小説家、反ワク医師、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、反ワク医師、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

大磯ロングビーチ物語(上)

2015-08-31 13:43:11 | 小説
大磯ロングビーチ物語

「人生の悲劇の第一幕は親子となったことに始まっている」
(芥川龍之介)

それは夏のある日だった。
純は、総合病院に勤める内科医である。医学部を卒業して医師となり、今年で10年になる。前回、床屋に行ってから二ヶ月経ち、髪がだんだん伸びきて、わずらわしくなったので今日は床屋に行くことにした。だが、純は床屋が嫌いだった。それは純は髪が短くなると格好悪くなる顔型だったからである。自分で床屋に行った後で鏡を見てもそう思ったし、学校の時も友達に、髪を切った後は、「あーあ。格好悪くなっちゃったな」とからかわれた。だからこれは主観的な思い込みではない。純は以前は、散髪は中目黒にある、女だけの理容店にわざわざ、電車で一時間半かけて行っていた。どうせ髪を切るなら女に切って貰いたかったからである。しかし、歳とともに、だんだん面倒くさくなってきて、最近では、ほとんど家の近くの床屋で切ってもらっていた。
一年前から、最寄の駅の地下モールに料金一律1000円の床屋が出来た。純はそこに行くようになった。顔剃りもシャンプーもない。経費を最大限切り詰めた理容店である。カットも時間が短く、10分以内でテキパキと済ましてしまう。
純が行くと、二人の客が調髪椅子に乗って、男の理容師と女の理容師の整髪をうけていた。そこの床屋の調髪椅子は二台だけだった。客は、首から下をシーツで巻かれ、まるで、てるてる坊主のようである。客は二人とも老人の男である。純は自動販売機で1000円の領収書を買って座って待っていた。純はドキンとした。純は密かに思った。
「あの女の人に切ってもらえたらなあ」
それは純にとって熱烈な思いだった。二人の客の内、早く終わった方の理容師に切ってもらうことになる。二人の客の内、どっちが先に来たのだろう、と純は様子をうかがった。だが、よくわからない。
「女の理容師の方の客、早くおわれ」
と、純は祈るように願った。しかし、女の理容師の方の客は早く終わりそうな感じだった。
「あーあ。男の理容師になっちゃうのか」
と純はガッカリした。
「さあ。出来ました」
と男の理容師が客に声を掛けて背後で合わせ鏡を開いて頭の後ろの刈り具合を確認させた。男の客はちょっと、神経質そうに後ろ髪を見ていたが、
「もうちょっと、切ってくれないかね」
と男の理容師に言った。
「どこら辺を、ですか?」
「横をもうちょっと切ってくれ。私は横の髪が伸びるのが速いんだ」
「わかりました」
そう言って、男の理容師は、側頭部の髪を切り出した。純の心に、もしかすると女の理容師に切ってもらえるのではないかという一抹の希望が起こってきた。女の理容師が客の髪を切り終わって、
「さあ。出来ました。どうですか?」
と客に声を掛けた。そして背後で鏡を開いて後ろの刈り具合を確認させた。男は、
「ああ。いいよ。ありがとう」
と答えた。彼女は、吸引器を男の頭に当て、ズーと頭全体を吸引した。それがシャンプーのかわりだった。男は立ち上がって去って行った。純はドキンとした。
「さあ。次の方どうぞ」
彼女はそっけない口調で言った。
『やった』
純は思わず狂喜した。純は椅子に座った。これでもう、誰はばかることなく女の理容師に切ってもらえるのだ。わずか10分程度の時間ではあるが、純は女の優しさに餓えているのである。
「どのくらいにしますか?」
女の理容師が聞いた。
「全体的に2センチほど切って下さい」
「耳は出しますか?」
「耳は出さないで少しかかる程度にして下さい。それと揉み上げは切っちゃって下さい」
「後ろは刈り上げますか?」
「いえ。刈り上げないで下さい」
「はい。わかりました」
そう言って女の理容師は純の髪を切り出した。純は、女の理容師に髪を切ってもらう時は、女の顔は見ない方針だった。見ると、失望してしまう可能性があるからだ。純が求めているのは、女のやさしさという精神的なものだった。顔を見なければ、聞こえてくる声から、いくらで女の容姿を美しく想像することが出来た。だが純は勇気を出してチラッと前の鏡で彼女を見た。物凄い美人だった。純は以前、一度、彼女を見たことがあり、いつか彼女に髪を切ってもらいたいと、切実に思っていたのである。純は飛び上がらんほどに嬉しくなった。
その時、隣の男の客が終わった。吸引器でズーと頭を吸引した。
「使った櫛いりますか?」
男の理容師が聞いた。
「いや。いらん」
客は無愛想に答えた。そして立ち上がって去って行った。
男の理容師は床に散らばった髪を掃除機でズーと吸いとった。
「じゃあ、オレは、帰るから。30分くらいしたらD君が来るから」
「わかったわ」
そう言って男の理容師は店を出て行った。交代制でやっているようである。
店には女の理容師と純だけになった。
女の理容師はチョキ、チョキと手際よく髪を切っていった。
「あ、あの・・・」
純は勇気を出して声をかけた。
「はい。なんでしょうか?」
彼女は、カットする手を止めずに聞き返した。
「理容師と美容師の違いって何なんですか?」
「そうですね。いくつかありますが、一番大きな違いは、理容師は顔剃りの時、剃刀を使えますが、美容師は剃刀は使えないことの違いでしょうね」
「なるほど」
純はもっともらしく言ったが、その事は知っていた。
「あの。理容師の給料ってどのくらいなんですか?」
これはちょっと、ぶっきらぼうな質問だった。こんな質問は普通しないものである。
「時給、1000円で、月17万円くらいです」
「それではちょっと生活が苦しくないですか?」
「それは苦しいですわ。欲しい服も買えませんし、食費も、いつも出来るだけ節約するよう、スーパーが閉まる間際に行って、見切り品を買っています」
彼女は早口で言って、はー、と溜め息をついた。純がぶっきらぼうな質問をしたのには計算があった。1000円カットの給料が低いことは、ネットで調べて知っていた。だからきっと彼女は、生活が苦しいことを吐き出したいと思っていると、確信していたのである。
「車は持っているのですか?」
「持っていませんわ。とても車なんて買うお金ありませんもの」
「免許は持っているのですか?」
「ええ。18歳になった時、とりました。いつかは車に乗りたいと思っていましたので。どうせ、いつか取るんだから、早い内に免許とった方がいいと思って。それで表示価格10万円の車を買ったんです」
「その車はどうしたんですか?」
「友人に売りました。表示価格10万円と書いてありますけど、諸経費に10万円くらいかかりますし、それに激安の車は、色々な部分が古くなっていて、修理しなければならなくて、修理代も高いですし、ガソリン代や駐車代や自動車保険、自動車税なども合わせると、私の少ない給料では、とても維持できないとわかりました」
彼女は寂しそうに言った。
「そうですか」
「お客さんは車は持っていますか?」
今度は彼女が切り返して聞いてきた。話しているうちに彼女も気持ちが打ち解けてきたのだろう。
「ええ」
「車種は何ですか?」
「BMWです」
「うわー。すごいですね。じゃあ、お客さんは、すごい高収入なんですね」
「いえ。そんなことないです」
「あ、あの。お客さんのお仕事は何ですか?」
彼女はおずおずと聞いた。
「医者です」
「うわー。すごいですね」
「いえ。そんなことないです」
「そうですか。お医者様なんてすごいじゃないですか」
「そうでしょうか。世間では医者というと、すごいと言われますが、僕にはどうしても医者がすごい仕事という実感が沸かないんです。毎日、同じ事の繰り返しですし」
「お医者様って、みんな、そう思ってるんですか」
「他の人はどうか分りません。僕は小説家とか作曲家とか漫画家とか、そういう芸術家をすごいと思っています。佐々木さんは、どう思いますか」
純は彼女を、佐々木さん、と呼んだ。胸のプレートに、佐々木と書いてあるからである。
「私もそういう人達はすごいと思いますわ」
「医者と比べると、どっちの方が凄いと思いますか?」
純はちょっと意地悪な質問をした。
「・・・そ、それは・・・」
彼女は言い躊躇った。
「はは。やっぱり芸術家の方が凄いですよね。だって、医者なんて、いくらでもいますが、芸術家には並大抵のことではなれませんからね」
純は笑って言った。
「・・・・」
彼女は答えず、少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「でも、僕も少し小説を書いています」
「ええー。すごいですね」
彼女は、目をパチクリさせて言った。
「いや。たいした物じゃないですよ。プロでもありませんし」
「でも、すごいです。やりたい事を実行しようとする意志が。どんなジャンルの物を書いているんですか?」
「そうですね。ラブ・コメディー的なものですね」
「へー。凄いですね」
彼女は、一々、凄い、凄いと言う。
「じゃあ、よかったらホームページ見て下さい。岡田純、で検索すればすぐ出てきます」
「じゃあ、今日、家に帰ったら、さっそく読ませて頂きます」
彼女は活き活きと答えた。純は少し恥ずかしかった。純の書く小説はSM的なエロチックなものが多いからである。純の、ラブ・コメディーは、ラブ・エロティックと言った方がふさわしいようなものである。
「僕は推理作家の方が凄いと思っています。よく、あんな奇抜なストーリーやトリックを思いつけるなー、と感心しています。僕にはとても推理小説は書けません」
「でも、恋愛小説も難しいと思いますわ。男女の心の微妙な琴線を感じやすい人でなければ恋愛小説は書けないと思います」
彼女は、一々、もちあげる。
「では、今日のことも小説にしてもいいでしょうか?あなたをモデルにして」
「そ、それは構いませんわ。でも私なんかで小説のモデルになるのでしょうか?」
彼女は赤面して言った。
「おおいになりますとも」
「・・・・」
彼女は恥ずかしそうに顔を火照らした。彼女は鋏を持つ手もうわの空のようだった。ただジーとバリカンで後ろ髪の襟足を切るため、機械のように手を動かしていた。
「ああっ」
彼女は、突然、驚きの声を上げた。
「どうしたんですか?」
純が聞いた。
「ご、ごめんなさい。うわの空で、切っていたので、バリカンで頭の後ろをほとんど全部、切ってしまいました」
彼女は、急いで、開き鏡を持ってきて、純の頭の後ろで開いて、前の鏡に映させた。純もそれを見て驚いた。頭の後ろの部分がほとんど、芝生のように刈り上げられている。そういう変則的な髪型を好んでする若者もいるが、純には、それは全然、不似合いだった。極めて格好悪い。純もこれには焦った。
「ご、ごめんなさい。刈り上げないで下さい、と言われたのに、こんな事をしてしまって。一体、どうたらいいか。お詫びのしようがありません」
彼女はペコペコ頭を下げて謝った。彼女は、しばし思案気に顔をしかめていたが、
「ちょっと待っていて下さい」
と言って店を出た。彼女は、三分で戻ってきた。
「あ、あの。これで許していただけないでしょうか?これしか私には方法が思いつかないんです」
そう言って、彼女は五万円、差し出した。駅ビルの地下のカットハウスのすぐ近くには、コンビニがあり、そこのATMでおろしてきたのだろう。
「い、いえ。いいです。過ちは誰にでもありますから」
純は手を振った。月給17万円の彼女にとっては、五万は相当きついだろう、と純は思ったからである。
「で、でも。その髪型では・・・」
彼女はうろたえていた。彼女は責任をとろうと、どうしても譲らない。
「では、一つお願いしても、いいでしょうか?」
「はい。何でも」
「今度、あなたが都合のいい日に、一日、一緒に大磯ロングビーチに行ってもらえないでしょうか」
これは唐突な要求だった。だが彼女は、
「はい。わかりました」
と、純の突飛な要求を気軽に受けた。
「佐々木さん。いつが都合がいいですか?」
純が聞いた。
「明日、休みなので、それでいかがでしょうか?」
翌日は日曜である。
「ええ。明日でいいです」
「ありがとうございます。でも私なんかでいいんでしょうか?」
彼女は申し訳なさそうに言った。
「もちろんですとも。やったー。夢、実現!!」
純は叫んだ。
「実を言うと僕は、以前、あなたを一度見てから、あなたに憧れていたんです。一度でいいから僕はあなたと大磯ロングビーチに行きたいと思っていたんです」
「・・・・」
彼女は赤面した。
「あの。この髪型では、ちょっと都合が悪いので、いっそのこと、五分刈りの丸坊主にしてもらえないでしょうか?」
「よろしいんでしょうか?そんなことして」
「ええ。かまいません。髪なんて、また伸びてきます。別に死ぬわけじゃなし。丸坊主にすれば、稲のように全体がバランスよく、伸びてきますから」
この場合、それしか他に方法がない。そのことは、彼女もわかっているはずである。
彼女は、納得したように、純の髪をバリカンで刈りだした。
すぐに純は坊主刈りになった。
「いやー。さっぱりしたな。夏ですからね。坊主刈りはサッパリします。僕は中学、高校と坊主刈りが校則の学校で過ごしましたから、なんだか昔にもどったような気分です」
純は鏡を見ながらそんなことを言った。だが彼女は、申し訳なさそうな表情である。額が広い人は、坊主刈りでも結構、さまになるのだが、彼は額が狭く、坊主刈りでは、明らかに見栄えが悪くなった。それを察するように彼女は、
「すみませんでした」
と小さな声で謝った。
彼女は純の頭を吸引器で、ズズズーと吸った。そして、シーツカバーをとった。これで散髪が終わった。純は立ち上がった。
「あ、あの。携帯、持ってますか?」
「ええ」
彼女は答えて、ポケットから携帯電話を取り出した。
「あの。僕の携帯番号とメールアドレス、入力させてもらってもいいでしょうか?」
「ええ」
彼女は小声で答えて、純に携帯電話を渡した。
純は携帯電話を受けとると、ピピピッと操作した。
「はい。僕の携帯番号とメールアドレスを登録させてもらいました」
そう言って純は携帯を彼女に返した。
「あの。純さんの携帯にも私の携帯番号を登録させて貰えないでしょうか?」
「ええ」
純はポケットから携帯電話を取り出した。
彼女は携帯電話を受けとると、ピピピッと操作して純に渡した。
これでお互いに連絡がとれるようになった。
「では明日の朝、迎えにうかがいます」
純はニッコリ笑って言った。その時、一人の男が慌てて入ってきた。
「やあ。佐々木さん。遅れてしまってすみません」
男はハアハアと息を切らしながら言った。
男は丸坊主の純をチラリと一瞬、見た。純は、この男に以前、二回髪を切ってもらったことがあった。
純は、何もなかったように装うように、そそくさとカットハウスを出た。
純は、店を出た後、しゃがみ込んで靴の紐を結ぶ仕草をしているように見せかけて、聞き耳を立てた。耳に神経を集中した。
「今の人、今日は坊主刈りって言ったの?俺、あの人、二回カットしたことがあるけど、二回とも、全体的に2cm切って下さい、って言ったよ」
「な、夏は暑いから、坊主刈りにして下さいって言ったの」
「ふーん。そう。でもあの人、額が狭いから坊主刈りは全然、似合わないね」
そんな会話が聞こえてきた。
純はすぐに立ち上がって、早足に地下を出た。
自転車に乗って、アパートに帰ると、純はすぐに、携帯を開けてみた。さっそく彼女からのメールが来ていた。名前は佐々木京子と書かれてあった。携帯番号とメールアドレスの他に、住所も書かれてあった。藤沢市××町××荘と書かれてある。純は、嬉しくなって、すぐ地図を開いて、彼女の家を調べた。純は、すぐに返事のメールを書いた。
「佐々木京子さん。今日はどうも有難うございました。明日は、車で迎えにうかがいます。何時がいいでしょうか。岡田純」
そう書いて純はメールを送った。
すぐに彼女からメールが返ってきた。それには、こうかかれてあった。
「何時でもいいです。今日はすみませんでした。明日は楽しみにしています。佐々木京子」
純は小躍りして喜んだ。結構、彼女も純に好意をもってくれているように思われたからである。
純は用心深いので、急いで車に乗って、カーナビに京子の住所を入力し、京子のアパートに向かった。20分で京子のアパートに着いた。あまりきれいとはいえない。築年数がかなり経っているだろう。裏は雑木林で寂しい所である。表札には、「佐々木」とだけ書かれてあった。
純は、踵をかえして帰ろうとした。その時。一台の車がやって来て、一人の女性が、降りた。彼女は、京子の部屋をドンドンドンとノックした。
「佐々木さーん」
彼女は、大声で呼んだ。だが返事がない。
「居留守じゃないみたいね。仕方ないわね」
そう言って、何か紙をポストの中に入れた。
「あ、あの。その部屋の人に何か用ですか?」
純が聞いた。
「あなたは誰ですか?」
彼女は訝しそうに純を見た。
「ここの人とちょっと、縁のある者です」
「どんな関係ですか。兄弟とか親戚ですか?」
「ま、まあ。そんな所です」
「じゃあ、言ってもいいでしょう。私はこのアパートの不動産屋の者です。彼女は、家賃をもう10ヶ月も支払っていないので、その催促に来たのです。今回も払えなかったら、もう出て行ってもらおうと思っているんです」
「滞納分は、いくらですか?」
「家賃は月、三万円ですから、合計30万円ですわ」
「では僕が払います。手持ちには無いので、近くのコンビニまで行きましょう」
「わかりました」
彼女は車に乗った。純も自分の車に乗った。
彼女はエンジンをかけて車を出した。純はその後を追った。
少しして、コンビニが見えてきた。彼女は車を左折してコンビニの駐車場に入った。純も左折してコンビニの駐車場に入った。純はコンビニに入ってATMの前でピピピッと操作して金をおろした。
「はい。60万円です。今までの滞納分と、これから10ヶ月分の家賃です」
そう言って、純は女の人に60万円、渡した。女性は銀行員のように札束をパラパラとめくり、それを三度繰り返して確かめた。
「確かに60万円受け取りました」
「領収書を下さい」
「はい」
彼女は、領収書に、「佐々木京子様。×月~×月までの家賃30万円と、これから先の10ヶ月分の家賃30万円、受け取りました。××不動産」と書いて、印鑑を押して、純に渡した。純はそれを受け取ると、
「それでは、さようなら」
と言って、車に戻り、駐車場を出た。

帰りの道で、純はバッティングセンターに寄った。
「やあ。いらっしゃい。めずらしいですね。坊主刈りにしたんですね」
バッティングセンターの親爺がニコニコしながら言った。
「ええ。暑いものですから」
そう言って純は、バッティングを始めた。
純は子供の頃から野球が好きだった。中学では野球部に入った。子供の頃から野球をやっていたので、技術が高く、ピッチャーで四番だった。中学の時、ストレートは、すでに100km/hを越していた。だが人をまとめることが苦手で、一人で黙々と努力するタイプだったので、三年になってもキャプテンにはならなかった。県大会でも優勝した。これも、ひとえに純の剛速球と四割を超えるバッティングのおかげである。中学三年の夏が終わると、純は、将来はプロ野球選手になろうかと、本気で考え出すようになった。そのためには、甲子園に出場回数の多い野球の強豪校に進むのが、当然、有利だった。しかし純は、学科の成績もよかった。何事に対しても熱心なのである。迷いに迷ったあげく、純は、家から通える近くの高校に進学した。ここは、進学校だったが、野球部も、レベルが高く、過去、数回、甲子園にも出場していた。純は野球部に入った。中学時代同様、一年で、エースとなった。二年の時は、地区予選で、決勝まで勝ち進んだが、惜しくも敗れ、甲子園出場の夢は叶わなかった。この学校では甲子園出場は無理だと思った。この頃から、将来は、プロ野球選手ではなく。国立の医学部に入ろうと志が変わっていった。それで一心に受験勉強に打ち込むようになった。そのため野球部の練習量は減っていった。三年の夏も、準決勝で落ちた。これでもう、プロ野球選手の夢はあきらめた。しかし、地区予選を見ていた地元のプロ野球の球団のスカウトマンの目にとまっていたのである。純はドラフトで三位で、指名された。これには、驚き、また、喩えようもなく嬉しかった。しかし、模擬試験では、国立の医学部に入れるほどの成績にもなっていた。迷った挙句、純は、医学部に落ちたら、六大学野球の大学に進もうと思った。しかし、幸運にも医学部に合格できたのである。純は合格した医学部に入学した。プロ野球選手になっても、一軍の一流選手でいられるという保障はない。さらに、プロ野球選手は、運よく長く活躍できても20歳から40歳までの20年間である。賭けである。それに比べれば、医者は70歳を超えても、一生できる。もちろん、医学部に入学した純はもちろん野球部に入った。だが、二年の時、腓骨を骨折して、しばらく部活が出来なくなってしまった。そんな時、文芸部の友人に、文集をつくるから、何か書いてくれないか、と頼まれた。純は、高校の時の思い出を書いた。何事にも熱心なので、丁寧に書いた。文芸部の友達は、面白い、君には文才がある、と誉めてくれた。純は嬉しかった。文芸部の友達は小説を書いた。純も小説を書いてみたくなって、短い小説を書いた。純は何事にもハマッてしまう性格なのである。いくつか、小説を書いているうちに、だんだん、小説を書くことにハマッてしまった。野球より小説を書く方がはるかに面白くなった。野球部は、退部はしないが、所属しているだけにして、試合の時だけ出て、他の時間は小説を書くようになった。将来は小説家になろうとまで決意するようになった。そして医学部を卒業して、医者になり、休日は、一日中、小説を書くような生活になった。幸い、バッティングセンターが近くにあったので、息抜きに一日一回は、行って、ボールを打った。
「こんにちは。おにいさん」
声をかけられて純は後ろを振り返った。
「やあ」
健太だった。このバッティングセンターの裏には小学校があって、健太は、野球部だった。健太もバッティングセンターに、しょっちゅう来ていたので、純と顔見知りになっていた。健太は子供の頃から野球が好きで、将来はプロ野球選手になりたいと本気で思っていた。純は健太に正しいバッティングフォームを教えてやった。だんだん親しくなっていった。純は、近くの公園で、健太とキャッチボールをして、正しいストレートの投げ方や、スライダー、カーブなどの変化球の投げ方も教えてやった。
「この前の対抗試合、五割打って、勝ちました」
健太が言った。
「ははは。それは凄いな」
「おにいさんが教えてくれたおかげです」
そう言って健太はペコリと頭を下げた。
「いや。君が努力して練習したからさ」
健太はニコッと笑って、バッターボックスに入った。健太は、90km/hのボールを、ほとんど全部、芯でとらえて、きれいに打った。赤ランプが消えて、ピッチングマシンが止まった。
「もうちょっと、脇をしめた方がいいな」
純がアドバイスした。
「はい」
健太は、ペコリと頭を下げた。
健太は、200円、入れた。赤ランプがついて、マシンが動き出した。
「じゃあ、僕は今日は、もう帰るから」
そう言って純は立ち上がった。
「また、時間のある時、変化球の投げ方、教えて下さい」
「ああ。いいよ」
そう言うと、純は踵を返し、バッティングセンターを出て、家に向かって車を出した。


帰りにコンビニに寄って、弁当を買った。純の買う弁当はいつも同じである。398円の幕の内弁当で、ハンバーグ、鮭、コロッケ、エビフライ、卵焼き、ソーセージ、ひじき、が少ない量であり、あとはご飯である。純は家にもレンジがあったが、いつも温めてもらっていた。740kCalと書かれている。純は、大学を卒業しても体力を衰えさせないためテニススクールに入っていた。野球は土日しか出来ない。という制限がある。しかし休みの日はどうしても一日中、小説を書きたい。近くにあるインドアのテニスクラブなら、雨の日でも、夜遅くでも、好きな時に自分の都合のいい時間に出来る。さらに、もはや出来るようになっている野球より、まだ出来ない未知の運動を身につけたいという進取の精神も純にはあった。純は熱心にテニスを練習し、どんどん上手くなっていった。しかしテニスをしているんだから、運動しているんだから、と思って食生活は、いい加減になっていた。甘い物や果物や焼き肉など好きな物を腹一杯食べていた。しかし、そんなことでは、駄目で、体調が悪くなり、恐る恐る体重計に乗ってみたら、標準体重より3kgも増えていた。これではまずいと純は、少しウェートを落とそうとダイエットすることにしたのである。昼に、この幕の内弁当一食と、晩はカロリーメイト一箱と、0kCalの寒天ゼリーが純の食生活の習慣になっていた。純は万年床に寝転がって、幕の内弁当をゆっくり味わいながら食べた。その時、携帯の着信音が鳴った。京子だった。
「じゅ、純さん。今日はどうもありがとうございました。少し前に仕事が終わって、家に着きました。家賃滞納の催促状がポストの中にあったので、不動産にお詫びの電話をしたんです。そしたら、見知らぬ男の人が滞納分30万円と、さらにこれから先の、10ヶ月分の家賃を払ってくれた、と言いました。私がどんな人ですか、と聞いたら、五部刈りの人だと言ったので、純さんに間違いないと思いました。本当にどうもありがとうございました」
「いえ。いいです。気にしないで下さい」
「いえ。払います、払います、と言い続けて、もう今回滞納したら、出て行くことまで約束していたんです。本当に困っていたんです。五部刈りにしてしまった上、家賃まで払っていただいて、本当にありがとうございました」
「はは。気にしないで下さい。明日は楽しみましょう」
いささか金持ちが貧乏人を憐れんで優越感に浸っているような気がして純は自己嫌悪した。

自分は医師である。医者の給料は、いい。医師になるには、青春を犠牲にして、勉強、勉強の毎日で、医学部に入り、医学部の勉強量も並大抵ではない。それをしてきて医者になったのだから、誰にも何も言われる筋合いはない。とは純は思っていなかった。
純は絶えず何か目標に向かって、一心に努力していないと罪悪感さえ起こる性格だった。楽しみのためテレビを見ていてさえ罪悪感が起こった。純が医学部に入ったのは金のためではない。病人を救おうという崇高な目的でもない。どうせ大学に行くなら、一番難易度が高い国公立の医学部にしようと思った。のが動機である。純は理系人間で、英語、数学、理科が得意だった。医学部に行くということは医者になることを意味していたが、純にはあまりその自覚はなかった。しかし大学二年の時、文芸部の友人と親しくなって、小説を書き出してから、小説を書くことにハマッてしまい、それ以来、純は今日にいたるまで小説を書き続けてきたのである。それは何も無理して根性で続けているわけではない。純は、内向的な性格で人付き合いが苦手。現実より自分の夢想の世界を楽しむのが好き。デリケートで表現するのが好き。他人と一緒に何かをするより、一人でコツコツと何かをする方が好き。とくれば、小説家に向いた性格そのものである。創作したいというのは純の潜在意識の中に、それ以前からあったのだ。それをもっと早く自覚して決断していれば、よかったと純はつくづく後悔した。出来たら小学生の頃から。そうすれば純の人生は変わっていたかもしれない。


純は運動用ズボンとシャツを着て、車で市民体育館のトレーニングジムに行った。ここは300円で、朝9時から夜の9時まで、トレーニングが出来る。
『今日は三時間やろう』
そう思って純はトレーニングを始めた。トレーニングを始めた頃は、単調で面白くなかったが、二時間なり、三時間なり、時間を決めてやれば、結構つづけられるようになった。少し前に、座って、体を左右に捻るマシンが入り、それは、腹筋をあまり疲れずに鍛えられるので、やりがいがあった。純はそれをメインにしてやり、他に背筋や上腕筋、大体筋、などを鍛えた。そして、ランニングマシンで4km走った。走った、というより、時速6.5km/hなので、速めのウォーキングである。その後マットでストレッチをした。純は筋力も持久力もあまりなかったが、体は柔らかかった。マシントレーニング、ランニング、ストレッチを繰り返しているうちに、三時間はすぐに経った。純は市民体育館を出て、家にもどった。途中でコンビニでカロリーメイト一箱とカロリーゼロの寒天ゼリーと野菜ジュースを買った。それが純の今夜の夕食だった。カロリーメイトは400kCalで、400kCalならもっと何か、牛肉豆腐とか、蕎麦とかでも同じカロリー数で、食べられるが、何となくカロリーメイトの方が、消化がいいように感じられたのである。

純は寝転がってカロリーメイトを食べながら、村上春樹の小説を読み出した。純は以前、村上春樹の本を読んだことがあるが、あまり面白いとは感じられなく、それ以後、読まなかった。しかし、図書館でリサイクル図書として、「神の子はみな踊る」という阪神淡路大震災から、震災をヒントにした小説集をたまたま読んで、その文体を気に入ってしまったのである。これは、自分の小説創作の勉強になると思い、村上春樹の小説を読み出したのである。純は長編ではなく短編を読んだ。短編の方が、長編より小説創作の勉強になるからである。村上春樹は、長編にせよ、短編にせよ、シュールである。ノーベル文学賞候補にも上がった、とか、外国の大学で文学部の教授をしたとか、世界各国で翻訳されているなどと、その文学の評価は高い。日本でも、人気があり、ベストセラーになったものもある。しかし、村上春樹は、賛否が分かれている作家でもある。好きな人もいれば、嫌う人もいる。純は村上春樹を基本的には好きになった。文体がしっかりしているからである。文体がしっかりしている作家というのは、作品を手抜きしないで書いているという点で、誠実だと思っているからである。小説を読んで、それなりに読み応えという腹もふくれる。しかし、起承転結のうち、「結」が無い。読んでいる内に、どういう結末になるのか、期待する気持ちが起こってくるが、「結末」が無い。どの小説でもそうである。阿部公房もシュールな作家であるが、阿部公房に批判者はいない。それは聞いたことがない。それは阿部公房が小説を書くことに於いて、手抜きしないで、思考の限界で書いていて、それが伝わってくるからである。阿部公房の小説は、「意味に至る前のある実体」であり、「無限の情報を持った一つの世界」であり、「大意を述べることが出来ない」小説である。しかし、村上春樹の小説は、大意を述べることの出来る小説も多い。たとえは、「眠り」という、眠れなくなった歯科医の妻が、眠れないので夜中にトルストイの本を読む、という短編があるが、あの小説では、「大意」や「意味」が簡単に言える。つまり、それは、「結婚生活が長く続くことによる現実のマンネリ化に嫌気がさして、若かった頃のように、小説を一心に読むことで充実して生きていた昔の自分にもどりたくなった女の話」と、簡単に「大意」を述べられる。他の小説でも、もどかしげでも、読んでいるうちに、「大意」、つまり、「何を言いたいか」が分るものが多い。文章を書くことについては誠実だが、内容は、軽い気持ち、や、思いつきで書いているように感じられ、はたして文学的価値がノーベル賞に値するほどのものか、と純は疑問に思っている。村上春樹は、日本文学は読まず、カフカのように、ノーベル賞候補になったようなシュールな外国文学ばかり読んでいて、それに影響され、文体を持っていたから、読者の腹を満足させることが出来て、日本という国籍に関係なく普遍的、抽象的だから外国人にも人気がある小説が書けただけに過ぎないのでは、とも純は思っていた。そして、読者は、シュールな小説を読むことに自分の読書能力の高さに満足感を得るものである。ただ村上春樹に、狡猾さはなく、自分の書きたい感覚的なものが、うまい具合に読者の要求に合った、と純は思っていた。純は村上春樹の文学を、そのように解釈していた。だが、長編では、村上春樹が、表現しようと思っている感覚的なものには、何か文学的価値があるのかもしれない、とも思っていた。どうして表現したいと強く思うものが無くて長編小説が書けよう。純は自分に解らないものは、すぐに否定しない誠実さは持っていた。

純は村上春樹の小説を30ページほど読むと、附箋を読んだところに貼った。時計を見るともう、11時だった。純は歯を磨き、パジャマに着替え床に就いた。目覚まし時計は7時30分にセットした。すぐに睡魔が襲ってきて純は眠りについた。

   ☆   ☆   ☆

翌日。
アラームのけたたましい音によって純は目を覚めさせられた。7時30分だった。純は、スポーツバッグに、水泳用トランクスと水泳帽とゴーグルと、タオルとコパトーンを入れた。そして京子に電話した。
「もしもし。京子さん」
「はい」
「おはようございます。今からうかがいます。よろしいでしょうか?」
「はい」
純はジーパンに半袖シャツで、スポーツバッグを持って車に乗った。空は雲一つない晴天である。吸い込まれそうな無限の青空の中で、早朝の太陽が今日も人間をいじめつけるように、激しく照りつけていた。昨日の天気予報では、今日の降水確率10%の晴れ、であった。

純はエンジンをかけて車を出し、京子の家に向かった。暑いためクーラーを全開にした。京子のアパートが見えてきた。薄いブラウスにフレアースカートでサンダル履きの京子が、バッグを持って純を待っていた。純を見つけると京子は笑顔で手を振った。純も笑顔で手を振った。純は京子の横に車をとめてドアを開いた。
「おはようございます。純さん」
「おはよう。京子さん」
「うわー。BMWですね。凄いですねー」
純は、ははは、と笑って、ドアを開いて京子を助手席に乗せた。
「純さん。昨日は、滞納している家賃を払って下さって本当に有難うございました」
京子は丁寧に言って頭をペコリと下げた。
「いえ。いいんです。お礼は一回言えば十分です。もう忘れて下さい」
純はエンジンをかけた。
「それじゃあ、行きましょう」
そう言って純はアクセルを踏んで車を出した。
「暑いですね」
純は運転しながら言った。
「ええ。そうですね」
京子が相槌をうった。
少し行くとコンビニが見えてきた。
「何か冷たい飲み物を買ってきます」
そう言って純は、コンビニの駐車場に車をとめて、コンビニに入って、オレンジジュースを二缶買って、車に戻ってきた。そして一つを京子に渡した。
「あ、ありがとうございます」
京子はペコリと頭を下げた。
純は、缶を開けて、ゴクゴクとオレンジジュースを飲んだ。京子も、純と同じように缶を開けて、ジュースを飲んだ。
「いい車ですね」
京子が、柔らかいシートに深くもたれかかりながら言った。
「いやあ。そんなことないですよ。もう6万キロも走っている中古車ですから」
純は、京子が車の免許は持っているが、車は持っていないことに気がついた。
「京子さん。よかったら、運転してみませんか?」
「えっ」
京子は一瞬、たじろいだ。
「京子さん。運転したいでしょう。免許を持っていても車を持ってない人は運転したがっているはずです。そうでしょう」
「え、ええ」
京子は小声で少し頬を紅潮させて遠慮がちに答えた。
「じゃあ、席を交代しましょう」
そう言って、純は車から降り、助手席のドアを開けて、京子を降ろし、京子を運転席に移して、ドアを閉め、自分は助手席に乗ってドアを閉めた。そして、カーナビを操作して、目的地を大磯ロングビーチに設定した。
「では出発して下さい」
「大丈夫かしら。もし万一事故を起こしてしまったら大変です」
「はは。大丈夫ですよ。僕が、人間カーナビになりますから」
純はゆとりの口調で言った。
「で、では。運転します」
そう言って彼女は、そっとエンジンキーを回した。エンジンがブルブルと力強く振動しだした。彼女は緊張した面持ちでハンドルをギュッと握りしめた。
「で、では、発車します」
そう言って彼女は、サイドブレーキを降ろし、ハンドルをきってアクセルペダルをゆっくり踏んだ。
車が動き出した。知った場所で、以前に運転していたこともあるので、彼女の運転は何の問題もなかった。
国道一号線に出て、少し走った後、西湘バイパスに入った。
「あとは、大磯西出口まで一直線です」
車は、ポツン、ポツンと少なく、二車線の高速道路は、気持ちよく空いている。
「運転するの、久しぶりだわ。しかもBMWなんて。ああ。最高に気持ちいいわ」
そう言って彼女はアクセルペダルをグンと踏んだ。車がググーと加速した。
相模川を渡った。相模川を渡ると神奈川県の西である。もうあと10分程度である。左には相模湾の海が広がっている。
大磯西出口の標識が見えてきた。彼女はスピードを落として、右折して高速道路を出た。
もう目の前は、大磯ロングビーチである。9時開館で、今は8時50分で、まだあと10分時間があるが、駐車場には、もう何台もの車が並び、入場客がチケット売り場の前に並んでいる。京子は、スタッフの誘導に従い、車を止めた。そしてエンジンをきって、サイドブレーキを引いた。
「どうもありがとうございました。久しぶりに運転できて気持ちよかったです」
そう言って、京子はエンジンキーを抜いて、純に渡した。
純は微笑んでキーを受けとった。
二人は、それぞれバッグを持って、入場客の列の後ろに並んだ。
「あっ。京子さん。水着はもってきましたか?」
純は思い出したように聞いた。
「ええ」
「ビキニですか?」
「い、いえ」
「では、どんなのですか?」
純は、興味津々の目つきで、京子のバックを覗き込もうとした。
「普通の競泳用の水着です」
「では、ワンピースですね」
「ええ」
純は顔をしかめた。
「それはよくありません。ここでは女の人はみんな、ビキニですよ。売店でビキニを売っていますから、ビキニを買いましょう」
「ええっ。ビキニですか?」
京子は困惑した口調で言った。
「どうしたんですか?」
「は、恥ずかしいです」
彼女は顔を赤らめて言った。
「それは逆ですよ。女の人は、みんなビキニですから、一人だけワンピースだとかえって、目立っちゃいますよ」
「そうですか?」
彼女は半信半疑の様子だった。
彼女は、夏の大磯ロングビーチに来たことがないのだろう。
その時、正面の時計が9時をさした。切符売り場の窓が開いて、客達は切符を買って、ビーチの建物に入り出した。純と京子も、それぞれ3500円の大人一日券の切符を買って、ビーチの建物に入った。
建物の中には、南国風の売店があり、色とりどりの水着がたくさん並んでいる。純が言った通り、全部セクシーなビキニばかりである。
「さあ。京子さん。どれがいいですか?」
純に聞かれ、京子は顔を赤らめた。京子は、しばらく恥ずかしそうに水着を選んでいたが、なかなか決められない。
「もう。京子さん。それじゃあ、僕が選びます」
純は、じれったそうに言って、ピンク色の揃いのビキニをとって、レジに持っていって買った。
「はい。京子さん」
そう言って純は京子に、買ったビキニを渡した。
「あ、ありがとうございます」
京子は恥ずかしそうに礼を言った。

純は京子と手をつないで、芝生をわたって、更衣室のある本館に入った。本館の建物の前には、注意事項が書かれた看板が立っていた。それには、こう書かれてあった。

「飲酒されている方。暴力団関係の方。刺青をされた方、の入場を禁止します。
(注)なお入場客の女性達をジーと見る男一人の方の入場は控えてください。女性達が怖がりますので」

以前は、飲酒と、暴力団と、刺青の客の禁止だけだった。だが、純が前回、行った時から、四つ目の注意事項がつけ加えられるようになったのである。これは、明らかに純に対するあてつけだった。純は、大磯ロングビーチが開く七月から、客がたくさん来る土日は、毎回、行っていた。客は多いが、男一人は純だけだった。純が大磯ロングビーチに行くのは、泳ぎに行くためでもあったが、ビキニの女性を見るためでもあった。純はビーチのビキニの女は全員、見て回った。そして、気に入った女性が見つかると、そのセクシーな姿を頭に焼きつけるようにジーと眺めていたのである。できるだけ相手に気づかれないように、しかし、できるだけ近くで。前々回、行った時、純が、一人の綺麗なビキニ姿の女性の胸や尻を、食い入るように見つめていると、パッと女性と目が合ってしまったのである。純は急いで目をそらした。しかし、女性は急いでプール監視員のところに走っていった。そして、純を指差してボソボソと監視員に何かを告げた。監視員は純をジロリと厳しい目で見ると、おもむろに純の所にやって来た。純は逃げようかと思ったが、蛇ににらまれた蛙のように竦んでしまった。
「お客さん。あんまりジロジロとビキニの女性を見るのは控えていただけないでしょうか。気味が悪いという女性がいますので」
それは小麦色に焼けた体格の逞しい監視員だった。
「は、はい」
純は、おどおどした口調で答えた。だが、それは脳天を刺し抜かれるようなショックだった。すぐに立ち去りたかったが、それはかえってばつが悪いし、目立ってしまう。純は、きれいなクロールで長時間、泳げたので、シンクロプールに行って、一時間ほど泳いでから帰った。しかしこれはショックだった。これからは大磯ロングビーチに行きにくくなる。純にとって、夏の大磯ロングビーチは、小説創作の次に、大事なほどの、生きがいであった。純は目の前が真っ暗になった。ほとんど、うつ病に近くなった。翌週の土日は、大磯ロングビーチには行けず布団の中で寝たきりで落ち込んで過ごした。その次の週の土曜日、純は勇気を出してロングビーチに行ってみた。純は泳げるので、泳ぐために自分は行っているのだと思わせるためだった。女性はもう、あんまりジロジロ見ないことにした。だが、注意事項に、
「(注)なお入場客の女性達をジーと見る男一人の方の入場は控えてください。女性達が怖がりますので」
という一行がつけ加えられていた。それを見た時、純は、脳天を突き刺されるようなショックを受けた。シンクロプールへ行く時、前回、注意した監視員が純を見て、ニヤッと笑った。純はひたすら泳いだ。もう今年の夏は、大磯ロングビーチには、行くのはやめようと思った。
だが、今回、純は得意だった。京子という絶世の美女と一緒なのである。前回のリベンジが出来る。

純と京子は更衣室とロッカーのある本館に入った。客はまだあまりいない。
「それじゃあ、着替えましょう」
男性更衣室と女性更衣室の前で、二人は別れた。純は、慣れているので、すぐにトランクス一枚になって、バッグに洋服を詰め、更衣室を出てきた。京子はまだいなかった。純は胸をワクワクさせながら京子が出てくるのを待った。五分くらいして、京子が女子更衣室から出てきた。
「は、恥ずかしいです」
京子は横紐のピッチリのビキニである。京子は人目を気にしてソワソワしているような様子だった。
「似合ってますよ。京子さん」
純は笑いながら言った。
「は、恥ずかしいです。何だか裸になったみたいな感じです」
確かに、ビキニは女の体を僅かに覆うだけの物であり、女の体の隆起をあられもなくクッキリと浮き出してしまう。
「京子さん。ビキニ着るの、初めてでしょう」
「え、ええ」
京子は顔を赤らめて言った。
初めてビキニを着た女が恥ずかしがるのは当然のことである。ブラジャーとパンティーで、町の中を歩くようなものであるのだから。
「でも、そのうち、慣れてきますよ」
純と京子は本館を出た。雲一つない夏の青空を純は思わず見上げた。客はまだ、パラパラとまばらである。二人は並んでビーチサイドを歩いた。
その時、向こうから、以前、純を注意した監視員がやって来た。監視員は純を見つけるとニヤリと笑った。純はジロリと監視員をにらみつけた。監視員は、すぐに純の横を歩いているセクシーなビキニ姿の京子に目を移した。その抜群のプロポーションとセクシーなビキニ姿に、監視員は、あっけにとられたように、立ち止まって見入った。
京子は、裸同然の姿をジロジロ見られて、怖くなったのだろう。
「こ、こわい」
と言って、すぐに純の背中に回って、純の手をギュッと握った。
「おい。あんた。監視員が客の女をジロジロ見るのはいいのかよ」
純は叱りつけるように叱りつけた。
「す、すみません」
監視員は、真っ赤になって、(といっても日焼けしているので茶色なので)、真っ赤茶になって、小走りに去って行った。
純は大得意だった。純は心の中で、勝ち誇った。
『ざまあみろ。てめえらなんぞ、時給1000円の、アッパラパーの頭カラッポどもじゃねえか。小麦色に日焼けしていているのもバカの象徴だぜ。泳力だってオレの方が遥かに上だぜ』
と純は、心の中でカラカラと高笑いした。

純は大得意だった。純は大磯ロングビーチの監視員が嫌いだった。偉そうな態度で、プールの休憩時間にちょっとでも、プールの縁でふざけたり、足を入れただけでも厳しく叱りつける。事故が起こらないようにとの細心の思いからだろうが、いつの間にか厳しく叱っている内に自分が権力欲を満喫するようになってしまっているのである。もし純が監視員だったら、少年達が休憩時間にふざけていたら、「ボクたちー。ふざけちゃダメだよー」と笑顔で優しく注意しただろう。彼らはまさに権力を傘にきた警察官そのものだった。休憩時間には、誰もいないプールに監視員の特権を見せつけるようにザブンと入って悠々と泳ぐのも癇に障った。しかし、今回、監視員を叱りつけてやり、京子という絶世の美女を連れてきたことで、これからは何の躊躇もなく堂々と大磯ロングビーチに来ることが出来るようになった。そう思うと純は、大声で笑い出したいほどの爽快な気分になった。

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大磯ロングビーチ物語(下)

