小説家、反ワク医師、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、反ワク医師、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

芥川龍之介

2014-01-15 04:09:51 | Weblog
「阿呆は他人を阿呆と思っている」とは、芥川龍之介の箴言であるが、昔は、これを素直に芥川が(軽い気持ちで)自嘲的に自分のことを言っている箴言だと思った。しかし、今は、この意味がわからなくなった。芥川ほど博学で教養があり、小説の文章も完璧で、他人の文学作品に対する評価も正確で、侏儒の言葉、のように、物事の本質を見抜く能力も優れている。どこをどうとっても、芥川が阿呆である点は見つからない。だから、これは芥川の自嘲の格言ではなく、一般論ではないか、と考えを切り替えた。一般論なら、この格言は正しい。しかし、さらに考えてみると、芥川は、「ある阿呆の一生」と題して、自分の一生を小説的に述べている。なので、やはり、「阿呆は他人を阿呆と思っている」とは、芥川自身のことである、と捉えるしかない。はたして芥川は自分の何をもって、自分のどの点をさして、自分を阿呆と考えたのか。これはわからない。芥川は、思ってもいないのに、謙虚卑下する性格ではない。むしろ、芥川ほど読者を阿呆よばわりした度胸のある作家はいない。芥川は文壇へのデビューから、死ぬまで、小説を通して、読者、世間一般の人間との戦いだった。

芥川龍之介が、自分を阿呆と思った理由を芥川が言っていないので、こっちで、なんらか解釈するしかない。

私の解釈。「阿呆は他人を阿呆と思っている」という芥川の作り出した格言を、芥川は、普遍的に当てはまる、ほとんど絶対的な格言だと自信を持っていたのだろう。そして、芥川は、死ぬまで、人間を阿呆と見なし続けた。だから、人間を阿呆と思っている芥川自身も阿呆である、ということになる、という芥川の理論からではなかろうか。
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