かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

番外編 渡辺松男研究 歌集別「死」の歌の頻出度

2019-01-29 20:03:48 | 短歌の鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究2の17(2019年1月実施)
     Ⅱ【膨らみて浮け】『泡宇宙の蛙』(1999年)P85~
     参加者:泉真帆、M・I、K・O、岡東和子、A・K、T・S、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放




 雲の歌の頻出度のグラフを探していたら、2002年度に作ったこんなグラフも出てきたので挙げてみる。2002年なので比較している歌集が古いのだがお許しください。(鹿取)


*   赤光(初版)  (1913年刊) 斎藤茂吉

世紀 (2002年刊)                 馬場あき子

**  〈テロリズム〉以後の感想/草の雨 (2002年刊) 岡井 隆

***  手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) (2001年刊)   穂村 弘

牧神 (2002年刊)                  坂井修一 


│死の歌の数 │総歌数 │歌集名 │ │
│ │ │ │ │
│13 │409 │寒気氾濫 │3.2%│
│ │ │ │ │
│19 │342 │泡宇宙の蛙 │5.6%│
│ │ │ │ │
│33 │485 │歩く仏像 │6.8%│
│ │ │ │ │
│36 │838 │赤光       *│4.3%│
│ │ │ │ │
│14 │403 │世紀 │3.5%│
│ │ │ │ │
│33 │364 │テロリズム  **│9.1%│
│ │ │ │ │
│9 │454 │牧神 │2.0%│
│ │ │ │ │
│11 │241 │手紙魔まみ *** │4.6%│



           

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グラフ追加版 渡辺松男の一首鑑賞 126

2019-01-29 11:58:03 | 短歌の鑑賞
  なぎさ用渡辺松男研究2の17(2019年1月実施)
     Ⅱ【膨らみて浮け】『泡宇宙の蛙』(1999年)P85~
     参加者:泉真帆、M・I、K・O、岡東和子、A・K、T・S、
       曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放


126 ひんやりとサラリーマンはひとを待つ雲見ては雲にすこしほほえみ

      (レポート)
 お題がサラリーマンの題詠のように、この一連はサラリーマンの歌群になっている。ひんやりと待つさまが第四句の「雲見ては雲に」につながり、長い時間ぽつんとそこにいてあれこれ眺めながら人を待つ姿がよく伝わってくる歌だ。(真帆)

     (当日意見)
★頭に「ひんやりと」を持ってきたのがとてもいいと思います。下の句にどう繋がるかはよくわか
 らないのですが、感性で持ってきたのでしょうか?(慧子)
★雲と繋がっているのでしょう。雲って雨粒の塊ですから、ひんやりしているのでしょうね。でも
 確かに「ひんやりと」でこの歌は詩になったと思います。(鹿取)
★サラリーマンが人を待つ場面って、人間としての発展があまりない場合が多い。そういう心象が
 「ひんやりと」になっている。また「ひんやりと」のヒと「ひと」のヒの音の響き合いとかひら
 がな表記も柔らかくていい感じです。(K・O)
★「サラリーマンはひんやりと」ではなく、「ひんやりとサラリーマンは」と「ひんやりと」を 
 初句に持ってこられたのが素晴らしい。文法上はこの「ひんやりと」は「待つ」に掛かっている
 のだと思います。「ひんやりと」にサラリーマンの人間関係の在りようがよく出ています。「さ
 びしい」と言ったら駄目だし、「楽しい」と言ったらもっと駄目だし。「雲見て」もいいし、「ほ
 ほえみ」も効いていますね。「ほほえみ」って難しいので短歌には少ないですよね。(A・K)
★坂井修一さんは「ほほゑむ」をよく使われます。川漄利雄さんの雑誌に頼まれて坂井さんの歌集 
 『アメリカ』の評を書いたことがありますが、その題が「ほほえむ博士」でした。坂井さんはそ 
 れほど「ほほゑむ」の使用頻度が多いです。この松男さんの歌については皆さんがおっしゃった 
 通り「ひんやりと」がとても活きているし、「ほほえみ」もいいと思います。サラリーマンとい 
 う〈われ〉の在りようを羞恥をもって、でも肯定しているというそんな気分かなあと思います。 
 ここで待つ人は恋人でもいいかなと思いますが、それは各人の読みでいいのでしょう。(鹿取)

     (後日意見)
 「雲」というのは渡辺松男にとって重要なモチーフである。地上と天上をつなぐ中間的な存在なのだろうか。
 2002年に作ったグラフが出てきたので、その写真を挙げて少し説明したい。「雲」と「死」と「樹木」の出てくる歌の数を、『寒気氾濫』(1997年刊)『泡宇宙の蛙』(1999年刊)『歩く仏像』(2002年刊)の3冊について調べ、棒グラフにしているが、樹木の数が多すぎてはみ出すからか助樹木については数値だけになっている。(鹿取)


寒気氾濫  雲9  死12  樹木110

泡宇宙の蛙  雲16  死19  樹木42

歩く仏像  雲14  死33  樹木80

  グラフは左側の黄色が「雲」、右側が「死」の歌





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