2015-08-31 13:36:40 | 小説
純は、シンクロプールの隣の芝生にビニールを敷いて座った。京子も純の隣にチョコンと座った。
「わあ。嬉しいな。僕、ビキニの女性と、大磯ロングビーチに来るのが夢だったんです。しかも、京子さんのような綺麗な人と」
純は喜びをことさら声に出して言った。京子は、子供のような態度の純を見て、クスッと笑った。
「純さんは、付き合っていた彼女と、何かの理由で別れて、今、一人なんでしょう?」
京子が聞いた。
「いやあ。違いますよ」
純は即座に否定した。
「じゃあ、何かの理由で、彼女とケンカでもしているんですか?」
「いえ。僕には、彼女はいません」
「いつからですか?」
「生まれた時から今までです」
純は笑いながら答えた。
「ええー。本当ですか?」
京子は目を皿のようにして純を見た。
「ええ。本当ですよ」
純はあっさり答えた。
「本当に一度も女の人と付き合ったことがないんですか?」
信じられないという顔つきで京子は、純をじっと見つめた。
「ええ」
「不思議ですわ。純さんは、お医者様ですし、容姿もいいですし、それに優しいし・・・」
「性格が暗いからですよ。話題もないし、女の人といても、女の人を退屈させてしまいますし・・・。それに男の友達もいないですし。男の友達がいたら、合コンのように、女性をナンパするこもと出来るでしょうけれど、一人では恥ずかしくって、とても出来ませんからね」
「純さんは、真面目すぎて、遊ぶのが下手なんじゃないでしょうか」
「ええ。それは僕も自覚していることです」

「純さん。家賃、払って下さって本当に有難うございます」
京子はまた、あらたまって礼を言った。
「もう、そのことは言わないで下さい。僕は京子さんのような綺麗な女性と、大磯ロングビーチに来るのが夢だったんです。その夢がかなって、最高に幸せなんです」
純はニコッと笑った。
「私も幸せです」
京子もニコッと笑った。
「今日は大いに楽しみましょう」
「ええ」
だんだん入場客が増えてきた。本館の建物から出てくる女はみんな、ビキニ姿である。
「ほら。京子さん。女性はみんなビキニでしょう」
純は、そう言ってビキニ姿の女性達を指差した。
「ほんとだわ」
京子は純の指差した方を見て納得したように言った。
「京子さん。プールに入りませんか」
「ええ」
純は立ち上がって、京子とシンクロプールの縁に座った。二人はプールの縁に座ったまま、足をプールの中に入れ、ユラユラと足を動かして水を揺らした。
「京子さんは泳げますか?」
純が聞いた。
「え、ええ。一応。でも平泳ぎしか出来ませんし、速くは泳げません。純さんは?」
純は嬉しくなった。普通の人は、大抵その程度である。
「僕は、クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライなんででも泳げます」
「へー。凄いですね」
「それは、泳ぐのが好きですから」
「純さんの泳ぎ、見せて貰えないでしょうか」
「ええ」
純は大得意で、プールに入った。京子に、自分の得意な泳ぎを見せられるのだ。これ以上、爽快なことはない。
純はクロールで泳ぎ出した。いつもは、ゆっくり泳いでいるのだが、京子に見せるため、いつもより、速く泳いだ。一往復すると、今度は、背泳ぎ、次はバタフライ、最後に平泳ぎ、と個人メドレーのように泳いだ。そして、プールから上がって、元のように京子の隣に座った。
「凄いですね。まるで水泳の選手みたいです。高校か、大学では水泳部だったんですか?」
「いえー。一人で練習したんです」
「凄いですね。純さんの泳ぎって、すごく綺麗ですね。まるで芸術のようです」
純は、照れくさそうに笑った。それは純も意識していることだった。運動は、技術も大切だが、美しくなくてはならない、という強いこだわりが、純にはあった。一度、見せたので、もう見せるのは十分である。

「京子さん。一緒に泳ぎませんか」
純が誘った。
「ええ」
京子はニコッと笑った。京子も、泳げることを自慢したかったのだろう。そっとプールに入ると平泳ぎで、泳ぎ出した。純は、ゴーグルをして、平泳ぎで、京子の真後ろを泳いだ。水中から、ビキニに覆われた京子の尻や太腿が、もろに見える。尻や太腿は水の力によって、揺らいだ。平泳ぎで、足で蹴る時、両足が大きく開いて、ビキニに覆われた女の股間が丸見えになった。それはとても悩ましく、純は激しく興奮した。純の股間の一物は、すぐさま勃起した。京子の泳ぎは、極めてゆっくりだった。プールの壁につくと、ターンして、泳ぎつづけた。自分の泳力を見せるためだろう。純もターンして、京子の後を泳いだ。一往復して、元の場所に着くと、京子はプールから上がった。純もプールから出た。そして、二人はさっきと同じように、プールの縁に並んで座った。
「ああ。疲れた。泳ぐの久しぶりだわ。中学校の体育の授業の時、以来だわ」
京子が言った。
「でも、ちゃんと泳げるじゃないですか」
純は、チラッと京子の体を見た。ビキニが水に濡れて収縮し、股間と胸にピッタリと貼りついて悩ましい。体から滴り落ちる水滴も。それは、ただの水滴ではなく、京子の体についていた水なのである。
太陽は、かなり高く昇っていた。客もそうとう多くなっていた。流れるプールには、多くの男女や子供が、歓声を上げながら、水に流されながら泳いだり、ゴムボートに乗って、楽しんでいた。



「京子さん。今度は、流れるプールに入りませんか」
「ええ」
京子は、ニコッと笑って、答えた。
純と京子は、手をつないで、流れるプールに向かった。もう、京子にビキニを恥ずかしがる様子はなかった。入場客の女は、みんなビキニだからである。京子は、子供のようにウキウキしていた。流れるプールは、けっこう、速度がある。流れるプールでは、流れの方向に従って、泳がなくてはならない。純は、以前、そのことを知らないで、流れと逆方向に泳いだら面白いと思い、泳いでいたら、すぐに監視員がやってきて、「お客さん。規則を守っていただけないのでしたら退場していただきます」と、厳しく叱りつけらたのである。
流れるプールは陸上競技のトラックのような楕円形のプールである。
純は京子と一緒に流れるプールに入った。
流れるプールは、自力で泳がなくても、水に体をまかせていれば、水の流れによって、流されるので、泳いでいるような感覚になる。泳げば、流れる速度に泳ぐ速度が加わって、速く泳げているような感覚になる。そんなところが、流れるプールの面白さである。
純は、京子と手をつないで、しばらく流れにまかせて、歩いた。
「気持ちいいですね」
京子が、ニコッと微笑んで言った。
「ええ」
純は微笑んで答えた。
しばし水に押されながら歩いた後、京子が立ち止まった。
「純さん。ちょっと、ここで止まってて」
「え?」
純には、その意味がわからなかった。京子は、つないでいた手を放し、水を掻き分けながら歩き出した。水の速度と、水を掻き分けながら歩く速度で、京子は、どんどん進んでいき、二人の距離は、どんどん離れていった。純は、意味も分からず、京子に言われたように、立ち止まっていた。かなりの距離、離れてから、京子は、後ろを振り返って、純に手を振った。
「純さーん。私を捕まえてごらんなさい」
そう言うと、京子はまた、水を掻き分けながら、歩き出した。純は、京子の意図がわかって、ははは、と笑った。水中での鬼ごっこ、である。純は、ゴーグルをつけて、京子に向かって、泳ぎ出した。だが、人が多いため、ぶつかってしまい、泳げない。仕方なく、純も、京子と同じように、水を掻き分けながら歩き出した。条件は同じである。地上と違い、水の抵抗があるため、なかなか、速く進めない。これでは、男と女の違いはあっても、あまりそれが有利に働かない。京子も必死である。距離がなかなか縮まらない。しかし、そこはやはり、男の力の方が強い。だんだん距離が縮まっていった。京子は、捕まえられないよう、キャッ、キャッと、叫びながら、逃げた。幸い、近くに人があまりいなかったので、純は、クロールで全力で泳ぎ出した。どんどん京子との距離が縮まっていった。もう三メートル位になった。水の中から、必死で、逃げる、ビキニ姿の京子の体が、はっきりと見える。純は、可笑しくなって、ふふふ、と笑った。
「京子さん。つーかまえた」
そう言って、純は、タックルするように、京子の体を、ギュッと抱きしめた。京子の体に触れるのは、これが初めてである。それは、あまりにも柔らかい甘美な感触だった。捕まえられて、京子は、
「あーあ。つかまっちゃった」
と、口惜しそうに言った。
二人は顔を見合わせて、ははは、と笑った。
「じゃあ、今度は、京子さんが、捕まえる番です。僕をつかまえてごらんなさい」
純が言った。
「わかったわ」
京子は立ち止まった。純は、水を掻き分けて進み、京子から少し離れた。
「さあ。京子さん。もういいですよ」
京子は、ニコッと笑って、水を掻き分けて、純を追いかけ始めた。純もつかまらないよう、水を掻き分けて逃げた。だが、そこは、やはり男と女。本気で純が逃げると、京子との距離は、全く縮まらない。それどころか、どんどん離れていってしまう。これでは、京子は、いつまで経っても純をつかまえられない。なので、純は、手加減して、京子が何とか、つかまられる程度の速度で逃げた。二人の距離はだんだん縮まっていった。京子は嬉しそうである。ついに、京子は純をつかまえた。
「純さん。つーかまえた」
そう言って、京子は、後ろから純の体にヒシッと抱きついた。京子の柔らかい胸のふくらみの感触が、純の背中にピッタリとくっついた。それは、最高に気持ちのいい感触だった。
「京子さん。ちょっと、疲れましたね。少し、休みませんか」
「ええ」
二人は流れるプールから出た。
二人は、ビーチパラソルの下のリクライニングチェアに座った。京子の体からは、水が滴り落ちている。それはとても美しい姿だった。純には、京子が、陸に上がった人魚のように見えた。
「純さん。お腹空いてませんか?」
京子が聞いた。
「ええ」
「じゃあ、何か食べましょう。純さんは、何を食べたいですか?」
「僕は、何でもいいです。京子さんと同じ物を食べたいです」
「わかりました」
そう言うと彼女は、パタパタと小走りに食べ物売り場に走って行った。小走りに走る京子の後ろ姿は悩ましかった。
ビキニで覆われているセクシーな尻が揺れて、彼は頭がボーとしてきた。
京子はすぐに、焼き蕎麦を二包み、とオレンジジュースを二つ、買ってもどってきた。
そして、それをテーブルの上に置いた。
「焼き蕎麦とオレンジジュースにしちゃったけど、よかったかしら」
「は、はい。あ、ありがとうごさいます」
二人は、焼き蕎麦を食べ始めた。咽喉が渇いていたため、オレンジジュースが最高に美味しかった。
「京子さん。今日は僕にとって最高の日です」
食べ終わった後、純が言った。
「私にとってもそうですわ」
京子もニコッと笑って言った。純は、京子の横顔を、しばし真顔でじっと見つめた。
「あ、あの。京子さん。つかぬことをお伺いしてもよろしいでしょうか」
急に純の顔が真剣になった。
「はい。何でしょうか」
京子はキョトンとして聞き返した。
「あ、あの。京子さんは、結婚してるんですか?」
「・・・そ、それは・・・」
京子は言いためらった。京子の顔も真剣になった。
「もし、結婚しているんでしたら、京子さんと会うのは今日限りにします。だって、これは不倫ですから。ご主人に悪いです」
言いためらっている京子に純はきっぱりと言った。だが京子は黙っている。純はつづけて言った。
「僕は京子さんが好きです。京子さんは僕のことをどう思っているのでしょうか?」
「私も純さんが好きですわ」
京子は、強い語調で、ためらうことなく即座に答えた。この発言は純を喜ばせ、安心させた。
「もし、京子さんが結婚していたり、好きな人がいるのなら、僕は、いさぎよくあきらめます。でも、もし、そうでないのなら僕と、結婚を前提として、友達になっていただけないでしょうか」
いきなりの無粋で唐突なプロポーズだった。純は強い語調で京子にせまった。だが、京子は黙っている。京子の明るかった表情が、純の真剣な質問によって、困惑した表情に変わってしまった。しばし時間がたっても、京子は返事をしようとしなかった。純は、京子には何か複雑な事情がある、のだと思った。
「すみません。京子さん。無理に問い詰めてしまって。何か、言いにくい事情があるみたいですね。もう、そのことは聞きません」
「あ、ありがとうございます」
京子は、肩の荷がおりて、ほっとしたようのだろう。ペコペコと頭を下げた。
京子には、何か言いたくない事情があるのだ。と純は確信した。しかし、それを問い詰めても詮無いことである。純は無粋な質問をしてしまったことを後悔した。純は、頭を切り替えて、ニコッと微笑みかけた。
「ごめんなさい。京子さん。昨日、会って、いきなり翌日、結婚を申し込むなんて、おかしいですよね。今の質問はなかったことにして下さい」
「あ、ありがとうございます」
京子はほっとしたように答えた。純も嬉しくなった。
「ともかく、今の質問はなかったことにして、今日はうんと楽しみましょう」
純が笑顔でそう言うと、京子も満面の笑顔になって、
「ええ。ありがとうございます。ぜひ、そうしましょう」
と、嬉しそうに言った。京子の顔に再び笑顔がもどった。
ちょうど、その時、ダイビングプールの前で、賑やかなアトラクションが始まるところだった。コミニュケーション・パフォーマンスである。純は、これが好きだった。
「あっ。京子さん。面白いアトラクションが始まりますよ。行ってみませんか?」
「ええ」
京子は即座に答えて立ち上がった。

二人は手をつないで、ダイビングプール前の広場に行った。多くの入場客が、すでに集まっていた。純と京子は、人垣の後ろに手をつないで並んだ。元気な音楽と共に、チアガールのようなミニスカートを履いた五人の若い女性達が元気に出てきた。彼女達は少し音楽に合わせて踊った。一番元気なのがリーダーである。彼女がアトラクションの司会をした。彼女は五人の名前を紹介した。そして、水の一杯入った、水位が透けて見える五つのバケツを、少しずつ間隔を空けて、横一列に並べた。
「みんな、元気かなー。コミニュケーション・パフォーマンスの時間ですよー」
とリーダーが元気に言った。
「小学生以下の子供、五人出てくれないかなー。水掻き競争をするよー。ルールは簡単。用意スタートで、バケツの水を掻き出し、三分で終わり。バケツの水を一番多く、掻き出した子が勝ちだよー」
子供達が、五人出てきた。自分の意志で、というより、親に勧められたり、司会の女性に、
「君、やらないかなー」
と勧められたりしてである。小学生以下の子供では、まだ、おどおどしてて、自分から出てくる勇気はない。だが、ともかく、五人の幼児が出てきた。
「君。名前は?」
と聞かれて、子供達は、たどたどしく、自分の名前を言った。五人は、それぞれ、バケツの前に立たされた。グループの五人の女が、それぞれの子供の応援者のように、子供の後ろに立った。
「それじゃあ、始めるよー。用意―」
と言うと、子供達は、腰を屈め、手を出して構えた。
「スタート」
合図と共に、子供達は、せっせとバケツの水を掻き出し始めた。みんな一生懸命である。バケツの水がどんどん掻き出されていった。
「ストップ」
の合図と共に、子供達は、水を掻き出すのを止めた。バケツが隣り合うように集められた。水位の一番、下がっているバケツが勝者である。バケツの中の水が透けて見えるので水位の下がりの程度は、近くで並べれば、一目瞭然だった。
勝った子供は、名前を聞かれ、子供は、たどたどしく答えた。五人には参加賞として、風船が渡された。他にも、同様の簡単なゲームが行われた。

純は、これが好きだった。子供というよりも、コミニュケーション・パフォーマンスの司会の女の人が、綺麗で、子供っぽく振舞う仕草が面白くて好きだったのである。それは演じられた仕草ではあったが、ともかく明るく、楽しい。根にそういう性格がなければ、子供のように演じることは出来ないだろう。純は彼女に話しかけたかったが、出来なかった。彼女が、明るく振舞えるのは、ゲームの中だけであり、大人が、個人的に話しかけたら、彼女は、途端に良識ある大人にもどってしまうだろう。
そして、アトラクションでは女性達のビキニの後ろ姿を間近でじっくり見れるのが、よかった。女性達は、アトラクションを見ているため、前を向いて立ったまま動かない。純は、女性達に気づかれることなく、彼女達の、ビキニの後ろ姿を見ることが出来た。そして手をつないで見ているカップルを純は羨望の眼差しで見た。自分にも、手をつないで横にいてくれる女性がいたらどんなに幸せなことか。だが、女性のいない純は、さびしくハアと溜め息をつくだけだった。
だが、今日は違う。京子という綺麗な女性が、間違いなく純と手をつないで横にいるのである。まさに夢、かなったりである。純は最高に幸せだった。京子は横で、微笑みながら楽しそうに、アトラクションを見ていた。純は、そっと京子の背中に手を回して、京子とピタリとくっついた。柔らかい女性の体の感触はたとえようもなく心地よかった。

アトラクションが終わった。
「楽しいアトラクションですね」
京子は、そう言って笑顔を純に向けた。
「そうですね」
純も笑顔で答えた。京子の笑顔には、さっきの暗い陰など、全く無くなっていた。純は、京子と手をないで歩いた。
「今度は波のプールに行きませんか?」
「ええ」
そうして踵を返した時、目の前で、若いカップルが、ピースサインをしてニッコリ笑っていた。その二人を、SHOUNANと書かれた青いTシャツを着た男が、デジカメを向けている。「大磯でカシャ」である。土曜と日曜は、大磯ロングビーチは入場客がたくさん来て混む。よく言えば賑やか、である。それで、土曜日と日曜日に、入場客の写真を撮って、大磯ロングビーチのホームページに、その日のうちにアップしていた。これは、土曜日と日曜日だけ行われていた。平日はない。写真を撮って欲しければ、「撮って下さい」と一言いうだけで、撮ってもらえるのである。
「京子さん。一緒に、写真、撮ってもらいましょうか」
「ええ」
京子は嬉しそうに返事した。
「でも、ネットにアップされますよ。大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫です」
京子は笑顔で、あっさり言った。これは記念のためでもあるが、探りのためでもあった。もし、京子が結婚していたり、本命の彼氏がいたりしたら、二人一緒に楽しそうにしている写真を撮られるのは、夫や彼氏に見つかるリスクを恐れて出来ないはずである。だか、それは京子は大丈夫らしい。なら、京子は、結婚しておらず、本命の彼氏もいない可能性の方が強くなる。仮に本人に見つからなくても、友達や知人に見つかれば、本人に報告されて知られてしまう危険がある。ならば、さっき京子に唐突にプロポーズして、京子が困ったのは何故なのか。やはり、自分に好意を持ってくれてはいるが、結婚までは、決めかねている、ということなのではないか、と純は思った。
「すみません。写真、撮って下さい」
純は、カメラを持っている、青いTシャツの男に言った。
「はい。わかりました」
と言って、男は、カメラを覗きながら、少し後ずさりした。純は京子とピッタリとくっついて、右手を京子の腰に回した。京子は、左手を純の腰に回した。そして、お互い、反対の手で、ピースサインをした。
「では、撮りますよー」
男が言った。京子は笑顔をつくった。純も笑顔をカメラに向けた。
カシャ。
写真が撮られた。
男は、近づいてきて、撮った写真を二人に見せた。ピッタリくっついたアツアツの写真が撮れていた。
「お二人の関係は?」
男が聞いた。純は京子の顔を見た。
「恋人です」
京子が嬉しそうに答えた。純は驚いた。
「京子さん。アップされる写真には、間柄と来た場所が写真の下に載りますよ。恋人で本当に、いいんですか?」
「ええ。いいです」
京子は躊躇いなく言った。
「お住まいはどちらですか?」
男が聞いた。
「藤沢市です」
京子が答えた。堂々と住んでいる所まで答える京子に純はまた驚いた。
「では、今日中にアップします。どうもありがとうございました」
そう言って男は去っていった。

「京子さん。じゃあ、波のプールに行きましょう」
「ええ」
純が誘うと京子は嬉しそうに返事した。
「京子さん。間柄は恋人で、藤沢市在住なんて言って本当にいいんですか?写真の下に書かれますよ」
純は眉間を寄せて京子に聞いた。
「ええ。大丈夫ですよ」
京子はあっけらかんと答えた。純は京子が何を思っているのか、さっぱり分らなかった。京子に夫や彼氏がいるのなら、写真は公開されない方がいいに決まっている。仮に公開されても、似ている他人と思われて気づかれない可能性もある。しかし、住んでいる所が分ってしまえば、確実に不利になる。夫や彼氏がいて、知られたくないなら、住んでいる所は、埼玉県とか、ウソを言っておいた方がいいはずである。そんなことは京子も分っているはずである。純は何が何だかさっぱり分らなくなった。

波のプールについた。
純は波のプールには、全く入らなかった。ここでは泳げない。ここは、親子や友達が、海の波の寄せたり引いたりする感覚を楽しむためのプールである。そもそも純は、大磯ロングビーチでは、シンクロプールでしか泳がなかった。市営プールと違って、一時間に10分の休憩というものがないから、いくらでも続けて泳げる。しかも水深2mだから、浅いプールよりずっと面白かった。朝9時から泳ぎ出して、ずっと泳ぎ続けて、気づいたら12時を過ぎていたということも、ザラだった。
純は京子と手をつないで、波のプールに入っていった。
適度な力を持った波が、やって来ては、足に当たり、そして引いていく反復を何度も続けていた。それは人工的に作り出された潮の満ち引きだった。やってくる波は、適度なエネルギーを持っていて、足に当たる波の攻撃には軽いスリルがあって、それが心地いい。
「気持ちいいわ。何だか海に来たみたい。こうやって、波に入っていくの、久しぶりだわ」
「京子さんは、夏は海には行きますか?」
「全く行きません。中学校の時に海水浴に行って以来、全く行ってません」
「どうしてですか?」
「そうですね。やっぱり日焼けするのが嫌なので・・・」
二人は、手をつないで、どんどん深みに入って行った。
「純さんは、海にはよく行くでしょう」
京子が聞いた。
「ははは。海には行きますけど、海にはほとんど入りません」
「どうしてですか?」
「海では、体が浮くんで、面白くないんです。ブイで仕切られた小さな囲いの中を泳いでいても、面白くありません。それに・・・」
「それに、何ですか?」
「それに京子さんのような素敵な彼女がいませんから。海は泳ぐ所ではなく、友達と一緒に行って遊ぶ所です」
「・・・ふふふ。じゃあ、今度いつか一緒に海に行きませんか?」
純は驚いた。京子は純とまた会いたい、と思っているのか。だが本気ではなく言葉だけかもしれない。本心で京子が何を思っているのかは、さっぱり分らなかった。
二人は手をつないで、さらに、どんどん深みに入って行った。もう水が胸の所まで来ていた。足をしっかり踏ん張っていないと波に押されてしまう。波がくる度、京子は、キャッ、キャッと嬉しそうに叫んだ。波に負けないためには、波がくる前に、波の方に向かっていくくらいでなくてはならない。
「あっ」
大きな一波に京子は、波にさらわれそうになった。
「純さん。助けてー」
ふざけてか本気か、京子は咄嗟にぐっと純の手を力強く握った。純はぐっと京子の手を握り締めた。だが京子は、力が弱いのか、バランスが悪いのか、波に流されてしまいそうだった。
純は、京子の背後に回り、背中から京子の体をしっかり抱きしめた。
「もう大丈夫ですよ。京子さん」
「ありがとう。純さん」
純は京子を背後から抱きしめて、足をぐっと踏ん張った。こうすれば確実に京子を支えられる。だが波はそんなに強い力ではない。し、京子もそんなに非力とも思えない。平泳ぎで50m泳げるほどの泳力はあるのだから。結局、京子は、純に抱きしめられたいため、わざと力を抜いているのだと思った。純はしばし、京子を背後から抱きしめ続けた。京子が倒れないため、というより、抱擁するように。京子も、純の抱擁に身を任せているかのようだった。「支え」ではなく「抱擁」と純が意識を切り替えると、それはとても気持ちのいいものになった。純はこんなことをするのは生まれて初めてだった。京子は抱きしめている純の腕をしっかりつかんだ。しばし、二人は、そうやって、波に揺られていた。

時計を見ると、もう五時近くになっていた。ちらほらと人々は帰り支度をしていた。
「京子さん。もう、出ましょう」
京子を抱きしめていた純が言った。
「はい」
二人は手をつないで、波に押されながら、波のプールを出た。
「京子さん。もう、帰りましょう。今日は最高に楽しかったです」
「私も」
そう言って京子はニコッと笑った。
二人は手をつないで、本館の建物に向かった。
純と京子は更衣室とロッカーのある本館に入った。コインロッカーに入れていた、二人分の荷物を出して、二人は、それぞれ男性更衣室と女性更衣室の前で別れた。
純はシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かして、服を着て、更衣室を出た。そして、京子が出てくるのを待った。五分くらいして、京子は、着てきた薄いブラウスとフレアースカートを着て出てきた。二人は手をつないで大磯ロングビーチの建物を出た。

二人は駐車場に止めておいた車の所に来た。
「京子さん。また運転しますか?」
と純が聞くと、京子は、
「はい」
と嬉しそうに答えた。それで京子が運転席に乗り、純は隣の助手席に乗った。京子はエンジンをかけ、車を出した。もと来た道を帰るだけなので、帰りは楽である。
「いやあ。今日は人生で最高の一日でした」
純が言うと、京子も、
「私もそうです」
と言ってニコッと笑った。純は真顔になり、興ざめになるのを覚悟の上で、昼間した質問を京子をじっと見据えて言った。
「京子さんは、結婚しているか、付き合っている彼氏がいるのですか?」
「・・・そ、それは・・・」
急に京子の顔が青ざめた。
「京子さん。教えて下さい」
純は強気に迫った。
「もし、結婚しているんでしたら、今日限りにします。だって、これは不倫ですから。ご主人に悪いです」
だが京子は黙っている。
「京子さん。率直に言います。僕と結婚して下さい」
このプロポーズはあまりに唐突であり、京子は唇を噛みしめて眉間を寄せた。京子は黙ったまま返事をしなかった。京子が純に好意を持っているのは、今日の京子の嬉しそうな態度で明らかである。結婚していたり、将来を誓い合った彼氏がいるのなら、ハッキリそう言えばいいではないか。何が問題だというのだ。純には全く分らなかった。しばし時間が経った。
「何か、言いにくい事情があるみたいですね」
純は答えられない京子をそれ以上、問い詰めるのをやめた。
京子のアパートに近くなっていった。
「純さん。昨日のお礼に、家にすき焼きの具を二人分、用意しておいたんです。どうか食べていって下さい」
京子が言った。
「そうですか。ありがとうございます。それではご馳走になります」
このまま家に帰るものだと思っていた純は、思いがけない京子のもてなしに嬉しくなった。しかも京子は昨日から、すき焼きの具を買って用意していたのだから、京子が純に好意を持っていることは明らかである。
やがて車は京子の家に着いた。
「はい。純さん」
車を止めてエンジンを切ると、京子はエンジンキーを純に渡した。純はそれを受け取って財布の中に入れた。京子はアパートの鍵を開けた。
「はい。どうぞ。狭い部屋ですがお入り下さい」
京子に言われて純は京子の部屋に入った。京子の部屋は、六畳が一つで、あと風呂と台所だけの狭いアパートだった。家賃三万円では無理もない。京子は純を六畳の部屋に通し、座布団を純にすすめた。
「すぐに、すき焼きの用意をします。待っていて下さい」
純は座布団に座った。純は部屋を見回した。だが男が一緒に住んでいるようには見られない。
『ここで二人暮らしは、きついだろう。では、結婚しているとすれば別居だろうか』
純はそんなことを考えた。どうしても思考が京子の男関係のことに行ってしまう。
やがてグツグツ煮える音がしてきた。京子は、茹であがった白菜の入った、熱くなったすき焼きの鍋と、焜炉を六畳の部屋に持ってきた。
「おまたせしました」
そう言って、焜炉を座卓の上に乗せ、その上に、熱くなった鍋を置いた。
京子は台所にもどって、牛肉や豆腐、白滝、葱、饂飩など、すき焼きの具を座卓の上に乗せた。そして、純にご飯と生卵と、小鉢と箸を渡した。
京子は牛肉や具をどんどん入れていった。
「さあ。召し上がって下さい。はやく食べないと肉が硬くなってしまいますから」
京子が言った。
「うわー。美味しそうだ。いただきます」
そう言って純は、小鉢に卵を割って入れて、すき焼きを食べ始めた。
肉は横にたくさん置いてあるので、純はどんどん食べていった。
「お味はいかがですか?」
京子が、箸で、具を入れながら聞いた。
「美味しいです。でも、もうちょっと砂糖を入れてもらえないでしょうか。甘いのが好きなんで」
「はい。わかりました」
そう言って京子は、砂糖を鍋に継ぎ足した。
純は、すき焼きをおかずにして、温かいご飯をハフハフいいながら食べた。京子は嬉しそうに純を見守っている。自分は用意するだけで食べようとしない。純にうんと食べて欲しいという思いからだろう。
「京子さんも食べて下さい。一緒に食べた方が美味しいですから」
「はい。わかりました」
京子はニコッと笑って、すき焼きを食べ出した。だが純を思ってか、肉はあまり食べなかった。食事が終わった。京子が肉をほとんど食べないので、純が肉を二人分食べたようなものである。
「あー。おいしかったでした。どうもありがとうございました」
純は丁寧にお礼を言った。京子は、ニコッと笑って、食器を台所に下げ出した。
ふと、横を見ると、ノートパソコンがあった。純は、ネットを開いて、大磯ロングビーチを開いた。「大磯でカシャ」には、純とビキニ姿の京子が、ピッタリとくっついて、お互いに腰に手を回し、笑顔でピースサインをしている写真が綺麗に写っていた。
「京子さん。見て御覧なさい。昼間、撮った写真が写ってますよ」
純に言われて京子は純の横に座った。
「本当だわ。まるで夫婦みたいですね」
そう言って京子はニコッと笑った。純はこの発言の意味もわからなかった。
「京子さんのビキニ姿、凄くセクシーです。きっと多くの人が見ていると思いますよ」
言われて京子は顔を紅潮させた。
「ちょっと、待っていて下さい。シャワーを浴びてきます」
そう言うと、京子は立ち上がって風呂場に入った。シャワーがタイルを打つ音が聞こえてきた。大磯ロングビーチのシャワーだけでは、まだ不十分で、家に帰ってから、石鹸でシャワーを浴びないとプールの水は完全には落ちない。純は今まで、大磯ロングビーチに行った時は、必ず、家でもう一度、石鹸でシャワーを浴びていた。京子もそれなのだろうと純は思った。やがてシャワーの音がピタリと止まった。
出てきた京子を見て、純は驚いた。京子は白いバスタオルを一枚だけを体に巻いて胸の上で縒って、とめてあるだけだったからである。京子はその姿のまま、寄り添うように純に体を寄せてきた。
「あ、あの。純さん。どうか好きにして下さい」
京子の発言に純は胸がはち切れんほどの思いがした。これはセックスの誘いである。純は京子の肩をそっとつかんだ。純はしばし迷った。そして、重い口を開いて言った。
「京子さん。何度も言いますが、京子さんが結婚しているのであれば、僕は京子さんを抱けません。ご主人に悪いですので。僕は、ちょっとカタイ男で、そういう性格なんです」
純はそう言った。京子は黙っている。だが、女の方から誘ってきたのに、女を抱かないなんていうのは、女に恥をかかせることになる。デリケートな純はそれも嫌だった。そのため、あくまでバスタオルの上から、ギュッと京子を抱きしめた。そして、それだけにとどめた。しばしの時間が経った。純は京子から離れた。
「今日はもう遅くなりましたから、帰ります。色々とありがとうございました。今日は僕にとって最高の一日でした」
そう言って純は立ち上がろうとした。
「あ、あの。純さん」
京子が引きとめるように純に声をかけた。
「何ですか?」
「あ、あの・・・」
と言って京子は言いためらった。
「何でしょうか?」
純が促すように再び聞いた。
「あ、あの。もう一度、合って頂けないでしょうか?」
京子の顔は真剣だった。純には京子が何を考えているのか、さっぱり分らなかった。どう考えてもわからなかった。
「何か、複雑な事情があるみたいですね」
純は重たい口調で言った。
「わかりました。僕も京子さんとまた会えるのは嬉しいですから」
「あ、ありがとうございます」
京子は涙を浮かべんばかりに、ペコペコ頭を下げた。本当に感謝している様子だった。
「で、いつ、どこで会う予定にしましょうか?」
「純さん。明日の仕事は何時に終わりますか?」
「そうですね。午後五時には終わります」
「では、明日の純さんが仕事が終わった後に会って頂けないでしょうか?」
今日、会って、また明日とは、早いものだと純は首を傾げた。
「で、場所はどこにします?」
駅の東口のロータリーの近くに喫茶店、××がありますね」
「ええ」
「あそこで会ってもらえないでしょうか?」
「わかりました」
そう言って純は、京子のアパートを出て、車で家に帰った。
家に着くと、純はすぐにノートパソコンを開けて、再度、「大磯でカシャ」の京子のビキニ姿の写真をしみじみと眺めた。それはあまりにもセクシーで美しく、いつまで見ていても見厭きなかった。純はシャワーを浴びて、パジャマに着替え、歯を磨いて、床についた。そしてまた京子のセクシーなビキニ姿の写真を眺めた。そうしているうちに純は今日一日、遊んだ疲れから、泥のように眠った。

   ☆   ☆   ☆

翌日になった。
純はいつもの通り、カジュアルな格好で、車で病院に出勤した。月曜は結構、外来が混むが、今日はそれほどでもなかった。医者なんて八百屋とたいして変わりない。と純は思っていた。し、実際そうである。慣れで、誰でも出来る仕事である。昼休みは、医師の全員は、医局でテレビを観ながらくつろぐのだが、純だけは、医局のテレビの音や医者同士の会話はうるさい雑音でしかなかった。それで純は昼休み、誰もいなくなった静かな診察室で一人カリカリと小説を書いていた。そのためもあって、また酒も飲めなく、人付き合いも苦手で、飲み会にも出ないため、純は親しい医者の友達があまりいなかった。
その日は、仕事が終わった後、京子と会うことが気になって、純は、そのことばかり考えていた。
五時になって仕事が終わった。純は京子に携帯で電話した。
「京子さん。いま、仕事が終わりました。今、どこにいますか?」
「喫茶店××にいます」
京子が小さく返事した。
「そうですか。それでは、急いでそちらに向かいます」
そう言って、純は携帯をきった。そして、車に乗って、急いで車を飛ばした。

   ☆   ☆   ☆

純は駅前の駐車場に車を停めた。そして、急いで喫茶店に入った。京子は、奥の窓際の席に座っていた。昨日と同じブラウスとスカートだった。
「いやあ。待たせてしまってすみません」
「い、いえ」
純は京子とテーブルを挟んで、向き合うように座った。
ウェイターが来た。純はアイスティーを注文した。京子もアイスティーを注文していたからである。京子のアイスティーは、半分くらい減っていた。かなり待ったのだろう。京子は何か今までになく緊張した様子だった。
「あ、あの。純さん。突然、呼び出してしまってごめんなさい」
そう言って京子はペコリと頭を下げた。
「いや。気にしないで下さい。僕は京子さんと会えるのが幸せなんですから」
純は笑いながら言った。京子は真剣な顔になった。
「純さん。昨日、純さんが、色々聞いてきたのに、答えなくってすみませんでした」
京子は深く頭を下げた。
「いやー。僕も無理に聞き出そうとしてしまって、すみませんでした」
「あ、あの。私、純さんが好きです」
京子は、あらたまった真剣な表情で純を直視して言った。
「そう言ってもらえると僕も嬉しいです。僕も京子さんが好きです」
純は微笑んで言った。
「でも・・・」
と言って京子はいいためらった。
「でも、何です?」
純は京子を促した。
「あ、あの。純さんは、バツイチの女なんて、嫌でしょう?」
純は京子が黙っていた理由がわかって少しほっとした。
「なあんだ。そんなことですか。バツイチだの何だのなんて、全然、気になりませんよ」
純は京子を慰めるように言った。
「でも・・・」
と言って京子は再びいいためらった。
「でも、何です?」
純は強気の口調で京子を促した。
「でも、連れ子がいたりしたら・・・絶対、嫌でしょうね」
京子が言った。
「いるんですか?」
これには純も驚いた。
「え、ええ」
京子が答えた。
「男の子ですか。女の子ですか?」
「お、男です」
「どうして離婚したんですか?」
「前の夫は、バーのホステスを好きになってしまって・・・」
「そうですか」
そう言って純はアイスティーを一口、啜った。
「なるほど。そのことで迷っていたんですか」
純は慰めるように言った。
「ダメですよね。こんな女と結婚なんて・・・」
京子は自分に言い聞かせるように言った。言って肩の荷が降りたように、ハアと溜め息をついた。
純は、気抜けした京子の顔を、しばし、じっと見つめた。そして重たい口を開いた。
「いや。そんなことないですよ」
純は自信に満ちた強い口調で言った。
「どうしてですか?」
瞬時に京子が聞き返してきた。京子はまくし立てるように続けて言った。純があっさり答えたのが疑問だったのだろう。
「どうしてですか?血のつながらない他人の子ですよ。純さんは、お医者様で、収入も社会的地位も高いですし。いいところのお嬢様か、女医さんと結婚するのが、ふさわしいのではありませんか。子供だって、当然、自分の子供が欲しいはずですよね」
「いや。そうとも限りませんよ」
焦っている京子に対し、純は落ち着いて話した。
「『人生の悲劇の第一幕は親子となったことにはじまっている』という、芥川龍之介の格言、知っていますか?」
「いえ。知りません。どういう意味ですか?」
京子は身を乗り出すようにして聞いた。
「つまり、自分の血をひいているから、子供は他人ではなくなるということです。子供は自分の分身、自分の所有物のような気持ちになりますよね。そこから、親の愛情がエゴとなり、子供は自分の思い通りに出来るものという親の驕りが起こります。自分の思い通りの人間にする資格がある。そして、そうならないと不快になる、という、いやらしいネチネチした関係になるということです。自分の物だという気持ちから、自分の思い通りにならないと、かえって嫌いになってしまいます。親のエゴの愛というものは。僕は、そういうドロドロした関係より、血のつながらない他人の子供の方が本当に愛せるからです。僕は生きることにドライですから、自分の血をひいた子供を、そして子孫を、残したい、という執着心がないんです。むしろ、逆に自分の血をひいた人間を死後に残したくないとさえ、思っているんです」
「ほ、本当ですか?」
京子は目を皿のようにして聞いた。
「ええ。天に誓って本当です」
純はニッコリ笑って言った。
「で、でも、あの子を気に入ってもらえるか・・・」
京子は不安げな様子だった。
「それは、僕も見てみたいですね」
「では、すぐに来るよう言いますわ」
京子は携帯を取り出すと、すぐに電話した。
「もしもし」
子供とつながったのだろう。京子は話し出した。
「ケンちゃん。今すぐ、駅前にある××喫茶店に来てくれない。タクシー使っていいから」
話し終わって、京子は携帯をきった。

京子は純に振り向いた。そして、真顔になって、重たそうに口を開いた。
「あ、あの。純さん。もう一つ言わなくてはならない事があるんです」
「何ですか?」
「前の夫は、事業を始めるから、銀行から融資を受けるため、資金が必要だと言いました。私は疑わず保証人になりました。しかし・・・」
「しかし、どうしたんですか?」
「夫は資金を、先物取引で膨らましてから、資金を大きくしようとしたのです。それを私は知りませんでした。でも・・・」
「でも、先物取引で失敗して、借金を作ってしまった、ということですね」
「ええ」
「それで借金はいくらあるんですか?」
「い、一千万円です」
純はニコッと笑った。
「わかりました。僕が払います」
「あ、ありがとうございます」
京子はまた目を潤ませた。

   ☆   ☆   ☆

やがて喫茶店の前にタクシーが着いた。京子は急いで、外に出て、財布から1000円札を数枚、取り出して、タクシーの運転手に渡した。京子は、男の子を連れて、喫茶店の中に入った。京子と男の子は、純と向かい合わせに席に着いた。
「あのね。ケンちゃん。この人はね・・・」
京子が息子を紹介しようとした時、男の子は、いきなり大きな声を出した。
「あっ。おにいさん」
男の子が純を見て言った。
「やあ。健太。君か」
純は笑顔で言った。
「えっ。知っているんですか?」
京子は戸惑った目を純と息子に交互に向けた。
「うん。前、野球を教えてくれる親切なおにいさんがいるって、言ったじゃない」
健太は母親に向かって元気に答えた。
純は健太をじっと見た。
「ははあ。健太。プロ野球選手になりたいのは、契約金と高額な年棒のためだな」
「う、うん」
「それで、お母さんを楽させたいと、思っていたんだろう」
「う、うん」
「親孝行だな。健太は」
純は笑顔で言った。
「よかったわ」
京子はほっとしたように胸を撫で下ろした。そして健太を見た。
「あのね。ケンちゃん。この方が私と結婚して下さると、おっしゃって下さったの。だからこの方が健太の新しいお父さんになるの」
「うわー。嬉しいな」
健太は満面の喜びで叫んだ。
「ケンちゃん。何がそんなに嬉しいの?」
健太があまりに嬉しそうにはしゃいでいるので京子が聞いた。
「だって、そりゃー。野球を教えてもらえるもん」
健太は無邪気に答えた。
「ケンちゃん。この方は、お医者様なのよ」
京子が言った。
「へー。そうだったんですか」
健太は興味深そうに純を見た。
「健太。じゃあ、これからは、今まで以上にみっちり野球を教えてやるからな」
純は笑顔で言った。
「ありがとう。おとうさん」
京子はニコッと笑った。健太が、もう純のことを、おとうさんと言ったからであろう。そして、純が息子と親しい仲だったことが、わかって、純と息子がうまくやっていけるかどうか、という心配が吹き飛んだからであろう。

純は真顔になってじっと京子を見つめた。
「京子さん。僕と結婚していただけないでしょうか?」
純は恭しくプロポースして京子の手をとった。
「あ、ありがとうございます」
京子の目頭は熱くなっていた。京子は思わず、ハンカチを口に手を当てた。
今度は京子が純を真顔で見返した。
「純さん。一言、いわせて下さい」
京子の口調は、急に真剣になった。
「何でしょうか?」
「純さん。私には確かに純さんが、お医者様で、収入が高い、という、よこしまな気持ちがあるんです。でも、でも、決して、お金目当て、だけではありません。私、本当に純さんを愛してるんです」
京子は訴えるように語気を強めて言った。
「ははは。そんなこと気にしないで下さい。そんなことで悩まないで下さい。僕は京子さんが僕を愛してくれていることを信じていますし、僕も京子さんを愛してます」
純は軽くあしらうように言った。
「あ、ありがとうございます」
そう言って、京子はまた目頭を熱くしてハンカチで口を押さえた。

   ☆   ☆   ☆

それから二週間後、近くの小さな教会でしめやかな結婚式が行われた。出席者はお互い、誰も呼ばなかった。純は派手な結婚式が嫌いだったからからである。そう提案すると京子も賛成した。
京子と健太は純のアパートに移った。純のアパートは、六畳が二間あり、ほとんど使っていない、ダイニングもあって三人暮らしにはちょうど良かった。

   ☆   ☆   ☆

結婚式の後の最初の日曜日。
純は朝、起きてから小説を書き始めた。昼食を三人で食べ、その後、三時まで一心不乱に小説を書いた。そして、三時から、息抜きも兼ねて、健太と公園でキャッチボールをした。健太は熱心で、丁寧に指導すれば、健太の野球の技術は、そうとう上手くなると純は確信した。
夕方近くまで、純と健太は熱心に野球の練習をした。
京子がやって来た。
「あなたー。健太―。もう夕御飯よー」
京子に呼ばれて、純と健太は家に戻った。
その日の夕食はビフテキだった。
「健太。これから野球はどうする。もう、プロ野球選手にならなくてもいいぞ。学費は出すから、一流大学に進学して、一流企業に就職した方が無難だぞ。どうする?」
純は健太に聞いた。
「僕、プロ野球選手になる」
健太は決然と答えた。
「どうして?」
「だって、一度、決めたことだもん」
純は微笑んだ。
「よし。俺も必ず小説家になってやる。どっちが夢を実現できるか、親子で競争だ」
そう言って純はビフテキを切って口に入れた。
京子が嬉しそうに二人を眺めていた。


平成23年10月11日(火)擱筆




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義母と義妹(上)

2015-08-26 14:55:51 | 小説
義母と義妹

ある父子家庭である。
母親は純が小学生の時、交通事故で死んでしまった。父親は大学病院の勤務医である。
純は真面目な優等生だったが、先天的なSMで、こっそりSM写真を見ていた。
ある日の夕食の時、父親は純に嬉しそうに言った。
「純。喜べ。近く、お母さんと妹が来るぞ」
父親は結婚相談所に登録して、相性の合う相手を求めていた。
しかし子持ちなので、なかなか相手は見つからなかった。
しかし、静子という、ある女性が彼と話したいと、言ってきたのである。
彼女も夫を交通事故で亡くした未亡人だった。彼女には美子という中学一年生の娘がいた。
ちょうど、足りない者どうし、という好条件の上、相性も合い、話はトントンと進んでまとまった。

純は新しい母親と妹と聞いてドキンとした。
純は中学二年で、ちょうど性欲真っ盛りの頃である。
しかし純は内気な性格のため、女に興味はあっても、女に話しかける勇気はなかった。純はその日以来、新しい母親と妹が来る日が待ち遠しくなった。

