして。
そして、自分で、亀甲縛りにして、ノーパンで行った。
京子は、いくつか、探した後、これは、いやらしそう、だと思う、SM写真集を、二冊、手にとって、店のオヤジの前に出した。
一冊、二万円で、二冊で、四万円、は、京子にとって、痛がった。
「もし。お嬢さん・・・」
オヤジが、老眼鏡をはずして言った。
「は、はい。何でしょうか?」
オヤジに声をかけられて、京子は、ためらった。
「あんた。学生さんじゃろ?」
「はい。そうです」
「なら、4万円は、ちょっと、きついんじゃないかね?」
「え、ええ」
「なら、一冊、二千円にまけてあげてやっても、いいんじゃが。どうかね?」
こんな申し出を断る理由はない。
「あ、有難うございます」
京子は、礼を言った。
「よかったら、ちょっと、中で話さんかね?」
「は、はい」
本をまけてもらった手前もあり、相手が老人でもあり、哲也と、一度、SMプレイをしたことが、あったので、京子は、不安を感じなかった。
書店の奥が、オヤジの家で、京子は、和室に座った。
和室には、座卓があって、京子は、その前に座った。
オヤジは、京子と向かい合って座った。
オヤジは、ポットから、茶を、入れた。
そして茶を京子に差し出した。
「どうぞ」
「有難うございます」
京子は、礼を言って、茶を、啜った。
「あんた。以前にも来たね。よく覚えとるよ。ここは、男しか来ん店じゃから、若い女が、来たのは、あんたが、初めてじゃからね」
「・・・・」
京子は、恥ずかしくて答えられなかった。
「あ、あの。4万円もの、商品を、4千円にも、まけて下さって、有難うございます。でも、どうして、そんなことをしてくださるんですか?」
「そりゃー、あんたが、若くて、きれいな女じゃけん。まけるのなんて、あんた、だけだよ。男だったら、絶対、まけたりは、せんね」
「・・・・」
あからさまに、おだてられて、京子は、赤面した。
「ところで、あんた。名前は何というんだね?」
「佐々木京子と言います」
「そうか。わしは、田村権蔵という」
「そうですか」
オヤジは、話を続けた。
「そもそも。今時、こんな、昔のSM写真集ばかりを、並べていても、ほとんど、儲けなんか出やせん。今は、ネットで、いくらでもSM写真を、手に入れられる。もちろん、この店に置いてあるような、昔の、SM写真も。しかし、一部の、本当の、SMマニアが、どうしても、ネットの画像では満足できず、本として欲しくて、買っていく客も、いるんじゃ。昔のSM写真集だけを、あつかっている古書店は、ここと、早稲田通り、に、一店舗あるだけなんじゃ。なので、どうしても、昔の、SM写真集を、欲しい客は、ここに来るしかないんじゃ。もう、とっくに、絶版になっているか、出版社が、潰れてなくなっている、本ばかりじゃからな。だから、マニアは、一冊、二万、とか、三万、とか、の、値段でも買っていくんじゃ。しかし、たいして、儲けなんて、出ないことは、わかっとる。なのに、わしが、この店をやっているのは、まあ、老後の趣味のためなんじゃ。最近のSMは、ロクなのがないからの」
オヤジは、そう言って、茶を啜った。
「ところで、あんたが、この店に、昔の、SM写真集を、買いに来るのは、どうしてかな?」
オヤジが聞いた。
「今、おじいさんが言った通りです。私も最近のSMビデオや、写真には、満足できないんです。昔の、昭和50年代から、平成の、初めの頃の、SM写真にしか、興奮できないんです。最近のSMは、SMと、セックスがごっちゃになってしまっていて・・・」
京子が言った。
「そうか。あんたは、純粋なマニアじゃな。ところで、あんたは、Sかね。それともMかね?」
オヤジが聞いた。
「ま、マゾです」
京子は、顔を赤らめて、小声で言った。
「ははは。それは、わしも、わかっておったよ。SM写真集は、女が、裸にされて縛られている写真ばかりじゃ。サドの女が、そういう写真を欲しがる理由などないからの。ところで、あんたは、SMフレンドとかは、いないのかな?」
「いません」
京子は、ウソをついた。
最近、哲也に、初めて、SMプレイをしてもらって、京子は、哲也というSMフレンドが出来ていた。
「ははは。そうじゃろうと、思ったよ。あんたは、気が弱そうじゃからな。ところで。あんたは、緊縛モデルとかに、応募したことは、あるんかね?」