数日後の日曜日に、その女性は娘を連れて純の家にやって来た。
「おーい。純。静子さんと美子ちゃんが来たぞ。降りてこい」
二階の自室で蒲団をかぶっていた純は、呼ばれて、そっと階下に降りた。
居間のソファーに和服姿の女性と、その隣にかわいい女の子が正座して座っている。
父親も横に座っている。
「おい。純。座れ」
言われて純も父親と向き合うように正座して座った。
女性は純を見てニコッと笑った。
純はドキンとした。
「きれいだ」
純は思わず心の中で言った。
「純。新しいお母さんの静子さんだ。きれいだろう」
そう言って父親は静子を紹介した。
「純君。これから純君のお母さんにならせていただきます。よろしくお願いします。何でも気軽に言って下さいね」
そう言って静子は深く頭を下げた。
頭を上げると静子は隣に座っている美子に顔を向けた。
「さあ。美子ちゃん。新しいお兄さんに挨拶しなさい」
静子はそう言って、娘の背中をポンと叩いた。
少女はつぶらな瞳を純の方を向けた。
「お兄さま。これから、お兄さまの妹にならせていだきます。よろしくお願いいたします」
そう言って少女は母親と同じように礼儀正しく頭を下げた。
「うっ。かわいい」
純は思わず心の中で言った。
これから、この少女が自分の妹になるのかと思うと胸がドキドキしてきた。
純は恥ずかしくて真っ赤になり、話が始まると二階の自室に逃げるように駆け上がった。
「はは。あいつは、内気で今まで一人だったものだから照れてるんだ。まあ、許してやってくれ」
父親は豪放に笑った。

その数日後から新しい母親と妹が増えた四人の生活が始まった。
純は人見知りが強いので静子には、全然うちとけられなかった。
しかし義妹の美子は年下の上、真面目でおとなしい性格だったので、すぐに仲良くなれた。
きっかけは、美子の方からつくってきた。
ある日、トントンと純の部屋をノックして、美子がそっと戸を開けた。
「あ、あの。お兄様。お願いがあるんですが聞いていただけますでしょうか」
純は黙って美子の顔を見た。
「あの。数学でわからない事があるんです。教えていただけないでしょうか」
純が答えないので、美子は顔を赤くして小さな声で言った。
純は、しばしモジモジしている美子を眺めていたが、
「いいよ」
と言った。
「あ、ありがとうごさいます」
美子は感激したようにペコリと深く頭を下げた。
純は美子の部屋に行った。
美子は机について、急いで数学の教科書を開いた。
「この問題がわからないんです。教えていただけないでしょうか」
そう言って美子は、教科書を開き、ある問題をそっと指差した。
それは因数分解だった。
純は全科オール5の秀才なので、なんてもなかった。
純はわかりやすく教えた。美子は、ニコッと笑って、
「ありがとうございました」
と、礼を言った。
「あ、あの。これも教えていただけないでしょうか?」
と言って美子は、いそいで物理の教科書も開いた。
それは力学の問題だった。
純は一つのベクトルを二つに分解して、わかりやいすように教えた。
「あ。わかりました。ありがとうございます」
美子は、またペコリと頭を下げた。
純は美子の学力のレベルがだいたい、わかった。
その後、美子は英語や化学などの教科書を急いで開いて、たてつづけに質問した。
純は、それらを全部、わかりやすく教えた。
美子は、何度も頭をペコペコ下げて礼を言った。
「まだ、何かわからないことある?何でも教えてあげるよ」
純が言うと美子は焦って、
「い、いえ。自分でも考えてみます。ありがとうございました」
と言って、急いで教科書をしまった。
あまり自分の能力を知られてしまう事の恥ずかしさ、と、純の時間を割くことに申し訳なさを感じたのだろう。
「あ、あの。お兄様・・・」
と言って美子は顔を赤くした。
「あ、あの。これからもわからないこと教えていただけますでしょうか?」
「うん。いいよ。何でも聞いて」
「あ、ありがとうございます」
美子は欣喜雀躍とばかりに喜んでペコリと頭を下げた。
純は美子の部屋を出た。

その日の夕食はなごやかな雰囲気になった。
夕食は静子のつくったビーフシチューだった。
「あのね。今日。お兄様が勉強、教えて下さったの」
静子はモジモジ恥ずかしそうに母親に言った。
「そう。美子ちゃん。それは、よかったわね」
静子は微笑して娘の頭を撫でた。
「はは。こいつは人見知りが強いが、勉強は出来るんだ。おい。純。しっかり美子ちゃんに教えてやるんだぞ」
父親は笑って、純の肩を叩いた。
「あ、あの。純さん。これからもどうか美子の面倒を見てやって下さいませんか」
静子は純に向かって遠慮がちに言った。
「うん。いいよ」
純は素っ気ない口調で言った。
だが、この一言に静子は過剰反応した。
「あ、ありがとうごさいます。よろしくお願いいたします」
静子は純にペコリと頭を下げて礼を言った。
そして夫の方を向いて言った。
「あなた。助かります。優秀な家庭教師まで出来て。感謝に耐えません」
美子はそう言って深々と頭を下げた。
父親は、ははは、と笑った。

そんなことで四人の生活が始まった。
純は美子をかわいがった。
頼まれなくても、純は美子の勉強を教えてやった。
美子は、礼儀は正しいが、学力は普通だった。
特に女にありがちな理数科系は当然のごとく苦手だった。純は勉強を教えることに優越感の心地良さを感じた。だが純の楽しみの本命は他にあった。女っ気なく育った純には、美子は宝物だった。今までは写真で女を羨ましそうに見ているだけだったが、生きた女の子が手に入ったのである。純はスキンシップを装って、何気なく美子の体を触りだした。美子に気づかれないように。
美子も純のスキンシップを純粋な兄妹愛だと思った。
静子がおやつを持ってくると純は美子と笑ってお喋りしながら食べた。
純は美子と色々な事をして遊んだ。
お馬さんごっこ、と言って純は四つん這いになると、美子に背中に乗るよう言った。美子が純の背中に乗ると、純は部屋の中をヒヒン、ヒヒンと言いながら、四つん這いでのっそり歩いた。美子はキャッ、キャッと声を上げながらはしゃいだ。だが、純は背中に触れる美子の尻の感触を秘かに楽しんでいた。柔らかくて、温かくて最高の感触だった。

純はちょうど思春期の目覚めで、女に激しい性欲が起こり出していた。
だが純は先天的な性倒錯癖があった。純は激しくSMにひかれ、女が裸にされ、縛られている写真を見ると激しく興奮した。単なる女のヌード姿には、何の興奮も起こらなかった。
純はSM写真集を見ると、女をうんと虐めたいと思うと同時に、虐められている女がかわいそう、というような複雑な感情が起こるのだった。愛の形が歪んでいた。女が虐められれば、虐められるほど、女に対する愛が強まるのである。純の性欲の対象は写真の女から生きた妹の美子に変わった。

しばしして、お馬さんごっこの次はプロレスごっこになった。純が提案すると美子は喜んで応じた。純はスリーパーホールドや、逆えび固めと言って 美子を身動き出来なくして、くすぐったり、つねったりして責めた。だが純はプロレスごっこという名目で、美子の体を思うさま触って楽しんだ。また、手加減しているが、女を虐める事に、たまらない快感を感じた。美子は女なので力が無く反撃できないので、手加減して美子に責めさせた。およそプロレスごっこなど女の子にはふさわしくない。なので純がこうやって責めてごらん、と責め方を教えてやった。美子はうつ伏せになった純の背中に跨り、手を捩じ上げたり、頬っぺたを抓ったり、指裂きしたりした。純は、おどけて、
「痛い。痛い。まいった。美子ちゃん、許して」
などと叫んだ。美子は、面白がり出して、キャッ、キャッと笑い、
「どうだ。まいったか」
と勝ち誇ったように言った。純は、
「まいった。まいった」
と言いながら、女に虐められる快感を感じていた。純はサドっ気が強いが、マゾもあり、女に虐められる事にも興奮するのである。

こんな事で、もう純と美子は打ち解けて、本当の兄妹のようになった。

だが、その一方で純の思春期の性欲は、どんどん激しくなっていった。純はSM写真集をこっそり見ながら、何とか美子を縛って虐めてみたくなった。

ある日、美子に勉強を教えた後、純は言った。
「ねえ。美子ちゃん。人さらいごっこをしない」
「どんな遊び?」
美子は興味津々といった顔つきで純に聞いた。
「僕が悪い人さらいで、美子ちゃんが、さらわれちゃうの」
純が答えると、美子は、すぐに、
「面白そう」
と言って笑った。
「じゃあ、やろう」
と、決まった。
「さあ。美子ちゃん。手を後ろに回して。手首を重ね合わせて」
言われて美子は両手を後ろに回して手首を重ね合わせた。純は縄で美子の手首を縛った。そして縄の余りで胸を二巻きした。純は、やったー、と心の中で叫んだ。ついに女を縛りたいという夢が実現したのである。美子は後ろ手に縛られて横座りして、いかにも捕われて縛られてしまった女という感じである。
「美子ちゃん。どんな気持ち?こわい?」
純が聞いた。
「ううん。こわくない。お兄ちゃんだから」
そう美子は答えた。その時、階下から静子の声がした。
「純さーん。美子ちゃん。おやつですよ」
純はすぐに下に降りた。
「今日は美子ちゃんと一緒に部屋で食べます」
そう言って純はおやつのチーズケーキとジュースを盆にのせ、急いで二階に駆け上がった。美子は黙ってつつましそうに座っている。その姿を見ると何ともいえない心地良い快感が起こった。純はおやつの乗った盆を床に置いた。純は楽しそうにチーズケーキを極めて小さく切って美子の口に持っていった。
「はい。美子ちゃん。アーンして」
純が言うと美子は口を開いた。純は小さく切ったケーキの断片を美子の口の中に入れた。美子はモグモグ顎を動かしてゴクリと飲み込んだ。その姿がなんとも愛らしい。胃袋に食べ物が入ったため、胃が動き出し、食欲が起こったのだろう。物欲しそうな目でチーズケーキをそっと見た。純はまたチーズケーキを小さく切って、美子に食べさせた。そうやって純はケーキを、少量ずつ切って美子に全部、食べさせた。
「おいしかった?」
「うん」
美子はニコリと笑った。純は後ろ手に縛られた美子の髪を撫でたり、くすぐったりした。
「あはっ。くすぐったい」
美子はくすぐられる度にもどかしそうに体を捩った。純はスカートをそっとめくろうとした。
「あん。やめて。お兄ちゃん」
美子は恥ずかしそうに身を守ろうとした。
「本当のひとさらいだったら、もっと悪い事しちゃうよ」
純は教訓するように言った。純はエッチな事はせず、しばし、さやしく体を触ったり頭を撫でたりしてから縄を解いた。

部屋にもどった純はベッドに乗り、興奮の余韻に浸った。長年、夢見ていた、女を縛って虐めたい、という願望を実現できたのである。純はSM写真集を見ているうちに、もっと美子を色々な責め方で虐めたいという願望がつのってきた。純は美子を写真の女のように裸にして、色々なみじめな格好に縛って虐めたいと思った。
だが、それを実行するのは難しい。美子は真面目な性格で、そんな事をしたら嫌がるのは明らかである。純は頭を捻って美子を虐める方法を考えた。そして一つの方法を思いついた。美子を罠にはめて何か悪い事をさせる。そして悪い事をした罰という口実で美子を虐めよう。純はその方法としてこんな方法を考えた。SM写真集に髪の毛を一本、挟んで引き出しの中に入れておく。写真を見れば髪の毛が落ちるからわかる。美子がSM写真集を黙って見るよう仕向けて、見させ、それを口実に美子を叱る。とまあ、こんな具合である。

さっそく純は作戦を開始した。
翌日、学校がおわって美子に勉強を教えた後、純は言った。
「美子ちゃん。僕の部屋の鍵が壊れちゃったから、戸を閉められなくなっちゃった。でも僕の部屋には入らないでね」
美子は自分の部屋に鍵などしていないが、神経質な純は自分の部屋に鍵をしていた。
「はい。私、お兄ちゃんの言う事は守ります。けっして入りません」
美子は微笑んで答えた。
「ありがとう。美子ちゃんは約束を守る子だもんね」
そう言って純は美子の頭を撫でた。

その翌日、純は、「今日は帰りがちょっと遅くなる」と言って学校に出かけた。
夕飯後に純は帰ってきた。夕飯を食べた後、純はすぐに部屋に入って引き出しを開けてみた。SM写真集は、そのままだが、髪の毛が無い。置いた時の角度もほんの僅かだが、ずれている。美子が見たのだ。純は、しめしめと喜んだ。

翌日、純は、また別のSM写真集に髪の毛を一本、挟んで、引き出しの中にしまった。そして、「今日も帰りが遅くなる」と言って学校に出かけた。
夕飯後に純は帰ってきた。夕飯を食べた後、純はすぐに部屋に入って引き出しを開けてみた。SM写真集は、そのままだが、やはり髪の毛が無い。置いた時の角度もほんの僅かだが、ずれている。美子がまた見たのだ。純は、しめしめと喜んだ。

その翌日は土曜で学校は休みだった。
父親は静子は出かけていない。
純は美子の部屋で美子に勉強を教えた後、言った。
「美子ちゃん。約束やぶって僕の部屋に入ったでしょう」
純は美子をじっと見て言った。
「いえ。入ってません。私、お兄ちゃんとの約束は守ります」
美子はキッパリ言った。ばれてないと思ってるんだろう。
純はニヤリと笑った。
「いや。美子ちゃんは僕の部屋に入って引き出しを開けたはずだよ。そして中にある本を見たはずだよ。しかも二度も」
純は厳しい目つきで問い詰めた。
「私、本当に入ってないんです。どうしてお兄ちゃんは、そんなに疑うんですか」
美子は、証拠はあるんですか、と言わんばかりに強気に言った。純はここぞとばかり言った。
「いや。美子ちゃんは、引き出しを開けて、その中の写真集を見たはずだよ。しかも二回も」
「どうして、お兄ちゃんは、そんな事を決めつけるんですか。証拠でもあるんですか」
純はニヤリと笑った。
「ああ。あるよ。美子ちゃんは気づかなかっただろうけど、僕は本の間に髪の毛を一本、はさんでおいたんだ。本を開ければ髪の毛が落ちるからわかるんだ。一昨日と昨日、髪の毛が無くなっていたよ。美子ちゃんが見たんでしょう」
美子は真っ青になった。純はつづけて言った。
「一昨日も昨日も、お父さんは夕食後に帰ってきたよ。家にいたのは美子ちゃんと美子ちゃんのお母さんだけだよ。美子ちゃんのお母さんが見たっていうの」
美子はブルブル震えだした。まさか母親に罪をなすりつけるわけにはいかない。
「美子ちゃん。見たんだね」
純は美子の目をじっと見て強気で言った。
「ご、ごめんなさい。お兄ちゃん」
美子は頭を下げた。
「見たんだね。美子ちゃん」
純は念を押すようにもう一度言った。
「は、はい」
美子は顔を真っ赤にして、小声で言った。
「どんな本だった」
「は、裸の女の人が縛られている写真でした」
「二回も見るなんて、美子ちゃん、ああいうの興味あるんだね」
「いえ。ありません」
美子は真っ青になって首を振った。
「じゃあ、どうして興味ないのに二回も見たの」
純はさらに問い詰めた。
美子は答えられない。困惑して唇を噛んでいる。
「ああいうのはSMのボンデージアートといって芸術なんだよ。美子ちゃんもSMに興味があるんだね」
純は高圧的に言った。
美子は言われても答えられないで黙っている。
純はつづけて言った。
「美子ちゃんも、ああいう風に裸にされて縛られたいんだね」
「そ、そんな事ないです」
美子は激しく訴えた。
「じゃあ、どうして二回も見たの」
純は、まんまと罠にかかって困惑している美子を心の内に楽しみながら問い詰めた。
「ああいう写真の女の人はマゾと言って、虐められる事に快感を感じるんだよ。はじめは怖がっても、つい見てしまうんだ。ああいうのは先天的な性格で、興味のない人は嫌悪感を感じるから見たがらないんだよ。やっぱり美子ちゃんはマゾの性格があるんだね」
純は美子の弱い立場をいい事に、言いたい事を言った。
美子は悪い事をした弱い立場なので、純に何を言われても言い返せないで黙っている。
「美子ちゃんは、平気で約束を破り、ウソをつくんだね。真面目だと思っていたのに、本当に人は見かけによらないね」
「ご、ごめんなさい」
美子は椅子から降りて土下座して床に頭を擦りつけて謝った。
「美子ちゃんは万引きしたり、人の物を盗んだりするようになるかもしれないね」
「そ、そんな事ありません」
美子は訴えるように言った。
「いや。あんなにシャーシャーと自信を持ってウソをつくんだから危ないね。僕は兄として妹を監督する責任がある。かわいい妹だけど僕は心を鬼にして、もう、悪い事はこりごりだと思うほど、罰しないとね」
純は居丈高に言った。
「は、はい。どんな罰でも受けます」
美子は半泣きになって、潤んだ瞳を上げた。
「じゃあ、まず服を全部、脱いで裸になりな」
「ええー。ど、どうしてですか」
「昔から、悪い事をした女の人を罰する時は、まず裸にするものなんだよ」
純はもっともらしそうに言った。
美子は真っ青になってブルブル震えている。
どうしても脱ぐ決断が持てないのだ。
「美子ちゃん。万引きで捕まったら、こんな事じゃすまないよ。さあ、早く脱ぐんだ」
純が急かすように言ったので、美子は手を震わせながら上着のボタンを外していった。
美子は上着を脱ぎ、スカートも脱いだ。
だがパンツは脱ぐ勇気を持てずに立ち竦んでしまった。
「さあ。早くパンツも脱いで裸になるんだ」
純が怒鳴ったので、美子はおそるおそるパンツを脱いだ。
これで美子は覆うもの何一つない裸になった。
美子は、恥ずかしそうにモジモジしている。
純は立ち上がって美子の両手をグイと背中に捻り上げた。
「ああっ。お兄ちゃん。何をするの」
美子が反射的に言った。
だが純は答えず、背中に捻り上げた両手首を重ね合わせ、縄で縛り上げた。
そして美子を床にうつ伏せにして、鯱のように膝を曲げて足首を縛り上げ、それを手首の縄に結びつけた。
駿河問いの縛りである。
もはや美子は動く事が出来ない。
美子は裸にされて縛られて床にうつ伏せになっている、みじめな姿を兄の前に晒している。
純は椅子を移動して、裸でうつ伏せになっている美子の前に置き、ドッカと座った。
純は蝋燭を引き出しから取りだして火を灯した。
すぐに芯の所が熱によって溶け出した。
純は美子の尻の上に蝋燭を持っていき、そっと傾けた。
蝋涙がポタリと美子の尻に落ちて貼りついた。
「ああー。熱いー」
美子は尻を捩って叫んだ。
だが純はさらに数滴、美子の尻に蝋涙を垂らした。
「ああー。熱いー。お兄ちゃん。許して」
美子は潤んだ瞳を純に向けて訴えた。
「だめだよ。美子ちゃんは、ばれなきゃ平気でウソをつくんだから。将来、万引きしたり、人の物を盗んだりする人にならないよう、厳しくお仕置きしとかないとね」
そう言って純は美子の尻や背中に蝋涙をポタリポタリと垂らしていった。
美子は、熱い、熱い、と泣き叫びながら、芋虫のように縛られた裸の体をくねらせた。
だが純は容赦しない。
みるみるうちに美子の尻や背中は蝋涙の斑点だらけになった。
純は、悪い事をした罰という口実で、サディズムの快感を心地ゆくまで貪っていた。
今まで写真を見て想像していた、女を裸にして縛って虐めたい、という長年、夢見ていた事を現実にしているのである。
蝋を垂らす度に縛られた裸の少女が泣き叫んでいるのである。
純は、激しく勃起して興奮していた。
相手はグラマーな肉体の発達した大人の女ではないが、そのかわり、年下のおとなしい義妹である。
純は完全なサディストとなって、女を虐め抜くサディズムの快感を貪った。
ついに蝋燭の柱が手元まで溶けて無くなった。
純は、ふっと蝋燭の火を消した。
美子の体は蝋の斑点でいっぱいである。
蝋燭責めが無くなったため、美子の悲鳴は止まり、激しい責めのため、ぐったりうつ伏せになっている。
純は椅子から降りて、美子の背中についた蝋を剥がしだした。
「美子ちゃん。熱かったでしょ」
純は蝋を剥がしながら言った。
「はい」
美子はすすり泣きながら言った。
「でもこれは美子ちゃんのためなんだよ。美子ちゃんのお母さんは、やさしくて、美子ちゃんは今まで、何をしても叱られず、あまやかされて育ったから、こうなっちゃったんだよ」
純はもっともらしい説教のように言いながら、蝋を剥がした。
美子の体に貼りついている蝋を全部とると、純は手首と足首の縄も解いた。
これで美子は自由になった。
「さあ。美子ちゃん。服を着て」
言われて美子はパンツを履き、スカートを履いて上着を着た。
「座っていいよ。美子ちゃん」
言われて美子は純の前でしょんぼりした顔つきで座った。
純は美子の顔をしげしげと眺めた。
「この際、徹底的に、罰しておいた方がいいね。あした、もう一回、罰をするからね」
そう言って純は美子の部屋を出た。

さて翌日の日曜になった。
昼近く、純は美子を連れて家を出た。
「どこへ行くの」
美子が聞いたが純は黙って答えない。
純は不安げな顔つきの美子の手をつかんで、夏の日盛りの中をずんずん歩いていった。
蝉が青々と茂った木々の中で激しく鳴いている。
小さな公園の前を通った。
砂場で遊んでいた子供達が振り向いた。
「あっ。おねえちゃんだ。遊ぼうよ」
子供の一人が声をかけた。
「そのおにいちゃん、誰?」
「どこへ行くの?」
子供達は口々に声をかけた。
「う、うん。今日はちょっと用があるの。また今度ね」
美子は、避けるように小さな声で言った。
「チェッ。つまんないな」
一人の子供が口を尖らせて言った。
美子は学校からの帰りに、その公園に寄って子供達の遊び相手をしてやっていた。
美子が、去っていったので、子供達は、しばらくポカンと美子の後ろ姿を見ていたが、見えなくなると、また砂場で遊びだした。
公園から少し行った所に廃屋があった。
純は、その廃屋の戸を開けて美子を入れた。
その廃屋には六畳の畳の部屋があった。
「美子ちゃん。着てるものを全部、脱ぎな」
純は居丈高に命令した。
「許して。お兄ちゃん」
美子は手を合わせてペコペコ頭を下げた。
純は首を振った。
「だめ。もし美子ちゃんが将来、万引きしたり、人の物を盗むようになったら、たいへんだからね。悪い事をすると、辛い目にあうんだという事を徹底的に体験させておかないとね」
純がそう言っても美子はモジモジしている。
「ここなら誰にも見られないじゃない。クズグズしてると裸にして外にほっぽりだすよ」
純に言われて、美子は諦めた表情で服を脱ぎだした。
上着を脱ぎ、スカートを脱ぎ、シャツを脱ぎ、パンツも脱いで丸裸になった。
純は美子の両手を背中に捻り上げて、両手首を縛った。
「さあ。美子ちゃん。座りな」
純に言われて美子は畳の上に座った。
純は美子の片方の足首を縄で縛った。
「な、何をするの」
美子は不安げな表情で聞いた。
だが純は答えず、椅子を持ってきて、美子の足首に縛った縄を持って椅子に乗り、天井の梁に縄をかけた。そしてゆっくりと縄を引っ張っていった。美子は足首の縄を無理矢理、引っ張られ、ああー、という悲鳴と共にコロンと畳の上に倒れた。
「な、何をするの」
美子は不安げな表情で聞いたが、純は答えず、グイグイと縄を引き上げた。
縄が引き上げられるのにつれ、美子の片足がどんどん吊り上げられていき、とうとうピンと一直線になった。
美子の恥ずかしい所は丸出しになった。
「ああー」
美子は眉を寄せて辛そうな顔で叫んだ。
純は縄を梁にカッチリと結びつけて、椅子から降り、椅子を別の部屋に置いて、美子の所に戻ってきて座った。
美子は片足を吊られ、恥ずかしい所があられもなく晒けだされているという、みじめの極地の姿である。しかし両手を背中で縛られて、起き上がることも出来ない以上、どうしようもない。
「お兄ちゃん。許して。恥ずかしい」
美子は顔を真っ赤にして言った。
「だめ。悪い事をすると、辛い目にあうという事をうんと思い知らさないとね。僕は去るから美子ちゃんは、しっかり、みじめな格好でしっかり反省するんだよ。夕方には戻ってくるから、今日は一日、その格好でうんと反省しな。『罰の中にも情けあり』で僕は手加減してあげてるんだよ。ここには誰も来ないんだから誰にも見られないですむじゃない」
純は窘めるように言った。
「声を出して助けを求めないよう猿轡をしておくからね」
そう言って純は美子の口に豆絞りの手拭いで猿轡をした。
これで美子は声を出す事が出来なくなった。
「それじゃあ、僕はちょっとの間、去るからね。しっかり反省するんだよ」
そう言って純は廃屋を出た。
公園に行くと、さっきの子供達が砂場で遊んでいた。
純は子供達の前にしゃがみ込んだ。
「ボク達、さっきのお姉ちゃんに会いたい?」
「うん」
一人が元気に答えた。
「それじゃあ、あの誰も住んでない家に行ってごらん。お姉ちゃんと会えるから」
そう言って、純は廃屋の方を指差した。
「お兄ちゃんは誰?」
一人が聞いた。
「お姉ちゃんのお兄さんさ。妹が悪い事をしたから、今、お仕置きしてるんだ。ボク達も行って、お姉ちゃんをうんとお仕置きして。何をしてもいいよ」
「お姉ちゃんはどんな悪い事をしたの?」
「約束を破ったり、堂々とウソをついたりしたんだ」
「ほんとう?あの優しいお姉ちゃんが悪い事をするとは思えないな」
「そこは人は見かけによらないもさ。ともかく、お仕置きの手伝い、たのんだよ」
そう言って純は立ち上がって去っていった。
子供達は顔を見合わせた。
「本当かな。あんな優しいお姉ちゃんが悪いことなんかするのかな」
「そうだよ。お姉ちゃんは悪い事なんかしないよ。あのお兄さんの言ってる事の方がウソなんだよ」
「でも、さっきのお姉ちゃんは、何だか、悲しそうな顔してたよ」
そんな事を子供達は言いあった。
「ともかく家に行ってみよう」
よし、と言って子供達は廃屋に向かって歩き出した。

廃屋に着くと子供達はそっと戸を開けた。
ただでさえ暑いのに閉め切って風通しがなく蒸し蒸しする。
子供達はそっと家の中を歩き回った。そして畳の部屋を開けた。
丸裸の美子が手を背中で縛られ、片足を天井の梁に高々と吊り上げられている。
女の恥ずかしい所は丸見えである。
美子と子供達の瞳が合うと、子供達は、あっ、と声を上げた。
だが美子はすぐに顔を真っ赤にして顔をそらした。
猿轡をされているために喋る事が出来ない。
子供達はわらわらと美子を取り囲んで座った。
「やっぱり、あのお兄ちゃんの言った事は本当だったんだ」
「人は見かけによらないって言うけど、お姉ちゃんも悪い事するんだな。いつもは僕達と遊んでくれる優しいお姉ちゃんなのに」
「でもすごい格好だね。僕、女の人の裸を見るのは初めてだよ」
「僕だってそうさ。僕、興奮しておちんちんが大きくなっちゃってるよ」
「でも、僕達と遊んでくれる優しいお姉ちゃんだよ。どうしようか」
「縄を解いてあげようか」
「でも、さっきのお兄ちゃんも言ったけど、僕達に、悪い事をしたお仕置きを頼んだじゃない。何をしてもいいって言ったよ」
「お仕置きをする事を頼まれたんだから、何かお仕置きした方がいいんじゃない」
「そうだね。何をしてもいいって言ってたからね」
「そうだよ。女の人の裸を見れる事なんて、まずないよ。うんとよく見ちゃおう」
こうして子供達の意見がまとまった。
子供達は片足を吊り上げられて、丸見えになっている女の恥ずかしい所に集まった。
「すごーい。女の人のまんこを見るのは、初めてだよ」
「ふーん。女のまんこって、こうなっていたのか」
子供達は生まれて初めて見る女の秘部を息を荒くしながら、目を皿のようにして凝視して見つめながら言った。
美子は顔を真っ赤にして髪を振り乱して首を振ったが、猿轡をされているため声を出せない。
「さわってみようか」
一人が言った。
「でも、さわったりしちゃっていいのかな」
「ほんの少し、ふれる程度ならいいんじゃないの」
そう言って一人が美子の女の割れ目をそっとなぞった。
「うわー。さわっちゃったー」
触った男の子が大声で叫んだ。
「どんな感じだった?」
「すごく柔らかくて、なんか少し湿ってた」
男の子達はゴクリと唾を呑んで美子の女の割れ目を顔を近づけてじっと見つめた。
「僕もさわっちゃお」
そう言って別の男の子がニュッと手を伸ばして美子の恥部をさわった。
一人がさわったので、自分もさわらなきゃ損だと思ったのだろう。
男の子は割れ目を摘んでみたり、割れ目に指を入れたりした。
「うわー。本当だ。すごく柔らかくて、湿ってるよ」
男の子は驚嘆の声を上げた。
「どうして湿っているんだろう」
「そりゃー。オシッコが出る所だからさ」
「そうだな。でも、優しいきれいなお姉ちゃんのオシッコなら汚くないからいいよ」
そう言って男の子は美子の恥部を念入りに触ったり揉んだりした。
残りの男の子も入れ替わって触り、男の子全員が美子の恥ずかしい割れ目を触った。

まんこの次は子供達の関心は尻の穴に行った。
「お尻の穴も見ちゃおうか」
「うん。見よう。見よう」
「この際、女の人の体を隈なく調べちゃおう」
こうして意見がまとまった。
一人が美子のピッチリ閉じ合わさった尻をそっと触った。
「うわー。柔らかくて、温かくて最高だ」
彼はそう言いながら、美子の尻の感触を楽しむように尻を撫でたり揉んだりした。
「おい。尻の穴を見てみようよ」
見ていた別の一人が言った。
「そうだな」
彼はそう言って、ピッチリ閉じ合わさっている美子の尻の肉をつかむとグイと大きく開いた。
尻がパックリ開かれ、すぼまった尻の穴が丸見えになった。
「うわー。すげー。キュッと締まってるけど、かすかにヒクヒク動いているよ」
子供達は目を皿のようにして、丸出しになった美子の尻の穴を見た。
一人の子が指を出して、そっと尻の周りをさわった。
「お尻の穴を触ってみなよ」
別の子が言った。
「汚くないかな?」
子供は一瞬、まよった表情になった。
「汚くなんかないよ。お姉ちゃんのような優しくて、きれいな人のお尻の穴が汚いはずがないよ」
少年は自信に満ちた口調で言った。
「そ、そうだな」
男の子は指先を、そっと美子の尻の穴に当てた。
「どうだ?」
「別にどうってことないよ。キュッと締まってるだけだよ」
そう言って彼は美子の尻の穴に当てた指を揺すった。
その時、美子の尻の穴が激しくキュッと閉まり、美子は猿轡された顔を激しく左右に振って、ヴーヴーと言葉にならない唸り声を出した。
「あっ。忘れてた。お姉ちゃんの口の手拭いを、とってあげなよ」
一人が思い出したように言った。
「うん、そうだね」
と言って一人が美子の猿轡をとった。
「ボク達、やめてー。お願い」
猿轡をとられると美子は狂乱したように叫んだ。
子供達は美子の悲鳴に今更ながら驚いて、尻の穴に触れていた手を離した。
「見ないで。お願い。見ないで」
美子は顔を真っ赤にして叫んだ。
もう、まんこも尻の穴も、じっくり見られてしまっているが、女の羞恥心は、そう叫ばさずにはいられなくしていた。
だが美子が訴えても、丸裸にされて、後ろ手に縛られ、片足を高々と吊り上げられてしまっているため、まんこも尻も、裸の体が全てが丸出しになっていて、隠しようがない。
「どうしようか」
子供達は顔を見合わせて相談した。
「健ちゃん。こういう事はしてはいけない事なのよ。学校で女の子のスカートめくったり、エッチなことしたら、叱られるでしょ」
美子は諭すように言った。
「そ、そうですね。ごめんなさい。お姉ちゃん」
そう言いつつも子供達の目は美子の丸出しの恥部に向いてしまっている。
あまりにも刺激的で、見たい欲求が抑えられないのである。
「でも僕達、お兄ちゃんに、お姉ちゃんをお仕置きするよう頼まれたじゃない」
一人が自分達の行為を正当化するように言った。
「そうだ。そうだ。僕達は、お姉ちゃんが悪い事をしたから、お仕置きするよう頼まれたから、したんだ」
別の一人が言った。
「ねえ。お姉ちゃん。お姉ちゃんは、約束をやぶったり、ウソをついたからお仕置きするって、お兄ちゃんが言ってたけど、本当なの?」
一人が美子の顔に詰め寄った。
「そ、それは・・・」
美子は答えられないで口唇を噛んでいる。
「お姉ちゃん。どんな悪い事したの」
別の一人が言った。
美子は、答えられずに、苦しげに眉を寄せている。
「わー。やっぱり、お姉ちゃん、悪い事したんだ」
「こんな優しいお姉ちゃんでも悪い事するんだな」
「人は見かけによらないって言うけど、本当だね」
「じゃあ、僕達もお姉ちゃんのお仕置きに協力しよう」
こうして、趨勢が子供達の方に向かった。
「じゃあ、お姉ちゃん、お仕置きするよ」
一人が言った。
「声を出せないよう、手拭いで口を塞いじゃおう」
そう言って一人が手拭いをもって美子に近づいた。
「や、やめて。健ちゃん。お願い」
美子は激しく首を振ったが、手を縛られている上に足を吊られているため、抵抗できない。
子供達は無理矢理、寄ってたかって美子の口を開かせ、手拭いを美子の口に挟ませ、首の後ろで縛って猿轡をした。
美子はヴーヴーと言葉にならない呻き声を上げた。
「へへ。これでもう声を出せないや。悪いお姉ちゃんをうんとお仕置きしなくちゃね」
「なにをする」
「今までのように、お姉ちゃんの体を隅から隅まで見て触っちゃおうよ。それが女の人にはつらい事なんだから。いいお仕置きになるよ」
こうして子供達の意見がまとまった。
子供達は再び美子の体を隈なく見て触りだした。
「ふふ。悪いお姉ちゃんだ。うんとお仕置きしなくちゃね」
もう子供達に遠慮する気持ちはなくなっていた。
子供達は、お仕置き、という名目で美子の体を触りまくった。
まんこの肉をつまんだり、尻の割れ目をグイと割り開いたりした。
その度に美子は苦しげに眉を寄せてヴーヴーと声にならない悲鳴を上げた。
「ああ。柔らかくて温かくて気持ちいいや」
一人が言った。
「そうだね。この際、お姉ちゃんの体を隅々まで触っちゃお」
別の一人が言った。
子供達は美子の体を隈なく触りだした。
一人が膨らみかけている美子の胸を触った。
「ああ。膨らんでて気持ちがいい」
そう言って子供は美子の胸を揉んだ。
「お乳でるのかな?」
見ていた子供が言った。
「吸ってみたら?」
言われて子供は美子の乳房に顔を近づけて乳首をそっと咥えた。
子供は陰圧をかけて美子の乳首を一心に吸った。
しばし吸いつづけた後、乳首から口を離した。
「だめだ。出ないよ」
「吸い方が弱いからだよ。もっと強く吸ってみたら?」
「もっと胸をよく揉んだら出るんじゃないの?」
よし、と言って子供は美子の両方の胸を十分に揉み、キュッ、キュッと乳首を摘んだ。
十分、美子の乳房や乳首を揉んでから、子供は再び美子の乳首を口に含んで吸った。
「どうだ。出たか?」
「ダメだ。出ないよ」
子供は顔を上げて残念そうに言った。
「お姉ちゃんの歳じゃ、まだお乳は出ないんじゃないの。もっと大人にならないと、お乳は出ないんじゃないの?」
一人が言った。
「そうかもしれないね。でも、お乳が吸えなくても、お姉ちゃんのおっぱい吸ってると、すごく気持ちがいい」
そう言って子供は再び美子の乳首を口に含んだ。
子供は忘我の表情で、美子に抱きついたまま、美子の乳首を吸いつづけた。
見ていた子供達はゴクリと唾を呑み込んだ。
「翔太。今度は僕にも吸わせて。僕もお姉ちゃんのおっぱい、吸ってみたい」
「僕も」
子供は口々に言った。
こうして順番に、子供達みんなが美子に抱きついて乳首を吸っていった。
一人が吸いおわった後、顔を上げてプハーと大きく息を吸った。
「ああ。気持ちいい。僕、お母さんのおっぱい吸いたいとずっと思ってたんだ。でも恥ずかしくて言えなかったんだ。だけど、ある時一度、勇気を出して言ってみたら、甘えん坊、と笑われちゃったんだ。お姉ちゃんのおっぱい吸えて、最高に幸せだ」
子供はそんな事を言った。
子供達は美子の体の温もりを楽しむように、美子の体のあちこちを揉んだり抱きしめたりした。
「ああ。柔らかくて温かくて気持ちいい」
子供達はうっとりと忘我の表情で言った。
美子は猿轡された口からヴーヴーと言葉にならない呻き声を上げて激しく首を振った。
美子の目には涙が浮かんでいた。
子供達は顔を見合わせた。
「どうする?」
「お姉ちゃん。何か言いたいんだよ。猿轡をとろう」
美子の乳首を吸っていた健太が猿轡を解いた。
「健ちゃん。翔太君。やめて。お願い」
美子は泣きながら言った。
「お願い。縄を解いて」
美子の激しい口調から、子供達は自分達のしていた事の重大さに気づかされたような顔つきになった。
子供達はあわてて、美子の後ろ手に縛られた縄と、足を吊っている縄の足首の所を解いた。
自由の身になると美子は急いで、隅にちらかっている服の所に行ってパンツを履き、ブラジャーをつけた。そしてスカートを履き、ブラウスを着た。
美子は涙に潤んだ瞳で子供達を一瞥すると、うわーん、と畳に泣き伏した。
ここに至って、はじめて子供達は自分達のしていた事の重大さに気づかされたような顔つきになった。
「お姉ちゃん。ごめんね」
子供の一人がペコペコ頭を下げて謝った。
他の子も、同じように謝った。
だが美子は顔を上げないで、じっとしている。
「お願い。一人にして」
美子が蹲ったままでいるので、子供達は、
「ごめんね。お姉ちゃん」
と言いながら、部屋を出て行った。
「でも、すごく気持ちよくて楽しかったな。テヘヘ」
と一人の子が頭を掻きながら言った。
しばし美子は虚脱したように畳に突っ伏していたが、ようやく、ゆっくりと立ち上がって、おぼつかない足どりで廃屋を出た。

家に戻った美子はベッドに突っ伏したまま、動かなくなった。
純が美子の部屋に入ってきた。
「美子ちゃん。これでわかったろ。悪い事をするとこんな辛い目にあうんだよ」
と純はもっともらしく説教した。美子は魂が抜けたようにガックリしている。
日が暮れてきた。
「純君。美子ちゃん。御飯ですよ」
静子が階下から二人を呼んだ。
「さあ。美子ちゃん。行こう」
そう言って純は美子と共に階下に降りて食卓についた。
その日の晩御飯の時、美子に元気がないので疑問に思った静子は、
「どうしたの。美子ちゃん」
と聞いた。だが美子は黙って答えなかった。

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義母と義妹(下)

2015-08-26 14:53:36 | 小説
純の父親は、かねてからの要望が叶って、アメリカの××州立医科大学に行く事になった。
「一年で、もどってくる。お母さんと美子ちゃんと仲良くやるんだぞ」
父親は純にそう言いきかせた。
そして数日後にアメリカに旅立った。

その後も純はお仕置きという名目で美子を小屋に連れて行って、服を脱がせて裸にさせ、子供達に悪戯させた。
子供達もだんだん慣れてきて、美子が嫌がっても好きな事をするようになった。美子はだんだん元気がなくなっていった。

ある日の事。
その日、純は部活で遅くなった。家には静子と美子の二人である。静子は美子の部屋におやつを持っていった。
「どうしたの。美子ちゃん。最近、元気がないわね。何かあったの」
静子が問いかけたが美子は俯いてしょんぼりしている。
「何か悩み事があるのね。話して」
静子は美子の両腕を掴んで軽く揺すった。
「いいの。私がわるいの」
美子は小声でボソッと言った。静子の目に確信に近いものが宿った。
「どういうことなのか、美子ちゃんが話してくれなくちゃわからないわ。お願い。一人で悩んでいないで教えて」
静子は激しく娘を揺さぶった。とうとう美子は、わっと泣き出して母親にしがみついた。母親は美子を抱きしめて、やさしく頭を撫でた。美子はそれまでの経緯を述べた。
「あのね。私がお兄ちゃんの部屋に無断で入っちゃったの。無断で入らないように言われていたのに。それで、お兄ちゃんに、入っていないか聞かれたけど、私は入ってないとウソをついちゃったの」
「うん。それで」
「でも私のウソは、ばれちゃったの。それで私はお兄ちゃんに叱られて罰をうけてるの」
「美子ちゃん。よくわからないわ。具体的に言って。美子ちゃんは、お兄ちゃんの部屋で何をしたの」
「本を見たの」
「どんな本?」
「女の人が裸で縛られてる写真。引き出しの奥にしまってあったの」
静子はゴクリと息を呑んだ。
「それで美子ちゃんはどんな罰を受けてるの」
美子は極度の緊張と羞恥で顔を真っ赤にして全身をガクガク震わせた。静子は震えている美子の手をギュッと掴んだ。
「言って。美子ちゃん。お兄ちゃんには言わないから」
母親に促されて、美子は、それまでの事を恥を忍んで全部、話した。黙って聞いていた静子は聞き終わると、そうだったの、と深いため息をついた。
「お母さん。今日のことはお兄ちゃんには言わないで。お母さんに言った事がわかったら私、お兄ちゃんに嫌われちゃう」
「大丈夫よ。安心して。絶対、言わないから」
そう言って静子は美子の手をギュッと握った。

その日の夕食後。
机に向かって勉強している純の部屋を静子はトントンとノックした。純が戸を開けると、静子が少し頬を紅潮させて、入ってきた。
「あの。純さん。お夜食をつくってきました。召し上がって下さい」
そう言って盆を机の上に置いた。盆には、おにぎり二つと茶がのっていた。純は勉強の手を休めて、おにぎりを食べた。静子は薄いブラウスに短いフレアースカートだった。純がおにぎりを食べおわると、静子は純の前に正座した。両手をきちんと膝の上にのせて。
「あ、あの。純さん。私、純さんに謝らなくてはならない事があるんです。聞いていただけないでしょうか」
静子の声には緊張した様子が現れていた。
「ええ」
純はきわめて平坦に言った。
「ありがとうございます」
そう言って静子は語り出した。
「純さんが学校へ行っている時、純さんのお部屋を掃除していましたが、ある時、引き出しの中にどんなものが入っているんだろう好奇心が起こって、それがだんだん募って、ある時、とうとう引き出しを開けてしまったんです。それで・・・写真集を見つけてしまったんです。悪い事とは思いながら私は、夢中で見てしまいました。純さんがああいうものに関心があると思うと、何だかすごくドキドキして、掃除の時は、いつも見るようになってしまったんです。そして、それ以来、純さんにああいう風に縛られたい、という欲求が起こってきて、一人悶々とした思いで過ごしてきたんです。純さん。私をああいう風に縛っていただけないでしょうか。お詫びであると同時にこれは私のお願いなんです。純さんに無断で見てしまって心よりお詫びいたします」
そう言って静子は深々と純に向かって頭を下げた。純は黙って聞いていたが静子が語り終わると口を開いた。
「静子さん。いいんです。僕も少し恥ずかしいですけど、天井裏とか、もっと見つからない所に隠しておかないと見つかっちゃうんじゃないかと思っていたんです。別に気にしてません。僕より今の静子さんの告白の方がもっと恥ずかしいんじゃないでしょうか」
純は淡々とした口調で言った。
「純さん。ありがとうございます」
そう言って静子は何度もペコペコ頭を下げた。
「でも、いいんですか。静子さんのお願い、というのは」
「ええ。かまいません。何でもなさって下さい」
「そうですか。僕も静子さんを見た時から縛りたいとずっと思っていたんです」
じゃあ、と言って、純は引き出しの中から縄を取り出した。
「では縛らせてもらいます。両手を後ろに廻して下さい」
「はい」
純に言われて静子は両手を背中に廻した。純は静子の引き締まった手首をしげしげと眺めた。
「ふふ。細く締まっていて形のいい手首ですね。これなら縛ったらはずれない。縛られるのに理想的な手首ですね」
純がそんな揶揄をすると静子の手がピクンと震えた。純は静子の手首をグイとつかんで、わざと荒々しく手首を捻りあげて重ね合わせた。
「ああっ」
静子は、予期せぬ純の荒っぽい行動に驚いたかのように声を上げた。純は荒っぽくグイグイと静子の手首を縛った。縛り終えると純は縄尻を持って正座している美子の前に座った。「どうです。こうやって縛られる気持ちは」
純は余裕の口調で言った。
「こ、怖いです」
静子は声を震わせて言った。それはその通りである。手を縛られてしまった以上、何をされても抵抗することは出来ない。胸の所でブラウスが大きく膨らんで、小高い盛り上がりをつくっている。今はブラウスで覆われているが、それを、どうされるかは、純の胸先三寸なのである。
「怖いのは、はじめのうちだけですよ。今に気持ちよくなりますよ」
そう言って純は静子のブラウスのホックを上から外していった。
「ああっ。こ、怖いわ」
静子は慄いた。ブラウスのホックが外され豊満な胸を覆う白いブラジャーが顕わになった。ブラジャーはあたかも熟れた果実を包んで吊り下げている袋のようであった。それは、あまりにも見事な乳房だった。男なら誰でも思わず触ってみたくなるような。純はそれをじっと見つめた。静子は純の刺すような視線に顔を赤くした。いつもは少し自慢している大きな乳房が今はなくなってしまってほしいと思った。美子は縛られた手首を力なくダランとさせていた。しばし純は美子の豊満な乳房を包んで無防備に晒されているブラジャーをしげしげと眺めた。静子は純の視線に耐えられず顔を赤らめて少しそむけた。

いきなり純が鉛筆の先で静子のブラジャーの乳首の所をつついた。
「ああっ」
静子は思わず声を出した。鉛筆の先はブラジャーの中にめり込み、そこだけが窪んだ。
「ああっ。や、やめてっ」
静子は思わず叫んだが、純は悪戯を楽しむように、鉛筆の先で美子の乳房を覆っているブラジャーを、あちこち、つついた。そうされても静子は抵抗できない。
「静子さん。立って」
言われて静子は立ち上がった。純は静子のスカートの中に手を入れた。静子は、あっ、と叫んだ。純は静子の太腿の感触を楽しみながら、静子の顔の反応を見た。純は指をそっと太腿に触れさせながら、気味の悪い節足動物が這うように動かした。
「ああー」
静子は眉を寄せて、足をプルプル震わせた。よろめいて、おぼつかない。純は太腿の内側から、足の付け根の方へ指をゆっくり這わせた。その度、静子は、
「ああー」
と叫び、苦しそうに眉を寄せた。純は目的地は決して触らなかった。静子は目的地の方へ指が動いていく、もどかしさ、いつ目的地に来るのかわからない恐怖感で、もう、そのじらす悪戯に参ってしまって、ヨロヨロと揺れて倒れんほどだった。だが後ろの尻の方の触手は念入りにパンティーの上から柔らかい大きな尻を電車の中の痴漢のように、いやらしく撫で回った。純は、パンティーの尻の方の縁を持ち上げて、離し、ピチンと音をさせたり、指先を少し縁の中に入れたりした。もう静子は、この焦らし責めに完全にまいってしまった。
「お願い。純君。もう許して」
静子は訴えた。
「静子さん。座って」
言われて静子は、座った。やっと、立ったままでの辛い悪戯から遁れて静子はほっとした。純は静子のブラウスのホックをはめた。
「どうでしたか。静子さん」
「は、恥ずかしいし、辛かったわ。でも何だかとてもワクワクドキドキしてしまって・・・こんな経験はじめて」
静子は顔を赤くして答えた。純は、ふふふ、と笑った。
「これからもっと刺激的な事をしてあげますよ」
そう言って純は静子の手首の縄を解いた。
「あ、あの。純君」
「何ですか」
「私には何をしてもいいです。私、純君の性欲処理のオモチャになります。でも・・・」と言って静子は言いためらった。
「でも、美子は許してやって下さい。性欲が起こったら、いつでも私で発散させて下さい」「はい」
純はニヤリと笑って言った。

その二週間後の光景。
純の部屋に来た静子に純はSM写真集を開いた。
「今日はどれがいい」
「こ、これをお願いします」
静子は手を震わせながらある写真を指差した。それは蟹のように大きく足を開いて横に縛られている裸の女の緊縛姿だった。

その数日後。
その日は日曜だった。美子に対する性欲を自分に向けることで純の欲求を満たそうと思っていた静子だったが、純の巧妙な手練手管で、いつしか静子は純とのSMプレイを心待ちするようになっていた。
「さあ。静子さん。脱いで」
「は、はい」
静子は顔を赤らめながらブラウスとスカートを脱いだ。そしてブラジャーをはずした。豊満な乳房が顕わになった。静子はパンティーも降ろして足から抜きとった。静子の女の毛はきれいに剃られている。静子は純に言われて毎日、風呂に入った時、そこの毛を剃るようになっていたのである。一糸纏わぬ丸裸になった静子は顕わになった胸と秘部を両手で覆った。静子の頬は、こうして丸裸を見られていることに、興奮して、ほんのり桜色になった。
純は静子の両手をつかむとグイと背中に廻し、手首を重ね合わせて後ろ手に縛った。そしてその縄尻をとって静子を玄関に連れて行った。
「な、何をするの」
「ふふ。もっと刺激的な事を体験させてあげますよ」
純は意味ありげな口調で言った。純は玄関の鉄門を開いて静子を外に出すと、鉄門を閉めて後ろ手の縄尻を玄関の鉄門に縛りつけた。
「ああっ。純君。やめて。こんなこと」
静子は真っ青になって身を捩って哀願した。だが純はどこ吹く風と無視してポケットからマジックを取り出した。そして静子の体にマジックでこう書いた。
「私はマゾです。どうかよく見て下さい。何でも好きな事をなさって下さい」
「ああっ、やめて、純君、お願い」
静子は真っ青になって叫んだ。
「ふふ。いまにそれも快感になりますよ」
純は強かな口調で言った。
「では僕も用があるので出かけます。帰りは夕方になります」
そう言って純は出かけていった。
あとには丸裸を鉄門に縛りつけられた静子が残された。静子は人が誰も来ないよう祈るかのように、手をギュッと握りしめ、太腿をピッタリ閉じ合わせて腰を引いて体を縮かませようとした。

だが、ここは純と美子の学校の通学路だった。学校から補習がおわって帰りの生徒達がやってきた。裸の女性を見つけた彼らは、わらわらと駆け足でやってきた。四人は静子の前で立ち止まって、カバンを置いて、しげしげと裸の静子を眺めた。
「うわー。すげー。ここ。美子の家じゃないか。美子のお母さんて、マゾだったのか」
「それはわからないよ。純のお父さんがサドなのかもしれないよ」
「サドとマゾで相性があって結婚したんだろ」
「いや。純のお父さんがサドで美子のお母さんは、無理やり、虐められてるのかもしれているのかもしれないよ」
「そうかな。マゾ気がない人にここまでやったら、嫌われちゃうから、こんな事まではしないよ。やっぱり美子のお母さんはマゾなんだよ」
「ともかく女の人の裸を見るの生まれて初めてだよ。オレ興奮して勃起しちゃってるよ」
四人は目を皿のようにして裸で縛られている静子を眺めながら口々に言った。静子は中腰になってプルプル全身を震わせながら死にたいほどの晒し者の屈辱に耐えた。四人のズボンはみるみるうちに怒張しはじめた。
「おっぱいも大きいし、ヒップもムッチリしてていいな」
静子は真っ赤になって腰を引いた。一人が静子の前に回り込んだ。
「うわー。すげー。毛が剃ってあるよ」
どれどれ、と残りの三人も順番に覗き込んだ。
「本当だー。やっぱり夫婦でSMプレイしてるんだ。SMプレイする女の人って毛を剃られちゃうもんな」
言われる度に静子は真っ赤になって腰を引いた。だが、あまり腰を引き過ぎると尻の割れ目が開いてしまう。尻も女は何としても見られることから守り抜かねばならない。
「み、見ないで。お願い」
ついに耐え切れなくなって静子は真っ赤になって言った。
「うわー。静子さんが喋った」
生徒は吃驚して言った。それまで静子は石像のようにじっとしてた、し、じっとしているしかなかった。顔をそむける事もできなかった。見られる事から避けようとする、あらゆる嫌がる動作は、恥ずかしがっている心を見られてしまう事になってしまうことになってしまう。それは裸の体を見られる事に勝るとも劣らぬ恥ずかしい事である。静子は生徒達と関係性を持たずに生徒達が、去ってくれるのに一縷の望みをかけたのだが、生徒達がいつまでも去らないので、つい羞恥心に負けて喋ってしまったのである。一旦、喋って関係性が出来てしまった生徒達はウキウキして静子の体を眺め回した。
「お尻の割れ目もムッチリ閉じ合わさってて、すごくエロチックだ」
一人が静子の後ろに回り込んで言った。
「本当だー。割れ目がヒクヒク動いている。恥ずかしがってるんだ」
他の生徒も後ろに回ってプルプル震えている静子の尻を見つめた。
「触ってみたいなー」
「触ってもいいのかなー」
「何でも好きな事をなさって下さい、ってあるからいいんじゃない」
そう言って一人が手を伸ばして静子の尻をそっと触った。あっ、と静子は反射的に声を出した。だが生徒は柔らかい尻の感触を楽しむように、いやらしい手つきで静子の尻を撫で回した。他の生徒も、もうガマン出来ないといったように、乳房や太腿を触りだした。
「うわー。柔らかくて気持ちいい」
生徒達は図にのって静子の柔らかい体を揉み出した。
「や、やめてー。お願い」
ついに耐え切れなくなったように静子は声を張り上げた。
「お願い。お願いだからやめて」
静子は繰り返し言った。生徒達はビクッとして静子の体から手を離した。男と女の淫乱な関係は女が完全に拒否した時におわりとなる。
「お、おい。やめようぜ。もう静子さんに嫌われて話してもらえなくなるぞ」
「そうだな。PTAで問題になったら大変だからな」
「学校に知れたら退学になるかもしれないからな」
生徒達は、急いでカバンを拾った。
「静子さん。ごめんなさい」
そう言いながら子供達は駆け足で去っていった。

一難去って静子はほっとした。だが、それも束の間だった。

誰かが喋ったのだろう。商店街の主人達が走ってやってきた。いつも魚を買っている魚屋のおやじ、野菜を買っている八百屋のおやじ、肉を買っている肉屋のおやじ、が走ってやって来た。静子は冷汗を垂らしてビクッと体を震わせた。もがいてみたが縄尻はガッシリと鉄門につなぎ止められていて、どうすることも出来ない。静子は太腿をピッチリ閉じ腰を引いた。最恥の所は隠し守ろうとの女のいじらしさ、からだが、剥き出しの乳房と尻は隠せない。三人は静子を取り囲むとゴクリと唾を呑み込んだ。
「うわー。奥さん。すごいですね。奥さんにこんな趣味があったなんて。人は見かけによらないって言うけど本当ですね」
「み、見ないで」
「でも、どうかよく見て下さい、って書いてあるじゃないですか。とくと拝見させてもらいますよ」
「ち、違うんです。本当に違うんです。信じて下さい」
「マゾの人は男の欲求をかきたてるから、言う事は全部、反語ですよ。実際、私は興奮して、もう爆発しそうです」
「何でも好きな事をして下さい、って、ありますから、させてもらいますよ」
そう言って魚屋のおやじは、静子の胸を触った。そして乳房を思うさま揉みしだいた。
「ああー。柔らかくて温かくて最高だ。俺は、はじめて見た時から奥さんに憧れてたんですよ。何度、奥さんの事を想ってセンズリしたことか。まさに夢、叶ったりだ」
そう言って魚屋のおやじは静子の乳房を揉みしだいた。見ていた八百屋のおやじは、たまらなくなったというように静子のムッチリした尻に抱きついた。
「ああー。いい尻だ。私も奥さんの尻にいつも悩まされていたんです」
そう言ってムッチリした尻をいやらしく撫で回した。すぐに肉屋のおやじが飛び出して静子の太腿にしがみついた。
「ああー。いい太腿だ。私は奥さんの太腿に何度、目がクラクラしたことか」
そう言って三人は縛められた裸の静子を触りまくった。静子は、
「お願いです。やめて下さい」
と何度も叫んだが、彼らは、どこ吹く風と聞く耳を持たない。
「も、もう爆発しそうだ」
「オレも」
「オレも」
三人はズボンの上から怒張した男の物を扱き出した。
「山田。ここじゃあ、人目もあるし落ち着いて出来ないな。お前の家に連れて行ってはどうだ」
「しかし、かってに縛めを解いて連れ去ったりしてもいいのかな」
「なあに。ほんのちょっとの間、連れて行き、すぐにまた、ここに縛っておけば大丈夫なんじゃないか。だから、早く行け」
魚屋の山田は、
「よし。わかった」
と言って駆け足で走り出した。残りの二人は静子の髪を撫でたり、頬や首筋にキスしたり、抱きしめたり、と二人がかりで愛撫しまくった。
ほどなく、魚屋のおやじがライトバンに乗ってもどってきた。
よし、と言って二人は静子を鉄門に繋いである縄を解いた。肉屋のおやじは静子を後ろ手に縛ってある縄の縄尻をとって静子の背中を押した。
「ど、どこへ連れて行くというのですか」
静子は声を震わせて聞いた。
「魚屋の山田の家ですよ。ここじゃあ人目があるから落ち着いて出来ないですからね」
「そこで何をするのですか」
「奥さんの望んでることです。望みを叶えてあげますよ」
一人が後部座席のドアを開けた。肉屋のおやじは裸で後ろ手に縛られている静子を後部座席に乗せた。二人も乗り込んだ。
「それじゃあ行くぞ」
と言って魚屋のおやじは、車をだした。
ものの五分もかからず魚屋のおやじの家に着いた。三人は静子の縄尻をとって静子を取り囲むようにして急いで魚屋のおやじの家の離れに入れた。
「ふふ。これでもう安心だ」
「もう、こっちのもんだ」
「さて。まずどうする」
「さっきは、周りの目がきになって気が落ち着かなかったからな。もう一度、奥さんの素晴らしい体をたっぷりと観賞しようぜ」
「おう。それがいい」
そう言って、一人が椅子を持ってきて静子の後ろ手の縄尻を天井の梁に結びつけた。静子は後ろ手に縛られて、立たされる格好になった。三人は静子を取り囲むように胡坐をかいて座った。
「しかし、素晴らしいプロポーションだな」
「大きな、おっぱいといい、ムッチリとした尻といい最高だ」
「しかし、人は見かけによらないな。こんなきれいな奥さんがマゾだなんて」
「ち、違うんです」
「どう違うんですか」
「そ、それは・・・」
静子は答えられず口惜しそうに唇を噛んだ。
「ほーら。やっぱり奥さんはマゾなんだ」
「しかし、こんな事して大丈夫かな」
「奥さんが、何でもして下さい、って言ってるんだから、いいんだろ」
「いや。あれを書いたのは奥さんかどうか、わからないぞ」
「夫にサド趣味があって夫が書いたのかもしれないぞ」
「俺たちは、犯罪者になるのかな」
「少なくとも、夫が許可してるんだからいいんだろ。むしろ、おれ達に、こうさせる事を望んでいるんじゃないのか」
彼らは静子の夫が少し前からアメリカに行った事を知らない。
「まあ。奥さんは、つつましくて、やさしい性格だから、訴えて俺たちを犯罪者になんかしたり、しないだろう。ねえ。奥さん」
一人が静子に問いかけたが静子は黙っている。
「じゃあ、たっぷり楽しませてもらおうぜ」
「オレはこの奥さんがこの街に来て、初めて見た時からもうメロメロだったんだ。絶世の美人なのに、つつましく、やさしく、明るく、もう奥さんがうちの魚を買ってくれた日には眠れない時も何度もあったんだ」
「オレなんか奥さんの薄いブラウスにスカート姿を見ただけで、もう勃起してしまうようになっていたぜ」
「普通のおばはんは、嫌になるほど鮮度をしつこく調べて、一番、鮮度か良いのを選ぼうとするだろ。しかしこの奥さんは違うんだよな。そういう意地汚さを嫌って、だろうが、わざとくどくどと選ぼうとしないんだよなー。デリケートな性格なのに」
「オレなんか奥さんに、何度、お金なんかいりませんよ。そのかわり、また来て下さい、と言いたかったことか」
男達は口々にそんな心境の告白をした。
「しかし、素晴らしいプロポーションだな」
「大きな、おっぱいといい、ムッチリとした尻といい最高だ」
「まさに夢叶ったりだ」
男達は口々にそんな事を言いながら裸で立たされている静子を陶酔したような目で眺めた。「奥さん。毛がきれいに剃ってありますけど、それは自分で剃ったんですか。それとも夫に剃ってもらっているんですか」
静子は顔を真っ赤にして腿をピッチリ閉じた。
「お尻もムッチリしていてて素晴らしい」
「それにしても見事なおっぱいだ。奥さんのブラウスの胸の盛り上がりを見ると、俺はもうそれだけでメロメロになってたんだ。それがこんな素晴らしい実物を見れるなんてまるで夢のようだ」
男達は裸の静子を品評するように好き勝手な事を言った。静子は三方から取り囲まれているため、どうすることも出来ない。見ないで、などと哀切的な嘆願をする事は、余計、彼らの欲情をかきたてるだけである。静子は、後ろ手に縛められた手の親指をギュッと握りしめた。たとえ親指でも力強く握り隠すことによってこの屈辱に耐えるしかなかった。
「奥さん。申し訳ないが写真を撮らせてもらいます」
そう言って男の一人がデジカメを静子に向けた。
「や、やめてー」
静子は真っ青になって身を捩った。
「奥さん。申し訳ないが、奥さんほどの美しい人のヌード姿は、素晴らしい芸術だと思います。芸術は人類の貴重な財産で、しっかり撮られ、保存され、後世に残されるべきではないでしょうか。奥さんほどの美しい容姿は奥さんだけの所有物ではなく、世の中の所有物だと思うんです」
男はそんな事を言って、裸で後ろ手に縛られて立っている静子をパシャパシャと写真に撮った。20枚位とって、やっと男は撮影をやめた。
男は、ふー、とため息をついて座り込んだ。

男達は酩酊した表情で、しばらく太腿をピッチリ閉じて立っている静子を眺めていたが、だんだん鼻息が荒くなってきて、ズボンの股間の膨らみをさすりだした。
「も、もう我慢できない」
そう言って、男の一人が膝立ちして、静子の腰に手をかけた。そして鼻先をきれいに剃られた女の所に近づけた。
「ああっ。やめてー」
見られる事は何とか覚悟できていた静子だったが、こんな事には、とても耐えられず大声で叫んで腰を引こうとした。だが男はラグビーのタックルのようにガッシリと静子の太腿をつかんでいるので静子は逃げようがない。男は鼻先を静子の女の部分にあてがってクンクンやりだした。
「ああー。いい匂いだ」
男は酩酊した表情で感嘆の声を上げた。静子は顔を真っ赤にした。全身がプルプル震えている。
「も、もうガマン出来ない」
見ていた残りの二人も立ち上がって静子の体に抱きついた。
三人は寄ってたかって、憧れの女性の体を触りまくった。
一人は念入りに胸を揉み、一人は電車の中の痴漢のように、わざといやらしく静子のムッチリした大きな尻を撫で回した。静子の前の男はピッチリ閉じ合わさった静子の太腿に無理やり手を割り込ませ、女の穴をまさぐり当てると、中指を押し入れた。静子は、
「ああー。やめてー」
と驚天動地の悲鳴を上げて激しく身を捩った。だが、どうする事も出来ない。男は淫乱な目つきで静子を見ながら、ゆっくりと女の体の中に入れた指を動かし出した。
「ああー」
静子は眉を寄せ、苦しげな表情で身悶えした。だんだん男達は興奮して鼻息を荒くしだした。
「も、もうガマンできない」
そう言って一人の男が服を脱ぎだした。シャツとズボンを脱ぎ、パンツも脱いで丸裸になった。男のマラは天狗の鼻のように激しくそそり立っていた。男は静子の体を触りながらそそり立ったマラを静子の女の部分におしつけた。他の二人も服を脱いで丸裸になった。そして、そそり立ったマラを静子の尻の割れ目や太腿におしつけた。男達の興奮は激しくなっていき、ハアハアと鼻息が荒くなりだした。男達は静子の体を触りながら、自分のそそり立った物を激しくしごきだした。
「ああー。出るー」
そう叫んで一人が射精した。それにつづいて残りの二人も、
「ああー。いくー」
と叫んで、射精した。体に溜っていたものを全部だしきると三人は虚脱したようにガックリと畳に座り込んだ。三人は、しばしハアハアと息を切らしていたが落ち着きを取り戻すとティッシュで自分のマラや畳に飛散した白濁液を拭いた。静子の体についた白濁液もきれいに拭いた。男達は、各々、自分の服を着た。静子は黙って項垂れてうつむいている。
「奥さん。ありがとう。奥さんも立ちっぱなしで疲れたでしょう」
そう言って一人が椅子を持ってきて天井の梁の縄を解いた。一人は布団を敷いた。男達は、後ろ手の静子を布団に寝かせた。静子はガックリと虚脱したように動かなかった。男達は静子の体を濡れタオルで丁寧に拭いた。
「しかし、きれいだなー」
一人が静子の体を拭きながら感嘆したように言った。
「もう、これが見納めになるのかな」
「いや。写真をたくさん撮ったじゃないか。写真で奥さんの美しい姿を見る事は出来るじゃないか」
一人が意味ありげな口調で言った。
男達は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「奥さん。今日は最高の一日でした。どうもありがとうございました。さあ、立ってください」
男達に肩を持ち上げられて静子は立ち上がった。
「女物の服がなくて申し訳ない。これで我慢して下さい」
そう言って男は後ろ手に縛られた裸の静子にコートをはおらせた。
「おい。山田。静子さんを家に送ってやれ」
「おう」
山田は意気のいい返事をしてから静子に顔を向けた。
「さあ。静子さん。家にお送りしますよ」
そう言って山田はコートを羽織った静子の肩をつかんで、玄関に連れて行き、サンダルを履かせた。
外には静子を連れてきたライトバンがあった。
山田は車の助手席のドアを開け、静子を助手席に乗せた。
山田は助手席のドアを閉め、反対側に回ってドアを開け、運転席に乗った。
そしてエンジンをかけ静子の家に向けて車を出した。

車はすぐに静子の家についた。山田は急いで静子を降ろしコートをとり、後ろ手に縛られた裸の静子の縄尻を、前と同じように鉄門に縛りつけた。
「奥さん。今日の事はどうかご内密に・・・」
山田は、へへへ、と笑い、急いで車にもどりエンジンをかけ、逃げるように走り去った。

日が暮れてきた。
純が帰ってきた。純は静子を見つけるとニヤリと笑った。そして鉄門に繋がれている静子の後ろ手の縄尻を、鉄門からはずした。そして静子を連れて家の中に入った。純は静子を横にしてタオルを濡らして、美子の足の裏を丁寧に拭いた。そして、静子の手首の縄を解き、静子にブラジャーをつけ、パンティーを履かせた。そしてブラウスにスカートを履かせた。静子は魂のない人形のように呆然としていた。
「静子さん。どうでしたか。誰かに見られましたか。スリルがあって面白かったでしょう」静子はわっと、泣き出して純にしがみついた。
「純君。ひどい。私、もう街を歩けないわ」
静子は泣きながら言った。
「どうしたんです。誰かに見られたんですか」
純が聞いたが静子は答えない。
「わかりました。何があったか知りませんが、ちょっと静子さんには刺激が強すぎましたね。もう、あんな事はしませんから、安心して下さい」
「本当ね。本当に、あんな事もうしないでくれる」
「ええ」
「ありがとう」
その時、美子が帰ってきた。
「ただいまー」
階下から美子の元気な声が聞こえた。静子は階下に降りた。純も降りた。
「お帰りなさい。美子ちゃん」
そう言って静子は美子の頭をやさしく撫でた。日が暮れて外が暗くなった。美子は食卓についた。美子の腹がグーと鳴った。
「お母さん。夕御飯まだ?私、お腹ペコペコ」
純も部屋から降りてきて食卓についた。
「ご、ごめんなさい。今日、ちょっと用事があって夕御飯つくってなかったの。出前物でいい?」
「うん」
「お寿司でいい?」
「うん。いいよ」
静子は寿司屋に電話して、江戸前を三人分、注文した。すぐに寿司屋の出前が来た。食卓に豪華な江戸前寿司がならんだ。
「いただきまーす」
美子と純は嬉しそうに言って食べ始めた。
「おいしいわね」
静子は食べながら言った。
「うん。お母さんの料理の方がおいしいけど、これもすごくおいしい」
美子は寿司を頬張りながら言った。
「そ、そうよ。私のつくる料理なんて、全然だめ。プロのつくる料理には、とてもかなわないわ」
静子は焦って言った。
「あ、あの。美子ちゃん。純君」
「なあに」
「し、しばらく夕御飯は出前で許してもらえない」
「うん。いいよ。でも、どうして」
「ご、ごめんなさい」
静子がことさらペコペコ頭を下げて謝るので、美子はそれ以上、くどく理由を聞こうとしなかった。
それから数日は夕食は出前になった。
毎日、出前の夕御飯がつづくので、黙ってはいるが美子は疑問と心配の目で母親を見た。
「お母さん。どうしたの。何かあったの」
「う、ううん。何でもないのよ。心配しないで」
静子は焦って言った。
「何かあったの。悩み事があるなら話して」
母親を見る美子の目には確信に近いものがあった。

いつまでも、夕御飯を出前で続けるわけにはいかない。美子や純を心配させる事もできない。
ついに、ある日、静子はおそるおそる商店街に行った。
静子は車の免許を持っていない。郊外に大きなスーパーがあるが歩いて行くには遠すぎる。以前、駅前に小さなスーパーがあったのだが、郊外に夜11時まで営業の大きなスーパーが出来てから、客が郊外のスーパーに移り、売り上げが伸びず、閉店してしまったのである。だから食料品を買うには、商店街に行くしかないのである。行き付けの美容院も、かかりつけの医院も、静子が教えている茶道教室も商店街の中にある。いつまでも避けつづける事は出来ない。

そういうわけで静子はおそるおそる商店街に行った。

魚屋のおやじが、静子を見つけるとニヤリと笑った。
「奥さん。この間はどうも」
静子は真っ赤になった。
「ちょっと休んでいきませんか。お茶をいれますから」
「い、いえ。いいです」
「まあ、そう固い事言わないで。裸を見せ合った仲じゃないですか」
そう言って魚屋のおやじは、静子を家に入れた。
「この間の縄で縛らせてもらいます」
そう言って魚屋のおやじは、静子を後ろ手に縛って柱につなぎ止めた。魚屋のおやじは、八百屋のおやじと、肉屋のおやじを連れてもどってきた。
「へへ。奥さん。私達はもう奥さんとは他人じゃないんですから」
と夷顔のおやじが言った。一人が縄尻を柱から解いた。三人は後ろ手に縛られて畳に座り込んでいる静子の髪を撫でたり、豊満な胸やムッチリした尻を服の上から思うさま、触った。
「ふふ。この前は丸裸だったが、こうやって服の上から触るのもいいな」
「ああ。奥さんを見る度に、一度でいいから、あの体に触ってみたい、というが激しい欲求だったからな。このシチュエーションの方がまさに夢、叶ったりだ」
一人が静子のスカートの中にそっと手を忍び込ませた。
「ああっ」
静子は思わず声を出した。指はだんだん奥に進んでいく。
「ふふ。オレはこうするのが夢だったんだ」
そう言いながら、男はわざと目的地を触れないで、見えないスカートの中で手を這い回せた。この焦らし責めに静子はいいかげん参ってしまった。もう頭が混乱して、どうなってもいいという捨て鉢な気持ちになっていた。
「も、もう。どうとでもして」
そう言って静子は畳の上に倒れ伏した。美しい黒髪がばらけ、起伏に富んだ悩ましい女の体が男達の目の前に横たわった。男達はゴクリと唾を呑み、ニヤリと笑った。
「じゃあ、もう一度、奥さんの体を網膜に焼きつかせてもらいます」
そう言って男の一人が静子の後ろ手の縄を解いた。手の拘束が解かれ自由になったが静子は目を瞑って人形のように動かない。
「さあ。奥さん。脱ぎましょうね」
そう言って男達は静子のブラウスのボタンを外していった。楽しむため、わざとゆっくりと。ブラウスを広げると豊満な乳房をピッチリと包んでいる純白のブラジャーが顕わになった。
「す、素晴らしい」
男達は息を呑んで言った。一人がそっと、静子のスカートのホックを外し、スカートをゆっくり降ろしていき、足から抜きとった。女の腰部にピッチリと貼りついた純白のパンティーが顕わになった。パンティーの後ろは静子の大きな尻にピッチリと張りつき、前は、その弾力によって、悩ましい小さな盛り上がりが出来ている。男達は、おおっ、と息を呑んで、男達の視線はそこに釘づけになった。
「す、素晴らしい」
男達はゴクリと唾を呑み込んで、しばらく我を忘れて、そこを凝視した。男達の前にはブラジャーとパンティーだけを身につけた静子が目を瞑って横たわっている。
「裸もいいが、この姿もいいな」
男達はしばらく我を忘れて、下着姿の静子を眺めた。
「おい。そろそろ下着もとろうぜ」
一人が言った。別の男がニヤリと笑った。
「静子さん。それでは下着もとらせてもらいます」
そう言って男は静子のブラジャーをとり、パンティーも降ろして足から抜きとった。丸裸になった静子を男は起こし、両手を背中に廻して手首を縛った。
「さあ。立って下さい」
言われて静子はヨロヨロと立ち上がった。男はこの前と同じように天井の梁に縄尻をかけた。
「奥さん。奥さんのために作っておきました」
そう言って一人の男が木馬を持ってきた。細めの丸木に四つの脚のついた簡単なものだった。
「静子さん。立ったままでは疲れるでしょう。これに乗って下さい」
男が促した。だが静子は躊躇ってピッチリ太腿を閉じ合わせて、乗ろうとしない。
「静子さん。木馬に乗れば恥ずかしい所が、隠せますよ」
一人がそんな揶揄をした。
「さあ。乗って下さい」
静子がなかなか乗ろうとしないので男は痺れをきらせたように強引に静子を木馬に跨がせた。
「ああっ」
静子は思わず声を出した。木馬の背は高く、足が畳に十分とどかず、かろうじてピンと脚を伸ばしきった足指の先が触れる程度だった。そのため、木馬の背がもろに静子の敏感な女の谷間の所にめり込んできたのである。確かに木馬の背には恥ずかしい所を隠す役割が多少あった。一度、乗ってしまった以上、降りるのは出来にくい。そのため静子は足を一直線にピンと伸ばし、足指の爪先で何とかバランスをとろうとした。足首がピンと伸びて、かろうじて床に触れている爪先がプルプル震えている。
「ふふ。静子さん。よく似合っていますよ」
「恥ずかしい所は木馬に隠れて見えませんよ。でもお尻の割れ目に深く食い込んでいますよ」
「敏感な所に食い込んで気持ちいいでしょう」
男達はそんな揶揄をとばした。
「美しい体が足首まで伸びきっている姿はとてもセクシーだな」
「木馬の背がお尻の割れ目に食い込んでいるのも、すごくセクシーだ」
男達は爪先立ちで木馬に跨って、一直線に体を伸ばしている静子をしげしげと眺めながら、そんな賛辞のような揶揄のような事を言った。

男達にそんな事を言われているうちに、静子の心に微妙な変化が起こり始めた。それは、怖れていたものに、逆にひきつけられてしまうような。目をそらそうとしていた怖いものの中に逆に入ってしまいたいような。そして自分の中にある嫌がりつつも引きずられるように魅せられてしまう曖昧としたものの正体を知りたいような。自分の本当の姿を知りたいような。静子は、暗く気味の悪いものでありながら、自分をひきつけている得体の知れないものに、だんだん吸い寄せられていった。静子は、もはや、それを求めずにはいられないようになっていた。その思いはどんどん激しくなっていった。もはや静子は自分をおさえることが出来なくなってしまった。
「み、見て。私の恥ずかしい姿をうんと見て」
とうとう静子は声を張り上げて叫んだ。男達はニヤリと笑った。
「ふふ。奥さん。とうとう言いましたね」
「言われずとも、しっかりと見てますよ」
男達は顔を見合わせて立ち上がった。そして、木馬に跨った爪先立ちの静子を取り巻いた。男達は静子の体を触りだした。豊満な乳房を揉んだり、柔らかい尻を撫でたり、と男達は三人で縛められた裸の静子を触りまくった。
「ああっ。いいっ」
静子はピンと足を伸ばして叫ぶように言った。
「ふふ。奥さんは、本当は、こうやって縛られて、寄ってたかって弄ばれることが嬉しいんでしょう」
そう言って男達は縛られた裸の静子を触りまくった。

数日後。
商店街に行った静子を見つけると魚屋のおやじはニヤリと笑って静子を呼び止めた。
「奥さん。ちょっと休んでいきませんか。お茶をいれますから」
静子は頬を赤らめて、「はい」と答えた。


平成21年5月27日(水)擱筆



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「売国奴」

2015-08-25 04:33:47 | 考察文
簡単に、ある特定の人を、「売国奴」などと言う人間を私は大嫌いである。そもそも、私は、「売国奴」という言葉が嫌いである。

そういう連中は、ほとんど、というか、例外なく、自分は、愛国心の強い、人間だ、という心地よさ、というか、快感、に浸っているだけである。

もちろん、私は、「あいつは売国奴だ」などと言ったことは、一度もない。

NHKをはじめ、メディア、大手新聞など、ウソばっかり放送している。

そんな、メディアのいう事を、鵜呑みにして、すぐに、「あいつは売国奴だ」なんて言うヤツは、あとで、真実が違うと、わかっても、平気の平左をしている、恥知らずな、軽率なヤツばかりである。

汚職で奪った、莫大な財産と共に、凋落する中国から外国へ移住している、中国の政治家は、「売国奴」と呼んでもいいだろう。

チャンネルなんとかの、デブのおっさんは、保守でなければ売国奴と言いそう。

日本は、思想信教の自由が保障されているのに。

また、歴史は、いくらでも、事実が、ひっくり返されている。

そもそも邪馬台国が、どこかも、わかっていない、というのに。

こういう、他人の思想の自由を認めず、自分の考えだけが正しいと主張し、日本人、全ての思想を、自分の思想に従わせようと考える輩を、ファシスト、と言う。

そもそも、医学とか、理科系の学問は、信憑性、実証性が高く、そのため、正否二元論の正解を出しやすい。しかし、それでも、今、真実とされていることでも、時代が進めば、間違いだった、ということは、いくらでも出てくる。

ましてや、文科系の学問は、ごちゃまぜ、であり、それを、正否二元論で、割り切ろうとすると、泥沼である。




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姉妹奴隷(小説)(上)

2015-08-24 01:22:38 | 小説
姉妹奴隷

 ある町の事である。その学校は男女共学の公立高校である。偏差値は高くない。偏差値は五十で、まず誰でも入れる。そんな学校におよそ似つかわしくない秀才の愛子という女生徒がいる。なぜ私立の進学校に行かないで、こんな学校にいるのか、多くの生徒は首をかしげる。それには理由がある。愛子は中学の時から模擬試験で偏差値60あって、十分私立の進学校に入れる実力があった。しかし、高校受験の前の年、父親の経営する会社が潰れてしまった。仕方なく、職安で仕事を探し、町の工場で働くことになった。家計は苦しくなった。愛子の姉は東京の私立大学の二年である。中退して働け、などと言うわけにはいかない。高い学費と生活費の仕送りをしなくてはならない。父親は愛子にぜひとも東大に入ってほしいと思っている。しかし愛子の希望する私立の進学校は家の収入からみて支払えない。ある夕食の時、悩んでいる父に愛子は言った。
「お父さん。私、近くの公立高校へ行くわ」
「しかし、それでは東大へはいけないじゃないか」
「大丈夫よ。確かに受験では不利になるわ。でも私、独学で猛勉強して偏差値50の高校から東大に入ってみせるわ」
「そうか。すまないな」
愛子は近くの高校に一番の成績で入った。特等性として、学費は免除になった。愛子は中学生の家庭教師のアルバイトもして、家計を助けた。愛子は金のかかる塾へも行かず、学校の授業もレベルが低かったが、独学で猛勉強して、学校では一番の成績で、校外全国模擬試験でも高い偏差値をキープしていた。学校ではクラス委員長に選ばれた。週一回、行われるクラス会議では壇上から議事長を勤めた。生徒はみな、トロンと眠そうな目をしていた。クラスには三人の、特に悪質な問題児、青男、赤男、黒男、の三人がいた。彼らは無法者で、学校の規則など全く無視。タバコを吸い、酒を飲み、授業をサボり、弱い生徒を脅してカツアゲする。他の生徒は彼らに絡まれないよう、腫れ物のように避けて、彼らの悪事を見ても見ぬ振りをしていた。愛子も気が小さく、後難を怖れて彼らからは極力避けていた。
 ある日、体育の授業が終わった時、カバンの中の雑記帳が無くなっていた。愛子は真っ青になって探したが見当たらない。愛子はトンと後ろから肩をたたかれた。振り返ると黒男がいた。手に愛子の雑記長を持っている。
「これだろ。お前が探してるのは」
愛子は真っ青になった。
「ふふふ。読ませてもらったぜ」
愛子は慌てふためいて雑記帳を取り戻そうと手を伸ばした。が、黒男はそれを隣にいた赤男に投げ渡した。
「返して。お願い」
愛子はあわてふためいて訴えた。が、彼らは口元を歪めて薄ら笑いするだけで、返そうとしない。彼らは必死に訴えつづける愛子を無視して愛子の雑記帳を自分らのカバンに入れて帰ってしまった。
翌日、愛子は一日中、オドオドしていた。昼休みの時、愛子はトンと後ろから肩を叩かれた。振り返ると黒男が愛子の雑記帳を手にかざしている。
「お願いです。返して下さい」
愛子は震えながら訴えた。
「ああ。返してやるぜ。今日の放課後、俺達についてくるんだ。そうしたら、その時返してやるぜ」
黒男はそう言って、青男、赤男と教室を出て行った。

その日の放課後の事である。
愛子は三人に連れられて、学校を出た。
愛子はオドオドしながら、三人について行った。かなり歩いた後、ある郊外の廃屋についた。
それはもはや誰も使っていない廃屋である。三人は廃屋に入るや愛子をドンと突き飛ばした。愛子はつんのめって床に倒れた。一人が愛子の顔を靴でグイと踏みつけた。
「ふふふ。これから地獄のリンチにかけてやるからな。楽しみにしてろ」
「ああー」
愛子は踏みつけられて歪んだ顔から苦しげな声を洩らした。三人は愛子にハゲタカのように襲いかかると、あっという間に愛子の服を脱がし、愛子を一子まとわぬ丸裸にしてしまった。三人は愛子を立たせると両手首を前でカッチリと縛り上げた。廃屋の天井には滑車が取り付けられている梁があった。二人が愛子をその下へ連れて行った。愛子が滑車の下に来ると、一人が愛子の手首の縛めの縄尻を取り、椅子にのって、縄を滑車に通した。男は、
「エーイ」
と掛け声を上げながら縄を引っ張った。それにつられて愛子の手は上に引っ張られ、腕はピンと一直線になり、さらに体も伸ばされていった。それでも縄を引っ張る男は笑いながら縄を引きつづける。ついに愛子の踵が地面から離れ、愛子は苦しい爪先立ちになった。男は、縄を廃屋の中にある事務机の取っ手にカッチリと結びつけた。愛子の手首から取っ手まで、縄は強い張力でピンと一直線に張られている。愛子は苦しい爪先立ちの足をプルプル振るわせながら、それでも何とか女の恥ずかしい所を隠そうと、鶴のように片方の足をくの字に曲げ、腿をピッタリ閉じた。