「ありません。濡木痴夢男なんて、たかがSMの緊縛を、事大主義(瑣末なことを誇大に騒ぎ立てる態度)に、解説したりして、バカみたいだし、乱田舞は、暴力的そうだし、あの人は、SMを暴力だと、思っているんじゃないでしょうか。志摩紫光は、根が暗そうだし。安心して、身を任せられる緊縛師なんて、いません。それに、世に顔が出るのも、こわいし・・・。猿轡で顔を隠しても、髪の毛や、目や、顔の輪郭や、体つきから、わかってしまいかねそうで、こわいし・・・」
と、京子は、言った。
「ははは。よく知っているね。しかし、それじゃあ、マゾの欲求を、あんたは、どうやって、解消しているんだね?」
「昔のSM写真の、緊縛されている女に感情移入して、マゾの陶酔を味わっています」
「しかし、それだけじゃあ、物足りないじゃろ」
「ええ」
「かわいそうな人じゃな」
「確かに、物足りないのかも、しれません。私、ノーパンで、短いスカートを、履いて、街を歩いたり、電車に乗ったり、人のいない雑木林の中で、裸になってみたりと、そんなことを、していました。実は、この書店に来るのも、おじいさんに、視姦されたい、という興奮もあるんです。今、私のブラウスとスカートの中は、下着は、着けていません。亀甲縛り、をしてます。服は着ていても、服一枚、隔てた、私の体は、亀甲縛りになっている、ことに、私は、興奮していました」
京子は、あられもないことを言った。
「ほう。そうとは、知らなんだ。では。もし、わしで、よかったら、あんたの、亀甲縛り、の姿を見せてもらえんじゃろうか。わしは、何もせんけに」
「わかりました。おじいさんには、本を格安に、値下げしてもらいましたし、おじいさんは、乱暴なことをするようにも、見えませんし」
それ以外にも、もう一つ、自縛した亀甲縛り、は、手足は、自由なので安全、という理由があったが、それは、京子は、言わなかった。
京子は、すっく、と、立ち上がって、ブラウスを脱ぎ、スカートも脱いだ。
ブラジャーと、パンティーは、履いていないので、丸裸である。
丸裸といっても、体は、亀甲縛り、してある。
縦に走る二本の縄と、それを、横に広げている横縄が、菱形を作って、柔らかい女の体に、意地悪く、食い込んでいた。
乳房は、縄によって、絞り出されて露出していた。
縄で絞り出されることによって、乳房は、ことさら、大きくなったように見えている。
体の前面の、二本の縦の縄は、そのまま、下降して、股間、そして、尻の割れ目に、食い込んで、そして、背中を上向し、首の後ろで、二手に分かれてから、首を輪のように、取り囲み、首の前で、また一つになり、そして、そのまま、体の全面の、縦縄につながっていて、体を一周していた。
股間に食い込む縄は、女をいじめているようにも見えるが、同時に、女の性器を隠してもいた。
「ああ。お嬢さん。きれいだ。美しい。何て美しい姿なんじゃろう」
老人は、上ずった、恍惚とした、目で、亀甲縛り、されている京子の体を、眺めた。
「京子さん。後ろ姿も、見せてくれんかね」
しばし、京子の体にみとれていた、老人が言った。
「はい」
京子は、クルリと、体を回し、老人に背を向けた。
縄が、激しく、尻の割れ目に、食い込んでいるので、その縄は、双方から、閉じようとする、尻の肉の中に、埋まってしまって、見えなくなり、尻の割れ目の、上の辺りから、姿を見せ、そのまま、背中を上向していた。
「ああ。京子さん。美しい。尻の割れ目に、よう縄が食い込んどるわ。なんて、いやらしい、姿なんじゃろう」
老人の、恍惚とした声を聞くと、京子の尻が、ピクンと震えた。
老人の言葉は、京子の意識を、尻の割れ目に、食い込んでいる股縄に、行かせて、京子は、あらためて、縄がきつく、自分の股間に食い込んでいるのを、感じとった。
(ああっ。いいわ。うんと見て)
京子は、言葉に出して言うことは、出来なかったが、心の中で、酩酊して、呟いた。
亀甲縛りを、自分で、したのは、それを、誰かに、見られたい、から、しているのだから、京子の興奮は、無理もない。
「京子さん。立ち姿を見せてくれて、有難う。もう、座ってくれ」
老人が言った。
「はい」
京子は、素直に言って、クルリと体を回して、老人の方を向き、座卓の前に、座った。

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