男の一人が愛子の顎をグイとつかむと容赦なくピシャリと平手打ちした。男は他の一人の男に目配せした。された男はついと立ち上がると爪先立ちでプルプルと脚を震わせている愛子の後ろに回るとズボンからベルトを抜き取った。愛子は華奢な体を吊るされている。しなやかな背中の中央には背骨の溝が一直線に骨盤に向かって走っている。その下では弾力のある柔らかい尻が双方からキュッと閉まって、美しく全容を露出している。その下につづく、しなやかな脚は、ピンと緊張しながらピクピク震えている。愛子の顎をつかんだ男は愛子の前方にある黒いレザーの所々破れ目のあるソファーにドッカと座った。男はポケットからタバコを取り出すと、口に咥えてライターで火をつけた。もう一人の男は別の事務椅子に座った。ソファーの男が、愛子の後ろに回った男に顎をしゃくって合図した。愛子の後ろに立っている男はベルトを勢いよく愛子の柔らかな尻に手加減なくつづけざまに打った。
ピシーン、ピシーン。
柔らかい弾力のある肉に鞭が炸裂する音が暗い廃屋に鳴り響いた。
「ああー」
愛子は、体を弓のように反らしながら激しく顔を左右に振りながら悲鳴を上げた。が、愛子の後ろに立っている男は容赦しない。鞭打ちつづける。鞭は尻といわず、腹や太腿など体のありとあらゆる所に巻きつき張りついてピシリと炸裂する。
「ああー。ひいー」
愛子は激しく体を前後左右に振り乱しながら、眉を寄せて顔を左右に振りつづけた。腰までとどく美しい黒髪もそれにつれて乱れ舞う。
「やめてー。痛―い。許してー」
愛子は目から大粒の涙を流し続けながら叫び続けた。鞭が尻に当たると尻を反射的に引き、鞭が脚にあたると反射的に足を引っ込めた。鞭が足に集中すると愛子はただでさえ苦しい爪先立ちの足を膝を曲げて引っ込めた。ようやく嵐のように宙を舞っていた鞭の動きが止まった。愛子は肉屋に吊り下げられている肉のように、ダランと力なく天井から垂れている張りつめられた縄に吊り下げられている。しかし体の重みを支えるため苦しく伸びた爪先がプルプル震えている。愛子の体は全身、激しく鞭打たれて、鞭打たれた所は痛々しく赤く腫れている。愛子はそっと顔を後ろに向けた。そして鞭打っていた男を恐る恐る見た。今は一時、鞭打ちを休めているが、それはお情けからかどうかはわからない。男が鞭打ちに疲れたのかもしれないし、いつ再開されるか分からない精神的な恐怖感を与えるためかもしれない。ともかく、すべては男の胸先三寸にある。愛子は涙に濡れた弱々しい顔をそっと上げて、憐れみを乞うような弱々しい瞳を男に向けた。
「お願い。許して。赤男君」
愛子は目から涙をポロポロ流してペコペコ頭を下げて訴えた。男は黙ったままベルトをズボンに戻した。男は愛子の艶のある腰までとどく黒髪をムズとつかんで、うつむいていた愛子の顔を上げるとピシリと頬っぺたを平手打ちした。男は愛子の顎をグイと掴んだ。
「どうだ。気分は」
「こ、こわいです。お願いです。もうやめて下さい」
愛子は涙に潤んだ瞳を弱々しく男に向けて言った。男は廃屋の傍らへ行くと水道の蛇口にゴムホースをつなぎ、その先を項垂れて俯いている愛子に向けた。男は水道の蛇口を全開した。冷たい水が勢いよく愛子の体を打ちつけた。
「ああー」
愛子は驚いて悲鳴を上げた。男はさんざん鞭打たれて、赤く腫れている愛子の体のあらゆる所に向けて、子供の悪戯のように放水しつづけた。水の強い水圧のため、水が当たっている所の柔肉が窪んだ。特に柔らかい、なだらかな乳房は激しい放水によって大きく窪んで形を変えたり、左右におしわられたりしている。水が乳房を揉みしだいているようにも見える。男は放水で、さんざん乳房を弄んだ後、脇や臍などにもさんざん放水攻撃した。
「冷たいー。やめてー」
愛子は放水の攻撃から避けるように体をくねらせて涙まじりに叫びつづけた。男は攻撃の照準を女の急所に定めた。
「ああー」
愛子は鶴のように片足を曲げてピッタリ脚を閉じ、そこへの放水攻撃を避けようとした。愛子が攻撃を避けようとすると男は余計むきになってそこへめがけて放水しつづけた。ただでさえ愛子は爪先立ちの苦しい姿勢である。だんだん曲げていた片足が伸びていき、爪先が床に、ぴったりくっついた。両足がそろってピンと伸ばされたため、女の茂みがひっそりとためらいがちに現われた。男はやっと敵の牙城が崩れて顕わになった女の谷間へめがけて放水しつづけた。ふわふわ縮れた女の毛が水に濡れて伸び、谷間の柔肌にペッタリくっついた。愛子は力なく首をガックリ落としてうつむいている。男は責めがいをなくしたのか、水道の蛇口を締めた。嵐のように猛威を振るっていた激しい放水がピタリと止まった。水浸しになった愛子の肌の上を水滴が涙のように幾筋も気まぐれな水路をつくりながら滴り落ちている。水滴が体から離れて冷たい地面に当たる時、ポチャン、ポチャンと、もの悲しい音が暗い廃屋に反響した。
「はくしょん」
愛子はくしゃみをして体をブルブル震わせた。
「さ、寒―い」
愛子は全身をブルブル震わせた。
「寒いか。なら温かくしてやるぜ」
男は吐き捨てるように言って、ライターをポケットから取り出して火をつけた。裸電球一つぶら下がっているだけの、うす暗い廃屋にもう一つの小さな発光体が灯った。男はことさらそれを愛子の顔に近づけた。愛子は不気味なものを見るような怖れの目で、灯っている紡錘形の炎を顔をそむけながら見た。
「な、何をするの。こ、怖いわ」
愛子は声を震わせて言った。
「お前が寒いと言うから暖めてやるだけよ」
そう言い捨てると男は愛子の背後に回ってドッカと腰を降ろした。男は静かに灯っているライターを愛子の尻の割れ目に近づけた。
「あっ」
愛子は反射的に声を洩らした。愛子が炎から離れようと尻を左にそらすと炎もそのあとを追い、右にそらそうとすると炎も右についてくる。それは愛子にとっては、この上なくつらい責めでも、男達にとっては見ごたえのある尻振りダンスになった。
「どうだ。温かくなっただろう」
男はムッチリ閉じ合わさった尻を左右に振っている愛子に言った。男はライターの炎をよりいっそう愛子の尻に近づけた。
「ああー。熱いー」
愛子は尻をキュッと閉じて炎から避けようと腰を前に突き出した。愛子は炎から逃げようと、背を反らして腰を突き出した、激しい弓なりの姿勢になった。それでも男は許さず、体を目いっぱい反らして腰を前方に突き出しているムッチリ閉じ合わさっている愛子の尻にライターの炎を近づけた。もう逃げ場はない。愛子の体ももう限界である。炎から逃げるため、体が激しく弓なりになり、足首もピンと伸び、爪先立ちで体を保っている足指もピクピク震えている。後ろから見ると足首から先がピンと伸びているため、まるで揃えた草履が二つ並んで立っているかのようである。愛子は全身をピクピク震わせながら、目から涙をポロポロ流しながら、
「熱―い。許して。許して」
と、大声で叫びつづけた。だが男は容赦しない。ムッチリ閉じ合わさった愛子の尻を炙りつづける。
「そんなに腰を突き出すとまんこが前にいる男に丸見えになるぜ」
男は愛子の尻をあぶりながらそんな揶揄を言って愛子の前にいる二人の男に大きな声で呼びかけた。
「どうだ。愛子のまんこはよく見えるか」
「おう。まる見えだぜ。腰をことさら突き出して。俺達に見てほしいと思ってるんじゃねえか」
黒い皮のソファーに座っていた男が言った。
「こいつはきっと露出趣味があるに違いないぜ」
二人は、ははは、と笑った。
三人はみな、タバコを吸っている。愛子の後ろの男は吸っていた咥えタバコを口から離して手にとると、プルプル小刻みに震えている愛子の柔らかい尻にそっと燃え先を触れた。
「ひいー」
愛子は悲鳴を上げた。三人は、あっははは、と声を揃えて哄笑した。
「お願い。赤男君。許して。恐い事はしないで」
愛子は苦しげに後ろに立っている男に顔を向けて、涙声で訴えた。男は愛子に一瞥も与えず、ポケットから新しいタバコを一本取り出すと、目前のムッチリ閉じ合わさっている愛子の尻の割れ目に差し込んだ。
「あっ。な、何をするの」
愛子はとっさに言った。
「お前もいい加減疲れて一服したいだろうから、一服させてやるぜ」
そう言って男は愛子の尻に挟まっているタバコにライターで火をつけた。
「や、やめてー」
愛子は激しく叫んだ。
「尻を炙るのはやめてやるよ。そのかわり、タバコはちゃんと咥えてろよ」
そう言って男は愛子の尻を炙っていたライターを消してポケットにしまった。尻を火で炙られるという耐え難い責めは容赦されたものの、その交換条件として、挟み込まれたタバコを尻をしっかり閉じて尻で咥えていなくてはならなくない。もしタバコを落としたら、男はまたライターで愛子の尻を炙るだろう。愛子はタバコが落ちぬよう、尻に力を入れてタバコを挟んだ。尻の火炙りがなくなったため、愛子はやっと苦しい弓なりの姿勢から開放されて、直立の爪先立ちに戻った。しかし、尻に力を入れているため、女の茂みを隠す事はできず、その全容を前の男達に晒してしまっている。
「ふふ。こうやって尻でタバコを挟んでいる以上、脚を寄り合わせてまんこを隠す事はできないぜ」
愛子の後ろの男が薄ら笑いしながら揶揄した。
「どうだ。面白い趣向だろう」
愛子の後ろの男がピッチリ閉じてスラリと一直線に伸びた愛子の後ろから、愛子の前の二人の男に賛同を求めるように言った。それを受けて愛子の前の男が応じた。
「ああ。面白いぜ。まんこが丸見えだぜ。これからはずっと尻に何かを挟ませておくか」
男は愛子の尻からタバコをとっておもむろに一服した。そして再び愛子の尻に挟ませた。
「ああっ。熱い。こわい。許して。赤男君」
愛子は尻をキュッと閉め、体をブルブル震わせて叫んだ。
「ああー。熱いわ。こわいわ。許して」
愛子は何度も繰り返して叫んだ。男はまた尻からタバコをとり、一服しては、愛子の尻に挟ませた。タバコはだんだん短くなっていく。燃え先がだんだん尻に近づいてくる。
「ああー。熱いわ。こわいわ。許して」
「ああー」
ついに愛子は悲鳴を上げて、タバコを落としてしまった。男は無言ですっくと立ち上がると丸裸で吊るされている愛子の真正面に立ち、不機嫌な目つきで荒々しくグイと愛子の顎を掴んで顔を上げさせた。
「落とすなと言っただろうが」
男はつかんだ愛子の頬をピシャリと平手打ちした。
「ご、ごめんなさい」
愛子は声を震わせて言った。
「チッ。こらえ性のないヤツだ」
男は舌打ちした。そしてプルプル震えている愛子の尻をドンと蹴るとソファーの所へ行ってドッカと腰を降ろした。

男たちは、しばし丸裸で爪先立ちで吊るされている愛子をニヤついた目で眺めていた。
しばしして、ようやくアームチェアーに座っていた男が縄を持って立ち上がった。男は縄を持って爪先立ちで脚をプルプル震わせている愛子の前に来ると、腰を屈め、縄をピッチリ閉じている愛子の腿の間に通した。男がもう一人の男に目で合図した。された男はニヤリと口元を歪めて立ち上がると、愛子の後ろに回った。愛子の尻の下の太腿の間には男が通した縄の先が挟まっている。男はそれを掴むとそのまま数歩、後ろに下がった。前の男も縄を持ったまま、後ろの男と同じくらいの距離、後ずさりした。それは、二人で縄をまわして一人がその中に入っていく、三人でやる縄跳びで鬼が引っかかったようなかたちと同じ状態である。二人は少しずつ、腿の間に挟まっている縄を引き上げていった。愛子は不安に眉を寄せて困惑した表情である。
「な、何をするの」
「ふふ。楽しい事さ。気持ちがよくなるぜ」
縄が股間に挟まった。前後の男は容赦せず、グイと力を入れて縄を引っ張った。
「ああー」
愛子は女の最も敏感な所を刺激されて、眉を寄せて苦しげな表情で声を洩らした。前は女の部分の割れ目に縄がしっかり食い込んで、両側からの肉が閉じ合わさって、縄はその中に埋もれ、あたかも女の肉が縄をしっかり挟んで離さないでいるかのようである。後ろも尻の割れ目にしっかり縄が食い込んでいる。二つの尻の肉が双方からピッチリ閉じ合わさって、しっかり縄を締めつけている。
「どうだ。女の肉にしっかり縄が食い込んで気持ちがいいだろう」
前の男が揶揄した。
「どうだ。どんな気持ちだ」
「つ、つらいです。みじめです。お願いです。やめて下さい」
愛子は憐れみを乞うような口調で答えた。
「ふふふ。これでおわりと思ったら大間違い。もっと気持ちよくしてやるぜ」
前の男が、
「じゃあ、始めるぞ」
と後ろの男に大きな声で声をかけると、後ろの男は口元を歪ませて、薄ら笑いしながら、
「おう」
と応じた。二人は縄の張力を保ったまま、前後にゆっくり縄をしごき始めた。縄を女の割れ目に食い込ませての縄の綱引きである。
「ああー。やめて。お願い」
愛子は全身をブルブルと震わせながら叫ぶように訴えた。が、男達は馬耳東風である。鋸引きりのように女の秘部をゆっくり引きつづける。愛子はサーカスの綱渡りから落ちたみじめな曲芸師のようにも見える。そして綱渡りから落ちた罰を厳しい団長に受けているようにも。前の男が縄をゆっくり引くとそれにあわせて愛子の腰は前に出、後ろの男が縄を引くと愛子の腰はそれにつられて後ろに引かれた。あたかも風に舞う木の葉のように縄の動きと一緒に愛子の体も前後に揺れた。
「どうだ。気持ちいいだろう」
男が言った。
「お願い。やめて」
愛子は訴えつづけるが、男二人は全く聞く耳など持っていない。あたかも二人でのこぎりで木を切る職人のように、淡々となすべき仕事をしているかのようである。
「ふふふ。もっといい事を思いついたぜ」
しばし愛子の涙の訴えを無視して無心で縄を引いていた前の男が手を止めた。
「おい。縄を離しな」
前の男が後ろの男に命じた。ので、後ろの男は縄を離した。縄は爪先立ちしている愛子の両足の間にパサリと落ちた。前の男は縄をたぐり寄せると縄の中ほどに結び玉をつくった。
「な、何をするの」
しごきの縄がはずされた愛子はほっと息をついたが、それも束の間。愛子は男がつくった結び玉を見ると恐怖におののいた表情になった。前の男は愛子の足元に屈むと、結び玉のある縄を爪先立ちの愛子のピッタリ閉じた足の間に通した。後ろの男が寄って来て、愛子の足の間に通された縄をつかむと元いた位置までさがった。そして縄をたぐり寄せた。そして結び目が愛子の足の間を通って男の手元近くに来た時点で手繰るのをやめた。
前後の男は前と同じように縄をゆっくり引き上げていった。縄はゆっくりと愛子のピッチリ閉じた腿の間を上がっていき、前と同じように女の谷間に食い込んだ。
「ああっ」
愛子は反射的に声を洩らした。前後の男は前と同じように前後にゆっくり縄を引っ張り合って、女の秘部に縄を食い込ませつつの縄の綱引きを始めた。
「ああー。お願い。やめて。もう許して」
愛子は全身を震わせながら訴えた。爪先立ちの足指がピクピク震えている。防御の本能のため、腿をピッチリ閉じているが、そうするとよけい縄が割れ目に食い込んでしまう。男が擦るたびに愛子が哀訴の悲鳴を上げる。
「ははは。まるでバイオリンだな。人間バイオリン」
と前の男が揶揄した。
「ははは。いい音色だぜ」
と後ろの男が揶揄した。
「よし。そろそろはじめるか」
前の男は独り言のように言って、後ろの男に目で合図した。後ろの男はニヤリと笑って引く力を弱めた。縄はゆっくり前の男に引かれていく。物言わぬ不気味な結び玉がゆっくりと愛子のピッチリ閉じ合わさった尻に近づいていく。愛子にはそれが見えない。前の男はニヤリと笑った。
「ふふ。もうすぐうんと気持ちよくなるから、楽しみにしてろ」
結び玉がついに愛子のピッチリ閉じ合わさった尻に触れた。異物が触れた気味の悪い感触のため愛子は、
「あっ」
と声を上げた。前の男は引く速度を極めて遅くして、さらに縄を引っ張っていった。結び玉は愛子のピッチリ閉じた尻の割れ目の中へ入っていった。結び玉は女の割れ目から尻の穴までの女のもっとも敏感な部分を意地悪く擦りながらゆっくり前方に移動している。
「ああー」
今まで触れられた事のない女の柔らかい部分を容赦なく擦られる天を衝くような不気味な刺激に愛子は激しい悲鳴を上げた。
「ふふ。どうだ。気持ちいいだろう」
前の男は薄笑いしながら、さらに縄を引っ張っていった。結び玉は女の割れ目の後ろの結合部から女の割れ目の中へ入ってゆき、女の谷間を擦った後、まんこの前に姿を現した。
「どうだ。気持ちよかっただろう」
「お願い。もうやめて」
愛子は、縄に出来ている不気味な結び玉を見ると瞳に涙を滲ませながら涙声で言った。が、男は答えず薄ら笑いを浮かべながら、涙ぐんでいる愛子を楽しげに眺めるだけである。男は綱引きの力を少し緩めた。その感覚を感じとった後ろの男は力を入れてゆっくり縄を手繰っていった。縄が再び、後方に動き出したのを、秘所に食い込む縄が柔肌を擦る感覚で愛子は気づいた。結び玉がだんだん秘所に近づいてくる。ついにそれは愛子の割れ目に当たり愛子の体の最も敏感な所を刺激しながら愛子の尻の割れ目から出てきた。
「ああー」
愛子は結び玉が柔肌を擦るつらい刺激に眉を寄せ苦しい喘ぎ声を出した。ある程度さらに縄を引いてから後ろの男は縄を引くのを止めた。しばし小休止した後、気味の悪い縄はまた愛子の谷間に食い込んだままゆっくり前方に動き出した。縄はゆっくり前方に進んで、急にピタリと止まったり、また後方に動いたりと、もどかしく動いている。結び玉がいつやってくるか分からない恐怖に愛子は尻をプルプル震わせている。尻の後ろにある結び玉は愛子に見えない。それは愛子を精神的にじらせて恐怖感をつのらせようという彼らの意地悪な意図である事は明らかである。

男達は何回も結び玉のついた縄を前後に往復させた。結び玉が女の谷間を擦るたびに愛子は、眉をしかめ、
「ああー」
と、苦しそうな悲鳴を上げた。ある時、結び玉が秘所の真下の女の谷間の中央に来た時、結び玉の動きがピタリと止まった。前後の男は縄を引くのをやめ、結び玉をその位置のままにしたまま、前後にすばやく小刻みに振動させた。
「ああー。やめてー」
結び玉が女の敏感な所を激しく擦る刺激に愛子は悲鳴を上げた。
「ふふ。お前もかわいそうだから、そろそろ、やめてやるぜ」
前後の男は縄を放し、ソファーにもどって、ドッカと腰を下ろした。
三人の男はタバコをふかしながら丸裸で爪先立ちで吊り下げられている愛子の前で、体を崩してタバコを吸っている。

男の一人がソファーの後ろから愛子の紺のセーラー服を取り出した。男は吸っていたタバコを手にとって口から離すと、燻っているタバコの先をセーラー服に近づけた。
「やめてー」
愛子は真っ青になって叫んだ。が、男は眉一つ動かさず、燃えているタバコの先をセーラー服に押しつけた。愛子は青ざめた顔でワナワナ口唇を震わせている。男はしばしタバコを押し付けたままでいたが、火を揉み消すようにタバコを捻ってから、無造作にポイと捨てた。男がタバコを押し付けた所にポッカリと穴が開いた。
「ああー」
愛子はそれを見てクスン、クスンと泣き出した。男はポケットからタバコを取り出して口に咥え、ライターで火をつけてまた一服した。男は愛子の可愛いパンダのついている通学用のスポーツバッグをとった。愛子は不安げな表情で男とバッグを見た。男は一服して口から煙をゆっくり噴き出すと、セーラー服の時と同じようにスポーツバッグにタバコの火をグイと押しつけた。
「ああー」
愛子は涙声で叫んだ。男はしばし烙印するように押し当てたタバコをじっと押しつけた後、無造作にポイと捨てた。バッグにも小さな穴が開き、その周りに茶色の焼け焦げた跡がついている。
「お願い。もうひどい事はしないで」
愛子は目から涙をポロポロ流しながら訴えた。
「何で泣く。望みがかなって、嬉しいだろうが」
そう言って、男はニヤニヤ笑いながら、愛子のバッグからノートを取り出した。そして、ノートを開き、読み出した。

×月×日
今日、クラス会議をした。いつもは目にしないようにしているが、壇上からだと嫌が上でもみんなの様子がはっきり見える。教室の最後列にたむろしているあの三人組。彼らは無法者だ。学校の規則など彼らの頭にない。彼らはタバコを吸い、部室で酒を飲み、弱い生徒をいじめ、金を巻き上げる。授業中も漫画を読んだり、好き勝手な事をしている。他の部室に入って他人の物を盗んでいるのも彼らだ。彼らは人間の良心というものが無いのだろう。将来はヤクザになるのだろう。彼らは人間のクズだ。私は彼らと絶対関わりたくない。彼らはヘビだ。ダニだ。
×月×日
今日もクラス会議だった。私は男子のクラス委員長の岡田君が好きだ。岡田君と並んでいるとキュンと胸が締めつけられる。岡田君は勉強も出来る上、スポーツも出来る。岡田君も私に好意を寄せてくれている。しかし不思議な事に、私はあの不良三人に寄ってたかっていじめられたい。この心理は私にもわからない。私には悲しい事にマゾの血が流れているのかもしれない。
×月×日
毎夜、ベッドに就くと、あの気味の悪い三人が頭に浮かんでくる。私に激しい妄想が起こる。私は彼らに捕らえられて裸にされ、廃屋に連れ込まれ、吊るされ、あの気味の悪い目つきでジロジロ見下されたい。私の被虐願望はどんどん募っていく。
×月×日
もうガマンできない。私の妄想はどんどん恐ろしいものになっていく。私は彼らに裸にされ、吊るされて、鞭打たれたり、竹刀で叩かれたり、最悪な拷問の限りを尽くされたい。私は泣き叫んで許しを乞いたい。この前の放課後、私は誰もいなくなった教室で、彼らに嬲られる事を想像して、裸になって爪先たちしてしまった。このままでは私は頭がおかしくなってしまう。誰か私を助けて。

ソファーの男が読んでいる間、他の二人は黙って聞いていた。愛子は目を閉じ、真っ赤になって顔をそむけている。男は読み終わるとノートをカバンにしまった。男は立ち上がって廃屋の隅にあった細い竹の棒を三本拾うと、一本ずつ二人の男に渡し、一本は自分が持って、ソファーに戻った。男はソファーから子供の悪戯のように棒の先を愛子の頬に押しつけた。愛子は苦しそうに顔を歪めた。残りの二人も椅子を移動し、ちょうど三方から愛子を取り囲んだ。ソファーの男は棒の先で愛子の顎を突きながら、
「どうだ。夢がかなって嬉しいだろう」
と言った。愛子は顔をしかめながら目をギュッと瞑って黙っている。
「しかしクラス委員長がマゾだったとはな。人は全く見かけによらないな」
愛子の後ろの男が棒の先で愛子の尻を突きながら言った。
「貞淑な女ほど淫乱性が強いんだよ。どうだ。夢が叶ってすっきりしただろう」
アームチャアーの男が愛子の臍を棒で突いて言った。
「ち、違うんです。あくまで想像で、そういう妄想が起こってしまうんです。本当に現実に虐められたいとは、とても怖くて思っていませんでした」
愛子は力を込めて言った。
「下手なウソをつくな。お前は誰もいない教室で裸になったり、『誰か助けて』と、しっかり書いているじゃないか。日記を読めば、明らかじゃないか。お前は本心から俺達に嬲られたいと思ってるんだよ」
アームチェアーの男が棒で愛子の頬を突きながら言った。愛子は反駁しない。黙って顔をしかめながらギュッと目を瞑っている。
「しかしクズ呼ばわりはなんだ。劣等生なら人をクズ呼ばわりしてもいいのか」
「ご、ごめんなさい。その事は心から謝ります」
「マゾは最悪に醜悪な人間に嬲られたいと思っているんだ。こいつは俺たちを最悪な醜悪な人間と見て、自分の被虐願望を思うさま満足させていたんだ。失敬なヤツだ。そんならとことん嬲ってやろうぜ」
ソファーの男が愛子の頬を棒で突きながら言った。
「おう。望み通りリンチして殺してやるぜ」
隣に座っていた男が愛子の臍を棒で突きながら言った。
「お願い。失礼なことを書いてしまった事は心から謝ります。うんと惨めになります。ですから、どうかこれ以上怖い事はしないで下さい」
愛子は泣きそうな顔で叫ぶように言った。
「ふふふ。それはお前の態度次第だ」
愛子の後ろの男が棒で愛子の尻を突きながら言った
「それじゃあ、責めを再開するとするか」
そう言って、愛子の後ろの男が愛子のムッチリ閉じ合わさった尻を棒でつついてから、尻の割れ目に棒の先を押し込もうとした。
「待った」
ソファーから愛子の頬を棒でつついていた男が言った。
「両手の縛めを解いて、片手だけの縛めにしな。片手は自由にしてやりな」
「何でそんな事をするんだ」
愛子の後ろの男が首をかしげて聞いた。
「ふふ。まあいいから。その方が面白いんだよ」
男に命じられて二人の男は立ち上がった。一人の男が愛子の縄を繋ぎ止めてある取っ手の所へ行った。男は取っ手にガッチリと結びつけられている縄尻をほどいた。そして、ゆっくりと縄を降ろしていった。爪先立ちの状態で愛子を吊っていた愛子の手首がだんだん降りてゆき、それにともなって爪先立ちのため、上がっていた踵がだんだん下りてきた。ついに踵が完全に地面についた。愛子は不安げな表情の中にも、長い間体重を支えてきた爪先立ちの苦痛から開放されてほっと一呼吸ため息をついた。さらに手首も下がってきて、胸の位置まで下がった。
「ほら。爪先立ちを許してやったんだ。礼くらい言いな」
ソファーの男に言われて愛子は声を震わせて、
「あ、有難うございました」
と言った。男は二人して愛子の両手首の縛めを解いた。長い時間、愛子を吊っていたため、手首には縄の跡がクッキリとしるされている。愛子は自由になったが逃げる気配も見せず立ちすくんでいる。もっとも、力の無いか弱い裸の女が腕力のある男三人に抵抗して逃げる事など出来ようはずがない。
「よし。じゃあ、愛子の右の手首だけを縛って今までと同じように吊るしな」
愛子の正面のソファーの男が二人に命じた。命じられて男の一人が愛子の手首を掴むと、二巻きほど、しっかり手首を縛って、ガッチリと天井の滑車から垂れている縄に結びつけた。男は取っ手の所へ行くと前と同じように縄を引いていった。再び愛子の手首が吊り上げられていった。しかし前回と違って、今回は右手だけである。右手は引っ張られていき、頭の上に上がった。まだ手が伸びきっていない位置で、ソファーの男が取っ手の所で縄を引いている男に言った。
「よし。その位でいいだろう。そこで固定しな」
言われて男は縄を取っ手に結びつけた。そして男はパンパンと手をはらってソファーに戻った。もう一人の男も愛子の後ろに戻った。三人は口元を歪めてニヤニヤ愛子を眺めている。愛子の踵はしっかり地面について、もはや爪先たちの苦痛は無い。愛子はなぜ片手を外されたのか、分からないといった困惑した顔つきである。愛子の前のソファーに座っている二人の男の視線は、一点、愛子の恥ずかしい所に定まっている。愛子は腿をピッチリ閉じ、自由になった左手でそこを隠した。
「おい。爪先立ちを許してやったんだ。礼くらい言え」
ソファーの男が怒鳴った。
「あ、有難うございます」
愛子は言われるまま礼を言った。三人の男は、それぞれの場所から竹の棒を伸ばして愛子をつつき始めた。ソファーの男が愛子の豊満な乳房を責めだした。豊満な乳房の下縁にそって、乳房の輪郭をなぞってみたり、乳房をピシャピシャ叩いたり、乳首の下あたりの乳房の最も柔らかく弾力のある所を突いてグリグリ捏ねまわしたりした。彼らは、その責めを執拗につづけた。
「あっ。いやっ」
愛子は秘所を隠していた片手を上げて棒を除けようとした。
「ははは。自分からまんこを見せたぜ」
ソファーの男が揶揄した。男は愛子の乳房を執拗に責めた。後ろの男は愛子の柔らかく弾力のある尻をつつき出した。尻を左右にはじくようにつつく。愛子の体は突かれる度に左右に揺れた。後ろの男は愛子の尻の割れ目に棒の先を差し込んだ。
「あっ。いやっ」
愛子は辛そうな顔をして、尻の割れ目に食い込んでいる棒を除けようとした。愛子が尻の割れ目に挟まっている棒を掴んで除けようとすると、男は意地悪くいっそう力を入れて愛子の尻をつつく。愛子は辛そうな顔で必死に尻の棒を除けようとした。自由に使える手は一本しかない。そのため胸も秘部も丸見えである。大きな柔らかい乳房も女の恥ずかしい所も丸見えである。ソファーの男は無防備になった愛子の乳房を棒で突きながら隣の男に言った。
「どうだ。面白いだろう。わざと片手だけ自由にしておいて責めた方が面白いんだよ」
言われた隣の男は薄ら笑いしながら、
「全くその通りだな」
と相槌を打った。隣の男も棒を伸ばしてピッチリ閉じ合わさっている愛子の太腿を突き出した。やがて男はピッチリ閉じ合わさっている愛子の太腿に棒を割り入れた。男は柔らかい太腿の感触を楽しむように棒を動かして腿を突いたり、肌にそってなぞったりした。男は攻撃の矛先を愛子の女の部分に向けた。丘を突いたり、女の谷間を擦ろうとした。
「ああー」
愛子は攻撃を避けようと腰を引いた。愛子は三方からの攻撃に対し、一本の手で守らなくてはならない。その手は一番辛い攻撃に対して使わなくてはならない。今、一番つらいのは後ろの男の尻責めである。前の二人は愛子の乳房と太腿に軽く触れる程度に手加減して、愛子の手を尻の守りに使わせている。
「やめて」
愛子が叫んでも男は攻撃をやめない。尻の割れ目に突っ込んだ棒をグリグリ捻っている。男は力を入れたり、ゆるめたり、して、気まぐれに愛子を攻撃している。愛子は尻の割れ目に食い込んでいる棒の先をしっかり掴んだ。そして力が緩んだ時に、すばやく棒を尻の割れ目から引き抜いた。愛子は棒をしっかりと握っている。離したらまた尻を攻撃される。もはや愛子の後ろの男は棒を握っているだけで、力を入れてはいなかった。しかし、愛子は棒を離せない。
「ふふ。おっぱいもまんこも丸見えだぜ」
そう言って前の二人は愛子を揶揄した。
「おい。愛子。パンティーを履きたいか」
愛子が答えないので、ソファーの男は怒鳴るように言った。
「履きたいか、履きたくないか聞いているんだ。答えろ」
愛子は後ろ手で棒を握りながら小さな声で、
「履きたいです」
と答えた。
「よし。それじゃあ、履かせてやる」
ソファーの男は棒の先に愛子のパンティーをひっかけて、それを伸ばして愛子の手のとどく所まで持っていった。パンティーは棒の先にみじめにぶら下がっている。愛子は握っていた後ろの棒を離して、急いでひったくるように棒の先にぶら下がっているパンティーをとった。あはははは、と三人が哄笑した。しかしそんな事には、かまってはいられない。愛子はパンティーをひっしと握りしめた。そして、片手を使ってパンティーを履き出した。まず手を縛られている方の右膝を思い切り膝が腹につくまで曲げ、右足をパンティーにくぐらせ、膝の辺りまで引き上げた。つづいて同じように残りの左足を曲げ、パンティーの穴に足を通した。そして両足を通したパンティーを片手で必死に引き上げた。男達は必死にパンティーを履こうとしている愛子を、あはははは、と哄笑した。
「ふふ。パンティーを脱ぐ姿もいいが、あせって履く姿もエロチックでいいな」
ソファーの男が薄ら笑いしながら揶揄した。
揶揄され、赤面したが両足とも通してしまえばもう安心である。愛子は片手でパンティーをスルスルと引き上げた。とうとうパンティーは腰にピッタリとフィットした。愛子はなぜパンティーを許されたのか、わからないといった困惑した表情である。愛子は自由な片手で乳房を覆った。
「ふふふ。お前のその姿を見たかったから片手を自由にしてパンティーを履かせてやったのさ」
そう言うと男は愛子のカバンから携帯を取り出して、パンティー一枚で片手で胸を覆っているみじめな愛子に向けた。
「やめてー」
愛子は叫んだが、男はかまわず携帯のボタンを押した。
カシャ。
愛子のみじめな姿の写真が撮られた。
写真を撮ると、男は、はげたかのように、愛子のパンティーを脱がして丸裸にし、また、元のように愛子の両手を縛って愛子を吊った。
ソファーの男は愛子の携帯を愛子に向け、丸裸の爪先立ちで吊られている愛子の写真をとった。
男は写真を添付したメールを愛子の姉に送った。
「妹は今、リンチされている。これは妹がマゾで俺達にリンチされる事を望んだからだ。妹を助けたければ、お前一人でここへ来い」
そう書いて写真を添付して姉に送信した。すぐに愛子の携帯に電話がかかってきた。電話に出たのが妹ではなく、男の声であるとわかると姉は半狂乱になった。
「あなたたちは誰です。今すぐリンチをやめなさい」
男はニヤリと笑って言い返した。
「だって本当に妹がマゾで俺達にリンチされる事を望んだんだぜ。証拠もある」
「ウソよ。そんなのデタラメよ」
「じゃあ妹に代わってやるよ」
そう言って男は携帯電話を愛子の耳と口にあてがった。
「愛ちゃん。今の人が言った事、ウソでしょ。今どこにいるの」
愛子は嗚咽しながら言った。
「いいの。お姉ちゃん。私が悪かったの。来ないで。自分の事は自分で責任をとります」
男は愛子から携帯を取り上げた。
「ほら。どうだ。本当だっただろう」
男は得意げに言った。
「わ、わかりました。事情は、あなた方に会って直接聞きます。今から行きますから、そちらの場所を教えて下さい。私が行くまで妹には乱暴しないで下さい」
姉の声はあせっていた。
「あんたのアパートの最寄の駅はどこだ」
「××線の××駅です」
「じゃあ、その駅で待ってろ。タクシーで迎えに行ってやる」

   ☆   ☆   ☆

 姉は言われた通り××駅へ行った。三十分位して、タクシーが来た。後部座席に見知らぬサングラスをかけた男がいる。姉は急いでタクシーに駆け寄った。男は後部ドアを開けて姉に乗るよう顎をしゃくって合図した。姉は急いで乗り込んだ。
「乗った場所へ戻ってくれ」
男は運転手に言った。車は駅前のロータリーをUターンして走り出した。
「お金は私が払います。それまで妹には手を触れないで下さい」
姉はキッパリ言った。男はポケットから就眠用のアイマスクを取り出して、姉の目を覆った。
車は夕闇の街を走り、やがて郊外へと出た。三十分くらいして車は止まった。姉がハンドバッグから財布を取り出したので、男は財布から一万円出して運転手に渡し、おつりを受け取ると、それを財布に戻した。男は姉を突き出すようにして、外へ出した。晩秋の夜風が肌身を切った。目隠しされているので姉はここがどこだかわからない。物音一つ聞こえてこない清閑な所である。姉は背中を押されながら廃屋へ連れて行かれた。

廃屋の中に連れ込まれると姉は付き添ってきた男に目隠しをはずされた。
「愛ちゃん」
姉は立ち竦んだまま悲鳴に近い声を上げた。裸電球一つ、こうこうと灯った薄暗い廃屋の中で、一糸まとわぬ丸裸で愛子が天井から爪先立ちで吊るされている。
「お姉ちゃん」
愛子は目にいっぱい涙を浮かべて、弱々しい口調で言った。
「ほー。これは美人の愛子の姉さんだけあってハクイな。これからが楽しみだぜ」
ソファーに座っていた男がワナワナと口を震わせながら金縛りにでもあっているかのように立ち竦んでいる姉の顔をインピな目つきで眺めて言った。姉は上下そろいの白のスーツだった。肉づきのいいグラマラスなプロポーションが体にピッタリとフィットした服の上からくっきりと見える。男は姉の顔をしげしげと眺めた後、服を押し上げている姉の豊満な胸や尻を舐めるように眺めた。
「ふふ。プロポーションもバツグンだな」
男は言った。しばし呆然と我を忘れて立ち竦んでいた姉が急に我にかえったように大声を出した。
「愛ちゃん。これはどうしたことなの。どうしてこんな事になったの」
「お姉ちゃん。ごめんなさい。これは私が悪いの。私がまいた種なの。責任は私がとります。お姉ちゃんは帰って」
愛子は目に涙を滲ませながら涙声で言った。姉は信じられないといった表情で早口でまくしたてた。
「愛ちゃん。冷静になって。どうして、こういう事になったのか、そのいきさつを話して」
姉に諭されても愛子は首を振るだけである。姉が駆け出しそうになったのを、後ろの男が腕を捕まえて制止した。ソファーの男が、カバンから携帯を取り出した。
「これには愛子の恥ずかしい写真がいっぱい撮ってあるんだ。動くとこれを学校中の男達にバラまくぞ。男達はみんな愛子にあこがれているから、宝物にするため先公になんか報告したりしないぜ」
ソファーの男がこれ見よがしに携帯のボタンに手をかけた。ので、姉は眉を寄せて、もどかしそうに立ち止まった。
「ど、どうしてなの。どうしてこんな事になったの」
姉は男達を見て拳を固く握り締めて言った。
「だから言っただろう。愛子はマゾで俺達にリンチされたいんだって」
後ろの男が言った。
「ウソよ。そんなの。絶対ウソよ」
「じゃあ、証拠を見せてやるぜ」
ソファーの男は愛子のノートを取り出して開くと、日記を読み出した。

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姉妹奴隷(小説)(下)

2015-08-24 01:20:00 | 小説
×月×日
今日、クラス会議をした。いつもは目にしないようにしているが、壇上からだと嫌が上でもみんなの様子がはっきり見える。教室の最後列にたむろしているあの三人組。彼らは無法者だ。学校の規則など彼らの頭にない。彼らはタバコを吸い、部室で酒を飲み、弱い生徒をいじめ、金を巻き上げる。授業中も漫画を読んだり、好き勝手な事をしている。他の部室に入って他人の物を盗んでいるのも彼らだ。彼らは人間の良心というものが無いのだろう。将来はやくざになるのだろう。彼らは人間のクズだ。私は彼らと絶対関わりたくない。彼らはヘビだ。ダニだ。
×月×日
今日もクラス会議だった。私は男子のクラス委員長の岡田君が好きだ。岡田君と並んでいるとキュンと胸が締めつけられる。岡田君は勉強も出来る上、スポーツも出来る。岡田君も私に好意を寄せてくれている。しかし不思議な事に、私はあの不良三人に寄ってたかっていじめられたい。この心理は私にもわからない。私には悲しい事にマゾの血が流れている。
×月×日
毎夜、ベッドに就くと、あの気味の悪い三人が頭に浮かんでくる。私に激しい妄想が起こる。私は彼らに捕らえられて裸にされ、廃屋に連れ込まれ、吊るされ、あの気味の悪い目つきでジロジロ見下されたい。私の被虐願望はどんどん募っていく。
×月×日
もうガマンできない。私の妄想はどんどん恐ろしいものになっていく。私は彼らに裸にされ、吊るされて、鞭打たれたり、竹刀で叩かれたり、最悪な拷問の限りを尽くされたい。私は泣き叫んで許しを乞いたい。この前の放課後、私は誰もいなくなった教室で、裸になって爪先たちしてしまった。このままでは私は頭がおかしくなってしまう。誰か私を助けて。

姉は黙ったまま男が読むのを呆然と一心に佇立して聞いていた。
「どうだ。本当だっただろう」
ソファーの男は日記を読み終えると姉に見せつけるように得意げにノートを宙にヒラつかせてからカバンにしまった。
「これがある限りもう、愛子はおしまいだぜ。これは一生、とっておくからな。それに、もうコピーもしてあるぜ。筆跡から愛子が書いたことも分かる。それにクラス委員長の日記として内容も誰が聞いても納得するぜ」
姉は立ったままである。
「と、とにかく愛子を返して下さい」
「駄目だな。愛子は自分のマゾの快感を満足するために俺たちを人間のクズ呼ばわりしたんだ。自分の性欲の満足のために人をクズ呼ばわりしていいのか」
「ご、ごめんなさい。その事は私からも心から謝ります」
姉は男たちに深く頭を下げた。
「駄目だな。ゴメンですむなら世の中、警察要らないぜ」
男達はしばしタバコを吹かしながら困惑する姉を見ていたが、おもむろに口を開いた。
「許してやってもいいけど条件があるぜ」
「な、何です。条件って」
「お前が妹の代わりになるんだ」
姉はしばし躊躇していたが、キッパリと言った。
「わ、わかりました」
男達はニヤリと笑った。
「やめて。お姉ちゃん。私はいいの。お姉ちゃん。そんな事しないで」
「いいの。愛ちゃん。気にしないで」
男達は姉を愛子の近くに連れて行った。
「ほら。早く脱げ」
男達が野次をとばす。
「待って」
「なんだ」
「まず妹の縄を解いて服を返してやって下さい。妹が服を着て、自由になるのを確認するまでは、あなたたちの言う事は聞きません」
「いいだろう。じゃ愛子の縄を解いて服を返してやる。そのかわり、愛子が服を着たらお前が脱げよ」
男はそう言うと、一人が取っ手の所へ行って縄を緩めた。爪先立ちが降りてきて。愛子の手首は胸の所まで来た。男は手首の縛めを解いた。愛子のセーラー服やパンティーを拾い集めてきて愛子に投げつけた。
「ほらよ。返してやるぜ。着な」
愛子はパンティーをくぐらせ、もう片方もくぐらせ、パンティーを腰まで引き上げた。ブラジャーを着けた。そしてセーラー服の上下も着た。男達の視線が姉に向かった。
「ほら。愛子にはちゃんと服を着せたぞ。今度はお前の番だ。早く脱げ」
しばし三人は後ろ手に縛られて立たされている京子をインピな視線で舌なめずりしながら眺めていたが。一人が立ち上がって、京子に近づいてきた。
「ま、待って」
京子が大きな声を出したので、近づいてきた男は立ち止った。
「愛子を家に帰してやって下さい」
京子はキッパリした口調で言った。ソファーの男は舌なめずりして言った。
「ふふ。いいだろう。あんたも妹に恥ずかしい所は見られたくないだろうからな」
男は愛子に顔を向けた。愛子はうつむき加減にしょんぼりしている。
「おい。愛子。もうお前は家に帰りな」
男が憔悴した表情の愛子に言った。だが愛子は首を横に振った。愛子は涙に潤んだ瞳を姉に向けた。
「お姉ちゃん。ごめんなさい。私のせいでお姉ちゃんにこんな目にあわせてしまって。ここにいる人達は恐ろしい人達です。私がいなくなって、お姉ちゃんがどんな目にあうかを思うととても帰れません」
姉は柔和な瞳を妹に向けた。
「いいのよ。愛ちゃん。姉が妹をかばうのは当たり前の事よ。私は大丈夫だから愛ちゃんは安心して家に帰って。愛ちゃんがここにいると、この人達が愛ちゃんに手を出しそうで心配なの」
姉は優しい口調で妹をなだめた。
「ほら。ああ言ってるじゃないか。姉さんもお前がいると恥ずかしいんだよ。少しは気を利かせな」
男は愛子の腕をムズと掴んだ。そして背中を押して戸のほうへ連れて行った。男は床にあった愛子のスポーツバッグを拾って愛子に持たせた。男はドアを開けて、
「ほら。帰んな」
と、愛子の背中を押した。男は愛子の背をドンと力強く押すと勢いよくドアを閉め、ドアノブをロックした。愛子を追い出してドアをロックすると男はソファーに戻ってきて、ドッカと座った。男三人のインピな視線に晒されて京子は視線のやり場に困っている。いきなり暴力的に襲いかかる事はせず、めいっぱい、じらす事によって京子を精神的に追いつめようとしているのだ。京子は耐えられなくなり声を震わせて言った。
「さ、さあ。か、覚悟は出来ています。ど、どうとでも好きにして下さい」
男達は怯える京子を楽しむように眺めた。

   ☆   ☆   ☆

晩秋の夜中のある廃屋の光景である。
女が後ろ手に縛られ、床に仰向けに寝かされていた。片足が縄で縛られ、その片足は高々と天井に吊られていた。そのため身動きできない。男達は女をとりまいて。ニヤニヤ笑いながら、それぞれ自分の好きなように女を弄んでいる。一人は女の恥毛にガムテープを貼っては、勢いよくはがし。それを繰り返している。一人は女の首筋や脇腹や乳首を筆で刷いている。一人は女の体に蝋燭を垂らしている。
「ああー。ひいー」
女は苦しげな表情で眉を寄せ、激しく身をくねらせて、叫び続けていた。珠のような脂汗が全身に滲み出ていた。
その時、廃屋の戸がトントンとたたかれた。男が立ち上がって、ドアのノブを解いた。愛子だった。男達三人はいっせいに振り向いた。女も振り向いた。女の顔は真っ青になった。
「あ、愛ちゃん」
女は、驚いて叫び声を上げた。愛子は黙ってトコトコと近づいてきた。
「だ、駄目。愛ちゃん。こんな所を見ちゃ。駄目」
だが愛子は黙っている。男達は一瞬、あっけにとられて愛子を見たが、すぐにニヤリと笑って今まで通り京子のいたぶりを始めた。
「あ、愛ちゃん。ど、どうして来たの」
その時、京子は蝋燭をポタリと落とされて、「うっ」と呻いた。
愛子は目に涙をためて訴えた。
「お姉ちゃん。私がお姉ちゃんをほっておける?」
「ふふ。うるわしい姉妹愛じゃねえか」
そう言って男は新しくガムテープを京子の恥毛に貼り付けて、勢いよくベリッと剥がした。京子は、「うっ」と呻いた。
「と、とにかく帰って。私の事は心配しないで。この人達にいたぶられるより、愛ちゃんにこんな姿を見られる方がずっと恥ずかしくてつらいの。私は大丈夫だから。お願い。帰って」
男がタコ糸で京子の乳首を縛ってキュッと引っ張った。
「うっ」
と京子が呻き声を洩らした。男の一人がニヤリと笑って愛子に言った。
「おい。愛子。お前が姉さんとレズショーをする気があるのなら、京子を責めるのはやめてやるよ。どうだ」
愛子は素直にコクリと肯いた。
「だ、だめ。愛子ちゃん。そんな事しちゃ。姉さん。こんな責め、何ともないんだから」
蝋燭を垂らしていた男は京子の恥部に蝋燭を垂らした。
「ああー」
京子は苦しそうに眉を寄せた。
「おい。愛子。どうすんだよ」
男の一人が言った。
「や、やめて。お姉ちゃんをいじめるのは」
愛子は叫んだ。
「じゃあ、レズショーをするというんだな」
愛子はコクリと肯いた。
「よし。じゃあ、俺達は手を出さないよ。見るだけにしてやるよ。そのかわり、ちゃんと本気でやるんだぞ。本気さが見られなかったら、姉さんを、いじめるからな」
愛子はコクリと肯いた。
男たちはニヤリと笑って、京子の片足を吊っている縄を解いた。そして、京子を立たせ、両手首を縛り、縄尻を梁にひっかけてグイグイ引き、京子を吊るした。
「よし。愛子。じゃあ、裸になりな」
愛子は服を脱ぎだした。セーラー服を脱ぎ、スカートを脱ぎ、パンティーも脱いで丸裸になった。
「よし。じゃあ、姉さんの後ろに回りな」
愛子は京子の後ろに回った。
「じゃあ、後ろから、姉さんに抱きついて、姉さんの胸を揉みな」
愛子は後ろから手を前に回して、京子の乳房に手をあてがって、ゆっくり揉み出した。
「ああっ。だめっ。愛ちゃん。そんな事しちゃ」
「お姉ちゃん。お姉ちゃんが、この人達に、いたぶられるのは耐えられないの。それくらいなら、私がやります」
「だめよ。愛ちゃん。お願い。やめて。そんな事したら、もう私達まともな関係じゃなくなっちゃうわ。私、この人達にいたぶられる事なんて、何でもないの。わかって」
だが、愛子は、ゆっくりと京子の乳房を揉んでいる。男達はニヤニヤ笑って眺めている。
「よし。乳首をつまんで、コリコリさせな」
黒男が言った。愛子は言われたように乳首をつまんでコリコリさせた。
「ああっ」
京子は喘ぎ声を上げた。
「お願い。愛ちゃん。やめて。姉さん。おかしくなっちゃう」
だが、愛子は、愛撫をつづける。
「よし。愛子。屈んで、姉さんの尻を舐めな」
言われて愛子は屈んで京子のムッチリした尻をペロペロ舐めた。
「ああっ。お願い。愛ちゃん。やめて」
だが姉の哀願を無視して愛子は京子の尻を舐めつづけた。
しばし男達は一心に姉の尻を舐めつづける妹を笑いながら眺めていた。
「よし。愛子。姉さんの太腿をしっかり抱きしめて、尻に頬ずりしな」
愛子は、言われたように、京子の太腿をしっかり、抱きしめて、頬を京子の尻にピタリとつけた。愛子は目を瞑って、じっとしている。それは、いやいやながらではない本当の抱擁のように見えた。
「ふふ。いいぜ。いい感じがでてるぜ」
男の一人が揶揄した。
「よし。愛子。床にタコ糸があるだろう。それをひろいな」
言われて愛子は床にあるタコ糸をひろった。
「よし。それを姉さんの股の間に通して、こするんだ」
愛子は言われたようにタコ糸を京子の股の間に通した。タコ糸は京子の女の割れ目にしっかり食い込んだ。愛子は京子の顔を見上げた。京子も愛子を見た。
「よし。うんと力を込めて素速くタコ糸を前後に動かしな」
「ごめんね。お姉ちゃん。許して」
そう言って愛子は京子の股にしっかり挟まっているタコ糸をゆっくり前後に動かしだした。
「あっ。あっ」
京子はピッチリ閉じた太腿を激しくくねらせながら叫んだ。
「もっと力を入れて速くこすれ」
男の一人が言った。
「俺たちがやる代わりに、お前にやらせてやってるんだぞ。本気でやらないと俺達が代わるぞ」
男の一人が怒鳴りつけた。愛子は顔を上げて、涙の滲んだ目を姉に向けた。
「ごめんね。お姉ちゃん。許して」
愛子は涙声で言って、タコ糸の両端をギュッと握りしめ、力を込めて素早く前後にこすった。タコ糸は前も後ろも割れ目にしっかり食い込み、ピッチリ閉じ合わさって、あたかも自らしっかり挟みつけているかのようである。腿をピッチリ閉じ合わせているため、一層、タコ糸を挟んでしまった形になっている。タコ糸は女の体に深く埋まって見えない。ピッチリ閉じ合わさった割れ目の上の方から出て、ピンと強く張ったまま、愛子の手へと向かっている。
「おい。もっと速くこすれ」
男に言われて、愛子は、力を込めて、小刻みに素早くタコ糸を前後にしごいた。それは、手加減の無い本気の責めだった。自分がやらなければ、野卑な男達にとって代わられるのだ。それよりは、自分の手で、と、愛子は心を鬼にするしかなかった。
「あっ。あっ」
京子は、女の敏感な所をこすられて、眉を寄せ、脂汗を滲ませて、腰までとどく艶のある美しい黒髪を振り乱し、体を右へ左へとくねらせた。
「ふふ。どうだ。姉さんをいじめる気持ちは」
「結構、楽しいだろう」
「姉さんの悶える姿を見れる機会なんて、まず無いからな。とっくり見ておけ」
男達は、満足げに見ながら、そんな野次をとばした。愛子は目に涙を滲ませながら、一心にしごきつづけた。
丸裸で吊るされた姉の股間を妹が扱いているという異様な図を男達は満足げな顔つきで眺めていた。
しばしたった。
「よし。もう、いいだろう」
三人は目を合わせて同意しあった。
愛子は姉を責めていたタコ糸を抜いた。
「よし。愛子。立って、姉さんに正面から抱きつきな」
言われて愛子は、立ち上がって、吊るされている裸の姉に抱きついた。裸で吊るされている姉を妹が両手を背中に回して、ピッタリ体をくっつけている姉妹の図を男達は満足げに眺めた。
しばしたった。
「よし。愛子。もういいだろう。今度は乳首の擦りっこだ。お前の乳首を姉さんの乳首につけるんだ。姉さんから離れな」
言われて愛子は、抱きついていた体を少し離した。ピッタリくっついていた二人の体が離れた。といっても、裸の二人の体は触れ合わんばかりの間近の位置である。愛子の乳首の先には、ちょうど、京子の乳首の先がある。
「さあ。はじめな」
愛子は、体を京子に近づけて、乳首の先を姉の乳首に触れ合わせた。
「ああー」
乳首が触れた途端、京子が切ない喘ぎ声を洩らした。
「よし。愛子。乳首を触れ合わせたまま、ゆっくり動かすんだ」
言われて愛子は乳首をつけたまま、ゆっくり胸を動かした。
触れ合った二つの乳首は、もどかしげにじゃれあっている。
京子の乳首はだんだん、硬く尖りだした。
「ふふ。愛子。お前の愛撫が上手いから、姉さんが興奮してきたぞ。もっと気持ちよくしてやれ」
男の一人が揶揄した。
愛子は黙ったまま、一心に乳首を動かしつづけた。
京子の乳首はビンビンに硬く、そそり立っている。
「あ、愛ちゃん。やめて。お願い。姉さん、おかしくなっちゃう」
京子は真っ赤になった顔をそむけて言った。だが、愛子は黙ったまま、一心に乳首を擦りつけている。
「はは。二人、仲良く、並べて吊るして、硬くなった乳首にタコ糸を結びつけて、引っ張ったら、面白いだろうな」
男の一人が揶揄した。
しばし、男達は愛子の一心の愛撫を余裕の表情で眺めていた。
「よし。もう、いいだろう。今度は姉さんの全身をくすぐるんだ。手加減するなよ。少しでも手加減したら俺達が代わるからな」
男の一人が強い口調で言った。
言われて愛子は触れ合わせていた乳首を離した。
愛子は、どうしたらいいか、わからないといった顔つきで困惑している。
「よし。まず、腋の下をくすぐれ」
言われて愛子は、両手を吊るされてパックリ開いている京子の脇の窪みに両手をつけた。
「ごめんね。お姉ちゃん」
愛子は目に涙を滲ませて、そう言って京子の腋の窪みをくすぐりだした。
京子の両手首は頭の上でピンと一直線に吊るされているため、脇の下はパックリ開ききって逃げようがない。
「あっ。あっ」
京子は、顔をのけぞらせ、顔を左右に激しく振った。何とか逃げようと、体を左右に振るが、どうしようもない。
「あ、愛ちゃん。やめて。お願い」
京子は縛められた手をギュッと握ったり、開いたりして叫んだ。
が、愛子は一心に京子の脇の下を擽りつづける。
男の一人がニヤリと笑った。
「おい。愛子。こっちへ来い」
言われて愛子は、擽っていた京子の脇の下から手を離し、男の所へ行った。
京子は、擽り責めから、一時、開放されて、疲れきった様子でぐったり、項垂れている。
「おい。愛子。これを全部、姉さん飲ませるんだ」
そう言って男は愛子に一リットルのペットボトルのオレンジジュースを愛子に渡した。愛子は辛そうな顔でそれを手にして姉の所へもどった。愛子は、ぐったり項垂れている姉の前でためらっている。
「それを姉さんの口につっ込むんだ」
男に怒鳴られて、愛子は、姉の顔を上げさせた。
「ごめんね。お姉ちゃん」
愛子は、泣きながら、顎をつかんで口を開けさせペットボトルを京子の口に入れた。
「お姉ちゃん。許して。我慢して飲んで。ここにいる人達にさからったら、もっとひどい目にあうわ」
愛子はペットボトルを姉の口に入れて、しっかり顎を固定した。
オレンジジュースがじょろじょろと、姉の口の中に入っていった。愛子は何としても飲まそうと力づくでペットボトルを姉に咥えさせている。京子も愛子の説得を受け入れたのか、逆らう様子は見えない。京子の咽喉はゴクゴク動いた。それは、あたかもペキンダックのようだった。
ペットボトルのジュースはどんどん減っていく。そして、ついに空になった。
「よし。愛子。もう離していいぜ」
男に言われて愛子は姉の口からペットボトルを抜いた。
「ほれ。愛子。姉さんの全身を思いきりくすぐりな。手加減したら、俺達が三人でやるからな」
言われて愛子は姉の顔を哀しそうにじっと見た。そして、そっと姉の脇腹に手をつけた。
「お姉ちゃん。ごめんね」
愛子は、半泣きで、京子の脇腹をくすぐりだした。
「ああー。愛ちゃん。やめて」
京子は眉を寄せ、苦しげな表情で、顔を左右に振って訴えた。
髪が振り乱れ、全身が激しくモジついている。
男達は、
「ほら。今度は首筋をくすぐりな」
とか、
「脇の窪みをくすぐりな」
とか、命令する。
愛子は、男達の命令通りに京子をくすぐった。
「ああー。愛ちゃん。やめて。お願い」
京子はさかんに足踏みしだした。
だが、愛子は、容赦なく、くすぐりつづける。
「許して。お姉ちゃん。お姉ちゃんが、この人達に、寄ってたかって、いたぶられるなんてこと私、耐えられないの。許して」
そう言って愛子は、京子の脇腹をくすぐりつづけた。
「ああー。愛ちゃん。もうだめ。お願い。見ないで」
京子は足踏みを止め、がっくりと首を落とした。
じょろじょろと、堰を切ったように放尿がはじまった。小水は、ピッチリ閉じた京子の太腿を伝わって、京子の足から、床に流れつづけ、京子の足元には小水の水溜りができた。京子は、諦めきったように、がっくりと首を落としている。
「おい。愛子。姉さんの脚が濡れて可愛そうじゃないか。舐めてやりな」
男の一人が言った。愛子は、屈み込んで、悲しそうな目を姉に向け、口唇を小水で濡れている京子の太腿に近づけた。そして、舌を出して京子の濡れている太腿を舐めだした。
「あっ。駄目っ。愛ちゃん。そんな事しちゃ」
だが、愛子は一心に舐めつづけた。京子はピッチリ腿を閉じて阻止しようとした。
「ほら。愛子。濡れてる所は隈なくきれいに舐めろよ」
言われて愛子は京子の足から太腿の付け根まで、ほとんど脚を全部、舐めた。
「ほら。愛子。まだ、のこってるだろ。姉さんのお毛々が、濡れてるじゃないか。ちゃんと舐めろ」
愛子は、つぶらな瞳を京子に向けた。そして、そっと京子のYの部分に顔を近づけた。
京子は真っ青になって、体をゆすった。
「だ、駄目。愛ちゃん。そんなことしちゃ」
だが愛子は京子の制止を無視して、舌を出して京子の濡れた恥毛を舐めだした。
「ごめんね。お姉ちゃん。許して」
愛子は、そう言って一心に京子の濡れた恥毛を舐めた。
男達はニヤニヤ笑っている。
「おい。愛子。お毛々だけじゃなく、濡れたまんこもしっかり舐めろ」
男に言われて愛子は、舌を出して京子の閉じ合わさった女の割れ目を舐めだした。
「ああっ。駄目っ。愛ちゃん。そんな事しちゃ」
京子は激しく腰を揺すったが、愛子は舌で、京子の割れ目を一心に舐めた。
何としても姉を男達の手にかけてなるものか、と必死になっているかのごとく。
自分が本気でやって、男達を興奮させれば、男達は満足して見物して、姉には手を出さないのだ。
「おい。愛子。割れ目を上から舐めるだけじゃなくて、舌を割れ目に入れてきれいにしろ」
男に言われて愛子は、割れ目に舌を差し入れて、一心に舐めた。
「ああっ。駄目っ。愛ちゃん」
京子は髪を振り乱して顔を左右に激しく振って訴えた。
だが、愛子は姉の腰を両手でしっかり掴んでいるため、京子は逃れられない。
男達は、愛子の狂態を満足げに眺めている。
「ふふ。どうだ。姉さんの味は」
男の一人が揶揄した。男達は三人とも満足げな表情である。
「よし。もう、いいだろう」
男の一人が言った。男は愛子の手首を縛り、愛子を京子と背中合わせにくっつけた。
そして、離れられないよう、愛子と京子の片足の足首を縛り、胴も、二人が、離れられないよう、縄で縛った。そして愛子の縄尻を梁にかけ、京子と同じように吊るした。
愛子と京子はピッタリと背中合わせに縛られている。いやでも尻が触れ合っている。
「ふふふ。今度は尻をこすりあいな」
男はそう言うと、ソファーにもどった。
男たちは、しばし、みじめに連縛されて、項垂れている姉妹を、満足げに眺めた。
しばしの時間がたった。

「ふふ。十分楽しませてもらったぜ。俺達は、もう帰るからな」
三人は目配せして立ち上がった。
「おい。こいつらどうする」
途方にくれておどおどしている姉妹を男達は咥えタバコで口元を歪めて眺めていたが、一人が、何か思いついたらしく他の二人を呼び寄せ、二人に耳打ちした。耳打ちされた二人はニヤリと笑って、怯えている姉妹を見た。三人は裸で体をくっつけあっている姉妹の所に行った。
男は登山用品のカラビナに縄をつけて、それを梁に取り付けた。
「な、何をするの」
その声は恐怖で震えていた。
男の一人が床に落ちていた縄を拾った。
「ほれ。足を伸ばしたまま高く上げな」
そう言って男は姉の太腿をピシャンと叩いた。
言われて姉は右足をおずおずと上げた。
男は姉の足首をグイと掴むと、二巻き、三巻き、しっかりと姉の足首を縄で縛った。そして、その縄尻をカラビナに通した。男は縄尻をグイと引っ張った。
「ああっ」
男が縄を引っ張るにつれ、姉のピンと一直線に伸びた足が、どんどん引き上げられていった。それは、ちょうど上段蹴りの姿であった。
男が縄を引っ張るにつれ、姉の足が吊り上げられ、あたかも操人形である。
男はしばし縄を上げたり、下げたりして操人形の悪戯をして楽しんでいたが、ちょうど足先を顔の位置まで引き上げてグッと止めた。
「ふふ。このまま足をあげてろよ」
姉はスラリと伸びた脚を高々と上げながら、男の呪縛にかかったかのようにプルプル脚を震わせて、じっとしている。
「ふふ。つらいだろう」
「だが、これだけでおわりだと思ったら大間違いだぜ」
男は思わせ振りな口調で言った。
「な、何をするの」
何をされるか分からない恐怖に耐えかねたように、姉が声を震わせて聞いた。
が、男はニヤリと笑ったまま黙っている。男は縄尻をグッと掴んだまま、後ろ向きになっている妹の首に巻いて、縄がスムーズに動くくらいの小さな輪にして、カッチリと硬結びにした。しばり首である。姉が足をおろせば、妹の首は絞まってしまう。
「ふふふ。かわいい妹を死なせたくないだろう。なら、どんなにつらくても耐えられるだろう」
男はふてぶてしい口調で言った。
「や、やめてー」
姉は半狂乱になって叫んだ。
「お、お願いがあります」
姉は片足を上げたみじめな姿のまま、真剣な取り引きを申し出るような口調で言った。
「なんだよ」
「ぎゃ、逆にして下さい。あなた達は、私を嬲り抜きたいのでしょう。それは覚悟してます。どんな責めでも受けます。私をしばり首にして下さい」
「いいの。お姉ちゃん。私が悪いの。そんな事しないで」
間髪入れず妹が泣きじゃくりながら言った。
男はニヤリと笑った。
「ほれ。ああ言ってるじゃねえか」
男は姉の顎をグイと掴んで上げた。
姉はキッと男を睨みつけた。
「あなた達、妹を責める代わりに私を責める、という約束だったじゃないですか。約束は守って下さい」
姉は、強い口調で訴えた。
男は、しばし思案げに姉妹を見ていたが、ニヤリと笑い、掴んでいた姉の顎を放し、乳房をピンと弾いた。
「そうだな。約束は約束だな。じゃあ、お前の望み通り逆にしてやるよ」
男はそう言い捨てて、身を投げ足すようにドッカとソファーに腰を下ろした。
「おい。赤男。妹を京子と同じようにするんだ」
「おう。合点だ」
妹の前に立っていた男は、男に言われて床にある縄を取って、愛子の腿をピシャンと叩いた。
「おい。愛子。アンヨを上げな」
愛子はガックリと項垂れたまま、片足を伸ばしたまま上げた。男は楽しげに愛子の足首を縄でカッチリと二巻き、三巻き、した。そして、また、カラビナに縄をつけて、それを梁に取り付けた。そして、姉と同じように縄尻をカラビナに通した。
男は縄をグイと引いて、愛子の足先を顔の高さまで上げさせた。
男は縄尻をグッと掴んだまま、後ろ向きになっている妹の首に、縄がスムーズに動くくらいの小さな輪にして巻いた。
これで、「足吊り相互首絞め責め」が出来た。
しばし男達は、出来上がった、裸で手と片足を吊られている、みじめな姉妹の姿を満足至極という表情で眺めていた。これは、なかなか嗜好の凝った責めである。男達は、女を責めるのに、蹴ったり、叩いたりせず、何もせず、ただ、じっくり鑑賞していればいいのである。相手の首を絞めないためには、誰に命令されるともなく、自分の意志で足を上げつづけなくてはならないのである。どんなに疲れてきても。
男達は黙って、じっくり、裸で自分の意志で、足を上げている背中合わせのみじめな姉妹の姿を眺めていた。
「さ、さあ。約束です。あ、愛子の膝の縄はほどいて下さい」
京子は何かを感づいたらしく、その声は恐怖に震えていた。
「よし。わかった」
男は膝をパンと叩いて立ち上がり、愛子の傍らに行った。そして、おもむろに愛子の足首の縄を解こうとした。その時。
「やめて。解かないで」
愛子は叫んで体を揺すり激しい抵抗をした。
男はニヤリと、したりげな顔つきで笑った。
「・・・ど、どうして。愛ちゃん」
京子の声は蚊の鳴くほど小さく、震えていた。
「お姉ちゃん。わかるでしょ。お姉ちゃんだけ足を上げつづける責めを受けているのに、私だけ足をおろして楽になれっていうの。私のせいでこんな事になっちゃったのに。私もお姉ちゃんと同じ責めを受けます」
「愛ちゃん。冷静になって。愛ちゃんの足が疲れたら愛ちゃんは私の首を絞めることになるのよ。愛ちゃんは私を殺したいの」
「私も耐えます。もし、お姉ちゃんを殺すようなことになったら、私も死にます」
「愛ちゃん。よく考えて。これはエゴとか、そういう問題じゃないわ。二つの危険から、一つの危険がなくなるだけなのよ」
「私、お姉ちゃんに殺されるのなら幸せです。お姉ちゃんは不可抗力だから、罪はありません。これは、こんなことになってしまった私の罰です。私は罰を受けねばなりません」
「愛ちゃん。私、まだ死にたくないわ」
京子は愛子をなだめるように、切実な口調で言った。
だが愛子は聞こうとしない。
「耐えてみせます。これは、私が耐えなきゃならない罰なんです」
「でも姉さん。こわいわ。愛ちゃんは運動が苦手で足の力だってそんなに強くないでしょ」
「愛ちゃん。私は大丈夫よ。姉さん。シェイプアップのために毎日アスレチックジムで5km走ってるのよ。足の力は強いのよ」
「私も、受験勉強の体力をつけるために、毎日ジョギングしてます」
京子がどんなに説得しても愛子は聞こうとしなかった。ついに、根負けして京子は愛子の説得をあきらめて、ガックリ項垂れた。
「ふふ。京子。愛子がああまで言ってるんだ。二人で仲良く耐えな」
京子はガックリ項垂れている。
「おい。京子。愛子の縄を解いてやってもいいぜ」
「ほ、本当ですか」
「ああ。本当さ」
と言って、男は愛子の縄を解いた。京子は、信じられない、といった顔つきである。
「おい。京子。礼くらい言ったらどうだ」
「あ、ありがとうございます。感謝します」
京子はペコペコ頭を下げた。
「ふふ。京子。だが、世の中、タダって物はないぜ」
「愛子の責めをやめてやった分、お前の責めが増えるんだ」
男は、思わせぶりな口調で言った。そして、小屋の隅にあったコンクリートブロックを持ってくると、京子の前でドッカと座り、ブロックに縄をくくりつけた。男は京子を見て、ニヤリと笑った。京子は不安げな表情である。
「な、何をするの」
「ふふふ。何をすると思う」
「わ、わかりません」
「ふふ。こうするのさ」
と言って、男は縄でくくりつけられているコンクリートブロックを持ち上げると、一直線に伸びている京子の足首に、結びつけた。
「ああー。な、何てことをー」
三人は、「それじゃあな」と言って、廃屋の戸口に向かった。
「ふふ。ここは周囲一キロ民家は無いから叫んでも誰も助けに来てくれないぜ。だが、ここは××中学の生徒の通り道だ。明日の朝、うんと大きな声を出して助けてもらいな」
そう言って三人は廃屋を出ていった。

  ☆   ☆   ☆

かなりの時間がたった。ギーと戸が開いて男達三人が戻ってきた。男達を見るや、京子は、泣き出しそうな顔を男達に向けた。
「か、堪忍して。お願い」
京子は全身、汗だくである。もう足を上げつづける我慢が限界になったのだろう。吊り上げられた足がブルブル震えている。
男達はソファーにドッカと座るとポケットから、煙草を取り出して、ニヤリと笑いながら余裕を見せつけるように一服した。
「お、お願い。か、堪忍して」
京子は全身、汗だくで珠の汗をかきながら、痙攣したように全身をブルブル震わせている。
「お、お願いです。も、もう耐えられません。外して下さい」
「ふふ。京子。お前達がどうなっているか、心配だから来てやったんだぞ。何かいうことはないのか」
「あ、ありがとうございます」
その言葉には、本当の感謝の心が込められていた。
「どうだ。ブロックを外してほしいか」
「は、はい。お願いです」
「よーし。外してやってもいい。妹の縄も解いてやってもいい。しかし、条件がある」
「な、何ですか。その条件とは」
京子は食いつくように聞いた。
「今後、俺達の言う事には、絶対服従する俺達の忠実な奴隷になるんだ」
「な、なります。なりますから、早く外して下さい」
「本当だろうな」
男は、すごんだ口調で言った。
「ほ、本当です」
京子の足先は蒼白になっている。
「よし。じゃあ、外してやる」
そう言って男は立ち上がって、京子の所へ行き、足首にぶらさがっているコンクリートブロックを外した。
「あ、有難うございます。感謝します」
男は京子の足首の縄も解き、妹の足首につながっている首の縄も解いた。
これで、京子も愛子も足を降ろすことができた。
「あ、ありがとうございます。感謝いたします」
京子は目を潤ませて頭をペコペコ下げた。
男はニヤリと笑って、京子の背中の手首のも解き、梁から降りている吊り縄も解いた。
これで、京子は完全な自由の身になった。
愛子は足首の縄を解かれ、後ろ手に縛められて、吊るされているだけである。

男は京子の縄を解くと、ソファーに戻ってドッカと座った。
「おい。京子。お前は犬だ。四つん這いになって、ここへ来て、俺の靴を舐めろ」
「はい」
京子は、すぐに四つん這いになり、ソファーに座っている男の所へ行き、犬のように、ペロペロと男の靴を舌を出して舐めた。その姿は本当に、心を込めて感謝している様だった。
男は満足至極という感じで、一心に靴を舐めている京子を眺めていたが、
「ちょっとまて」
と言って、膝組みを解いた。
男は、靴を脱ぎ、靴下も脱いだ。そしてまた膝組みして、素足を京子の鼻先につきつけた。
「今度は、足を舐めろ」
そう言って、男は京子の鼻を足指で摘んだ。
「はい」
京子は、そう言って突きつけられた男の足指を、舐めだした。
男は、ふふふ、と笑って、一心に足指を舐めている京子を、男はしばし、ゆとりで眺めていた。
「よし。今度はこの上に載れ」
そう言って男は、事務机を指差した。それは、かなり大きなオフィス用の事務机である。
京子は、言われたまま、事務机の上に載った。裸の体を事務机に載せて、三人の男に見られるという屈辱に、京子は海老のように体を縮め、不動のままじっと耐えた。
「や、やめて。お姉ちゃんをいじめないで」
立ち縛りにされている愛子か京子を見ながら泣きながら叫んだ。
京子は、咄嗟に愛子の方を見た。愛子は、泣き崩れた顔で京子をじっと見ている。
「あ、愛ちゃん。私を見ちゃだめ」
京子は、愛子に向かって、きつい口調で叫んだ。
だが、愛子は、京子をじっと見ている。
「あ、あの。お願いがあるんです」
京子が弱々しい目を男達に向けた。
「何だ。奴隷の分際で」
男が高圧的な口調で言った。
「あ、愛子に目隠しして下さい」
京子は顔を赤くして小声で言った。
三人は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「ふふ。いいだろう」
男の一人が裸で吊るされている愛子の所へ行った。愛子は、恐怖に脅えた表情である。
「ふふ。姉さんの頼みだ。目隠ししてやるぜ」
「や、やめて」
愛子は、叫んだが男は無視して、就眠用のアイマスクで、愛子に目隠しした。
そして、再び、ソファーに戻って、ドッカと座った。
「ふふ。これでもう、かわいい妹に恥ずかしい姿を見られる心配はなくなったぜ。遠慮せず、うんとセクシーなポーズをとりな」
男がそう言うと、三人は声を合わせて哄笑した。
男達はニヤニヤ笑いながら、机の上の裸の京子を眺めた。
「ほら。お前は犬なんだぞ。四つん這いになれ」
そう言って男は京子の尻をピシャリと叩いた。
男達の奴隷になる、と、約束した以上、京子は命令に逆らえない。
京子は机の上で四つん這いの姿勢になった。乳房が下垂して、豊満な尻も、丸見えになり極めて恥ずかしい格好である。
「ほれ。尻の穴まで、しっかり見えるよう、もっと膝を広げろ」
男はそう言って京子の尻をピシャンと叩いた。
京子は、言われたように、膝を広げた。羞恥と屈辱のため太腿がブルブル震えている。
尻の割れ目が開き、すぼまった尻の穴が丸見えになった。
「ふふ。尻の穴が丸見えだぜ」
屈辱の言葉に、京子の尻の震えは、いっそう激しくなった。
男は京子から離れてソファーに、ドッカと座った。
三人の男が、机の上で丸裸で四つん這いになっている京子をニヤニヤ眺めている。
「おい。京子。今の気持ちはどうだ。正直に言え」
男の一人が言った。
「み、みじめです。恥ずかしいです。く、口惜しいです。死にたいほど」
三人は、ははは、と、口をそろえて笑った。

しばし、三人は机の上の丸裸の京子を満悦至極という様子で見ていた。
一人の男が、他の二人に何かを耳打ちした。耳打ちされた二人はニヤリと笑った。
「おい。京子。見られてるだけでは物足りないだろう。かわいがってやるぜ」
三人はスックと立ち上がると、机の所へ行き、京子を三方から取り囲んだ。
三人は、京子の体を舐るように触りまくった。
「ああー」
京子は苦しげに眉を寄せ、体をブルブル震わせて苦しげな喘ぎ声をあげた。
男達の触手は、だんだん、京子の急所に集中していった。
男の一人は京子の下垂した乳房を執拗に揉んだ。
一人は京子の尻の前に立ち、すぼまった尻の穴や、京子の女の部分を指先で撫で触った。
そして、一人は、京子の顔の前に立ち、京子の鼻を触ったり、口唇を触ったりと、京子の顔を顔を思うさま玩んだ。
三人は京子を暴力的に嬲るというより、京子に快感の刺激を与えて、京子に感じさせようとしているのだ。
尻の前の男も、すぼまった尻の穴や割れ目をスッとなぞったり、女の穴に指を入れて、女を愛撫するように、指をゆっくりと動かしだした。京子の息が、だんだん荒くなっていった。
「ああー」
京子は、眉を寄せて苦しげな顔で、苦しげな喘ぎ声を出した。
京子の女の部分が、クチャクチャ音をたて始めた。そして、白濁した液が激しく出始めた。
男達も我慢の限界に達したのだろう、京子を愛撫しながら、ズボンの上から激しく怒張した所をしごき出した。
「ああー。もう我慢できん」
男が叫ぶように言って、ズボンとパンツを降ろし、机の上に載って、京子の膝を開き、勃起したマラを挿入した。男は、激しく腰を揺すった。だんだん揺する速度が速くなっていった。ついに男は、うっ、と顔をしかめ、腰の動きを止めた。
「ああー。出るー」
男は、そう叫んで、尻の穴をキュッとすぼめた。
男は顔をしかめて、尻をブルブル震わせて射精した。今や、ドクドクと京子の体内に、男の精液が注ぎ込まれたのである。
男は、失念したように、ガックリと京子の体に、もたれかかった。
しばしして、男はマラを抜いて、机から、降りた。
そしてパンツとズボンを履いた。
見ていた二人の男も我慢が限界に達していて、勃起したマラをしごきながら、息を荒くしていた。
「今度はオレの番だ」
男が机から降りると、次の男が、もう待ちきれないとばかりに、ズボンとパンツを脱ぎ、机に乗って、京子の穴に隆々と勃起したマラを挿入した。そして、激しく往復運動させた。射精の予感が起こった時、男は眉を寄せ、唇を噛んで目を閉じた。男はブルブルと全身を痙攣させた。
男は激しい一突きをして、腰の動きを止めた。
「ああー。いくー」
男は野獣のような咆哮をあげた。二番目の男の精液が京子の体内に注ぎ込まれた。
男はペニスを引き抜くと、しばし、京子の柔らかい体を抱きしめて、目を閉じて快感の余韻に浸っていた。
だが、もう一人残っている。男は、京子から離れ、机から降りた。そして、パンツとズボンを履いた。
横を向いて目を閉じている京子。艶のある長髪が美しく乱れている。
マラをしごいていた最後の男も、待ちきれないとばかりに、パンツとズボンを脱ぎ、机の上に載って、京子の女の穴に怒張したそれを差し入れた。
男も往復運動を始め、出そうで、出ない苦しい快感から開放される手ごたえがきて、顔をしかめて、体を硬直させた。
「ああー。出るー」
男は叫んだ後、グッタリと項垂れて、京子の体に自分の体を載せた。
しばし、余韻に浸った後、机から降りて、パンツとズボンを履いた。
これで、男三人の精液が京子の体内に注ぎ込まれた。

男達はソファーに戻ってしばし快感の余韻に浸っていた。
しばしして男達は、顔を見合わせて、机の上の京子に言った。
「おい。京子。愛子は俺達をクズだと言ったんだ。だから、お前達は嬲るだけで犯さないように決めていたんだ。クズなら、平気で女を犯すだろう。だが、俺達はお前を犯してしまった。俺達の負けだ。やっぱり俺達はクズだったんだ。負けたからには、もうお前達を嬲ることは出来ない。もうお前達は自由だ。それじゃあな」
そう言って男達は廃屋から去っていった。

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妻を貸す話(小説)

2015-08-23 00:17:57 | 小説
妻を貸す話

八月の半ばを過ぎた頃の事である。
今年の夏は猛暑のため、男は朝早くから目が覚めさせられた。
時計をみると7時だった。
「行こうかな。どうしようかな」
まだ、眠たい目を擦りながら男は蒲団の中で考えた。
男は、週間天気予報に電話して、今週の天気を聞いた。
今日は晴れで、降水確率も0%だが、明日からは雨になるという事だった。
「よし。行こう」
男は立ち上がって、用意をして家を出て車にのった。
行き先は、大磯ロングビーチだった。
彼は、今年の夏、もう4回も大磯ロングビーチに行っていた。
男は湘南に住んでいて車で一時間もかからず、そう遠くないからである。
近くにも、50メートルの市営プールはある。こっちは400円で、一方、大磯ロングビーチは、駐車代2000円で、入場料5500円である。なぜ近くに50メートルのプールがあるのに、わざわざ、大磯ロングビーチへ行くかというと、もちろん泳ぐためであるが、一番の目的は、他にあった。それは、大磯ロングビーチには、ビキニ姿の女性が沢山、いるからである。近くの市営プールではビキニ姿の女がいないからである。彼はビキニ姿の女を見たくて、高い金を払って、大磯ロングビーチへ行くのである。
彼にとってビキニ姿の女は、この世で最高の美だった。
彼はもうすでに今年の夏、江ノ島の海にも5回行った。
だが、海より、大磯ロングビーチの方が、じっくりと女を見れるのである。
だから彼は大磯ロングビーチに行くのである。
だが、彼は大磯ロングビーチに行く事に、少しためらいを感じるのである。
なぜかというと、男一人でビーチに行く客は、いないからである。
アツアツのカップルか、幼い子供を連れた夫婦か、女同士の友達か、ともかく仲のいい人を連れている。それは、まあ当然である。あそこはレジャーランドであり、わざわざ遠くから来るのは、夏の一日を仲のいい人と楽しむためである。
一人で来るのは彼くらいである。
そのため、男一人というのは、本当に彼一人である。
そのため、彼は、出来るだけ目立たないように行動した。
しかし、やはり4回も男一人だけでくると、プールの監視員やら、従業員に顔を覚えられてしまいやすい。
もう今年は、海でもロングビーチでも十分、ビキニ姿の女を見たから、もう、いいとしようかとも思ったが、もう八月もおわりになると思うと、夏に対する未練が残ってしまいそうで、彼は出かけた。
彼は、小説を書いていたが、いいネタが思い浮かばず、書きあぐねていた。
「家に閉じこもっているより、何でもいいから行動した方が、何かネタが思いつくかもしれない」
彼にはそんな気持ちもあった。
そう思って彼は車を飛ばした。
ビーチにつくと、もう客がいっぱいだった。
彼は、ロッカーに荷物をあずけてビーチに出た。
ビーチではセクシーなビキニ姿の女がいるわいるわ。
彼女らとすれ間近に違う時、彼はこの上ない幸せを感じた。
夏は女も心が開放的になる。
ビキニは下着と同じようなものである。
下着姿で街を歩ける女などいない。
羞恥心から、とてもそんな事できやしない。
しかし、みんなでやればこわくない、の心理から女達は超セクシーなビキニ姿で、堂々と歩いているのである。尻が半分近くも見える。その上、プールに入れば、ビキニが濡れて体にピッタリと張り付き、もう美しい女の体の輪郭が、丸見えである。その姿は裸同然である。
彼は女とすれ違う時、しっかり脳裏に焼きつけて、今夜のおかずにしようと、尻や胸やYの部分などを、じっくりと見た。だが、これは、緊張をともなった。じっくり見たいが、女に気づかれては気まずいので、さりげなく見なくてはならない。二律背反である。
そこで彼は、色々と考えを凝らして、どうしたら、女に気づかれずに、女の体を見れるか考えを凝らした。
ダイビングプールの前でダイビングする人を眺めている女の後ろに立って、ダイビングの見物客を装って、女の後ろに立てば、女のビキニの尻と太腿をじっくり見ることが出来る。
食べ物屋に並んでいる女は横からの姿を見やすい。
ともかく、さりげなく後ろへ回り込むことだ。
そこらへんは、彼は武術家で、孫子の兵法まで読んでいて、戦術には、けっこう強かった。
アツアツの仲の男女が、女の腰に手をかけている男と女のカップルを見ると、彼は、美しい図だなー、と感じるとともに激しい羨望を感じた。
自分にも、あんな事が出来る彼女がいたら、どんなに幸せだろう、と彼は思った。
だが、彼はあながち、それが不満の形にはならなかった。
彼は、男女の仲を書いた恋愛小説をいくつも書いていて、そのことに誇りを持っていた。
「俺は小説家だ。小説家は、世界の観照者だ。現実に手を触れないから、創作できるんだ。君らは現実を享受している。現実を享受している人間には、美しい芸術はつくれないのだ」
それは、偉大な目的のための禁欲主義者の誇りのようでもあり、単なる負け惜しみのようでもあった。
ある一人の美しい女が座ってダイビングを見物していた。ので彼は彼女に気づかれないように、彼女の後ろにある程度の距離をとって、後ろから、じっと彼女の美しいビキニ姿を見惚れていた。
しばしして彼は、後ろからポンと肩を叩かれた。
彼はびっくりして振り返った。
一人の男が笑いながら焼きソバを二包み持っている。
「ふふ。僕の女房って、そんなに魅力的?」
彼は、真っ青になった。
「も、申し訳ありませんでした。とんだ失礼を致しました」
彼は深く頭を下げた。一発、殴られてもしかたがない、と覚悟した。
男の笑顔と発言を憤りと解釈したからである。
「いいんだよ。僕の女房が、他の男にそんなに見つめられるほど、魅力があるのかな、と思うと、とても嬉しいんだよ」
彼は、ほっとして胸を撫で下ろした。
「あ、は、はい。そ、そうです」
彼はヘドモドした口調で言った。
「はは。それは光栄だな」
その時、二人の話し声に気づいて、女が振り返った。
「ねえー。あなたー。どうしたのー」
女が夫に叫ぶように呼びかけた。
「この人がね、君をじーと見てたんだ。それで理由を聞いたら、君があまりにも魅力的だからって言うんだ」
夫は大きな声で言った。
彼は真っ赤になって俯いた。
「まあ・・・」
女も顔を赤くしながら、俯いている男をそっと見た。
夫はカチカチになって立っている男の手を掴んで、女の所へ連れて行った。
「さあ。久美子。立ちなさい」
夫に言われて女は立ち上がった。
スラリとした脚。抜群のプロポーションだった。
「さあ、久美子。この人と遊んできなさい」
そう言ってから夫は男に顔を向けた。
「君。僕の愚妻の久美子を貸すよ。好きなだけ遊んできなさい。何をしてもいいよ。たいした女じゃないから。レンタル料はタダ」
夫は、ははは、と笑った。
「まあ。あなた。失礼ね。私は物じゃありません」
女は脹れっ面で言い返した。
「で、では僕はこれで」
男が去ろうとすると、女は、
「まって」
と言って男の手をつかんできた。
繊細で華奢な指から女のぬくもりが伝わってきた。
「あ、あの。よろしかったら少しお話しません。私は別にかまいませんのよ」
夫にからかわれたことが、女にそんな事を言わせる気持ちをつくってしまったのだろう。
男は女に手をつかまれて、立ち止まって困惑した顔で夫を見た。
「あ、あの。ど、どうして、そんな事させてくれるんですか」
男は疑問にみちた表情で夫に聞いた。
夫は、ドッカとビーチシートに座った。
「結婚生活も二年になると、飽きが起こってきてね。君が妻と仲良くしてる姿を見れば、嫉妬心が起こって、少しはいい刺激になるんじゃないかと思うんだよ」
男は、なるほど、と納得した。
「私だって、あなたになんか飽き飽きしてますよ」
女は、イー、と子供のように舌を出した。
「さあ。行きましょ。あんな人ほっときましょ」


そう言って彼女は、男の手を牽いて歩き出した。
彼は女という存在に弱いので、彼女に牽かれてヨロヨロと歩き出した。
彼女のあたたかい手のぬくもりに、彼は頭がボーとして、ここがどこで、自分が何者なのか、がわからなくなっていた。
「あの。お名前は?」
「岡田純です。あなたは?」
「私は佐藤久美子と申します」
こうやって自己紹介が交わされた。
テラスの前に来ると、彼女はテーブルの前で足を止めた。
「座って。何か買ってくるわ」
そう言って彼女は、パタパタと小走りに食べ物売り場に走って行った。
半分近く見えるセクシーな尻が揺れて、彼は頭がボーとしてきた。
彼女はすぐに、たこ焼きを二包み、とオレンジジュースを二つ、買ってもどってきた。
彼女は、それをテーブルの上に置いた。
「たこ焼きにしちゃったけど、よかったかしら」
「は、はい。あ、ありがとうごさいます。ぼ、僕が世界で一番好きな食べ物は、たこ焼きなんです。あ、ありがとうございます」
彼は真っ赤になって、どもりどもり言った。
彼女はクスッと笑った。
彼は、あわてて、たこ焼きを爪楊枝で刺して口の中に放り込んだ。
「うわー。おいしー。こんなおいしい、たこ焼き、生まれて初めて食べました。ありがとうございます」
彼は、たこ焼きをモグモグほおばりながら、いかにも美味そうな顔をした。
だが、本当は彼は、たこ焼きが大嫌いだったのである。
彼は、食べ物に好き嫌いはなく大抵の食べ物は、何でも食べるが、たこだけは、どうしても食べられなかったのである。しかし、たこ焼きが嫌いなため、たこ焼きを初めて食べた、という発言は、あながち間違っていない。また、たこ焼きは彼にとって本当に美味しく感じてきたのである。
「私、たこ焼き大好きなの。子供っぽいかしら」
彼女は笑いながら爪楊枝で、たこ焼きを刺して、口の中に入れた。
「い、いえ。そんなことないです。たこ焼きは、昔から貴族階級の食べ物と言われていて、楊貴妃もクレオパトラもマリーアントワネットも、好んで食べていた、という事を聞いたことがあります」
彼はそんな事を力説した。
「ふーん。そうなの。そんなこと初めて聞いたわ。薀蓄があるのね」
彼女はふふふ、と笑いながら、たこ焼きを食べた。
食べおわると、彼女は、立ち上がった。
彼女は、キョロキョロ辺りを見回した。
「純さん。ロビーの前の芝生の所へ行きませんか。食後の一休み」
「は、はい」
彼女が、包みと缶に手を伸ばそうとすると、彼はあわてて、ブルース・リーのフィンガージャブ以上の電光石火の速さで、包みをとり、空き缶二つをとると、急いで、食べ物屋の前のゴミ箱に捨てて、また、駆け足で戻ってきた。
「ありがとうごさいます。純さんて、やさしいんですね」
彼女は笑顔で言った。
「い、いえ。僕はゴミを捨てるのが趣味なんです」
「へー。そうなんですか。きれい好きなんですね」
「ま、まあ、そうかもしれませんね」
と男は言ったが、男の部屋は、どう贔屓目にみても、きれいと言えるものではなかった。
彼女は純の手を握りながらロビーの方へ歩いていった。
純は彼女と並んで歩きながら、つくづく思った。
「ああ。幸せだ。最高に幸せだ。こうやって、きれいなビキニ姿の女の人と歩くのが俺の夢だったんだ。まさに夢のようだ」
純はこれはもしかすると夢なのではないかと思って、自分の頬を抓ってみた。
痛かったので、これは現実であると確信することにした。
ロビーの前の芝生についた。
沢山の客がここにビーチシートを敷いて、荷物を置いていた。
彼女はその一画にビーチシートを敷いた。
そして、シートの上に座った。
「さあ。純さんも座って」
言われて純は彼女の横に腰をおろした。
二人、ビーチシートの上に水着で並んで座っている図は、まさに男女のカップルの図だった。
「私、少し、体焼きたいの。いいかしら」
「ええ。どうぞ」
彼女はビーチシートの上にうつ伏せになった。
華奢な背中とビキニに包まれた大きな尻とスラリと伸びた脚が横たわっている。
純は興奮してドキンとした。彼女は無防備に目をつぶっている。純はゴクリと唾を呑んで美しい女の体の脚線美をしげしげと眺めた。
「純さん」
「は、はい。何ですか」
「背中にオイルぬってくださらない」
「は、はい」
純は久美子の華奢な背中にオイルをたらし、ぬった。
久美子は気持ちよさそうに純に体を任せて目をつぶっている。
純の手は興奮と緊張のためブルブル震えていた。
純が背中にオイルをぬりおわった頃、久美子は目をつぶって、うつむいたまま言った。
「純さん」
「は、はい」
「下もお願いします」
純はドキンとした。
「は、はい」
純は手を震わせながら久美子の脹脛にオイルをぬった。
ぬりおわった頃、久美子はまた、うつむいたまま言った。
「純さん」
「は、はい」
「あの。太腿とお尻もお願いします」
「は、はい」
純は久美子の太腿にオイルを垂らし、太腿にオイルをぬった。
柔らかい太腿が蒟蒻のように揺れて、純の頭は興奮と酩酊で混乱していた。
ぬる度に、太腿の上のセクシーなビキニにつつまれた尻が蒟蒻のように揺れる。ビキニからは尻が半分、露出している。
純がどのあたりまで塗るか迷っていると、久美子が、もどかしそうに言った。
「純さん。中途半端じゃなく、くまなく塗って下さい」
「は、はい」
純はドキリとした。隈なく、ということは、肌の出ている所は全部という事だ。純はもう、混乱した頭で無我夢中で久美子の太腿にオイルを塗った。オイルを塗る度に柔らかい太腿が揺れた。純の男の部分は、激しく勃起した。
太腿を塗りおえて純は、半分近く露出している尻にも無我夢中でオイルを塗った。
柔らかく弾力のある大きな尻が揺れて、純の興奮は絶頂に達した。
「ああっ」
純はついに射精した。
「どうしたの。純さん」
純の悲鳴に驚いて久美子が聞いた。
「い、いえ。な、何でもないです」
「そう」
久美子は気持ちよさそうな顔つきで目をつぶっている。
純はオイルを塗りおえて久美子の体から手を離した。
「ありがとう。純さん」
久美子はごく淡白な口調で言った。
「い、いえ」
久美子は、しばしうつむいたまま、背中を妬いた。
「純さん。今度は仰向けになるわ」
そう言って久美子はクルリと体を反転させ仰向けになった。目はつぶったままである。久美子の体はわずかなビキニで包まれただけで、裸同然である。女のYの部分はビキニがピッタリ貼り付いて、ビキニの弾力のため形よく整い、悩ましいふくらみが出来ている。その布一枚下には女の絶対、見せてはならないものがある。それを思うと純は狂おしい苦悩、そう、太宰治以上の苦悩に悩まされた。胸はあたかも柔らかい果実を包んだかのようであった。純は女の体の美しい稜線をこんなに間近に見たのは生まれて初めてだった。
久美子は気持ちよさそうに太陽に身を任せている。
空には雲一つなく、青空の中で激しく照りつける真夏の太陽は久美子の体をみるみる焼いた。
純は久美子が目をつぶっているのをいい事に、久美子の体を網膜にしっかり焼きつけるように眺めた。
純は時の経つのも忘れていた。
どの位の時間が経ったことだろう。
久美子がムクッと起き上がった。
「あー。気持ちよかった」
久美子は眠りから覚めたようにムクッと起き上がって大きく伸びをした。

「久美子さん。少しプールに入りませんか」
純が言った。
「ええ」
彼女は直ぐに答えた。
彼女はスクッと立ち上がった。
純も立ち上がった。
彼女は流れるプールの所に行き、プールの縁に腰掛けた。
彼女は足をプールの中に入れて水を揺らした。
純も彼女の隣に腰掛けて足をプールの中に入れた。
彼女はそっとプールに入った。
純もプールに入った。
彼女は純の手をとって、少し水の中を歩いた。
「気持ちいいわね。純さん。泳がなくても。水の中を歩いていると」
「そうですね」
「もう出ましょう」
しばしプールの中を歩いていた後、久美子が言った。
「はい」
純は答えた。
久美子はプールから上がった。
水に濡れてビキニが久美子の体にピタリと貼りついた。
純はそれを見て、うっ、と声を洩らした。

「純さん。ロビーに行きましょう。記念に私達の写真をプリクラで撮っておきましょう」
久美子はニコッと笑って言った。
「はい」
純は笑顔で答えた。
二人は階段を登ってロビーに入った。

ロビーにはゲームコーナーにプリクラがあった。
1995年に出てきたプリクラだか、これは一時の流行に過ぎなかった。二年程度でプリクラブームは去った。しかし2002年ごろから再び、復活した。それは機能や画質の向上による。××社のプリクラは、写した高画質の画像をボタン一つで自分のパソコンに送れるほどである。その××社のプリクラがあった。

久美子は純の手を引いてプリクラ機の中に入っていった。
プリクラは帳で覆われているため、外からは見えない。
かろうじて足が見えるだけである。
なので、一旦、プリクラ機に入ったら中で何をしていても、外からはわからない。
「ふふ。純さん。何をしてもいいわよ」
そう言って久美子は純の目の前に立った。
純は吃驚して真っ赤になった。
純が体を震わせながら久美子から顔をそらしていると、久美子は純の手をとって自分の胸にピッタリと純の手を当てた。
純の手はワナワナ震えている。
「気持ちいい?」
純は顔を真っ赤にして黙って答えない。
「そうよね。私、ペチャパイだもの。気持ちよくなんかないわよね」
そう言って久美子はさびしそうに胸から純の手を離そうとした。
「い、いえ。最高に気持ちいいです。ペチャパイなんかじゃありません。大きくて張りがあって、最高の胸です」
純はあせって言った。
「本当?じゃあ、揉んで。口だけでは大阪の城も東京タワーも立つわ」
そう言って久美子は純の手をビキニの上から胸に当てた。
純は真っ赤になりながら、ゆっくりと久美子の豊満な乳房を揉み出した。
はじめは気が動転していたが、揉んでいるうちにだんだん、とろけるような甘美な気分になってきた。
「ああっ。いいわっ。気持ちいい」
久美子は口を半開きにして言った。
純は興奮しながら久美子の胸を揉んだ。
久美子はそっと手を伸ばして純のトランクスの上から純の男の部分を触った。
純の男のものはとっくに激しく勃起していた。
純は驚いて、あっ、と声を出した。
「ふふ。純さん。こんなに大きくなっちゃって。やっぱり本当に気持ちがいいのね。嬉しいわ」
そう言って久美子はトランクスの上から純の男のものをゆっくりさすり出した。
「ああっ。く、久美子さん・・・」
純は声を出した。
純の男のものは、どんどん大きくなっていった。
「いいわっ。あの人なんて、私が触っても全く反応しないし、『お前の胸なんてもう厭きたよ』なんて言うのよ」
「ひどい事を言う人ですね。こんな素敵な魅力的な人に」
純はそう言って、久美子の豊満な胸を揉んだ。
もう純にためらう気持ちは無くなっていた。
しばし、純は久美子の胸を触り、久美子は純のトランクスをさすっていた。
「純さん。ちょっと待って」
そう言って久美子は純の手をどけて、クルリと体の向きを変え、純に背中を向けた。
「さあ、純さん。今度は後ろから私を触って。何をしてもいいわよ」
もう純にためらいの気持ちは無かった。
純は後ろから久美子の胸を揉んだり、ビキニの上から久美子の大きな尻を触ったり、前の女の肉を触ったりした。その度、久美子は、
「ああん」
と、喘ぎ声を出した。
「純さん。ちょっと待って」
久美子が後ろから触っている純に声をかけた。
純は言われた通り、久美子の体から手を離した。
久美子は金を入れてプリクラのスイッチを押した。
美しいビキニ姿の久美子と、その後ろにいる純の姿が写し出された。
「さあ。純さん。触って。うんとエッチに。その写真を見れば、あの人も嫉妬して、きっと私を見直すようになるわ」
純は、小さな声で、
「はい」
と答えた。
純は後ろから片手を久美子の胸に当て、片手を久美子の女の部分に当てた。
「ああっ。いいわっ」
久美子は切ない喘ぎ声を出した。
そして、口を半開きにして、眉を寄せ切ない表情をとった。
そして撮影ボタンを押した。
「純さん」
「はい」
「ビキニの中に手を入れて」
「は、はい・・・」
純はそっと下のビキニの中に手を入れた。
柔らかい女の肉に直接ふれて純は酩酊した。
「胸もお願い」
久美子に言われて純は胸のビキニの中にも手を入れた。
柔らかい久美子の乳房を直接さわって、純はメロメロだった。
ビキニ姿の女性を後ろから、ビキニの中に手を入れてまさぐっている姿である。
これほど、いやらしい姿があるだろうか。
「ああっ。純さん。なにか、痴漢に襲われているような気分だわ」
そう言って久美子は、切ない表情をつくり撮影ボタンを押した。
その他、純と久美子がピッタリと抱き合っている姿など、様々なポーズの写真を撮った。
そして、撮った写真を自宅のパソコンに送った。
「ふふ。これを見れば、あの人も嫉妬するわ。純さん。ありがとう」
「い、いえ」
純は真っ赤になって小声で答えた。

その後、二人はロビーを出てウォータースライダーをした。
女性とウォータースライダーをすることは純の夢だった。ここのウォータースライダーは二人用だった。アツアツの男女のペアという組み合わせが圧倒的に多かった。純が前で久美子が後ろになった。滑り出すと久美子は、
「きゃー。こわいー」
と言って後ろから純にしがみついた。
久美子に激しくしがみつかれて、純は頭がポワーンとしていた。
ウォータースライダーのゴムボートを返して再び、二人はプールを散策しだした。
久美子はプールの案内図を見つけて立ち止まった。
「シンクロプールってあるけど、どんなプールなのかしら」
「ああ。あれは、水深が深くて25mのプールですよ。人が少ないですから、ゆったり出来ますよ」
「面白そうね。行ってみましょう」

彼女は純の手をとってシンクロプールに行った。
そしてプールの縁に立った。
「深そうね」
久美子はプールを覗き込んで言った。
「私、海やプールは好きだけど、全然、泳げないの。純さんは泳げる?」
「ええ。泳げます」
純は自信に満ちた口調で言った。
純は、いきまんまんとプールを眺めた。
と、その時。純は背中をドンと強く押された。
「ああっ」
純はあわててバランスを保とうと踏ん張ったが、ダメだった。
ドボーン。
純はプールに落ちた。
水中から首を出して、振り返ると、久美子がクスクス笑っている。
「やりましたね。久美子さん」
純は脹れっ面で言った。
「だって純さんは泳げるんでしょ」
そう言って彼女は笑った。
純はプールから上がるとクスクス笑いながら逃げようとしている久美子の手をを急ぎ足でつかまえた。
「あっ。純さん。何をするの」
純は嫌がる久美子の手を力強く引っ張って久美子をプールの縁まで連れて行った。
「嫌っ。嫌っ。やめて。純さん。私、泳げないの」
純は嫌がるビキニの久美子を抱き上げると物のようにプールの中に放り込んだ。
ドボーン。
プールに放り込まれた久美子はしばしして、すぐに水上に顔を出した。
手で水を丸く撫でながら立ち泳ぎで身を保っている。
どの位だかはわからないが、久美子は泳げるのだ。
「久美子さん。だましましたね。泳げるじゃないですか」
「浮き身と下手な平泳ぎが出来る程度です。この程度じゃ泳げるとは言えません」
彼女は笑いながらゆっくりとかいでいる。
「それだけ出来ればもう十分、泳げますよ」
久美子はニコッと笑って、首を出した平泳ぎでゆっくりと水深の浅い方へ泳ぎだした。
スピードは速くないが、その姿は美しかった。ほとんどの女は髪が濡れることを嫌がってプールに来てもほとんど泳がない。
久美子は水深の浅い所まで来た。
そこは水深1.3mで、もう立っても首が出た。
久美子はプールの底に足をつけて立った。肩から上が水中から出ている。
「純さーん。純さんもプールに入りなさいよ」
久美子は水中から笑顔で手を振った。
純は急いで小走りにビーチサイドを走り久美子の所へ行った。
そしてプールに入った。
純は水を掻き分けながら久美子の近くまで来た。
久美子は笑いながら純に水をかけた。
純も笑いながら久美子に水をかけ返した。
すると久美子はドボンと水中に潜った。
「あっ」
純は声を上げた。
久美子が水の中から純の背中にしがみついたからである。
久美子は水中から顔を出し、純の背後にピッタリくっついた。
「へへ。純さん、つかまえた」
そう言って久美子は純の背中にピッタリくっついた。
久美子の柔らかい胸のふくらみの感触に純はドキンとした。
久美子の体がピッタリくっついているので純は激しく興奮し、純の男の棒は勃起しだした。
久美子はソロソロと手を前に廻してトランクスの上から純の股間に手を当てた。
「ああっ。久美子さん。何をするんですか」
純はとっさに叫んだ。だが久美子は勃起したものをつかんで離さない。
「ふふ。純さんのエッチ」
「純さん。水中鬼ごっこしましょう。今度は純さんが鬼で、私が逃げるからつかまえてごらんなさい」
そう言って彼女は純から離れ、水を掻き分けながら逃げた。
ある程度の所で久美子は立ち止って振り返った。
「ほーら。純さん。ここまでおいでー」
久美子は童女のような笑顔で言った。
「言いましたね。久美子さん。じゃあ、つかまえますよ」
純はドボンと水中に潜って久美子に近づいた。
近くまで来ると、久美子の裸同然のきわどい体が見えてきた。
水による浮力のため体が重力から開放され、女の柔らかい体が水中で揺れている。
ビキニは水に濡れて体に貼りつき女の美しい体のラインが丸見えだった。
それはとてもエロティックだった。
純は、久美子の背後に廻ってガッシリと久美子の体をつかまえた。
そして水中から顔を出して立った。
「ふふ。久美子さん。つかまえた」
純は、さっき久美子がしたのと同じように久美子を背後からガッシリつかまえた。
「ああっ。純さんに捕まえられちゃった」
久美子は子供っぽい口調で笑いながら言った。
純は片手で久美子の腹をしっかり押さえながら久美子の柔らかい体を触った。
水の中なので人に気づかれにくい。
純は図にのって胸や尻を触ったりした。
「あん。純さん。やめて」
久美子は鼻にかかった声で言った。
純は図にのってビキニの上から久美子の女の部分を触った。
「あっ。純さん。お願い。そこだけはやめて」
といいつつも、久美子の訴えには本気さが感じられなかった。
それどころか、もっと悪戯されたいような感じだった。
「ふふ。久美子さん。もっと面白い事をしてあげますよ」
純は意味ありげに言って久美子のビキニの横紐を解いて久美子の体から奪いとってしまった。
久美子は、
「あっ」
と言って、抵抗しようとしたが、純の行動は素早かった。
純は久美子のビキニの上下を水中でとってしまった。
そして奪ったビキニを持ってプールから上がった。
そして久美子のビキニをプールサイドに置いた。
「久美子さん。ビキニをとりに来なさいよ」
純は笑いながら言った。
「じゅ、純さん。お願い。ビキニを返して」
久美子はプールの中で丸裸の体を胸と秘部を手で覆いなから言った。
「久美子さん。プールから出て履けばいいじゃないですか」
純は久美子の訴えなど何処吹く風と意地悪く言った。
プールの中なので体は水によって隠されて守られている。
周りに人はいない。だが、いつ来るかわからない。

ついに久美子は急いで水を掻き分けてプールから上がった。
プールから出て一糸纏わぬ久美子の全裸が丸見えになった。
久美子は胸と秘部を手で隠しながらプールサイドをビキニの置いてある所へと小走りに走った。その姿は極めてエロティックだった。
久美子はビキニをとると、急いでビキニの上下を身につけた。
横紐を結んで、胸の紐もしっかり結んだ。
これで久美子は元のセクシーなビキニ姿にもどった。
「純さん。ひどーい。私、死ぬほど恥ずかしかったわ」
と言って久美子は純の肩をピシャリと叩いた。
だが久美子は、怒っている感じはなく、むしろ悪戯されたことを喜んでいるような感じだった。
「ごめんなさい。久美子さん。じゃあ、もう悪質な悪戯はしませんから、もう一度、一緒にプールに入りませんか」
純は笑いながら言った。
「ええ。そうしましょう」
久美子も笑って答えた。
久美子はプールの浅い方の縁に座った。
そして足で水をパシャパシャ掻き混ぜた。
純も久美子の隣に座った。
「さあ。入りましょ」
そう言って久美子はドボンとプールに入った。
純はトランクスのポケットからスイミングキャップとゴーグルを取り出してつけた。
そしてプールに入った。
久美子は首を出したゆっくりした平泳ぎで泳いだ。
純は久美子の後ろから久美子と同じ速度の平泳ぎで久美子の後を追った。
水中に潜ると久美子のビキニの貼りついた体がはっきり見える。
それはとてもエロティックだった。
少し泳いで久美子はプールの底に足をつけて立った。
純もプールの底に足をつけて立った。
「久美子さん。すごくセクシーですよ」
「え、何がですか」
「水中から見るとすごくセクシーに見えるんです」
「いやだわ。恥ずかしいわ。あんまり見ないで」
「いいじゃないですか。もう裸もみられちゃったんですから」
ではじっくりと見させてもらいます、と言って純はまた水中に潜った。
久美子のセクシーなビキニ姿が水中で水に揺れている。
純はそれをじっくり見て、久美子の太腿や尻や胸を触った。
純が久美子の体を触る度に久美子は手で身を守ろうとした。
純は、そんな悪戯をしてから水の上に顔を出した。
「いやだわ。純さんのエッチ」
「男はみんなエッチですよ」
純は笑って言った。
ではもう一度、と言って純は水中に潜った。
純は水中から久美子のビキニの紐を解いた。
久美子はあわてて、解かれた紐を結びなおした。
そのあわてる仕草が面白くて純は水中から色々と久美子の体にいたずらした。
そして純は水中からブバッと顔を出した。
「はは。久美子さんのあわてよう、とても面白いですよ」
純は笑って言った。
「純さんの意地悪」
久美子はふくれっつらをして言った。
だが久美子は、怒っている感じはなく、むしろ悪戯されたことを喜んでいるような感じだった。

その後、純と久美子は本当の恋人のようにプールで遊びあった。
時のたつのも忘れ。
竜宮城はどこかといえば、まさにここは竜宮城だった。

一日、遊びつかれて久美子と純は椅子に腰掛けた。
「純さん」
久美子はあらたまった口調で言った。
「はい」
純は緊張して答えた。
「私、本当に純さんが好きになってしまったわ」
「ぼ、僕も久美子さんが好きです」
純は声を震わせて言った。
「私、純さんを愛してます」
久美子は純の目をじっと見つめた。
「僕も久美子さんを愛してます」
純も久美子の目を見つめた。

人々がチラホラとロビーにむかいだした。
時計を見ると、閉館の30分前だった。
夏は日が長いので、5時半でも、まだ夕方という感じがしなかった。
久美子と純は手をつないで夫の所にもどった。
「やあ。久美子。どうだった。今日は」
夫が笑いながら聞いた。
「あなた。今日一日、純さんと付き合って、よく話し合った上で決めました」
「何を決めたの」
「私、あなたと別れて純さんと結婚します」
夫は一瞬、驚いた表情をしたが、すぐに笑った。
「はは。久美子。お前も冗談がわるいな」
「冗談ではありません。さっき私達、愛を誓い合いました。家に帰って、さっきプリクラで写した写真を家のパソコンに送りましたから、それを見ればわかるはずです」
「本当なの。君」
夫は真顔で純の顔を見た。
「じょ、冗談ですよ」
純は照れながら言った。
久美子がすぐに純に振り向いた。
「純さん。ひどいわ。私達、愛を誓い合ったじゃないの。あれは、ウソだったの。あなたは、私を玩んだだけなの?」
純は照れながら、
「今日はどうもありがとうございました」
と一礼して、急いでその場を去った。
純は家に帰ると、今日の出来事を正直に小説として書きはじめた。

その後、久美子から、会ってほしいというメールが来た。
だが、純は礼儀正しくことわった。
そして、久美子からのメールを拒否する設定にした。
純は、あくまで自分は、二人に愛をとり戻させるための道具でなくてはならない、と自分を厳しく律っしたのである。
少しして純は久美子に、受信拒否を解除した旨を知らせたメールを送った。
すぐに久美子からメールが来た。
それには、こう書かれてあった。
「純さん。夫が私を本当に愛してくれるようになりました。純さんのおかげです。ころころ態度を変えて申し訳ありませんが、よく考えた上、私、夫についていきます。純さんには大変、お世話になりました。また、とても楽しかったでした。どうもありがとうございました」
純はそのメールを見て微笑んだ。
それ以来、久美子からはメールは来なくなった。


平成20年12月11日(木)擱筆

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SM父子(小説)

2015-08-20 19:01:31 | 小説
SM父子

 純に母親はいない。純が小学校一年の時、母親は交通事故で死んでしまったのである。それ以来、純は父と二人だけで暮らしてきた。母親がいなく、しかも父親は帰りが遅いため、純はいつも一人ぼっちだった。
そんな純にある日、朗報がもたらされた。
純の父が再婚する事になったのである。
純の父親は、チャランポランな性格で、女好きだったから、再婚は、当然といえば当然である。
ある日曜日の昼である。
純の父親が、いつものように、昼近く、のっそり起きてきた。昨夜、飲んできたのである。
純と食卓で、向かい合わせに座った。日曜日に、朝食は無く、昼近くに食べる食事が、朝食と昼食を兼ねていた。トーストとコーヒーとコンビーフの缶詰の味気ない食事である。
「おい。純。喜べ。一ヵ月後に結婚する事になったぞ。新しいお母さんが来るぞ。すごい美人だぞ」
美人、と聞いて、純はドキンとした。
純は答えず、黙って食べた。純の父親はチャランポランな性格で、純はほったらかしなので、純は父親と、ほとんど話しをしない。食事がおわると、父親はゴロンと横になって、テレビのスイッチを入れた。純は食器を流しに持っていって洗うと、部屋に戻って、机に向かい、勉強を始めた。それが純の日曜の生活だった。だが、教科書を開いても心臓がドキドキして、勉強は手につかなかった。
一ヵ月後に新しい母親が来るのである。しかも、美人。その女性の事を思うと、とても勉強など手につかなかった。
それ以来、純は父の再婚の女性が来る日が待ちどおしくなった。

一ヶ月過ぎた。新しい母親が来た。
純は自分の部屋で黙々と勉強していた。
「おーい。純。新しいお母さんが来たぞー」
階下から、父親が呼ぶ声がした。
ドキンと純の心臓が高鳴った
純は心臓をドキドキさせながら、一段、一段、そっと階段を降りていった。

階下では居間のソファーに父親と一人の女性が座っていた。
純を見つけると父親は豪放な口調で純に言った。
「おう。純。新しいお母さんだ。嬉しいだろう」
父親の隣に膝を揃えてつつましく、一人の女性が座っていた。
純はドキンと心臓が高鳴った。
「き、きれいだ」
純は思わず心の中で叫んだ。
長い腰までとどく艶のある黒髪。明眸皓歯のパッチリした瞳。それは、おそらく人類史上はじまって以来の一番の美人だろう。沈魚落雁閉月羞花、とは、まさにこういう女性を言うのだろう。
同時に純の男の部分は、硬く、熱くなって、せり上がり出した。
ブラウスを内側から激しく突き上げて、ブラウスに丸みをつくってしまっている大きな乳房。持ち上げるのが重たそうなほどの大きな尻。それにつづく、ムッチリした太腿。スラリと伸びた下肢。引き締まった足首。純は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

女性は純を見つけると、ニコッと笑って、立ち上がり、ペコリと礼儀正しくお辞儀した。
「はじめまして。京子といいます。これから私が純君のお母さんね。遠慮しないで何でも言ってね」
そう言って女性はペコリとお辞儀した。純は顔を真っ赤にして、コクリと頭を下げて逃げるようにパタパタと自室へ戻ってしまった。
京子は眉を寄せ疑問に満ちた顔つきになった。
「はは。あいつは人見知りが強くて恥ずかしがり家なんだ。まあ、あまり、焦らないで、あいつが心を開くのを気長に待ってやれ」
「はい。わかりました」
父親に言われて京子は微笑して肯いた。

部屋に戻った純の心臓はバクバクしていた。動悸は止まらなかった。これから、あの美しい女性と一緒に暮らすことになると思うと嬉しさが止まらなかった。

その日から再婚の京子が増えた三人の生活が始まった。
京子はまめまめしく働いた。今までは、掃除も、ほとんど無ければ、食事もコンビニ弁当だった。何より、女気の無い家というのは淋しいものだった。
それが、京子が来た事で、純の家は、俄かに活気づいて明るく、楽しくなった。
ちょうど、暗闇の部屋に電灯が燈されたようなものである。
京子は几帳面な性格で、まめまめしく家事をした。
食事はコンビニ弁当から、京子の手作り料理に替わった。
冷蔵庫は、生鮮食品で一杯になった。
毎日、戸を開け、日光を部屋に入れて、家を掃除するので、風通しがよくなり、部屋の空気がきれいになった。
衣服は、毎日、洗濯され、庭に乾されるため、着心地がよくなった。
生活にはりが出るようになった。
純が心密かに喜んだことは言うまでもない。
だが、父親のいない夕食の時、
「純くーん。お食事が出来ましたよ」
と呼ばれても、純は部屋から出て来れなかった。
それは純が人見知りが強い上に、京子があまりにも美しいため、純は京子を母ではなく、憧れの女性として見てしまっていたからである。
さらに京子の肉感的な体は純の性欲を激しく刺激した。純は、京子と二人きりで食卓につくと、顔が真っ赤になり、激しく勃起した。そのため、
「学校の勉強のため、後で食べます」
と言って、純は京子と二人きりで食事する事を避けた。

学校から帰って、京子に、
「おかえりなさい」
ニコッと笑って言われるだけで、純は赤面した。
純の父親は、荒削りな性格で、純は、ほったらかしで、純が京子に心を開かない事を叱ったりはしなかった。

夜、床に就いても、京子の肉感的な姿が浮かんできて、純はなかなか、寝つけなかった。

だが不思議な事が起こり出した。
夜中になると、父親の寝室から、女の悶え声が聞こえてくるようになったのである。
「ああん」
「ううん」
と、切なげな声である。
純は、その声が聞こえてくると、激しく興奮した。
父親の寝室で何が行われているのか、を、考えると、興奮してとても寝られなかった。
純はその声が聞こえてくると、抜き足、差し足で、父親の寝室へ行って、聞き耳を立てた。
何か、父親と京子が話し合っている。何を話しているのか、その内容までは聞き取れなかった。
声は毎晩、聞こえてくるようになった。
純の好奇心は、一層強まって、もう我慢が出来ないほどになってしまった。

父親と京子の声が聞こえてきた、ある夜中の事である。
純はベッドを抜け出して、父親の寝室に行った。そして、いつものように、聞き耳を立てた。よく聞き取れず、二人が何を話しているのか、わからないが、会話は仲むつまじい感じではなく、何か議論しあっているような感じである。結婚して、まだ、そう日にちが経っていないのに、もう夫婦喧嘩とは、おかしいな、と、純は思った。
純は激しい好奇心に堪えられなくなり、ついに、そっと部屋の襖を気づかれないよう、少し開いた。そして部屋の中を覗いた。
純は吃驚した。
夜中だというのに、電気がこうこうと灯っている。
京子が、部屋の中央で一糸纏わぬ丸裸で、両手を頭の上で縛られて、その縄が天井の梁にかけられて、吊るされている。縄はピンと緊張して、ゆとりが無く、そのため、京子は足首がピンと伸びた爪先立ちで、足先がプルプル震えている。

幸い、京子は就眠用のアイマスクで目隠しされているため、純に気づいていない。
父親は胡坐をかいて、吊るされている京子を見ているため、純には背中を向けた状態なので、襖の隙間から部屋の中を覗いている純に気づいていない。
純は緊張と興奮を抑えて、食い入るように見つめた。

京子の豊満な乳房の上の両乳首は絹糸が結び付けられていて、その先を父親が握っている。
父親はコップ酒を片手に、丸裸で、みじめに吊るされている京子を楽しむように眺めている。父親は絹糸をグイと引っ張った。
糸がピンと一直線に緊張し、乳房はたるみが無くなり、糸に引っ張られて、乳首を頂点とした円錐形になった。
「ああー」
京子は眉を寄せて叫び声を上げた。
父親はニヤニヤ笑いながら、苦痛に喘ぐ京子を楽しげに眺めている。
「あ、あなた。許して。お願い。こんなこと」
京子は体をプルプル震わせながら訴えた。
「ふふ。女は結婚したら、夫に体をまかせるものだ」
父親は、コップ酒を飲んで言った。
「そ、それは、その通りですけど、こんな事、私、とてもつらいんです」
京子は片方の太腿を曲げて、もう一方の太腿に寄り合わせて、何とか恥ずかしい所を隠そうとしている。
「ふふ。はじめは、つらいだろうが、そのうち、こうされる事が快感になってくる。俺がお前の体を、そういう風になるよう、改造してやる」
そう言って父親は、京子の乳首についている絹糸を交互に軽く引っ張った。
「で、出来ません。わ、私、こういうの、苦手なんです」
京子は爪先立ちの足をプルプル震わせて言った。
「だから、今は苦手でも、根気よくつづけていれば、お前の気持ちも変わってくるんだよ」
京子は、それには答えず、プルプルと全身を震わせている。
「あ、あなたに、こんな趣味があったなんて」
京子は、悔恨的な口調で独り言のように言った。
「ふふ。これから、お前は一生、みじめに責めつづけられるんだ」
「こ、こわいわ」
「俺はお前を嫌いだから、いじめているんじゃない。お前を愛しているから、いじめているんだ。俺はこういう仕方でしか、女を愛せないんだ。もし、どうしても嫌なら、離婚してもいいぜ」
父親は居丈高な口調で言った。
「わ、わかりました。で、でも、あんまり、こわい事はなさらないで下さいね」
京子は爪先立ちの足をガクガクと震わせながら言った。

純は、そっと襖を閉めて、抜き足、差し足で部屋へ戻った。
ベッドにもぐりこんだが、今見た光景が刺激的すぎて、その光景が何度も純の瞼の裏に現れてきて、とても眠れなかった。まず、丸裸で吊るされていた京子の姿が、何度も現れてきて、純は激しく勃起した。
そして、父親にSM趣味がある事が、純を激しく驚かせた。
実をいうと、純にもSM趣味があったのである。
純は子供の頃から、女が縛られている写真を見ると興奮して、勃起してしまうのである。
父親は、あけっぴろげな性格で、スケベな事はわかっていたが、SM趣味があるという事は、知らなかった。

それからも、深夜になると父の部屋から京子の悶え声が聞こえてきた。
寝室で、どんな事が行われているのか、知りたい欲求が、激しく純を興奮させた。
純は、いきりたって、激しく勃起している、おちんちんをしごいた。

純は、忍び足で、父親の寝室へ行くようになった。
しかし襖を開ける勇気は持てなかった。
この前は、運よく、京子が目隠しされていた上に、父親は純に背を向けて座っていたので、気づかれずにすんだ。しかし、こんどもまた、そうとは限らない。

しかし、ある夜の事。その日は土曜たった。
とうとう純は好奇心がおさえられなくなり、父親の部屋に行って、音をたてないよう、そっと襖を開いた。

純はゴクリと唾を飲んだ。
部屋は前と同じように、電気が灯されていた。
京子は、丸裸にされて、手首を縄で縛られて天井の梁に吊られていた。目隠しはされていなかった。だが、京子は後ろ向きに立たされていた。父親が笑いながら、京子の量感のある尻を棒で突いていた。
京子は後ろ向きのため、純は気づかれていない。純はほっとして、襖の隙間から食い入るように京子の体を見つめた。
京子の艶のある美しい長い黒髪は、荒々しく縄で縛られていて、その縄尻を父親が握っている。
父親は京子の量感のある尻を棒で突いた。
「ふふ。素晴らしい尻だな。どうだ。後ろ向きに責められるのも、なかなかいいもんだろう」
そう言って父親は京子の尻の割れ目に棒の先をグイと入れた。棒の先が尻の割れ目にめり込んだ。
「ああっ」
京子は悲鳴を上げた。
父親はニヤニヤ笑いながら、棒を京子の股の間に通して、女の敏感な所を棒の先でこすった。
「ああっ。やめてっ」
京子は悲鳴を上げて、尻をピッチリ閉じようとした。そのため尻が棒をしっかり挟んでしまった。
「ふふ。股をこするのは、やめてやるよ。そのかわり、尻の穴が見えるよう足を大きく開いて、尻を突き出せ」
命令されて京子は、言われた通り、足を開いた。爪先立ちの足指がプルプル震えている。
「ふふふ。いい格好だぜ。そら。尻の穴が見えるよう、もっと尻を突き出せ」
そう言って父親は、京子の髪を縛っている縄をグイと引っ張った。
「ああっ」
京子の髪がグイと引っ張られ、京子の顔はのけぞった。
言われたように京子は尻を後ろに突き出した。
足を大きく開いている上に、尻を後ろに強く突き出したため、閉じ合わさっていた京子の尻の割れ目が開き、すぼまった尻の穴が現れた。
「ははは。すぼまった尻の穴が丸見えだぞ」
父親は笑って京子を揶揄した。
「おい。京子。どうだ。今の気持ちは」
「は、恥ずかしいです。み、みじめです」
「ふふふ。この写真を撮って、ネットの画像投稿掲示板に投稿してやるぜ」
「や、やめてー」
「心配するな。後ろ向きだから、顔はわからない」
そう言って、父親はデジカメを京子に向けて、かまえた。
カシャ。
シャッターがきられ、丸裸のみじめな京子の後ろ姿が撮影された。
「ふふ。いい出来だぜ」
父親は、撮った写真をしばし、満足げな表情で、眺めていた。
「ふふ。そのままの格好でいろよ」
そう言って父親は立ち上がった。そして姿見の鏡を持ってきて京子の前に立てた。
「な、何をするの」
父親は答えず、京子の顎をグイと掴んで、顔を鏡に向けさせた。
「そら。みじめな自分の姿をしっかり見るんだ」
父親に言われて、京子は辛そうに鏡に顔を向けた。
「ああっ」
京子は鏡を見るや否や、大きな叫び声を上げた。
「どうした」
父親は京子の美しい黒髪をグイと引いて聞いた。
「あ、あの。襖が開いてます。誰かが私達を見ています」
父親は咄嗟に後ろを振り返った。
父親はわずかに開かれた襖から、部屋の中を覗いている目を見つけた。
純は、しまった、と思った。
純はすぐに顔を襖から離した。
だが、もう遅い。
覗いていた事がわかってしまったのである。
父親は、ちょっと立ち止ったが、すぐに、落ち着いた口調で、ふふふ、と笑って、京子の豊満な乳房を揉みはじめた。
「ふふふ。いいじゃないか。覗かれたって。お前の姿が魅力的だから、見ているんだろう」
そう言って、父親は、京子の後ろに廻ると、無防備な京子の脇の窪みをくすぐり出した。
「ああー」
京子は悶え声を上げた。

純は、すぐに襖をそっと閉め、部屋にもどった。
純は見てはいけないものを見てしまったのである。父親が、叱らなかったのは、恥ずかしかったからだろう。その証拠に純が父親の寝室を去った後には、もう声は聞こえてこなくなった。恥ずかしくて、もう、京子に合わす顔がない。明日、父親にカンカンに叱られると思うと、純は、こわくて寝つけなかった。

翌日は日曜だった。
父親の要望から、日曜は、父親は朝食を食べず、寝ていて、昼近くに、京子がつくる昼御飯を、のっそり起きてきて食べた。京子は、当然、日曜の朝食もつくった。しかし、父親は寝てて、純と京子が二人だけで食べていた。
しかし、今日は、純は朝食に降りてこられなかった。京子に合わす顔がないからである。純は蒲団の中で縮こまってブルブル震えていた。
昼近くになった。階下から、昼食を呼ぶ声が聞こえた。
いつまでも顔を合わさないわけにはいかない。いつかは顔を合わさなくてはならないのである。純は叱られる事を覚悟して、恐る恐る階段を下りた。
京子と目が合った時、さすがに、京子は赤面して顔をそらした。
純も照れくさそうに赤面した。
食事のハヤシライスは、もう用意されていて、純は食卓に着いた。
京子は、寝室に行って、食事が出来た事を父親に告げた。
父親は、浴衣でのっそりと目をこすりながら、やってきて食卓に着いた。
京子は、ハヤシライスを配った。
純は父親に、いつ叱られるかわからない恐怖に怯えて椅子に座っていた。
だが、父親は何も言わず、叱る気配は全く感じられない。
それどころか、父親は純を見てニヤリと笑った。
純は肩すかしをくらったような気持ちになった。
父親はハヤシライスを食べおわって、純に話しかけた。
「おい。純。俺は来週、大阪に出張で数日、もどらないぞ。京子と仲良くやれ。三日前はお前の誕生日だったな。まだ、お前には誕生日のプレゼントをしてなかったな。お前に、いいプレゼントをやる」
そう言って、父親は部屋へもどっていった。

その夜は、しんと静まり返って、夫婦の声は聞こえてこなかった。

 その翌日の月曜である。学校が終わって純は家に帰った。だが家に入っても、京子がいない。買い物かな、と思って、純は部屋の戸を開けた。吃驚した。京子が丸裸にされて縛られて、畳の上にうつ伏せに転がされていたからである。京子は後ろ手に縛られ、膝を曲げて両足首を重ね合わされて縛られ、その縄が後ろ手に縛られた手首の縄に結びつけられていた。いわゆる駿河問いの縛りである。京子は猿轡をされていた。そのため声を出せない。京子は純を見ると顔を真っ赤にして、顔をそらした。
純は机の上に書き置きがあるのに、気がついた。
純は、急いで、それを見た。
それには、こう書かれてあった。
「京子をお前にプレゼントする。お前のオモチャとして、好きなように扱え。色々な責め道具も、置いておく。俺は今日、仕事で帰らない。お前も京子の事が気になって勉強が手につかないだろう。これを機会に京子に心を開け。父」
見ると部屋の隅にダンボールが置かれてあった。
純は、その中を見てみた。中には、縄、蝋燭、イチジク浣腸、洗濯バサミ、毛筆、割り箸、SM写真集、デジカメなどが、不気味に入っていた。
純は、丸裸で、鯱のように縛られている京子を見た。手首と足首が背後でカッチリと縛られ、それがつなぎあわされているため、身動きしようがない。
京子は、うつ伏せで顔をそらしているため、純の顔が見えない。
純は、どうしようかと、迷った。みじめな姿の京子の縄をすぐに解く、というのも、出来にくかった。京子に恥をかかせてしまうからだ。第一、京子がどう考えているのかも、わからない。真っ赤になって顔をそむけていることから、京子が恥ずかしがって、見られることを嫌がっている事は、明らかである。純は部屋を出ようかとも思った。だが、部屋を出ても、京子は、いつまでも縛られたままで身動き出来ない。いつかは、自分が縄を解かなくてはならないのだ。
純は立ち竦んで京子を見た。
うつ伏せに畳の上に縛られて、顔をそらしているため、京子は純を見ていない。
それをいい事に、純は京子をまじまじと見た。
ムッチリとしたした大きな尻が丸見えになっていて、尻の割れ目がくっきりと見える。女の恥ずかしい所は、その下で無防備にさらけ出されているのだ。うつ伏せになっているために、見えないだけである。豊満な乳房は畳に押しつぶされていて、それが、よけいエロティックに見える。あたかも、縄と畳にいじめられていかのようである。尻からつづく、むっちりした太腿。形のいい脹脛。手指のようにしなやかな足指。それら、女の体の全てがさらけ出されていた。手は親指を残りの四指でギュッと力強く握りしめ、みじめな姿を見られる事に、何とか耐えようとしている。
見ているうちに純の男の所は、だんだん怒張してきた。
京子のこんな姿をこんなに間近に見られる機会は、もう無いのではないか。そう思うと、純はもう、ためらいを捨てて食い入るように京子の裸を見た。
見ているうちに純は、だんだん興奮してきて鼻息が荒くなっていった。
京子が、そっと猿轡の顔を純に向けた。
その瞳は、見るのをやめて、縄をほどいてほしい事を訴えていた。
それが、純の情欲をよけい刺激した。
「ああー。もう、我慢できない」
純は叫んで、裸の京子の体に手を触れた。
ムッチリとした尻、柔らかい太腿、畳に圧しつけられてつぶれている乳房、指先から足指まで京子の体の全てを触りまくった。
そして、尻の割れ目を拡げてみたり、しなやかな足指を一本一本、開いて、足指の付け根まで見た。
純はもう、京子を玩ぶ事に抵抗を感じなくなっていた。
京子は、眉を寄せた苦しげな顔を純に向けた。
京子は猿轡をされているので喋れない。
いやいや、と訴えるように激しく首を振った。
京子は、きびしい駿河問いに縛られているため、体が反って、プルプル震え、いかにも苦しそうである。
純は、可哀相に思って、そっと京子の猿轡を解いた。
京子は、ふうふうと大きく深呼吸してから、顔を真っ赤にして、蚊の啼くような声で言った。
「じゅ、純君。やめて。縄を解いて。お願い」
純は恥ずかしくなって赤面した。今までは、京子は猿轡のため、喋れなかったので、純は人形を玩ぶような感覚で京子の体をいじっていたのだ。京子の声を聞いて、今まで自分は人形ではなく、人間を玩んでいたのだ、という実感が純に襲ってきた。
だが、一度、激しく火のついてしまった純の性欲は、これで、おしまいに出来る程度ではなくなってしまっていた。それに、もう、京子の体を触りまくってしまった以上、その事実は元に戻せない。それが、純のためらいを完全に消してしまっていた。
純は京子の足首と手首を結びつけている縄を解いた。
駿河問いの縛めが無くなって、京子は苦しい背を反った姿勢から開放された。
京子の縛めは、手首と足首の縛めだけである。
京子は、駿河問いの縛めが無くなって、手は後ろ手に縛られて、足首を縛られたまま、うつ伏せになった。
「純君。お願い。手と足の縄も解いて」
京子は純に訴えたが、純は聞かず、京子の上半身を持ち上げて畳の上に座らせた。
京子は、縄を解いてもらえるのか、もらえないのか、わからい、といった困惑した顔つきである。京子は、足を横に揃えて座った。その座り方が、みじめな丸裸であっても、一番、つつましく見える座り方である。だが京子は後ろ手に縛られている上に足首も縛られていて不安定である。京子は倒れそうになった。純は急いで京子の体を支えた。
「その座り方は不安定です。正座して下さい」
純に言われて京子は、腿をピッチリ閉じて正座した。
しかし、これは、みじめ極まりない姿である。あたかも悪い事をして、その罰を受けているかのごとくである。何の悪い事もしていないのに。しかも、その姿を服を着ている純に、まじまじと見られているのである。女の最恥の部分は何とか見られずにすんでいる。だが、乳房は丸見えである。京子は真っ赤になった。
「ああっ。京子さん。きれいだ」
純は思わず息を呑んで叫んだ。
言われて、京子は顔を赤らめて、そむけた。
しはし純は、裸で顔を赤らめ、礼儀正しく正座している京子の体を隈なく眺めた。
ふと、部屋の隅にある、父親が置いていったダンボールが目に止まった。
純は、それを持ってくると、中身を調べだした。
縄、蝋燭、イチジク浣腸、洗濯バサミ、毛筆、割り箸などの責め道具の中に、アルバムのようなものがあった。何かな、と思って純はそれを取り出した。
「あっ。お願い。見ないで」
京子は、焦って叫んだ。だが、純はかまわず、それを開いた。
純は吃驚した。それは、京子を裸にして縛って、色々なみじめの極地の姿を撮った写真を入れたアルバムだった。背景は、父親の寝室である。間違いなく、それは夜中に父親が撮った写真だろう。純は鼻息を荒くして食い入るように眺めた。
「す、すごい」
純は我を忘れて食い入るように見つめた。
「や、やめてっ。お願い。純君。見ないで」
京子は正座したまま体を激しく揺すって訴えた。が、純は鼻息を荒くして食い入るように一枚、一枚、眺めつづけた。
「ふふ。僕もやりたくなっちゃった」
そう言って純は、細い絹糸を取り出すと、正座している京子の片方の乳首に巻きつけた。
「や、やめて。純君。変なこと」
京子は訴えたが、純は聞く耳を持たない。純は力を入れて絹糸をキュッと、引っ張った。京子の乳首の根元がキュッと縊れた。
「ああっ。痛いっ。やめて。純君」
京子は眉を寄せて叫んだ。が、純は聞く耳を持たない。ちょっと、ゆるめては、少し引っ張ったりと、悪戯した。
純がちょっと力を入れて糸を引っ張ると、京子は、すぐに、ああっ、と叫んで、首を激しく振った。純はそれが面白くて、執拗に京子の乳首を責めつづけた。
「お願い。純君。やめて」
京子が強く訴えた。
「わかりました。じゃあ、やめます」
そう言って純はニヤリと笑って、絹糸をほどいた。
「あ、ありがとう」
京子は、顔を赤くして小さな声で言った。
純は、ふふふ、と、笑って、ダンボール箱から、割り箸と輪ゴムを取り出した。
純は、割り箸をパキンと割ると、京子の乳首を割り箸で挟んだ。
「な、何をするの」
京子は不安げな顔つきで聞いた。
純は、それには答えず、京子の乳首を挟んでいる二本の割り箸の両端に輪ゴムをかけた。
京子の乳首に割り箸が取り付けられた。
「あっ。いやっ」
京子は首を振ったが、純は、すぐに、もう一方の乳首も同じように、割り箸で挟んで輪ゴムで留めてしまった。
京子の両乳首には割り箸が取り付けられてしまった。
純は、二つの乳房に割り箸の取りつけられた京子の裸の姿をまじまじと眺めた。
「や、やめて。純君。お願い。とって」
京子は体を揺すって言った。割り箸のついた乳房が、それにともなって揺れた。
「ふふふ。京子さん。とてもセクシーで素敵ですよ」
純は笑いながら言った。
「お願い。純君。とって」
「でも、そんなに痛くはないでしょう」
「え、ええ。で、でも、こんなの恥ずかしいの」
「痛くないなら、いいじゃないですか。素晴らしい姿ですよ」
そう言って、純はダンボール箱から、手鏡を取り出した。
「さあ。京子さん。自分の素晴らしい姿を、よく見て下さい」
そう言って、純は手鏡を、京子に向けた。
「あっ。いやっ」
京子は、とっさに鏡から目をそらした。
「ちゃんと見て下さい。でないと、割り箸の替わりに、乳首に洗濯バサミをつけちゃいますよ。洗濯バサミは、かなり痛いですよ」
純に、そう脅されて、京子は、しぶしぶ鏡を見た。
見たとたん、あっ、と京子は悲鳴を上げた。
鏡の中には、丸裸で正座し、乳首に割り箸を取りつけられている京子のみじめな姿があったからである。京子は真っ赤になった。
「ふふ。どうです。素敵な姿でしょう」
純が余裕の口調で言った。
「じゃあ、記念に京子さんの、素晴らしい姿を写真に撮っておきましょうね」
そう言って、純はダンボール箱からデジカメを取り出して、京子に向けた。
「や、やめてー」
京子は、激しく顔をそむけて叫んだが、純は無視してデジカメを京子に向けた。
「さあ。京子さん。顔を正面に向けて下さい」
そう言われても、京子は、顔をそむけている。
「京子さん。ちゃんと正面を向いて下さい。でないと、体中に洗濯バサミをつけちゃいますよ」
そう言われて、京子は、あきらめたかのように、さびしそうな顔を正面に向けた。
「いいですよ。その表情。哀愁があって」
そう言って、純はデジカメのスイッチを押した。
カシャ。
シャッターの切られる音がした。
純は、デジカメを満足げな顔で見た。
「うん。きれいに、よく撮れてますよ」
純は、そう言ってデジカメをダンボール箱に戻した。

純は、乳首に割り箸をつけて丸裸で正座している京子の体をしばし満足げに眺めていた。
「京子さん。割り箸をはずします」
そう言って、純は京子の乳首に取り付けられてある割り箸をとった。
「あ、ありがとう」
京子は顔を赤らめて、小声で言った。はずされるのは、確かに嬉しい。しかし、それに対して、礼を言った事が恥ずかしかったのである。それに、割り箸は、みじめではあるが、乳首を隠す覆いの役割を多少は、していた。割り箸が、とられた事で、豊満な乳房と乳首の覆いが無くなり、完全に露出されてしまったのである。
その完全に露出された乳房を純が、まじまじと眺めているのである。
純はダンボール箱から、毛筆を取り出すと、京子の体を筆でそっと刷き出した。
純は、京子の首筋をスッとなぞった。
「ああっ」
京子は悲鳴を上げて体を捩った。
純は、ふふふ、と、笑って、京子の乳房を筆で刷き出した。
乳房の下縁を、念入りに、刷いたり、乳首を擽るように刷いたりした。
それを両方の乳房で、念入りに、じっくりとやった。
京子は、歯を食いしばり、指をギュッと握りしめて純の悪戯に耐えた。
しばし乳房を筆でもてあそんだ後、純は、京子の体のあちこちに攻撃の矛先を向けた。
脇腹や腹や、臍の穴を擽ったり、ピッチリ閉じ合わされいる京子の太腿の間に筆の先を入れて、往復させたり、太腿の付け根の、女のY字の所を筆先で刷いたりした。
京子は、膝をピッチリ閉じ、黙って人形のように玩ばれるのに耐えた。
純は、割り箸で京子の乳首を、つまんで、クイッと引っ張った。
「ふふ。おいしそうだな。食べちゃいたい」
純が揶揄をすると京子は真っ赤になった。
京子は長く正座していたため、しかも、足首を縄で縛られているため、足が蒼白になっていた。
「京子さん。足が疲れたでしょう。足首の縄を解いてあげます。足首を出して下さい」
純に、意外にも思いやりのある事を言われて、京子は、首鼠両端とした表情になったが、純に言われた通り、正座を崩して、はじめに座った時のように、足を揃えて横座りになった。その姿は正座と違って、哀愁がある姿だった。それは捕らえられた女が、さびしそうにしている姿だった。それに、腿を曲げてピッチリ閉じているため、女の恥ずかしい所も見えない。
純は京子の足首の縛めの縄を解いた。
足首には、くっきりと縄の跡がついていた。
「つらかったでしょう」
そう言って、純は京子の足首を揉んだ。
京子は膝をピッチリ閉じて、純が足首を揉むのにまかせていた。
「ふふ。その姿、とても美しいですよ。でも、ちょっとエロティックさが無いですね」
「さあ。京子さん。もっと素敵な格好になって下さい。壁に寄りかかって下さい」
そう言って、純は京子の太腿をポンと叩いた。
京子は不安げな顔になったが、純に足首の縄を解いてもらった恩もある。
京子は、純に言われたように、座ったまま後ずさりして壁に寄りかかった。
「さあ。京子さん。もっとセクシーな格好をして下さい」
そう言って純は、京子の太腿をポンと叩いた。
だが、京子は、セクシーな格好とは、どんな格好なのかわからず、モジモジしている。
純はダンボール箱からSM写真集を取り出すと、パラパラとめくって、あるページを開いて、京子に突きつけた。それは、女が後ろ手に縛られて、下肢をM字に大きく拡げている写真だった。女の恥ずかしい所が丸出しになっている。
「さあ。足を開いて、こういう格好になって下さい」
「い、いやっ」
京子は、真っ赤になって写真から顔をそむけた。
「だめです。こういう格好になってもらうために、足首の縄を解いたんです」
純は、京子の足を開かせようと京子の太腿に手をかけたが、京子は、膝をピッタリと閉じて開こうとしない。
「さあ。足を開いて下さい」
そう純が命じても京子は、膝をピッタリ閉じている。
純はダンボール箱からイチジク浣腸を取り出した。
そして、キャップをとり、先で京子の尻をつついた。
「言う事を聞かないと、浣腸しちゃいますよ」
そう純におどされても、京子は膝をピッチリと閉じ、微動だにしようとしない。
純は京子の尻の割れ目に手を入れて、手探りで、京子の尻の穴を探し出し、すぼまった尻の穴にイチジク浣腸の先をつけた。
「ああっ」
と、京子が叫んだ。
純は、イチジク浣腸の先端を、すぼまった京子の尻の穴の中に入れた。
「ああー。やめてー」
京子は叫んだ。
「じゃあ、足を開いて下さい。そうすれば浣腸はしません」
そう言われても京子は、足をガクガク震わせながら、ピッチリ膝を閉じている。
純は、イチジク浣腸の先をグッと京子の尻の穴に押し入れた。
「ああー。やめてー」
京子は悲鳴を上げた。
「じゃあ、足を開いて下さい。そうすれば、浣腸は、しません」
「わ、わかりました。ひ、開きます。ですから、イチジク浣腸を抜いて下さい」
「わかれば、いいんです。じゃあ、ちゃんと足を開いて下さいよ」
そう言って純はイチジク浣腸を京子の尻の穴から抜きとった。
京子は、足をガクガク震わせながら、膝を開いていった。
「ふふ。京子さん。安心して下さい。恥ずかしい所は、見えないように隠しますから」
そう言って、純は、ダンボール箱から、タオルを取り出して、京子の恥ずかしい部分の上にのせた。これで、京子は、足を開いても、女の恥ずかしい所は見られなくなった。
「さあ。京子さん。これで、どんなに足を開いても恥ずかしい所は見えませんよ。遠慮しないで、足をもっと大きく開いて下さい」
純にそう言われて、京子は足をガクガク震わせながら、さらに足を開いていった。
とうとう、京子は、写真の女と同じように、足を大きくM字に開いた形になった。
「ああー」
京子は叫んで、眉を寄せて、目を瞑った。壁を背にして、後ろ手に縛られ、一糸まとわぬ丸裸で、足を大きく開いているのである。タオルがなければ女の部分は丸見えである。だが、女の部分は、タオルが載せてあるので見えない。しかし、それは逆説的に、よけいエロティックに見えた。タオルは、載っているだけであって、履いているのではない。とってしまえば、女の恥ずかしい所が丸見えである。お情けと、悪戯で置いてあるだけで、京子は、純に、タオルを、とらないよう哀願するしかないのである。さらに、ちょっとでも動けば、タオルがはずれてしまう。京子は、わずかでも、動く事も出来ないのである。
「ふふ。京子さん。すごく刺激的な格好ですよ。でも恥ずかしい所は見えませんから、安心して、もっと足を開いて下さい」
純に揶揄されて京子は真っ赤になった。恥ずかしさに何とか耐えようと、足首がピンと伸びて、足指がギュッと力強く、閉め合わされている。
「ふふ。京子さん。この刺激的な姿も写真に撮っておきましょう」
そう言って、純はデジカメを、京子に向けた。
「や、やめて」
京子は叫んだが、純はかまわずシャッターを押した。
「ふふ。よく撮れてますよ」
そう言って、純は、撮った写真を見て、デジカメを横に置いた。
純は、毛筆を持って京子の前に座った。
そして、太腿の内側から、タオルで隠された女の部分へと、じらすように筆で、京子の恥ずかしい部分の周辺を刷いた。
「ああー」
京子は眉を寄せて、苦しげな表情で叫んだ。
足がピクピク震えている。
純は、京子の下肢を毛筆で執拗に責めた。
しばしして、純は、充分、筆の責めて満足して、刷くのをやめた。
純は、ふふふ、と、笑って、みじめな姿の京子を眺めた。
「さあ。京子さん。今度は立って下さい」
純が言った。
京子は、えっ、と言って、一瞬、我が耳を疑うような表情になった。
立てば、当然、タオルが落ちて恥ずかしい所が丸見えになる。
純は京子の羞恥を煽るような事ばかりして、女の秘所は、むしろ見ないようにしてきたからだ。
純はニヤリと笑って、ダンボール箱から、ある物を取り出して、京子の顔に突きつけた。
京子は、それを見て、ギクッとした。
それは、SMグッズで、黒い革のペニスバンドのようなものだった。だが、それはペニスバンドではなく、男の形の物が内側に向いて、取り付けられていているものだった。そして、それを、取り付けると、男の物が女の体の中に、しっかり入ってしまうものだった。
「さあ。京子さん。これを、履きますか。そうすれば、隠せますよ」
そう言って、純は、それを京子に突きつけた。
京子は、しばし困惑した顔で、迷っていたが、顔を赤らめて、小さな声で言った。
「は、履きます」
純は、ニヤリと笑った。
「さあ。京子さん。取り付けますから、お尻を上げてください」
言われて、京子は、大きく開いていた足をお尻の所に戻し、尻を上げて、踵を浮かし用をたす姿勢になった。
タオルが、ハラリと落ち、恥ずかしい所を隠す覆いが無くなってしまった。が、用をたす姿勢のため、女の恥ずかしい所は、見えない。そのかわり、踵の上にのった、ムッチリした大きな尻が丸見えになった。
純は、ホクホクした顔つきで、レザーを京子の尻の下に置いた。天狗の鼻のような男の形の物が京子の女の部分に向いている。
純は、京子の尻の下に手を入れて手探りで、女の穴をさがし出した。
京子は、はじめて、そこを触られて、ああっ、と悲鳴を上げた。
純は、しばし女の恥ずかしい所をまさぐった後、女の穴を見つけ出した。
「さあ。入れますよ」
そう言って、純は天狗の鼻の先を、京子の穴に押しつけた。
はじめは、抵抗があったが、一旦、先端が入ってしまったら、あとは抵抗なく、スルッと入ってしまった。むしろ、一度、入ってしまった後は、キュッと閉まって、もう離さないといった感じである。
「ああー」
京子は、眉を寄せて苦しそうな声を出した。
純は褌のような革ベルトを、京子の腰にしっかり取り付けた。
それは、TバックのTフロントで、確かに、女の部分は隠されている。
しかし、腰の皮ベルトに結びついている縦の革ベルトは、きびしく、京子の尻の割れ目に食い込んでいて、ムッチリした京子の尻は丸見えである。
「さあ。立って下さい」
純に言われて、京子は、ヨロヨロと立ち上がった。
京子は、後ろ手に縛られて、胸も尻も丸出しにして、革の褌をつけられている、という、みじめな格好である。
純はニヤリと笑って、小さなリモコンのスイッチのような物を、ダンボール箱から取り出した。京子は、弱々しい顔つきで、純を見た。
「な、なあに。それ」
純は答えず、ニヤリと笑ってリモコンのスイッチを入れた。
ブイーンという、細かい振動音が鳴った。
「ああっ」
京子は、叫び声を上げてブルブルと激しく体をくねらせた。
純はニヤニヤ笑って、悶える京子を眺めた。
しばしして、純はリモコンのスイッチを切った。
ブイーンという振動音が止まった。
京子は肩で、ふうふう、言いながら、腿をピッチリ閉じている。
そうなのである。男の物はバイブレーターで、純がスイッチを入れると、それは、京子の体の中で、気味悪く、くねりながら、細かく振動して京子を悩ませるのである。
京子は、はあはあ、と肩で息をしながら、一休みしている。
純は、ニヤリと笑って、再びリモコンのスイッチを入れた。
ブイーンという、振動音が、また、鳴り出した。
「ああっ」
京子は、また、叫び声を上げて、ヨロヨロよろめきながら、ブルブルと激しく体をくねらせ出した。
純はニヤニヤ笑って、悶える京子を眺めた。
しばしして、純はリモコンのスイッチを切った。
京子は肩で、ふうふう、言いながら、哀しそうな瞳を純に向けた。
「純君。お願い。やめて」
京子は、切実な口調で訴えた。
「じゃあ、レザーをとりましょうか」
純は、ふてぶてしい口調で言った。
京子は、黙って答えない。哀しそうな瞳を純に向けている。
純は、京子が落ち着きだすと、スイッチを入れた。
「ああっ」
京子は、喘ぎ声を上げながら、体を激しくくねらせた。
「とって。お願い。純君」
京子は、耐えかねたように叫んだ。


その時、ドアがガチャリと開いた。
純は、とっさに振り向いた。
「あっ」
と、純は叫んで、リモコンのスイッチを止めた。
純の父親が立っていた。純は真っ青になった。父が、今日は帰らない、と書いてあったから、純は、思うさま京子を玩べたのである。純は、叱られるのではないか、と焦った。
だが、父親はニヤついた顔を純に向けた。
「ふふ。純。やっと、京子に心を開けたな」
言われても、純は緊張して、竦んでしまっている。
「遠慮しないで、もっと、お母さんと遊びな」
そう言って、父親は去っていった。
京子は力尽きたようにペタリと座り込んだ。
純は、あせって、急いで京子の後ろに回って、手首の縄を解いた。

  ☆   ☆   ☆

それから数日後のある夕食の光景。
父親と純と京子が、三人、食卓についている。
食卓には、ビーフシチューが、御飯と、サラダとともに、三人の前に並べられている。
ビーフシチューは、京子が手をかけてつくったのである。父親と純は、うまそうに、食べている。だが、京子は、黙って項垂れていた。京子は食べられないのである。京子は、丸裸で、椅子に縛りつけられているからである。両足首を椅子の脚に縛りつけられ、手は、椅子の背の後ろに廻されて、両手首を縛られて、その縄が椅子の背にカッチリと縛りつけられているのである。京子の豊満な乳房がことさら、強調されて見える。
純は、豊満な京子の乳房を眺めながら、美味そうにパクパクとビーフシチューを食べた。
純は、時々、箸をのばして、京子の乳首をキュッとつまんだ。
「ああっ」
京子は、純に悪戯されて、声を出した。
父親は黙って、美味そうにビーフシチューを食べている。
「うん。肉も、柔らかく、シチューもコクがあって、美味い」
父親は、満足げに料理の感想を言った。
「おい。純。シチューが冷めてしまうぞ。お母さんにも食べさせてやれ」
父親が純に言った。
純は微笑して、京子の前のビーシチューの皿を京子の口の前に持っていった。
「はい。アーンして」
純に言われて京子は、口を開けた。
純はスプーンでシチューを京子の口の中に入れた。
京子は、寂しそうな顔でモグモクと噛んで、ゴクリと飲み込んだ。
京子が飲み込むのを見とどけると、純はさらに、つづけてシチューを京子に食べさせた。
そして、御飯も、デザートのフルーツ・ポンチも全部、京子の口に無理矢理、流し込んだ。
食事がおわると、父親は京子の足と手の縄を解いて京子を自由にした。
「あー。美味かった」
父親は寝室に行ってテレビのスイッチをつけた。
「ごちそうさまでした」
純はニコッと笑って自室へ行った。そして机について教科書を開いた。
一人、とりのこされた京子は、裸のまま、さびしそうに、食器を流しにさげて、食器を洗い出した。

平成21年

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日米同盟

2015-08-15 21:09:17 | 政治
安全法案が成立する。

日本は、情けないことに、アメリカとの軍事同盟なしには、自国を防衛できない国である。

憲法違反を犯し、集団的自衛権を認めることによって、(実質的には)アメリカの起こす戦争に協力することになる。

もちろん、アメリカ政府は、大喜びである。

なら、なぜ、せめて、それを、外交的に、有利に、活用しようとしないのか。

外交は、真剣勝負の、取り引きである。ギブ&テークである。

憲法違反を犯し、国民の半数以上の反対を押しのけて、集団的自衛権を認め、安全法案を通して、アメリカの戦争に協力します。そこまで、日本政府は、やりますから、アメリカ政府も、どうか、辺野古基地の、県外移設を、お願いします、とかの、交換条件を、アメリカにつきつければ良かった。

ただ、日米安保を強化する、という、だけで、アメリカが、日本の防衛に、今まで以上に、力を入れてくれる、だろう、と、阿部首相は、考えているのだろうか。

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麻原の三女、松本麗華さん

2015-08-10 18:43:01 | 考察文
田原総一朗が、麻原の三女、松本麗華さんと、ニコニコ動画で、対談したのがあった。

松本麗華さんは、とても勇気のある、誠実な、優しさのある人だと感心した。

田原は、色々と、松本麗華さんに、質問したが、彼女は、質問に、全てに正直に、誠実に答えている。

田原は、最後に、バカな、番組のディレクターに怒り、「頑張って」と言って、松本麗華さんと握手した。

田原総一郎にも、感心した。まだ、日本に、ホンモノがいた。

といっても、田原は、もう、81歳で、入れ歯に、白内障手術までして、かなり体力が衰えているように見える。

彼が、死んだら、国葬してやれよ。

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ジュネーブ条約。国際人道法など、戦争には、無意味

2015-08-10 05:35:36 | 政治
ジュネーブ条約。国際人道法など、戦争には、無意味。

山本太郎議員が、戦争には、ルールがある。敵国の、戦闘員、軍事施設だけを、狙うのが、戦争のルール、だと言った。そして、アメリカは、ジュネーブ条約の違反常習国と言った。
これは、アメリカが悪いのではない。戦争にルールなど、ないのである。
太平洋戦争が、わかりやすいので、それで喩えよう。
太平洋戦争で、アメリカは、サイパン島、そして、硫黄島、を占領した。そして、B29で、(Bは、ボンバー、爆撃機)日本本土に、爆弾を落としまくった。その時、どこが、軍事施設で、どこが非軍事施設など、わからないのだ。というより、区別のしようなど、出来ないのだ。

そして、戦争に勝つためには、敵国の、あらゆる国力を、破壊しておくことが、必要、というか、戦争に有利なのだ。食料、物資、資源、あらゆる工場、全てが、十分、あるから、戦争が続けられるのだ。その逆で、それらが、なくなれば、戦争は、出来なくなるのだ。田んぼ、が、あったら、それに爆弾を落とせば、食料を減らせる。全ての、田んぼに、爆弾を落とせば、兵士は、食べる物がなくなって、戦争など、できなくなる。(腹が減っては、戦が出来ぬ)

そして、民間人は、何をしたか?
竹やりで、アメリカ兵をやっつける、訓練をしたではないか。子供から、女まで。
当然、民間人といえども、戦争になれば、敵国、敵兵士を憎む。

特に、民間人でも、殺された兵士の、妻、親、兄弟、子供、友達、は、当然、敵兵士を憎む。スキあれば、殺してやりたいと、当然、思うだろう。

白旗をかかげ、降伏する意志を示しても、心の中では、隙あれば、敵兵士を、殺そう、とか、抵抗しようと思っている、人間もいるのだ。

「救急車は攻撃してはならない」というルールを作って、それを守ったら、どうなるか?
救急車には、攻撃しない、のであれば、救急車ほど、戦闘員を安全に、運べる車両はないことになる。攻撃しないでくれるのだから。
全ての、軍用車を、見せかけは、救急車にしておけばいい。

あるいは、傷病兵の乗っている、本当の救急車に、元気な兵士も一緒に入れて運べばいい。一回では、少数しか、運べなくても、繰り返し、何度も運べば、多数の兵士を安全に運べる。

「軍事施設しか攻撃しない」というルールを作って、それを守ったら、どうなるか?
全ての軍事施設を、病院とか、体育館とか、非軍事施設のように、装っておけばよい。そうすれば、攻撃しないでくれるのだから。屋根に、「ここは体育館です」と、英語で、大きく書いておけばいい。
あるいは、反対に、本当の、非軍事施設の民間施設に、武器、兵士を隠しておけばいい。そうすれば、攻撃しないでくれるのだから。

「戦闘員しか攻撃しない」というルールを作って、それを守ったら、どうなるか?
戦闘員は、軍服ではなく、民間人を装って、普段着を着ていればいい。そうすれば、攻撃しないでくれるのだから。

道を歩いている人間が、戦闘員か、非戦闘員かの、区別など出来ないのである。

つまり戦争というものは、全てゲリラ戦なのである。

つまり。戦争になったら、ジュネーブ条約。国際人道法など、は、無意味なのである。
ルールのある戦争など、出来っこないのである。

兵士だって、当然、疑心暗鬼になる。
これが特にひどかったのが、ベトナム戦争である。

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神風特攻隊

2015-08-08 03:23:39 | 考察文
世界では、日本の、神風特攻隊員を、崇高な人達と見なしているようだ。

そして、なぜ、日本人が、神風特攻隊戦術が出来たのか、わからないようだ。

しかし、その理由は簡単である。

それは、天皇制の存在である。

戦前の大日本国憲法の第三条、にあるように、

「天皇ハ神聖ニシテ侵スべカラズ」

である。軍部は、天皇を、日本の、現人神とした。

(実際、ややこしいことに、日本の天皇制は、他国には無い、2000年以上、続いてきた、見事なものである)

実際、特攻隊員は、敵艦に突入する時、「天皇陛下万歳」と言って死んでいった。

実際は、軍部による、天皇の政治利用なのであるが。

生きている、自国の、神様のためには、死ぬしかない。

生きている、自国の、神様を守るためには、命を惜しむわけには、いかない。

そうしなかったら、軍部、日本国民すへてに、非国民、と言われ、村八分にされる。

特攻は、兵士の志願、自分の意志、といわれているが。

特攻を志願しても、「死」。特攻を志願しなくても、全日本人に、非国民、と呼ばれ、死ぬより苦しい、いじめにあう。

むしろ、全日本人に、非国民と呼ばれ、村八分にされる、生き地獄、以上の、精神的苦痛の方が、物理的な「死」より苦しい。

だから、特攻隊員は、生きて、生き地獄以上の精神的苦痛に悩まされるよりは、やむをえず、死を選んだのだ。

もちろん、全ての、特攻隊員の志願の決断の理由が、そういう、苦しみの度合いの比較から、とは言えないが、この心理は、ほとんど、全ての、志願した、特攻隊員の心理にあったはずである。

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過敏性腸症候群

2015-08-07 02:20:32 | 医学・病気
過敏性腸症候群

「主よ。今からあなたのご用のためにあなたと共に、またあなたにおいて役立てる以外には、私が健康や長寿をいたずらに願うことがありませんように。 あなたお一人が私にとって、何が最善であるかをご存知です。ですからあなたがご覧になって最も良いと思われることをなさってください。 私の意思をあなたのご意思に従わせてください。そして、へりくだった全き従順の思いをもって清らかな信仰を保ち続け、あなたの永遠の摂理によるご命令を受け取ることができますように。 そしてまたあなたから与えられる全てのものを賛美することができますように」(パスカルの祈り)

「主よ。与えたまえ。変えられるものは、それを変えていく勇気を。変えられないものは、それを受け入れる素直さを。そして、変えられるものと変えられないものとを見分ける聡しさを」(ラインホルト・ニーバーの祈り)

「・・・そして本当の幸せをつかむためには、一度は死のうと思ったことがなくてはならなのだ」
(モンテ・クリスト伯)


 過敏性腸症候群について書いておこう。私は医学部に入学する前に過敏性腸症候群が発症した。以来、今日に至るまで、ずっと苦しい人生を送ってきている。つまずきにつまずいた人生である。何度ビルの屋上に上り、死を考えたことか。

発病した最初は、消化器にくわしい近くのクリニックに行った。バリウムの検査もした。幸い、その先生は優秀で、親切で、こちらが長々と訴える悩みを親身に聞いて一緒に考えてくれた。
「腸が過敏になっている」
と言った。先生は、
「何か精神的に悩んでいる事はないか」
と、さかんに聞いた。しかし私には精神的な悩みは思い当たらなかった。本屋へ行き、「過敏性腸症候群」の本を何冊も買って読んだ。わりと直ぐに自分が過敏性腸症候群であることを納得できた。最初にかかった医者がきれる医者であったことは、私にとって、とても幸運なことだった。私は先生に一生、感謝せねばならない。過敏性腸症候群は患者にそれを納得させるまでが、一苦労なのである。胃腸の具合が悪くなったら、精神科だの心療内科へ行くのではなく、まず消化器科へ行くべきだ。精神科へ行ったのでは、患者は、いつまでも病気を納得できず、長い期間、苦しみ続けることになる可能性がある。

さて、地方の医学部へ入学したが過敏性腸症候群のため、クラスには馴染めなかった。一人でいる私をかわいそうに思ってくれて、
「ねえ。よかったら、こっちにこない」
と私に声を掛けてくれた人がいた。おかげで何とか、3~4人の友達が出来た。彼にも私は本当に感謝している。しかし、やはりスムーズな会話は出来なかった。チクチク針で刺すような、耐え難い痛みが一日中つづき、腹を押さえながら授業を聞いていた。ともかく、近くでのかかりつりの医者を探した。医者は、すべてその大学出身者である。いくつも回って、やっと切れる医者に出会えた。いい医者とは、患者の訴えを親身になって聞いてくれる医者である。

しかし、もちろん個人クリニックでは限界がある。私は過敏性腸症候群の専門医にかかりたかった。
本の好きな私に、「池見酉(ゆう)次郎」先生を知るのは、わけもなかった。

ここで「池見酉次郎」先生を少し、紹介しておこう。
今ならインターネットで、「池見酉次郎」で、検索すれば、直ぐ出てくるだろう。
池見先生は、自身、若い頃から過敏性腸症候群で悩んで、医者になった人である。性格は内向的で、過敏。九州大学医学部に入り、卒業して医師になった。それまで日本に無かった「心療内科」を九州大学医学部につくり、心療内科の初代教授になった。日本の心療内科の創始者である。九州大学心療内科は日本の心療内科の発祥の地であり、心療内科のメッカである。池見先生は心療内科の釈迦のようなものである。今では、池見先生の弟子、孫弟子が全国で活躍している。言わば、池見先生は心療内科の神様である。池見先生は、天才、超秀才である上、自身、一生、過敏性腸症候群に苦しんだ患者であるだけあって、その研究業績は膨大である。過敏性腸症候群に限らず、心療内科の病気は、すべて知悉しつくしている。
また、池見先生は、アカデミックな研究だけでなく、一般の人にわかりやすく書いた心療内科の本を多数、書いている。どんなに時代が進んでも、池見先生の本が絶版になる事は絶対ありえない。
池見先生は文章の達人であり、極めて、わかりやすく、読みやすく、文章が輝いているのである。高度で難解な事も、池見先生の手にかかると極めてわかりやすい文章になってしまう。また、文章のわかりやすさ、だけではなく、内容も実に深く、広い。
池見先生について書き出すときりが無くなるので、この位にしておこう。

私は池見先生の本を全部買って、それは私の枕頭の書となった。池見先生は私にとって、医学の神様である。

私はたいして医者になりたいと思って医学部に入ったのではなく、医学部に入りたいと思って医学部に入った。しかし私は医学に全く興味が無くはなかったわけではない。子供の頃から喘息があって自律神経系が弱く、何より、後天的に発症した過敏性腸症候群を何とか、その原因を知り、治りたいと思っていた。喘息は、それほどムキになる気はなかった。病気は先天的なものはself(自分自身)なものであり、自分自身のidentityであり、さらには大切な自分の友達ですらある。しかし過敏性腸症候群は後天的に発病したものだった。そのため、基礎医学になってからは、過敏性腸症候群とは何かを知りたいという強い目的意識が常にあった。いわば一つの目的を持って入学したようなものである。ちょうど本田宗一郎がピストンリングに関する知識をしっかり知りたいと思って浜松高等工業学校に入ったのと似ている点がある。本田宗一郎にとってピストンリング以外の事はどうでもよかったのである。
さて、本田宗一郎について書き出すときりが無くなるのでこれ位にしておこう。

この腹の痛みの原因は、いったい何なのか。生理学でdenervation hypersensitibity(除神経過敏)を聞いた時には、ああ、なるほどと思った。組織学で腸管のアウエルバッハ神経層、マイスナーの神経叢、を知った時は、大変興味があった。一番、私が疑問に思いつづけた事は、この痛みの原因は中枢によるものなのか、末梢によるものなのか、という事だった。中枢説と末梢説で私は悩みつづけた。学生時代の時は、最後までわからなかった。

腹痛はいっこうに、おさまらない。こんな状態で、はたして国家試験に通れるものか、仮に通ったとしても医師の仕事をちゃんと出来るものか、という将来に対する不安に悩まされつづけた。精神安定剤も睡眠薬も、もはや、それ無しには生きていけなくなっていた。授業中も座っていると、あまりの腹痛に耐えられず、立って講義を聞くこともあった。
冬は冷え性がひどく、思考が回らず、うつ状態になってしまう。頭に雑念が起こって止まらない。もはや医者は無理ではないか、と思うようになりだした。加えて、友達がさそってくれて、入っていた文芸部で創作の喜びを知って、医学に対する興味は無くなっていった。しかし、一度入った以上ちゃんと卒業はしようと思っていたので医学の勉強はおろそかにしなかった。

針、灸、食事療法、運動、精神科めぐり、など、ありとあらゆる事を試したが駄目だった。

とうとう四年の時、うつ病がひどくなって、矢折れ力尽き、休学することになった。しかし親は、うつ病に理解がなく、「死ぬ気でがんばれ」、と叱るばかり。私は死のうと思った。ビルの屋上に何回ものぼった。近くの精神科クリニックに通っても、精神科医に何を訴えても、「それは精神のせいですよ」と言うだけで、抗うつ薬を出すだけ。こんな医者にかかっていたら殺されると思った。当然、一回で見切りをつけた。ともかく、自分で名医を探すしかない、と思った。
書店で、心療内科の名医のガイドブックがあったので、それを買った。どの医者がいいのかわからないので、ともかく通えるところに決めた。だめだったら、別の医者にかかればいい。それで、ある××大学病院の心療内科へ行き、教授の診察を受けた。出来れば九州大学の心療内科にかかりたかったのだか、そこまでの行動力は無かった。入院治療をすすめられても困るし・・・。

××大学病院の心療内科の××教授は、心療内科の権威で医療雑誌にもよく出ていた。私は集団療法(共感療法)を受けたいと思っていたので、そう言ったら、それをやっている病院を紹介してくれた。あまり期待していなかったが、わらをもすがる思いで行った。そこは精神科と心療内科をちゃんと分けていて、心療内科はみな東邦大学の先生だった。心療内科は、関東では東邦大学が一番である。自分の病気は一生治らない、と、あきらめていたので、期待はしていなかった。しかし診察室に入って先生に会って吃驚した。涙が出て止まらなくなった。同時に治るはずがないと諦めていた腹痛がスーと消え出した。その先生はたいへん重症の吃りだった。ひとこと話すのにたいへん顔を真っ赤にして、てこずっている。話しベタなんてレベルではない。それは間違いなく日常生活や職業に支障をきたしている不治の病だった。ひとこと話す度に苦しみ、動悸を起こしている。その先生が今まで歩んできた苦しみの人生が瞬時に想像された。ひとこと言う度に血圧が上がっている。まさに自分の身を犠牲にして生きている。先生の吃りも、心身相関の心身症である。間違いなく、先生は自分が苦しんだ経験を役立てることが自分のミッションだと思って心療内科を選んだのだ。先生は医者の能力は特別優れているというわけではなく、普通だか、先生は確実に人を癒している。能力ではなく、その存在が、人を癒しているのである。私は大変な力を与えられた。
「こんなハンデを持った人が医者をやっている。やれている。なら私も、どんなに苦しくても頑張らねば」
こんな素晴らしい先生にもっと早く会えていれば・・・と、つくづく思った。生きるか死ぬかで悩みつづけていた私が、生きてみようと思えたのはこの先生との出会いのおかけである。
その病院でうけた集団療法も大変な治療になった。みんな生きるか死ぬかで悩んでいて、まさに生き地獄の中で何とか生きようと頑張っている患者ばかりだった。
「うつ病」「親がアル中で暴力をふるい家にいられない」「過食・拒食症」etc
残念ながら過敏性腸症候群の患者はいなかったが、集団療法はたいへんな治療になった。

そして私は復学できた。休学中は、遅れている勉強に全精力をつぎ込んだ。

休学中にしっかり勉強していたため単位は全部とれ、無事、5年(臨床)に進級できた。ただ過敏性腸症候群の腹痛はあいかわらずである。関西でも、あのようないい先生にかかりたいと思った。それで勇気を出して池見酉次郎先生に電話した。私にとって池見先生は医学の神様であるので、話しかけるのは、とても恐れ多く、それまで、できなかったが、失礼を覚悟の上で勇気を出して電話した。
先生は親切に答えてくれた。先生は、
「大阪の豊中にある黒川君にかかったらいいよ。黒川君はね、僕の弟子」
と言ってくれた。さらに、
「過敏性腸症候群は治らない」
「黒川君なら治してくれるよ」
と言った。過敏性腸症候群は治らない、という事は、その頃、私はもう十分、実感していた。医者が患者にズバッと「治らない」と言うのは、あまりよくない事なのだが、池見先生の意図は、自分が過敏性腸症候群で苦しみ、過敏性腸症候群を研究してきた医学者としての立場からである。

過敏性腸症候群にも色々なタイプ、症状の程度など、人さまざまだが。私の場合、過敏性腸症候群はきれいさっぱり治ることは無い。Treatment(完全治癒)は無理である。しかし生活を正し、治療をちゃんと受ける事によってManagement(病気を上手く飼いならす)事は出来るのである。患者が自覚を持って取り組めばQOL(生活のレベル)はかなり上げられるのだ。

さて池見先生が紹介してくれた黒川医院に行ったら、さすが池見先生のお弟子さんだけあって、すごくいい先生だった。先生は和歌山県立医科大学を卒業したあと、九大心療内科に入局した。医院を開業しながら九大心療内科の非常勤講師もしていた。テレビにもけっこう出ていた。

五年に進級できた時は嬉しかった。そもそも医学部では基礎が一番しんどく、臨床は基礎の上であるが、基礎ほどしんどくはない。

どこの医学部でもそうではないかと思うが、医学部では5年の一学期は楽であり、夏休みが終わって、秋の文化祭までは、ほどほどにやって、文化祭で最高に盛り上がって、クラブもオイコンをして、やめ、文化祭が終わってから、いよいよ本格的に国家試験の勉強を始める、というところが多いだろう。

私は休学して、下のクラスに落ちたため、知っているヤツはほとんどいなく、クラスには全く馴染めなかった。5年の一学期は車の免許を取り、80枚の小説を完成させ、ある文学賞に投稿した。(おちた)

5年の秋からポリクリ(臨床実習)が始まった。ポリクリとは、5人で1つの班になって、内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、他、すべての科を大学付属病院で回る勉強である。実際に患者をみて、レポートを書いたりする勉強である。これは大変やりがいがあった。基礎での分厚い医学書を机上でひたすら覚える無味乾燥な勉強とは全く違う。私の班には紅一点ですごくかわいい女の子が一人いた。私は内心、すごく嬉しかったのだが、私は女の子と口がきけないので、その子に何も話せなかった。彼女は私に何故だか好意を持ってくれていた。ともかく、私が話しかけないので、彼女に、私が彼女を嫌っているという変な誤解を与えてしまった。

そして無事、卒業し、国家試験も通った。

過敏性腸症候群について、これは書いておこうと思っていたので、軽い気持ちで書き始めたのだが、何だか、自分の病気史みたいになってしまった。でも、それでも悪くはないとも思う。過敏性腸症候群を持っていても、苦しくはあっても何とか人並みに人生を送れるという証明を書いたようなものだから。

池見先生の本でも、自分の病気史を書いた「心身セルフ・コントロール法」(主婦の友社)が、一番力になる。

過敏性腸症候群についてもう少し書いておこう。

「☆」まず、腹の痛みの原因は末梢か中枢(視床下部)か、という疑問だが、これは両方だ。腸は心臓と同様、それ自身、ペースメーカーを持って独立して動いている生き物だから、中枢より末梢の方が、より痛みの原因となっているだろう。薬理学の実習の時、マウスの腸だけとりだして、の、実験で、取り出された腸だけが生き物のように薬物に反応して動いているのを見て、つくづくそれを実感した。

「☆」当たり前の事だが、ストレスというのは、精神的ストレスだけがストレスなのではなく、気温、気圧、湿度、他、つまり外界の悪い状態もストレスである。

「☆」心身症はすべて悪循環病である。
痛み→精神的不安→自律神経の乱れ→副交感神経が緊張する→腸の蠕動が乱れる→腹痛が起こる、の悪循環である。

「☆」風呂、乾布摩擦、冷水摩擦、日光浴、水泳、全ていい。
乾布摩擦が喘息にいい事は知っている人はけっこういるだろう。私も子供の頃、喘息の施設で毎日、乾布摩擦をやらされた。人体は外部の皮膚が気管や腸管に連続してつながっている。そのため、皮膚を鍛える事は気管支や腸管を丈夫にするのだ。時間がなければ、わざわざプールに水泳に行かなくても、毎日、風呂に入って、体を洗う事を日課にするといい。家に閉じこもりきりの、やわ肌はよくない。

「☆」頭を使う。
過敏性腸症候群は副交感神経(休息)が過敏になっているのだから、交感神経(活動)を優位にした方がいい。どんな勉強でもいい。頭を使えば交感神経が優位になる。精神に気合いが入れば、血行がよくなり、代謝が活発になる。頭を使えば脳がグルコースを要求し、腹が減り、腸が動き出す。

「☆」音楽療法。趣味。など。
体調が悪い、つらい時には、自分の好きな音楽、漫画、など、自分の好きな事をやっているだろう。これは一見、逃避のようにも見えかねないが、無意識の内に自己治療をしている、という事でもある。脳に快刺激が起こると、自律神経を介して体調の悪化が改善されるのである。

「☆」緊張とリラックスの交換が腸にいい。
交感神経優位しっぱなしではよくないし、副交感神経優位しっぱなしでは、もっとよくない。交感神経と副交感神経の切り替えが、腸の運動にいい。

「☆」三年かけて良師をさがせ。
(意味=ヘタな医者に三年かかりつづけるより、三年かけて良い医者を探した方がいい)
私にとっては、吃りの先生がそうだった。ドクターショッピングは、悪い事ではない。相性の合う医者を探す事は、むしろ、しなくてはならない事である。何を訴えても聞く耳を持たず、薬だけ出す医者にかかってても何も改善しない。

「☆」精神科、心療内科へ行くよりも消化器科へ行く。
まず今、ほとんどの精神科クリニックでは、「精神科」とだけ標榜している所は少ないだろう。ほとんど、「精神科、心療内科」と、標榜しているだろう。さらにほとんどの所が、「精神保健指定医」と書いてあるだろう。電話帳を見てみればいい。まず、「精神保健指定医」と、書かれていない方がいい、と言えるかもしれない。
その理由。
過敏性腸症候群は心身症、消化器病、である。だから、専門は心療内科、と、消化器科である。しかし、この「心療内科」というコトバがクセモノなのである。精神科と心療内科は、確かにオーバーラップする疾患はある。うつ病、神経症(ノイローゼ)などである。しかし、基本的には別の科である。精神科は、統合失調症、躁うつ病、認知症、など、病識のない病気が専門である。薬は向精神薬、メジャートランキライザーの知識が専門である。精神科医は体の病気は内科医のように、しっかり診れない。特に開業医はそうである。一方、心療内科は、心身症が専門である。病識のある疾患が専門である。統合失調症のような病識のない疾患はテリトリーではない。ではなぜ、「精神科、心療内科」と標榜してあるか、というと。実は、「精神科、心療内科」と標榜しているクリニックのほとんど全部は、精神科医なのである。心療内科の知識は無いか、極めてプアーなのである。では、なぜ、「心療内科」とも書いておくか、というと、「精神科」とだけ書くと、イメージが暗くなるからである。「心療内科」も付けといた方がイメージがよくなるからである。ほかに、心身症、ストレス病の患者を増やす目的もある。「メンタルクリニック」という名称も同じである。しかし精神科医は心療内科を正式に勉強してはいない。「精神保健指定医」と書いてあったら、これは保障つきで精神科医である。では、本当の心療内科を見つけるには、どうしたらいいか。あるいは、精神科クリニックでも、心療内科の知識をしっかりもった医者を見つけるには、どうしたらいいか。これを医者にかかる前に事前に知る方法はない。
関東なら、東邦大学、関西なら九州大学、のように、大学病院の中で、精神科と心療内科の二つがある所は安心である。伊藤克人先生の「過敏性腸症候群はここまで治る」という本の中に心療内科を専門にやっている病院やクリニックが書いてあるが、これは信頼できる。
過敏性腸症候群の患者は体の病気が診れない精神科へ行くより、消化器科へ行った方がずっといい。そもそも精神科医は患者の訴えをうざったそうに聞くだけで、薬だけ出す医者がかなり多い。精神科医が、いばる傾向があるのは、一種の職業病なのだが・・・。精神科医より、内科医の方が、ずっとやさしい傾向がある。

「☆」何事でもトライ。
何事でもトライ。最初の一歩の勇気を。
過敏性腸症候群の本やホームページは、いっぱい出ていて、やった方がいい事はほとんど書いてあるので、くりかえし書く気は無い。食事の事、趣味、音楽、適度な運動、他。どうせだめだろうと、最初から決めつけず、一度なんでも、やってみた方がいい。その事が、そのまま効果がない場合も多いだろう。しかし、何かやってみると、それがキッカケで何かいい拾い物や発見をする事がある。何もしなくて改善する事は、まず無い。

「☆」本に書いてあることを教科書的に守らない。
世の中に同じ顔の人が一人もいないように、全く同じ病気というものは、世の中に無い。医学という立場からカテゴライズしているのであって、すべての病気は、その人、特有のものである。体質も合併症も、生活環境も、仕事も、性格も、趣味も、すべて違う。他人である医者より、自分の方が自分の病気をより正しく知っている主治医である面は当然ある。自分が効果があると感じたら、本や医者の言う事に盲従する必要は全くない。

「☆」集団療法(共感療法)は、非常に有効。
今は、ネットで同病者をみつけ、メールやオフ会で、励まし合う場を見つける事は容易だろう。

「☆」自分の病気について少しは医学を勉強しなくてはならない。
病気に対する不安は、病気がどのようなメカニズムで起こっているのか、わからない不安からも当然、起こっている。ただでさえ、人間は、わからない事に不安を抱く。病気のメカニズムがわかれば、かなり安心感が得られて、不安が軽減される。

おすすめの本
「過敏性腸症候群性腸症候群の診断と治療」(医薬ジャーナル社。三好秋馬編。4000円)
基本的には、医学書だが、一般の人でも十分読める。これは過敏性腸症候群に苦しむ人にぜひ、お勧めの本。読むだけで、かなりの治療効果が得られる。過敏性腸症候群の苦しみは人に理解してもらえない苦しみである。過敏性腸症候群の苦しみの理解者をこの本によって得られる。

「過敏性腸症候群性腸症候群はここまで治る」(主婦と生活社。伊藤克人)
全国の本当の心療内科の病院、クリニックの一覧がのっている。もちろん黒川医院、吃りの先生のいる病院、九州大学心療内科、東邦大学診療内科、がのっているのはもちろんのことである。

池見酉次郎先生の本は、すべていい。
どれが一番いいか、迷うが、まずは、一番読みやすい本。
「心身セルフ・コントロール法」(主婦の友社。池見酉次郎)
先生の闘病史が書かれている。先生の文章の素晴らしさ、読みやすさ、に驚くだろう。確実に治療効果がある。

次は、
「心療内科」「続・心療内科」(中公新書。池見酉次郎)
が、いい。そもそも、これらは一般の人向けに書かれた本である。

うつ病、に関しては、渡辺昌祐先生の本がいい。

私は、男はどんなに苦しくても、弱音を見せるべきではない、と思っているので、これはアップしたくないのだが、過敏性腸症候群の事を書こうとすれば、どうしても、自分の経験を出さずにインパクトのあるものを書くのは、無理である。極めて恥ずかしい。


平成19年5月6日


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山本太郎議員が、阿部晋三を見事に論破

2015-08-06 04:37:28 | 政治
かつて天皇に、手紙を渡して問題となった、山本太郎議員が、阿部晋三を見事に論破している。

山本太郎議員は、原発が、北朝鮮や、中国に狙われた時に、起こる危険と、過去の、イラク戦争の二つを、例にして、阿部晋三を見事に論破している。

山本太郎は、いわゆる、与党批判のための、批判ではなく、データを示し、論理的に、阿部晋三を批判している。

だが、卑怯者、阿部晋三は、山本太郎の質問に、応えず、あいもかわらず、質問と全く関係のない、バカの一つ覚えの、「我が国の国民の生命と財産を守る・・・云々」、の、偽善的な抽象的発言で、逃げている。だけである。

山本太郎議員の、原発に対する心配と、平和に対する、想いは、純粋に、本物である。

阿部晋三は、相手は、タレント議員となめてかかっていたから、舌戦の、危機管理体制を、おろそかにしていた、というところか。

元タレントだったことから、口が達者かもしれない(1)、タレントの時から、政治に関心を持っていた(2)ということから、もっと、舌戦の、危機管理体制の意識を持つべきだった。というところか。

阿部総理にしてみれば、参議院が反対して、法案可決しなくても、再度、衆議院で、数の力で可決出来るのだから、と、なめている。

確かにそうだが。しかし、

自民党の、偽善の、面の皮を引っぺがした、という点は、評価できる。

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